空し

藤井武

○霊の糧を取らずして肉のパンをむは空し。

○人の顔を見て神のみかほを忘るるは空し。

○信ずることなくして口を開くは空し。

○環境の整理によって罪を処分せんとするは空し。

○朽つべきもののために労するは空し。

○表面をつくろふは空し。

○新しきを追ふは空し。

○愛に報をのぞむは空し。

○真理に打算を交ふるは空し。

○伝道に数をかぞふるは空し。

○映画とラヂオと婦人雑誌と教会とに空しからざる何程のものありや。

○コーヘレスいはく空の空、空の空なるかな、すべて空なり。

「旧約と新約」第一一三号 一九二九年一一月