十字架に付けられた方の勝利――これが新約の歴史的啓示の意味である。教会の勝利、諸国民の回心、宇宙の栄化、これらはキリストの贖いの勝利の過程における三つの主要な段階である。キリスト御自身が初穂であり、新しい人類の初めである。世代と時代の協和的なリズムの中、神の経綸はその永遠の目標に向かって進む。すべての終わりはすべての始まりと同じように、神御自身である(一コリ一五・二八)。
この関係を示すことが、この救済史の課題である。それは天のエルサレムにおいて極点に達する世の贖いの神的発展の概観を描こうとする試みである。
現在、世界史上の大事件が幾つも起きているが、本書は地上でかつて生起した出来事の中でも最大の事件、しかも今も生起しつつある事柄について、すなわち神の御子の贖罪の働きについて語る。また、キリストの教会と称されている人々について語り、さらに、イスラエルと諸国民に関する、また個人と宇宙に関する御国の計画をキリストが実現されることについて語る。
全く暗黒の時代の中から、われわれは永遠の日の出を、キリストの勝利を、キリストの教会の輝かしい未来を凝視する。そして、われわれの心はキリストの愛の諸々の計画を喜ぶ。そして、危機と破局に瀕しているこの現世を進軍して行くとき、われわれは「光は正しい人のために現れ」ることを(詩九七・一一)、「正しい者の道は、夜明けの光のようだ、いよいよ輝きを増して真昼となる」ことを(箴四・一八)知るであろう。
ヴィーデネスト、ラインランド、ドイツ
エーリッヒ・ザウアー