ヘブル人への書
第一章
1神むかしは
預言者等により、
多くに
分ち、
多くの
方法をもて
先祖たちに
語り
給ひしが、
2この
末の
世には
御子によりて、
我らに
語り
給へり。
神は
曾て
御子を
立てて
萬の
物の
世嗣となし、また
御子によりて
諸般の
世界を
造り
給へり。
3御子は
神の
榮光のかがやき、
神の
本質の
像にして、
己が
權能の
言をもて
萬の
物を
保ちたまふ。また
罪の
潔をなして、
高き
處にある
稜威の
右に
坐し
給へり。
4その
受け
給ひし
名の
御使の
名に
勝れるごとく、
御使よりは
更に
勝る
者となり
給へり。
5神は
孰の
御使に
曾て
斯くは
言ひ
給ひしぞ
『なんぢは我が子なり、
われ今日なんぢを生めり』
と。また
『われ彼の父となり、
彼わが子とならん』
と。
6また
初子を
再び
世に
入れ
給ふとき
『神の凡ての使は之を拜すべし』
と
言ひ
給ふ。
7また
御使たちに
就きては
『神は、その使たちを風となし、
その事ふる者を焔となす』
と
言ひ
給ふ。
8されど
御子に
就きては
『神よ、なんじの御座は世々限りなく、
汝の國の杖は正しき杖なり。
9なんぢは義を愛し、不法をにくむ。
この故に神なんぢの神は歡喜の油を、
汝の友に勝りて汝にそそぎ給へり』
と。
10また
『主よ、なんぢ太初に地の基を置きたまへり、
天も御手の業なり。
11これらは滅びん、されど汝は常に存へたまはん。
これらはみな衣のごとく舊びん。
12而して汝これらを袍のごとく疊み給はん、
これらは衣のごとく變らん。
されど汝はかはり給ふことなく
汝の齡は終らざるなり』
と
言ひたまふ。
13又いづれの
御使に
曾て
斯くは
言ひ
給ひしぞ
『われ汝の仇を汝の足臺となすまでは、
我が右に坐せよ』
と。
14御使はみな
事へまつる
靈にして、
救を
嗣がんとする
者のために
職を
執るべく
遣されたる
者にあらずや。
第二章
1この故に我ら聞きし所をいよいよ篤く愼むべし、恐らくは流れ過ぐる事あらん。
2若し御使によりて語り給ひし言すら堅くせられて、咎と不從順とみな正しき報を受けたらんには、
3我ら斯くのごとき大なる救を等閑にして爭でか遁るることを得ん。この救は初め主によりて語り給ひしものにして、聞きし者ども之を我らに確うし、
4神また徴と不思議とさまざまの能力ある業と、御旨のままに分ち與ふる聖靈とをもて證を加へたまへり。
5それ
神は
我らの
語るところの
來らんとする
世界を、
御使たちには
服はせ
給はざりき。
6或篇に
人證して
言ふ
『人は如何なる者なれば、
之を御心にとめ給ふか。
人の子は如何なる者なれば、
之を顧み給ふか。
7汝これを御使よりも少しく卑うし、
光榮と尊貴とを冠らせ、
8萬の物をその足の下の服はせ給へり』
と。
既に
萬の
物を
之に
服はせ
給ひたれば、
服はぬものは
一つだに
殘さるる
事なし。されど
今もなほ
我らは
萬の
物の
之に
服ひたるを
見ず。
9ただ
御使よりも
少しく
卑くせられしイエスの、
死の
苦難を
受くるによりて
榮光と
尊貴とを
冠らせられ
給へるを
見る。これ
神の
恩惠によりて
萬民のために
死を
味ひ
給はんとてなり。
10それ
多くの
子を
光榮に
導くに、その
救の
君を
苦難によりて
全うし
給ふは、
萬の
物の
歸するところ、
萬の
物を
造りたまふ
所の
者に
相應しき
事なり。
11潔めたまふ
者も、
潔めらるる
者も、
皆ただ
一つより
出づ。この
故に
彼らを
兄弟と
稱ふるを
恥とせずして
言ひ
給ふ、
12『われ御名を我が兄弟たちに告げ、
集會の中にて汝を讃め歌はん』
13また
『われ彼に依頼まん』
又『視よ、我と神の我に賜ひし子等とは……』
と。
14子等はともに
血肉を
具ふれば、
主もまた
同じく
之を
具へ
給ひしなり。これは
死の
權力を
有つもの、
即ち
惡魔を
死によりて
亡し、
15かつ
死の
懼によりて
生涯、
奴隷となりし
者どもを
解放ち
給はんためなり。
16實に
主は
御使を
扶けずしてアブラハムの
裔を
扶けたまふ。
17この
故に
神の
事につきて
憐憫ある
忠實なる
大祭司となりて、
民の
罪を
贖はんために、
凡ての
事において
兄弟の
如くなり
給ひしは
宜なり。
18主は
自ら
試みられて
苦しみ
給ひたれば、
試みられるる
者を
助け
得るなり。
第三章
1されば
共に
天の
召を
蒙れる
聖なる
兄弟よ、
我らが
言ひあらはす
信仰の
使徒たり
大祭司たるイエスを
思ひ
見よ。
2彼の
己を
立て
給ひし
者に
忠實なるは、モーセが
神の
全家に
忠實なりしが
如し。
3家を
造る
者の
家より
勝りて
尊ばるる
如く、
彼もモーセに
勝りて
大なる
榮光を
受くるに
相應しき
者とせられ
給へり。
4家は
凡て
之を
造る
者あり、
萬の
物を
造り
給ひし
者は
神なり。
5モーセは
後に
語り
傳へられんと
爲ることの
證をせんために、
僕として
神の
全家に
忠實なりしが、
6キリストは
子として
神の
家を
忠實に
掌どり
給へり。
我等もし
確信と
希望の
誇とを
終まで
堅く
保たば、
神の
家なり。
7この
故に
聖靈の
言ひ
給ふごとく
『今日なんぢら神の聲を聞かば、
8その怒を惹きし時のごとく、
荒野の嘗試の日のごとく、
こころを頑固にするなかれ。
9彼處にて汝らの先祖たちは
我をこころみて驗し、
かつ四十年の間わが業を見たり。
10この故に我この代の人を憤ほりて云へり、
「彼らは常に心まよい、
わが途を知らざりき」と。
11われ怒をもて「彼らは、
我が休に入るべからず」と誓へり』
12兄弟よ、
心せよ、
恐らくは
汝等のうち
活ける
神を
離れんとする
不信仰の
惡しき
心を
懷く
者あらん。
13汝等のうち
誰も
罪の
誘惑によりて
頑固にならぬやう、
今日と
稱ふる
間に
日々互に
相勸めよ。
14もし
始の
確信を
終まで
堅く
保たば、
我らはキリストに
與る
者となるなり。
15それ
『今日なんじら神の聲を聞かば、
その怒を惹きし時のごとく、
こころを頑固にするなかれ』
と
云へ。
16然れば
聞きてなほ
怒を
惹きし
者は
誰なるか、モーセによりてエジプトを
出でし
凡ての
人にあらずや。
17また
四十年のあひだ、
神は
誰に
對して
憤ほり
給ひしか、
罪を
犯してその
死屍を
荒野に
横たへし
人々にあらずや。
18又かれらは
我が
安息に
入るべからずとは、
誰に
對して
誓ひ
給ひしか、
不從順なる
者にあらずや。
19之によりて
見れば、
彼らの
入ること
能はざりしは、
不信仰によりてなり。
第四章
1然れば
我ら
懼るべし、その
安息に
入るべき
約束はなほ
遺れども、
恐らくは
汝らの
中これに
達せざる
者あらん。
2それは
彼らのごとく
我らも
善き
音信を
傳へられたり、
然れど
彼らには
聞きし
所の
言益なかりき。
聞くもの
之に
信仰をまじへざりしに
因る。
3われら
信じたる
者は、かの
休に
入ることを
得るなり。
『われ怒をもて「彼らは、
わが休に入るべからず」と誓へり』
と
云ひ
給ひしが
如し。されど
世の
創より
御業は
既に
成れるなり。
4或篇に
七日めに
就きて
斯く
云へり『
七日めに
神その
凡ての
業を
休みたまへり』と。
5また
茲に
『かれらは、
我が休に入るべからず』
と
云へり。
6然れば
之に
入るべき
者なほ
在り、
曩に
善き
音信を
傳へられし
者らは、
不從順によりて
入ることを
得ざりしなれば、
7久しきを
經てのち
復、
日を
定めダビデによりて『
今日』と
言ひ
給ふ。
曩に
記したるが
如し。
曰く
『今日なんじら神の聲を聞かば、
こころを頑固にするなかれ』
8若しヨシュア
既に
休を
彼らに
得しめしならば、
神はその
後、ほかの
日につきて
語り
給はざりしならん。
9然れば
神の
民の
爲になほ
安息は
遺れり。
10既に
神の
休に
入りたる
者は、
神のその
業を
休み
給ひしごとく、
己が
業を
休めり。
11されば
我等はこの
休に
入らんことを
務むべし、
是かの
不從順の
例にならひて
誰も
墮つることなからん
爲なり。
12神の
言は
生命あり、
能力あり、
兩刃の
劍よりも
利くして、
精神と
靈魂、
關節と
骨髓を
透して
之を
割ち、
心の
念と
志望とを
驗すなり。
13また
造られたる
物に
一つとして
神の
前に
顯れぬはなし、
萬の
物は
我らが
係れる
神の
目のまへに
裸にて
露るるなり。
14我等には、もろもろの天を通り給ひし偉なる大祭司、神の子イエスあり。然れば我らが言ひあらはす信仰を堅く保つべし。
15我らの大祭司は我らの弱を思ひ遣ること能はぬ者にあらず、罪を外にして凡ての事、われらと等しく試みられ給へり。
16この故に我らは憐憫を受けんが爲、また機に合ふ助となる惠を得んがために、憚らずして惠の御座に來るべし。
第五章
1凡そ
大祭司は
人の
中より
選ばれ、
罪のために
供物と
犧牲とを
献げんとて、
人にかはりて
神に
事ふることを
任ぜらる。
2彼は
自らも
弱に
纒はるるが
故に、
無知なるもの、
迷へる
者を
思ひ
遣ることを
得るなり。
3之によりて
民のために
爲すごとく、また
己のためにも
罪に
就きて
献物をなさざるべからず。
4又この
貴き
位はアロンのごとく
神に
召さるるにあらずば、
誰も
自ら
之を
取る
者なし。
5斯くの
如くキリストも
己を
崇めて
自ら
大祭司となり
給はず。
之に
向ひて
『なんじは我が子なり、
われ今日なんじを生めり』
と
語り
給ひし
者、これを
立てたり。
6また
他の
篇に
『なんじは永遠にメルキゼデクの位に等しき祭司たり』
と
言ひ
給へるが
如し。
7キリストは
肉體にて
在ししとき、
大なる
叫と
涙とをもて、
己を
死より
救ひ
得る
者に
祈と
願とを
献げ、その
恭敬によりて
聽かれ
給へり。
8彼は
御子なれど、
受けし
所の
苦難によりて
從順を
學び、
9かつ
全うせられたれば、
凡て
己に
順ふ
者のために
永遠の
救の
原となりて、
10神よりメルキゼデクの
位に
等しき
大祭司と
稱へられ
給へり。
11之に就きて我ら多くの言ふべき事あれど、汝ら聞くに鈍くなりたれば釋き難し。
12なんじら時を經ること久しければ、教師となるべき者なるに、今また神の言の初歩を人より教へられざるを得ず、汝らは堅き食物ならで乳を要する者となれり。
13おほよそ乳を用ふる者は幼兒なれば、未だ義の言に熟せず、
14堅き食物は智力を練習して善惡を辨ふる成人の用ふるものなり。
第六章
1この故に我らはキリストの教の初歩に止ることなく、再び死にたる行爲の悔改と神に對する信仰との基、
2また各樣のバプテスマと按手と、死人の復活と永遠の審判との教の基を置かずして完全に進むべし。
3神もし許し給はば、我ら之をなさん。
4一たび照されて天よりの賜物を味ひ、聖靈に與る者となり、
5神の善き言と來世の能力とを味ひて後、
6墮落する者は更にまた自ら神の子を十字架に釘けて肆し者とする故に、再びこれを悔改に立返らすること能はざるなり。
7それ地しばしば其の上に降る雨を吸ひ入れて耕す者の益となるべき作物を生ぜば、神より祝福を受く。
8されど茨と薊とを生ぜば、棄てられ、かつ詛に近く、その果ては焚かるるなり。
9愛する者よ、われら斯くは語れど、汝らには更に善きこと、即ち救にかかはる事あるを深く信ず。
10神は不義に在さねば、汝らの勤勞と、前に聖徒につかへ、今もなほ之に事へて御名のために顯したる愛とを忘れ給ふことなし。
11我らは汝等がおのおの終まで前と同じ勵をあらはして全き望を保ち、
12怠ることなく、信仰と耐忍とをもて約束を嗣ぐ人々に效はんことを求む。
13それ神はアブラハムに約し給ふとき、指して誓ふべき己より大なる者なき故に、己を指して誓ひて言ひ給へり、
14『われ必ず、なんぢを惠み惠まん、なんぢを殖し殖さん』と、
15斯くの如くアブラハムは耐へ忍びて約束のものを得たり。
16おほよそ人は己より大なる者を指して誓ふ、その誓はすべての爭論を罷むる保證たり。
17この故に神は約束を嗣ぐ者に御旨の變らぬことを充分に示さんと欲して誓を加へ給へり。
18これ神の謊ること能はぬ二つの變らぬものによりて、己の前に置かれたる希望を捉へんとて遁れたる我らに強き奨勵を與へん爲なり。
19この希望は我らの靈魂の錨のごとく安全にして動かず、かつ幔の内に入る。
20イエス我等のために前驅し、永遠にメルキゼデクの位に等しき大祭司となりて、その處に入り給へり。
第七章
1此のメルキゼデクはサレムの王にて至高き神の祭司たりしが、王たちを破りて還るアブラハムを迎へて祝福せり。
2アブラハムは彼に凡ての物の十分の一を分け與へたり。その名を釋けば第一に義の王、次にサレムの王、すなはち平和の王なり。
3父なく、母なく、系圖なく、齡の始なく、生命の終なく、神の子の如くにして限りなく祭司たり。
4先祖アブラハム分捕物のうち十分の一、最も善き物を之に與へたれば、その人の如何に尊きかを思ふべし。
5レビの子等のうち祭司の職を受くる者は、律法によりて、民すなはちアブラハムの腰より出でたる己が兄弟より、十分の一を取ることを命ぜらる。
6されど此の血脈にあらぬ彼は、アブラハムより十分の一を取りて約束を受けし者を祝福せり。
7それ小なる者の大なる者に祝福せらるるは論なき事なり。
8かつ此所にては死ぬべき者十分の一を受くれども、彼處にては『活くるなり』と證せられた者これを受く。
9また十分の一を受くるレビすら、アブラハムに由りて十分の一を納めたりと云ふも可なり。
10そはメルキゼデクのアブラハムを迎へし時に、レビはなほ父の腰に在りたればなり。
11もしレビの
系なる
祭司によりて
全うせらるる
事ありしならば(
民は
之によりて
律法を
受けたり)
何ぞなほ
他にアロンの
位に
等しからぬメルキゼデクの
位に
等しき
祭司の
起る
必要あらんや。
12祭司の
易る
時には
律法も
亦必ず
易るべきなり。
13此等のことは
曾て
祭壇に
事へたることなき
他の
族に
屬する
者をさして
云へるなり。
14それ
我らの
主のユダより
出で
給へるは
明かにして、
此の
族につき、モーセは
聊かも
祭司に
係ることを
云はざりき。
15 7:16又メルキゼデクのごとき
他の
祭司おこり、
肉の
誡命の
法に
由らず、
朽ちざる
生命の
能力によりて
立てられたれば、
我が
言ふ
所いよいよ
明かなり。
17そは『なんぢは
永遠にメルキゼデクの
位に
等しき
祭司たり』と
證せられ
給へばなり。
18前の
誡命は
弱く、かつ
益なき
故に
廢せられ、
19(
律法は
何をも
全うせざりしなり)
更に
優れたる
希望を
置かれたり、この
希望によりて
我らは
神に
近づくなり。
20かの
人々は
誓なくして
祭司とせられたれども、
21彼は
誓なくしては
爲られず、
誓をもて
祭司とせられ
給へり。
即ち
彼に
就きて
『主ちかひて悔い給はず、
「なんじは永遠に祭司たり」』
と
言ひ
給ひしが
如し。
22イエスは
斯くも
優れたる
契約の
保證となり
給へり。
23かの
人々は
死によりて
永くその
職に
留ることを
得ざる
故に、
祭司となりし
者の
數多かりき。
24されど
彼は
永遠に
在せば
易ることなき
祭司の
職を
保ちたまふ。
25この
故に
彼は
己に
頼りて
神にきたる
者のために
執成をなさんとて
常に
生くれば、
之を
全く
救ふこと
得給ふなり。
26斯くのごとき大祭司こそ我らに相應しき者なれ、即ち聖にして惡なく、穢なく、罪人より遠ざかり、諸般の天よりも高くせられ給へり。
27他の大祭司のごとく先づ己の罪のため、次に民の罪のために日々犧牲を献ぐるを要し給はず、その一たび己を献げて之を成し給ひたればなり。
28律法は弱みある人々を立てて大祭司とすれども、律法の後なる誓の御言は、永遠に全うせられ給へる御子を大祭司となせり。
第八章
1今いふ
所の
要點は
斯くのごとき
大祭司の
我らにある
事なり。
彼は
天にては
稜威の
御座の
右に
坐し、
2聖所および
眞の
幕屋に
事へたまふ。この
幕屋は
人の
設くるものにあらず、
主の
設けたまふ
所なり。
3おおよそ
大祭司の
立てらるるは
供物と
犧牲とを
献げん
爲なり、この
故に
彼もまた
献ぐべき
物あるべきなり。
4然るに
若し
地に
在さば、
既に
律法に
循ひて
供物を
献ぐる
祭司等あるによりて
祭司とはなり
給はざるべし。
5彼らの
事ふるは、
天にある
物の
型と
影となり。モーセが
幕屋を
建てんとする
時に『
愼め、
山にて
汝が
示されたる
式に
效ひて
凡ての
物を
造れ』との
御告を
受けしが
如し。
6されどキリストは
更に
勝れる
約束に
基きて
立てられし
勝れる
契約の
中保となりたれば、
更に
勝る
職を
受け
給へり。
7かつ
初の
契約もし
虧くる
所なくば、
第二の
契約を
求むる
事なかりしならん。
8然るに
彼らを
咎めて
言ひ
給ふ
『主いひ給ふ「視よ、
我イスラエルの家とユダの家とに、
新しき契約を設くる日來らん。
9この契約は我かれらの先祖の手を執りて、
エジプトの地より導き出しし時に
立てし所の如きにあらず、
彼らは我が契約にとどまらず、
我も彼らを顧みざりしなり」
と
主いひ
給ふ。
10「されば、かの日の後に我がイスラエルの家と立つる契約は是なり」
と
主いひ
給ふ。
「われ我が律法を彼らの念に置き、
そのこころに之を記さん、
また我かれらの神となり、
彼らは我が民とならん。
11彼らはまた各人その國人に、
その兄弟に教へて、
なんじ主を知れと言はざるべし。
そは小より大に至るまで、
皆われを知らん。
12我もその不義を憐み、
この後また其の罪を思ひ出でざるべし』
と。
13既に『
新し』と
言ひ
給へば、
初のものを
舊しとし
給へるなり、
舊びて
衰ふるものは、
消失せんとするなり。
第九章
1初の契約には禮拜の定と世に屬する聖所とありき。
2設けられたる幕屋あり、前なるを聖所と稱へ、その中に燈臺と案と供のパンとあり。
3また第二の幕の後に至聖所と稱ふる幕屋あり。
4その中に金の香壇と金にて徧く覆ひたる契約の櫃とあり、この中にマナを納れたる金の壺と芽したるアロンの杖と契約の石碑とあり、
5櫃の上に榮光のケルビムありて贖罪所を覆ふ。これらの物に就きては、今一々言ふこと能はず、
6此等のもの斯く備りたれば、祭司たちは常に前なる幕屋に入りて禮拜をおこなふ。
7されど奧なる幕屋には、大祭司のみ年に一度おのれと民との過失のために献ぐる血を携へて入るなり。
8之によりて聖靈は前なる幕屋のなほ存するあひだ、至聖所に入る道の未だ顯れざるを示し給ふ。
9この幕屋はその時のために設けられたる比喩なり、之に循ひて献げたる供物と犧牲とは、禮拜をなす者の良心を全うすること能はざりき。
10此等はただ食物・飮物さまざまの濯事などに係り、肉に屬する定にして、改革の時まで負せられたるのみ。
11然れどキリストは來らんとする善き事の大祭司として來り、手にて造らぬ此の世に屬せぬ更に大なる全き幕屋を經て、
12山羊と犢との血を用ひず、己が血をもて只一たび至聖所に入りて、永遠の贖罪を終へたまへり。
13もし山羊および牡牛の血、牝牛の灰などを穢れし者にそそぎて其の肉體を潔むることを得ば、
14まして永遠の御靈により瑕なくして己を神に献げ給ひしキリストの血は、我らの良心を死にたる行爲より潔めて活ける神に事へしめざらんや。
15この故に彼は新しき契約の中保なり。これ初の契約の下に犯したる咎を贖ふべき死あるによりて、召されたる者に約束の永遠の嗣業を受けさせん爲なり。
16それ遺言は必ず遺言者の死を要す。
17遺言は遺言者死にてのち始めて效あり、遺言者の生くる間は效なきなり。
18この故に初の契約も血なくして立てしにあらず。
19モーセ律法に循ひて諸般の誡命をすべての民に告げてのち、犢と山羊との血また水と緋色の毛とヒソプとをとりて、書および凡ての民にそそぎて言ふ、
20『これ神の汝らに命じたまふ契約の血なり』と。
21また同じく幕屋と祭のすべての器とに血をそそげり。
22おほよそ律法によれば、萬のもの血をもて潔めらる。もし血を流すことなくば、赦さるることなし。
23この故に天に在るものに象りたる物は此等にて潔められ、天にある物は此等に勝りたる犧牲をもて潔めらるべきなり。
24キリストは眞のものに象れる、手にて造りたる聖所に入らず、眞の天に入りて今より我等のために神の前にあらはれ給ふ。
25これ大祭司が年ごとに他の物の血をもて聖所に入るごとく、屡次おのれを献ぐる爲にあらず。
26もし然らずば世の創より以來しばしば苦難を受け給ふべきなり。然れど今、世の季にいたり己を犧牲となして罪を除かんために一たび現れたまへり。
27一たび死ぬることと死にてのち審判を受くることとの人に定りたる如く、
28キリストも亦おほくの人の罪を負はんが爲に一たび献げられ、復罪を負ふことなく、己を待望む者に再び現れて救を得させ給ふべし。
第十章
1それ
律法は
來らんとする
善き
事の
影にして
眞の
形にあらねば、
年毎にたえず
献ぐる
同じ
犧牲にて、
神にきたる
者を
何時までも
全うすることを
得ざるなり。
2もし
之を
得ば、
禮拜をなす
者、
一たび
潔められて
復心に
罪を
憶えねば、
献ぐることを
止めしならん。
3然れど
犧牲によりて、
年ごとに
罪を
憶ゆるなり。
4これ
牡牛と
山羊との
血は
罪を
除くこと
能はざるに
因る。
5この
故にキリスト
世に
來るとき
言ひ
給ふ
『なんぢ犧牲と供物とを欲せず、
唯わが爲に體を備へたまへり。
6なんぢ燔祭と罪祭とを悦び給はず、
7その時われ言ふ「神よ、我なんぢの
御意を行はんとて來る」
我につきて書の卷に録されたるが如し』
と。
8先には『
汝いけにへと
供物と
燔祭と
罪祭と(
即ち
律法に
循ひて
献ぐる
物)を
欲せず、また
悦ばず』と
言ひ、
9後に『
視よ、
我なんぢの
御意を
行はんとて
來る』と
言ひ
給へり。その
後なる
者を
立てん
爲に、その
先なる
者を
除き
給ふなり。
10この
御意に
適ひてイエス・キリストの
體の
一たび
献げられしに
由りて
我らは
潔められたり。
11すべての
祭司は
日毎に
立ちて
事へ、いつまでも
罪を
除くこと
能はぬ
同じ
犧牲をしばしば
献ぐ。
12然れどキリストは
罪のために
一つの
犧牲を
献げて
限りなく
神の
右に
坐し、
13斯くて
己が
仇の
己が
足臺とせられん
時を
待ちたまふ。
14そは
潔めらるる
者を
一つの
供物にて
限りなく
全うし
給ふなり。
15聖靈も
亦われらに
之を
證して
16『「この日の後、われ彼らと立つる契約は是なり」
と
主いひ
給ふ。また
「わが律法をその心に置き、その念に銘さん」』
と
言ひ
給ひて、
17『この後また彼らの罪と不法とを思ひ出でざるべし』
と
言ひたまふ。
18かかる
赦ある
上は、もはや
罪のために
献物をなす
要なし。
19然れば兄弟よ、我らイエスの血により、
20その肉體たる幔を經て我らに開き給へる新しき活ける路より憚らずして至聖所に入ることを得、
21かつ神の家を治むる大なる祭司を得たれば、
22心は濯がれて良心の咎をさり、身は清き水にて洗はれ、眞の心と全き信仰とをもて神に近づくべし。
23また約束し給ひし者は忠實なれば、我ら言ひあらはす所の望を動かさずして堅く守り、
24互に相顧み、愛と善き業とを勵まし、
25集會をやむる或人の習慣の如くせず、互に勸め合ひ、かの日のいよいよ近づくを見て、ますます斯くの如くすべし。
26我等もし眞理を知る知識をうけたる後、ことさらに罪を犯して止めずば、罪のために犧牲、もはや無し。
27ただ畏れつつ審判を待つことと、逆ふ者を焚きつくす烈しき火とのみ遺るなり。
28モーセの律法を蔑する者は慈悲を受くることなく、二三人の證人によりて死に至る。
29まして神の子を蹈みつけ、己が潔められし契約の血を潔からずとなし、恩惠の御靈を侮る者の受くべき罰の重きこと如何許とおもふか。
30『仇を復すは我に在り、われ之を報いん』と言ひ、また『主その民を審かん』と言ひ給ひし者を我らは知るなり。
31活ける神の御手に陷るは畏るべきかな。
32なんぢら
御光を
受けしのち
苦難の
大なる
戰鬪に
耐へし
前の
日を
思ひ
出でよ。
33或は
誹謗と
患難とに
遭ひて
觀物にせられ、
或は
斯かることに
遭ふ
人の
友となれり。
34また
囚人となれる
者を
思ひやり、
永く
存する
尤も
勝れる
所有の
己にあるを
知りて、
我が
所有を
奪はるるをも
喜びて
忍びたり。
35されば
大なる
報を
受くべき
汝らの
確信を
投げすつな。
36なんぢら
神の
御意を
行ひて
約束のものを
受けん
爲に
必要なるは
忍耐なり。
37『いま暫くせば、
來るべき者きたらん、
遲からじ。
38我に屬ける義人は、信仰によりて活くべし。
もし退かば、わが心これを喜ばじ』
39然れど
我らは
退きて
滅亡に
至る
者にあらず、
靈魂を
得るに
至る
信仰を
保つ
者なり。
第十一章
1それ信仰は望むところを確信し、見ぬ物を眞實とするなり。
2古への人は之によりて證せられたり。
3信仰によりて我等は、もろもろの世界の神の言にて造られ、見ゆる物の顯るる物より成らざるを悟る。
4信仰に由りてアベルはカインよりも勝れる犧牲を神に献げ、之によりて正しと證せられたり。神その供物につきて證し給へばなり。彼は死ぬれども、信仰によりて今なほ語る。
5信仰に由りてエノクは死を見ぬように移されたり。神これを移し給ひたれば見出されざりき。その移さるる前に神に喜ばるることを證せられたり。
6信仰なくしては神に悦ばるること能はず、そは神に來る者は、神の在すことと神の己を求むる者に報い給ふこととを、必ず信ずべければなり。
7信仰に由りてノアは、未だ見ざる事につきて御告を蒙り、畏みてその家の者を救はん爲に方舟を造り、かつ之によりて世の罪を定め、また信仰に由る義の世嗣となれり。
8信仰に由りてアブラハムは召されしとき嗣業として受くべき地に出で往けとの命に遵ひ、その往く所を知らずして出で往けり。
9信仰により異國に在るごとく約束の地に寓り、同じ約束を嗣ぐべきイサクとヤコブと共に幕屋に住めり、
10これ神の營み造りたまふ基礎ある都を望めばなり。
11信仰に由りてサラも約束したまふ者の忠實なるを思ひし故に、年邁ぎたれど胤をやどす力を受けたり。
12この故に死にたる者のごとき一人より天の星のごとく、また海邊の數へがたき砂のごとく夥多しく生れ出でたり。
13彼等はみな信仰を懷きて死にたり、未だ約束の物を受けざりしが、遙にこれを見て迎へ、地にては旅人また寓れる者なるを言ひあらはせり。
14斯く言ふは、己が故郷を求むることを表すなり。
15若しその出でし處を念はば、歸るべき機ありしなるべし。
16されど彼らの慕ふ所は天にある更に勝りたる所なり。この故に神は彼らの神と稱へらるるを恥とし給はず、そは彼等のために都を備へ給へばなり。
17信仰に由りてアブラハムは試みられし時イサクを献げたり、彼は約束を喜び受けし者なるに、その獨子を献げたり。
18彼に對しては『イサクより出づる者なんぢの裔と稱へらるべし』と云ひ給ひしなり。
19かれ思へらく、神は死人の中より之を甦へらすることを得給ふと、乃ち死より之を受けしが如くなりき。
20信仰に由りてイサクは來らんとする事につきヤコブとエサウとを祝福せり。
21信仰に由りてヤコブは死ぬる時ヨセフの子等をおのおの祝福し、その杖の頭によりて禮拜せり。
22信仰に由りてヨセフは生命の終らんとする時、イスラエルの子らの出で立つことに就きて語り、又おのが骨のことを命じたり。
23信仰に由りて兩親はモーセの生れたる時、その美しき子なるを見て、王の命をも畏れずして三月の間これを匿したり。
24信仰に由りてモーセは人と成りしときパロの女の子と稱へらるるを否み、
25罪のはかなき歡樂を受けんよりは、寧ろ神の民とともに苦しまんことを善しとし、
26キリストに因る謗はエジプトの財寶にまさる大なる富と思へり、これ報を望めばなり。
27信仰に由りて彼は王の憤恚を畏れずしてエジプトを去れり。これ見えざる者を見るがごとく耐ふる事をすればなり。
28信仰に由りて彼は過越と血を灑ぐこととを行へり、これ初子を滅す者の彼らに觸れざらん爲なり。
29信仰に由りてイスラエル人は紅海を乾ける地のごとく渡りしが、エジプト人は然せんと試みて溺れ死にたり。
30信仰に由りて七日のあいだ廻りたればエリコの石垣は崩れたり。
31信仰に由りて遊女ラハブは平和をもて間者を接けたれば、不從順の者とともに亡びざりき。
32この外なにを言ふべきか、ギデオン、バラク、サムソン、エフタ、またダビデ、サムエル及び預言者たちに就きて語らば、時足らざるべし。
33彼らは信仰によりて國々を服へ、義をおこなひ、約束のものを得、獅子の口をふさぎ、
34火の勢力を消し、劍の刃をのがれ、弱よりして強くせられ、戰爭に勇ましくなり、異國人の軍勢を退かせたり。
35女は死にたる者の復活を得、ある人は更に勝りたる復活を得んために、免さるることを願はずして極刑を甘んじたり。
36その他の者は嘲笑と鞭と、また縲絏と牢獄との試錬を受け、
37或者は石にて撃たれ、試みられ、鐵鋸にて挽かれ、劍にて殺され、羊・山羊の皮を纏ひて經あるき、乏しくなり、惱され、苦しめられ、
38(世は彼らを置くに堪へず)荒野と山と洞と地の穴とに徨へり。
39彼等はみな信仰に由りて證せられたれども約束のものを得ざりき。
40これ神は我らの爲に勝りたるものを備へ給ひし故に、彼らも我らと偕ならざれば、全うせらるる事なきなり。
第十二章
1この
故に
我らは
斯く
多くの
證人に
雲のごとく
圍まれたれば、
凡ての
重荷と
纏へる
罪とを
除け、
忍耐をもて
我らの
前に
置かれたる
馳場をはしり、
2信仰の
導師また
之を
全うする
者なるイエスを
仰ぎ
見るべし。
彼はその
前に
置かれたる
歡喜のために、
恥をも
厭はずして
十字架をしのび、
遂に
神の
御座の
右に
坐し
給へり。
3なんじら
倦み
疲れて
心を
喪ふこと
莫らんために、
罪人らの
斯く
己に
逆ひしことを
忍び
給へる
者をおもへ。
4汝らは
罪と
鬪ひて
未だ
血を
流すまで
抵抗しことなし。
5また
子に
告ぐるごとく
汝らに
告げ
給ひし
勸言を
忘れたり。
曰く
『わが子よ、主の懲戒を輕んずるなかれ、
主に戒めらるるとき倦むなかれ。
6そは主、その愛する者を懲しめ、
凡てその受け給ふ子を鞭うち給へばなり』
と。
7汝らの
忍ぶは
懲戒の
爲なり、
神は
汝らを
子のごとく
待ひたまふ、
誰か
父の
懲しめぬ
子あらんや。
8凡ての
人の
受くる
懲戒、もし
汝らに
無くば、それは
私生兒にして
眞の
子にあらず、
9また
我らの
肉體の
父は、
我らを
懲しめし
者なるに
尚これを
敬へり、
況して
靈魂の
父に
服ひて
生くることを
爲ざらんや。
10そは
肉體の
父は
暫くの
間その
心のままに
懲しむることを
爲しが、
靈魂の
父は
我らを
益するために、その
聖潔に
與らせんとて
懲しめ
給へばなり。
11凡ての
懲戒、
今は
喜ばしと
見えず、
反つて
悲しと
見ゆ、されど
後これに
由りて
練習する
者に、
義の
平安なる
果を
結ばしむ。
12されば
衰へたる
手、
弱りたる
膝を
強くし、
13足蹇へたる
者の
履み
外すことなく、
反つて
醫されんために
汝らの
足に
直なる
途を
備へよ。
14力めて凡ての人と和ぎ、自ら潔からんことを求めよ。もし潔からずば、主を見ること能はず。
15なんじら愼め、恐らくは神の恩惠に至らぬ者あらん。恐らくは苦き根はえいでて汝らを惱し、多くの人これに由りて汚されん。
16恐らくは淫行のもの、或は一飯のために長子の特權を賣りしエサウの如き妄なるもの起らん。
17汝らの知るごとく、彼はそののち祝福を受けんと欲したれども棄てられ、涙を流して之を求めたれど囘復の機を得ざりき。
18汝らの近づきたるは、火の燃ゆる觸り得べき山・黒雲・黒闇・嵐、
19ラッパの音、言の聲にあらず、この聲を聞きし者は此の上に言の加へられざらんことを願へり。
20これ『獸すら山に觸れなば、石にて撃るべし』と命ぜられしを、彼らは忍ぶこと能はざりし故なり。
21その現れしところ極めて怖しかりしかば、モーセは『われ甚く怖れ戰けり』と云へり。
22されど汝らの近づきたるはシオンの山、活ける神の都なる天のエルサレム、千萬の御使の集會、
23天に録されたる長子どもの教會、萬民の審判主なる神、全うせられたる義人の靈魂、
24新約の仲保なるイエス及びアベルの血に勝りて物言ふ灑の血なり、
25なんじら心して語りたまふ者を拒むな、もし地にて示し給ひし時これを拒みし者ども遁るる事なかりしならば、況して天より示し給ふとき、我ら之を退けて遁るることを得んや。
26その時、その聲、地を震へり、されど今は誓ひて言ひたまふ『我なほ一たび地のみならず、天をも震はん』と。
27此の『なほ一度』とは震はれぬ物の存らんために、震はるる物すなはち造られたる物の取り除かるることを表すなり。
28この故に我らは震はれぬ國を受けたれば、感謝して恭敬と畏懼とをもて御心にかなふ奉仕を神になすべし。
29我らの神は燒き盡す火なればなり。
第十三章
1兄弟の
愛を
常に
保つべし。
2旅人の
接待を
忘るな、
或人これに
由り、
知らずして
御使を
舍したり。
3己も
共に
繋がるるごとく
囚人を
思へ、また
己も
肉體に
在れば、
苦しむ
者を
思へ。
4凡ての
人、
婚姻のことを
貴べ、また
寢床を
汚すな。
神は
淫行のもの、
姦淫の
者を
審き
給ふべければなり。
5金を
愛することなく、
有てるものを
以て
足れりとせよ。
主みづから『われ
更に
汝を
去らず、
汝を
捨てじ』と
言ひ
給ひたればなり。
6然れば
我ら
心を
強くして
斯く
言はん
『主わが助主なり、我おそれじ。
人われに何をなさん』
と。
7神の
言を
汝らに
語りて
汝らを
導きし
者どもを
思へ、その
行状の
終を
見てその
信仰に
效へ。
8イエス・キリストは
昨日も
今日も
永遠までも
變り
給ふことなし。
9各樣の
異なる
教のために
惑さるな。
飮食によらず、
恩惠によりて
心を
堅うするは
善し、
飮食によりて
歩みたる
者は
益を
得ざりき。
10我らに
祭壇あり、
幕屋に
事ふる
者は
之より
食する
權を
有たず。
11大祭司、
罪のために
活物の
血を
携へて
至聖所に
入り、その
活物の
體は
陣營の
外にて
燒かるるなり。
12この
故にイエスも
己が
血をもて
民を
潔めんが
爲に、
門の
外にて
苦難を
受け
給へり。
13されば
我らは
彼の
恥を
負ひ、
陣營より
出でてその
御許に
往くべし。
14われら
此處には
永遠の
都なくして、ただ
來らんとする
者を
求むればなり。
15此の
故に
我らイエスによりて
常に
讃美の
供物を
神に
献ぐべし、
乃ちその
御名を
頌むる
口唇の
果なり。
16かつ
仁慈と
施濟とを
忘るな、
神は
斯くのごとき
供物を
喜びたまふ。
17汝らを
導く
者に
順ひ
之に
服せよ。
彼らは
己が
事を
神に
陳ぶべき
者なれば、
汝らの
靈魂のために
目を
覺しをるなり。
彼らを
歎かせず、
喜びて
斯く
爲さしめよ、
然らずば
汝らに
益なかるべし。
18我らの爲に祈れ、我らは善き良心ありて凡てのこと正しく行はんと欲するを信ずるなり。
19われ速かに汝らに歸ることを得んために、汝らの祈らんことを殊に求む。
20願はくは永遠の契約の血によりて、羊の大牧者となれる我らの主イエスを、死人の中より引上げ給ひし平和の神、
21その悦びたまふ所を、イエス・キリストに由りて我らの衷に行ひ、御意を行はしめん爲に凡ての善き事につきて、汝らを全うし給はんことを。世々限りなく榮光、かれに在れ、アァメン。
22兄弟よ、請ふ我が勸の言を容れよ、我なんじらに手短く書き贈りたるなり。
23なんじら知れ、我らの兄弟テモテは釋されたり。彼もし速かに來らば、我かれと偕に汝らを見ん。
24汝らの凡ての導く者、および凡ての聖徒に安否を問へ。イタリヤの人々、なんぢらに安否を問ふ。
25願はくは恩惠なんぢら衆と偕に在らんことを。