大戦争。日露戦争が開始された時、多数の日本人は血湧き骨振るい、父母、妻子、事業、財産をも捨て、勇然奮起、動員令に応じて身を軍隊に投じた。彼らは敵の強大なこと、かの無法の侵略とわが国家の危険とこれが開闢以来の大戦争であることと、陛下の御命令の畏むべきこととを悟ったからである。目覚めよ。今われらの前に迫る大敵はその根拠を天の所に置き、この世の暗きと政と権威とをつかさどり(エペソ六・12)、巧みに愚民を惑わし、万民を罪悪の淵に投じ、永遠の滅亡に陥らせようとして実に大胆猛烈に侵略している。神とその僕らはこの敵と戦ってすでに六千年を費したが、戦争はいよいよ激しくなるばかりである。心なき者はいざ知らず、我らはこの際太平無事を謳歌していることができようか。
魂の苦叫。新聞の三面記事に、家庭の内情に、個人の心中について観察し傾聴するならば、敵の手中に陥り、罪悪の訪問に浮沈する魂の苦叫は、昼夜絶え間なく至る所に聞こえ渡っている。おお、この憂き世にあって神なく望みない者の哀れさよ(エペソ二・12)。思い見よ、今日も幾多の男女が煩悶の中に、苦痛の中に、悲嘆の中に、失望の中に、暗黒の中に、迷霧の中に、彷徨しつつ、倒れつつ、沈みつつ、死につつあるかを!「渡りて我らを助けよ」(使徒十六・9)とは誠に彼らの苦叫の真意である。
神の嘆声。「主エホバかく言う。おのれを養う所のイスラエルの牧者は禍なるかな。牧者は群れを養うべき者ならずや。汝らその弱き者を強くせず、その病める者を癒さず、その傷つける者を包まず、散らされたる者を引き返らず、失せたる者を尋ねず、手荒に厳しくこれを治む。これは牧者なきによりて散り失せ、野のもろもろの獣の餌となりて散り失するなり。わが羊はもろもろの山々に、もろもろの高丘に迷う。わが羊全地の表に散りおれどこれを探す者なく、尋ぬる者なし」(エゼキエル三十四・2〜6)。
「また群衆を見て、その飼う者なき羊のごとく悩み、かつ倒るるをいたく憐れみ、遂に弟子たちに言いたもう『刈り入れは多く、働き人は少なし』」(マタイ九・36、37)。「われ誰を遣わさん。誰か我らのために往くべきか」(イザヤ六・8)。「われ渇く」(ヨハネ十九・28)。「誰かベツレヘムの門にある井戸の水を我に飲ましめんか」(サムエル後二三・15)。
わが集会。兄弟よ、姉妹よ、不信者は仕方ないが、贖われた我らは、身も魂も最早わがものでなく神のものである(コリント前六・9、10、20)。わが生くるはキリストのため(ピリピ一・21)。主の御用を勤むるより他に用なき体である。しかるに我らは長らく神にも魂にも同情を有せず、ただおのがことのみを思って利欲、功名、快楽の奴隷となり、この身も時間をも所有をもおのがために使役していたとは何たる心得違いであろうか。読者の中にも今なおかかる兄姉があるならば、今日、目を覚まされよ。おお、おのれを捨てよ。これを十字架に釘付けて死なしめよ。汝の身を神に献げよ(ローマ十二・1)。全き服従をもって、「主よ我に何を行わせようとしたもうや」と祈られよ。主の御心の重荷と魂の苦悩とを解して、「主よ、我ここにあり。我を遣わしたまえ」(イザヤ六・9)と申し上げる者は実に幸いである。「主は我らのために生命を捨てたまえり。これによりて愛ということを知りたり。我らもまた兄弟のために生命を捨つべきなり」(第一ヨハネ三・16)。
動員令。「全世界を巡りてすべての造られしものに福音を宣べ伝えよ」(マルコ十六・15)。福音のラッパと灯火(聖霊)をつけた空壷とをもって敵陣に進み入れよ(士師七・16、17)。「起きて汝の足にて立て。われ汝に現れしは、汝を立ててその見しことと我が汝に現れて示さんとする事との役者また証し人たらしめんためなり。我なんじをこの民及び異邦人より救わん。また汝を彼らに遣わし、その目を開きて暗きより光に、サタンの権威より神に立ち返らせ、我に対する信仰によりて罪の赦しと潔められたる者のうちの嗣業とを得しめん」(使徒二六・16〜18)。この命令の下にパウロは決然として起ち上がり、余生を主の軍隊に投じ、遂にローマにおいて名誉の戦死をしたのである。その遺言に、「汝キリスト・イエスのよき兵卒として我と共に苦しみを忍べ。兵卒を務むる者は生活のためにまとわるる事なし。これ募れる者を喜ばせんとすればなり」(テモテ後二・3、4)とある。
世の末期。主の御言通り(マタイ二四・7〜14)世の末期の兆候は歴然として今の世に現れて来た。もはやこの社会も永続きすることはできない。「汝らこの末の世にありてなお宝を貯えたり」(ヤコブ五・3)。「我らは時を知れり。今は眠りより覚むべき時なり」(ローマ十三・11)。おお、主イエスを知るの大光栄を思い、永遠の国と天の宝とを心に留められよ。そうすればこの世と肉に属するものは糞土のように喜んでこれを捨てることができるであろう。
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