申命記
第一章
1是はモーセがヨルダンの此旁の曠野紅海に對する平野に在てバラン、トベル、ラバン、ハゼロテ、デザハブの間にてイスラエルの一切の人に告たる言語なり
2ホレブよりセイル山の路を經てカデシバルネアに至るには十一日路あり
3第四十年の十一月にいたりその月の一日にモーセはイスラエルの子孫にむかひてヱホバが彼等のために自己に授けたまひし命令を悉く告たり
4是はモーセがヘシボンに住るアモリ人の王シホン及びエデレイのアシタロテに住るバシヤンの王オグを殺したる後なりき
5即ちモーセ、ヨルダンの此旁なるモアブの地においてこの律法を解明すことを爲し始めたり曰く
6我らの神ヱホバ、ホレブにて我らに告て言たまへり汝らはこの山に居こと日すでに久し
7汝ら身を轉らして途に進みアモリ人の山に往き其に鄰れる處々に往き平野山地窪地南の地海邊カナン人の地レバノンおよび大河ユフラテ河に至れ
8我この地を汝らの前に置り入てこの地を獲よ是はヱホバが汝らの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓ひて之を彼らとその後の子孫に與へんと言たまひし者なりと
9彼時我なんぢらに語りて言り我は一人にては汝らをわが任として負ことあたはず
10汝らの神ヱホバ汝らを衆多ならしめたまひたれば汝ら今日は天空の星のごとくに衆し
11願くは汝らの先祖の神ヱホバ汝らをして今あるよりは千倍も多くならしめ又なんぢらに約束せしごとく汝らを祝福たまはんことを
12我一人にては爭で汝らを吾任となしまた汝らの重負と汝らの爭競に當ることを得んや
13汝らの支派の中より智慧あり知識ありて人に識れたる人々を簡べ我これを汝らの首長となさんと
14時に汝ら答へて言り汝が言ところの事を爲は善しと
15是をもて我汝らの支派の首長なる智慧ありて人に知れたる者等を取て汝らの首長となせり即ち之をもて千人の長百人の長五十人の長十人の長となしまた汝らの支派の中の官吏となせり
16また彼時に我汝らの士師等に命じて言り汝らその兄弟の中の訴訟を聽き此人と彼人の間を正く審判くべし他國の人においても然り
17汝ら人を視て審判すべからず小き者にも大なる者にも聽べし人の面を懼るべからず審判は神の事なればなり汝らにおいて斷定がたき事は我に持きたれ我これを聽ん
18我かの時に汝らの爲べき事をことごとく汝らに命じたりき
19我等の神ヱホバの我等に命じたまひしごとくに我等はホレブより出たち汝らが見知るかの大なる畏しき曠野を通りアモリ人の山を指てガデシバルネアに至れり
20時に我なんぢらに言り汝らは我らの神ヱホバの我らに與へたまへるアモリ人の山に至れり
21視よ汝の神ヱホバこの地を汝の前に置たまふ汝の先祖の神ヱホバの汝に言たまふごとく上り往てこれを獲よ懼るるなかれ猶豫なかれと
22汝らみな我に近りて言り我等人を我らの先に遣してその地を伺察しめ彼らをして返て何の途より上るべきか何の邑々に入べきかを我らに告しめんと
23この言わが目に善と見ければ我汝らの中より十二人の者を取り即ち一の支派より一人宛なりき
24彼等前みゆきて山に登りエシコルの谷にいたり之を伺ひ
25その地の菓物を手に取てわれらの許に持くだり我らに復命して言り我等の神ヱホバの我等に與へたまへる地は善地なりと
26然るに汝等は上り往ことを好まずして汝らの神ヱホバの命令に背けり
27すなはち汝らその天幕にて呟きて言りヱホバわれらを惡むが故に我らをアモリ人の手に付して滅ぼさんとてエジプトの國より我らを導き出せり
28我等は何方に往べきや我らの兄弟等は言ふその民は我らよりも大にして身長たかく邑々は大にしてその石垣は天に達る我らまたアナクの子孫を其處に見たりと斯いひて我らの氣を挫けりと
29時に我なんぢらに言り怖る勿れ懼るるなかれ
30汝らに先ち行たまふ汝らの神ヱホバ、エジプトにおいて汝らの爲に汝らの目の前にて諸の事をなしたまひし如く今また汝らのために戰ひたまはん
31曠野においては汝また汝の神ヱホバが人のその子を抱くが如くに汝を抱きたまひしを見たり汝らが此處にいたるまでその路すがら常に然ありしなりと
32この言をなせども汝らはなほその神ヱホバを信ぜざりき
33ヱホバは途にありては汝らに先ちゆきて汝らが營を張べき處を尋ね夜は火の中にあり晝は雲の中にありて汝らの行べき途を示したまへる者なり
34ヱホバ汝らの言語の聲を聞て怒り誓て言たまひけらく
35この惡き代の人々の中には我が汝らの先祖等に與へんと誓ひしかの善地を見る者一人も有ざるべし
36只ヱフンネの子カルブのみ之を見ることを得ん彼が踐たりし地をもて我かれとかれの子孫に與ふべし其は彼まったくヱホバに從ひたればなり
37ヱホバまた汝らの故をもて我をも怒て言たまへり汝もまた彼處に入ことを得ず
38汝の前に侍るヌンの子ヨシユアかしこに入べし彼に力をつけよ彼イスラエルをして之を獲しむべし
39また汝等が掠められんと言たりしその汝らの子女および當日になほ善惡を辨へざりし汝らの幼兒等彼ら即ちかしこに入べし我これを彼らに與へて獲さすべし
40汝らは身をめぐらし紅海の途より曠野に進みいるべしと
41然るに汝ら對て我にいへり我等はヱホバにむかひて罪を犯せり然ばわれらの神ヱホバの凡て我らに命じたまへるがごとく我ら上りゆきて戰はんと汝らおのおの武器を身に帶て軽々しく山に登らんとせり
42時にヱホバわれに言たまひけるは汝かれらに言へ汝ら上りゆくなかれ又戰ふなかれ我なんぢらの中間に居ざればなり汝ら恐らくはその敵に打敗られんと
43われかく汝らに告たるに汝ら聽ずしてヱホバの命令に背き自檀に山に登りたりしが
44その山に住るアモリ人汝等にむかひて出きたり蜂の驅がごとくに汝らを驅ちらしなんぢらをセイルに打敗りてホルマにおよべり
45斯りしかばなんぢら還りきたりてヱホバの前に哭きたりしがヱホバなんぢらの聲を聽たまはず汝らに耳を傾むけたまはざりき
46是をもてなんぢらは日久しくカデシに居りなんぢらが其處に居たる日數のごとし
第二章
1斯て我らは身を轉らしヱホバの我に命じたまへる如く紅海の途より曠野に進みいりて日久しくセイル山を行めぐりたりしが
2ヱホバつひに我に告て言たまはく
3汝等はこの山を行めぐること旣に久し今よりは北に轉りて進め
4汝また民に命じて言へ汝らはセイルに住るヱサウの子孫なる汝らの兄弟の境界を通らんとす彼らはなんぢらを懼れん汝ら深く自ら謹むべし
5彼らを攻る勿れ彼らの地は足の跖に踐ほどをも汝らに與へじ其は我セイル山をエサウにあたへて產業となさしめたればなり
6汝ら金をもて彼らより食物を買て食ひまた金をもて彼らより水をもとめて飮め
7汝の神ヱホバ汝が手に作ところの諸の事において汝をめぐみ汝がこの大なる曠野を通るを看そなはしたまへり汝の神ヱホバこの四十年のあひだ汝とともに在したれば汝は乏しき所あらざりしなり
8我らつひにセイル山に住るエサウの子孫なる我らの兄弟を離れてアラバの路を通りエラテとエジオンゲベルを經て/轉りてモアブの曠野の路に進みいれり
9時にヱホバわれに言たまひけるはモアブ人をなやますなかれまた之を攻て戰ふなかれ彼らの地をば我なんぢらの產業に與へじ其は我ロトの子孫にアルをあたへて產業となさしめたればなりと
10(昔エミ人ここに住り是民は大にして數多くアナク人のごとくに身長高かり
11アナク人とおなじくレバイムと呼なされたりしがモアブ人はこれをエミ人とよべり
12ホリ人もまた昔セイルに住をりしがエサウの子孫これを逐滅し之にかはりて其處に住りイスラエルがヱホバに賜はりしその產業の地になせるが如し)
13茲に汝等今たちあがりゼレデ川を渉れとありければ我らすなはちゼレデ川を渉れり
14カデシバルネアを出てよりゼレデ川を渉るまでの間の日は三十八年にしてその代の軍人はみな亡果て營中にあらずなりぬヱホバのかれらに誓ひたまひし如し
15誠にヱホバ手をもて之を攻めこれを營中より滅ぼしたまひければ終にみな亡はてたり
16かく軍人みなその民の中より死亡たる時にあたりて
17ヱホバ我に告て言たまひけらく
18汝は今日モアブの境なるアルを通らんとす
19汝アンモンの子孫に近く時に之をなやます勿れ之を攻るなかれアンモンの子孫の地は我これを汝らの產業に與へじ其は我これをロトの子孫にあたへて產業となさしめたればなり
20(是もまたレバイムの國とよびなされたり昔レバイムここに住ゐたればなりアンモン人はかれらをザムズミ人とよべり
21この民は大にして數多くアナク人のごとくに身長たかかりしがヱホバ、アンモン人の前に之を滅ぼしたまひたればアンモン人これを逐はらひて之にかはりて住り
22その事はセイルに住るエサウの子孫の前にホリ人を滅ぼしたまひしが如し彼らはホリ人を逐はらひ之にかはりて今日まで其處に住をるなり
23カフトルより出たるカフトリ人はまたかの村々に住ひてガザにまで到るととろのアビ人を滅ぼし之にかはりて其處に居る)
24汝ら起あがり進みてアルノン河を渉れ我ヘシボンの王アモリ人シホンとこれが國を汝らの手に付す進んで之を獲よ彼を攻て戰へ
25今日我一天下の國人に汝を畏ぢ汝を懼れしめん彼らは汝の名聲を聞て慄ひ汝の爲に心を苦めんと
26茲に我ケデモテの曠野よりヘシボンの王シホンに使者をおくり和好の言を述しめたり云く
27我に汝の國を通らしめよ我は大路を通りて行ん右にも左にも轉らじ
28汝金をとりて食物を我に賣て食はせ金をとりて水を我にあたへて飮せよ我はただ徒歩にて通らんのみ
29セイルに住るエサウの子孫とアルに住るモアブ人とが我になしたる如くせよ然せば我はヨルダンを濟りて我らの神ヱホバの我らに賜ひし地にいたらんと
30然るにヘシボンの王シホンは我らの通ることを容さざりき是は汝の神ヱホバ彼を汝の手に付さんとてその氣を頑梗しその心を剛愎にしたまひたればなり今日見るが如し
31時にヱホバ我に言たまひけるは視よ我いまシホンとこれが地を汝に與へんとす進んでその地を獲て汝の產業とせよと
32茲にシホンその民をことごとく率ゐて出きたりヤハヅに於て戰ひけるが
33我らの神ヱホバ彼をわれらに付したまひたれば我らかれとその子等とその一切の民を撃殺せり
34その時に我らは彼の邑々を盡く取りその一切の邑の男女および兒童を滅して一人をも遺さざりき
35只その家畜および邑々より取たる掠取物は我らこれを獲て自分の物となせり
36アルノンの河邊のアロエルおよび河の傍なる邑よりギレアデにいたるまで我らの攻取がたき邑とては一もあらざりき我らの神ヱホバこれを盡くわれらに付したまへり
37第アンモンの子孫の地ヤボク川の全岸山地の邑々など凡てわれらの神ヱホバが我らの往を禁じたまへる處には汝いたらざりき
第三章
1斯てわれら身をめぐらしてバシヤンの路に上り行けるにバシヤンの王オグその民をことごとく率ゐ出てエデレイに戰はんとせり
2時にヱホバわれに言たまひけらく彼を懼るるなかれ我かれとその一切の民とその地とを汝の手に付さん汝かのヘシボンに住たるアモリ人の王シホンになせし如く彼に爲べしと
3我らの神ヱホバすなはちバシヤンの王オグとその一切の民を我らの手に付したまひしかば我ら之を撃ころして一人をも遺さざりき
4その時に我らこれが邑々をことごとく取り取ざる邑は一も有ざりきその取る邑は六十是すなはちアルゴブの地にしてバシヤンにおけるオグの國なり
5この邑々はみな高き石垣あり門あり關ありて堅固なりき外にまた石垣あらざる邑甚だ多くありき
6我らはヘシボンの王シホンになせし如く之を滅しその一切の邑の男女および兒童をことごとく滅せり
7惟その一切の家畜とその邑々よりの掠取物とはこれを獲てわれらの物となせり
8その時我らヨルダンの此旁の地をアルノン河よりヘルモン山までアモリ人の王二人の手より取り
9(ヘルモンはシドン人これをシリオンと呼びアモリ人これをセニルと呼ぶ)
10すなはち平野の一切の邑ギレアデの全地バシヤンの全地サルカおよびエデレイなどバシヤンに於るオグの國をことごとく取り
11彼レバイムの遺れる者はバシヤンの王オグ只一人なりき彼の寝臺は鐵の寝臺なりき是は今なほアンモンの子孫のラバにあるに非ずや人の肘によれば是はその長九キユビトその寛四キユビトあり
12その時に我らこの地を獲たりしがアルノン河の邊なるアロエルよりの地とギレアデの山地の半とその中の邑々とは我これをルベン人とガド人に與へたり
13またオグの國なりしギレアデの殘餘の地とバシヤンの全地とは我これをマナセの半支派に與へたりアルゴブの全地すなはちバシヤンの全體はレバイムの國と稱へらる
14マナセの子ヤイルはアルゴブの全地を取てゲシユルの境界とマアカの境界にまで至り自分の名にしたがひてバシヤンをハヲテヤイルと名けたりその名今日にいたる
15またマキルには我ギレアデを與へ
16ルベン人とガド人にはギレアデよりアルノン河までを與へその河の眞中をもて界となしまたアンモンの子孫の地の界なるヤボク河にまで至り
17またアラバおよびヨルダンとその邊の地をキンネレテよりアラバの海すなはち鹽海まで之にあたへて東の方ピスガの麓にいたる
18その時我なんぢらに命じて言り汝らの神ヱホバこの地を汝らに與へて產業となさしめたまへば汝ら軍人に身をよろひて汝らの兄弟なるイスラエルの子孫に先だちて渉りゆくべし
19但し汝らの妻と子女と家畜は我が汝らに與へし邑に止るべし我なんぢらが衆多の家畜を有を知なり
20ヱホバなんぢらに賜ひしごとく汝らの兄弟にも安息を賜ひて彼らもまたヨルダンの彼旁にて汝らの神ヱホバにたまはるところの地を獲て產業となすに至らば汝らおのおの我なんぢらに與へし產業に歸るべし
21かの時に我ヨシユアに命じて言り汝はこの二人の王に汝らの神ヱホバのおこなひたまふ所の事を目に視たりヱホバまた汝が往ところの諸の國にも斯のごとく行ひたまはん
22汝これを懼るる勿れ汝らの神ヱホバ汝らのために戰ひたまはんと
23當時われヱホバに求めて言り
24主ヱホバよ汝は汝の大なる事と汝の強き手を僕に見すことを始めたまへり天にても地にても何の神か能なんぢの如き事業を爲し汝のごとき能力を有んや
25願くは我をして渉りゆかしめヨルダンの彼旁なる美地美山およびレバノンを見ことを得させたまへと
26然るにヱホバなんぢらの故をもて我を怒り我に聽ことを爲たまはずヱホバすなはち我に言たまひけるは旣に足りこの事を重て我に言なかれ
27汝ビスガの嶺にのぼり目を擧て西北南東を望み汝の目をもて其地を觀よ汝はヨルダンを濟ることを得ざるべければなり
28汝ヨシユアに命じ之に力をつけ之を堅うせよ其はこの民を率ゐて渉りゆき之に汝が見るところの地を獲さする者は彼なればなりと
29かくて我らはベテベオルに對する谷に居る
第四章
1今イスラエルよ我が汝らに敎ふる法度と律法を聽てこれを行へ然せば汝らは生ることを得汝らの先祖の神ヱホバの汝らに賜ふ地にいりて之を產業となすを得べし
2我が汝らに命ずる言は汝らこれを増しまたは減すべからず我が汝らに命ずる汝らの神ヱホバの命令を守るべし
3汝らはヱホバがバアルペオルの事によりて行ひたまひし所を目に觀たり即ちバアルペオルに從ひたる人々は汝の神ヱホバことごとく之を汝らの中間より滅し去たまひしが
4汝らの神ヱホバに附て離れざりし汝等はみな今日までも生ながらへ居るなり
5我はわが神ヱホバの我に命じたまひし如くに法度と律法を汝らに敎へ汝らをしてその往て獲ところの地において之を行はしめんとせり
6然ば汝ら之を守り行ふべし然する事は國々の民の目の前において汝らの智慧たり汝らの知識たるなり彼らこの諸の法度を聞て言んこの大なる國人は必ず智慧あり知識ある民なりと
7われらの神ヱホバは我らがこれに龥もとむるに常に我らに近く在すなり何の國人か斯のごとく大にして神これに近く在すぞ
8また何の國人か斯のごとく大にして今日我が汝らの前に立るこの一切の律法の如き正しき法度と律法とを有るぞ
9汝深く自ら愼み汝の心を善く守れ恐くは汝その目に觀たる事を忘れん恐くは汝らの生存らふる日の中に其等の事汝の心を離れん汝それらの事を汝の子汝の孫に敎へよ
10汝がホレブにおいて汝の神ヱホバの前に立る日にヱホバわれに言たまひけらく我ために民を集めよ我これに吾言を聽しめ之をしてその世に存らふる日の間我を畏るることを學ばせまたその子女を敎ふることを爲しめんとすと
11是において汝らは前みよりて山の麓に立ちけるが山は火にて燒てその燄は中天に沖り暗くして雲あり黑雲深かりき
12時にヱホバ火の中より汝らに言ひたまひしが汝らは言詞の聲を聞る而已にて聲の外は何の像をも見ざりし
13ヱホバすなはち其契約を汝らに述て汝らに之を守れと命じたまへり是すなはち十誡にしてヱホバこれを二枚の石の板に書したまふ
14かの時にヱホバ我に命じて汝らに法度と律法を敎へしめたまへり是汝らにその往て獲ところの地にて之を爲しめんとてなりき
15ホレブにおいてヱホバ火の中より汝らに言ひたまひし日には汝ら何の像をも見ざりしなり然ば汝ら深く自ら愼み
16道をあやまりて自己のために偶像を刻む勿れ物の像は男の形にもあれ女の形にもあれ凡て造るなかれ
17即ち地の上にをる諸の獣の像空に飛ぶ諸の鳥の像
18地に匍ふもろもろの物の像地の下の水の中に居る諸の魚の像など凡て造る勿れ
19汝目をあげて天を望み日月星辰など凡て天の衆群を觀誘はれてこれを拝み之に事ふる勿れ是は汝の神ヱホバが一天下の萬國の人々に分ちたまひし者なり
20ヱホバ汝らを取り汝らを鐵の爐の中すなはちエジプトより導きいだして自己の產業の民となしたまへること今日のごとし
21然るにヱホバなんぢらの故によりて我を怒り我はヨルダンを濟りゆくことを得ずまた汝の神ヱホバが汝の產業に賜ひしその美地に入ことを得ずと誓ひたまへり
22我はこの地に死ざるを得ず我はヨルダンを濟りゆくことあたはずなんぢらは濟りゆきて之を獲て產業となすことを得ん
23汝ら自ら愼み汝らの神ヱホバが汝らに立たまひし契約を忘れて汝の神ヱホバの禁じたまふ偶像など凡て物の像を刻むことを爲なかれ
24汝の神ヱホバは燬盡す火嫉妬神なり
25汝ら子を擧け孫を得てその地に長く居におよびて若し道をあやまりて偶像など凡て物の像を刻み汝の神ヱホバの惡と觀たまふ事をなしてその震怒を惹おこすことあらば
26我今日天と地を呼て證となす汝らはかならずそのヨルダンを濟りゆきて獲たる地より速かに滅亡うせん汝らはその上に汝らの日を永うする能はず必ず滅びうせん
27ヱホバなんぢらを國々に散したまべしヱホバの汝らを逐やりたまふ國々の中に汝らの遺る者はその數寡なからん
28其處にて汝らは人の手の作なる見ことも聞ことも食ふことも嗅こともなき木や石の神々に事へん
29但しまた其處にて汝その神ヱホバを求むるあらんに若し心をつくし精神を盡してこれを求めなば之に遇ん
30後の日にいたりて汝艱難にあひて此もろもろの事の汝に臨まん時に汝もしその神ヱホバにたち歸りてその言にしたがはば
31汝の神ヱホバは慈悲ある神なれば汝を棄ず汝を滅さずまた汝の先祖に誓ひたりし契約を忘れたまはざるべし
32試に問へ汝の前に過さりし日神が地の上に人を造りたまひし日より已來天の此極より彼極までに曾て斯のごとき大なる事ありしや是のごとき事の聞えたる事ありしや
33曾て人神が火の中より言ふ聲を汝らが聞るごとくに聞て尚生る者ありしや
34汝らの神ヱホバがエジプトにおいて汝らの目の前にて汝らの爲に諸の事を爲たまひし如く曾て試探と徴證と奇蹟と戰爭と強き手と伸たる腕と大なる恐嚇をもて來りこの民をかの民の中より領いださんとせし神ありしや
35汝にこの事を示ししはヱホバはすなはち神にしてその外には有ことなしと汝に知しめんがためなりき
36汝を敎へんためにヱホバ天より汝に聲を聞しめ地に於てはまたその大なる火を汝に示したまへり即ち汝はその言の火の中より出るを聞り
37ヱホバ汝の先祖等を愛したまひしが故にその後の子孫を選び大なる能力をもて親ら汝をエジプトより導き出したまひ
38汝よりも大にして強き國々の民を汝の前より逐はらひ汝をその地に導きいりて之を汝の產業に與へんとしたまふこと今日のごとくなり
39然ば汝今日知て心に思念べし上は天下は地においてヱホバは神にいましその外には神有こと無し
40今日わが汝に命ずるヱホバの法度と命令を守るべし然せば汝と汝の後の子孫祥を得汝の神ヱホバの汝にたまふ地において汝その日を永うすることを得て疆なからん
41斯てモーセ、ヨルダンの此旁日の出る方にないて邑三を別てり
42是素より怨なきに誤りて人を殺せる者をして其處に逃れしむる爲なり其邑の一に逃るる時はその人生命を全うするを得べし
43即ち一は曠野の内の平野にあるベゼル是はルベン人のためなり一はギレアデのラモテ是はガド人のためなり一はバシヤンのゴラン是はマナセ人のためなり
44モーセがイスラエルの子孫の前に示しし律法は是なり
45イスラエルの子孫のエジプトより出たる後モーセこの誡命と法度と律法を之に述たり
46即ちヨルダンの此旁なるアモリ人の王シホンの地にありベテペオルに對する谷に於て之を述たりシホンはヘシボンに住をりしがモーセとイスラエルの子孫エジプトより出きたりし後これを撃ほろぼして
47之が地を獲またバシヤンの王オグの地を獲たり彼ら二人はアモリ人の王にしてヨルダンの此旁日の出る方に居り
48その獲たる地はアルノン河の邊なるアロエルよりヘルモンといふシオン山にいたり
49ヨルダンの此旁すなはちその東の方なるアラバの全部を括てアラバの鹽海に達しピスガの麓におよべり
第五章
1茲にモーセ、イスラエルをことごとく召て之に言ふイスラエルよ今日我がなんぢらの耳に語るところの法度と律法とを聽きこれを學びこれを守りて行へよ
2我らの神ヱホバ、ホレブに於て我らと契約を結びたまへり
3この契約はヱホバわれらの先祖等とは結ばずして我ら今日此に生存へをる者と結びたまへり
4ヱホバ山において火の中より汝らと面をあはせて言ひたまひしが
5その時我はヱホバと汝らの間にたちてヱホバの言を汝らに傳へたり汝ら火に懼れて山にのぼり得ざりければなり
6ヱホバすなはち言たまひけらく我は汝の神ヱホバ汝をエジプトの地その奴隸たる家より導き出せし者なり
7汝わが面の前に我の外何物をも神とすべからず
8汝自己のために何の偶像をも彫むべからず又上は天にある者下は地にある者ならびに地の下の水の中にある者の何の形状をも作るべからず
9之を拝むべからず之に事ふべからず我ヱホバ汝の神は嫉む神なれば我を惡む者にむかひては父の罪を子に報いて三四代におよぼし
10我を愛しわが誡命を守る者には恩惠を施して千代にいたるなり
11汝の神ヱホバの名を妄に口にあぐべからずヱホバは己の名を妄に口にあぐる者を罰せではおかざるべし
12安息日を守りて之を聖潔すること汝の神ヱホバの汝に命ぜしごとくすべし
13六日のあひだ勞きて汝の一切の業を爲べし
14七日は汝の神ヱホバの安息なれば何の業務をも爲べからず汝も汝の男子女子も汝の僕婢も汝の牛驢馬も汝の諸の家畜も汝の門の中にをる他國の人も然り斯なんぢ僕婢をして汝とおなじく息ましむべし
15汝誌ゆべし汝かつてエジプトの地に奴隸たりしに汝の神ヱホバ強き手と伸べたる腕とをもて其處より汝を導き出したまへり是をもて汝の神ヱホバなんぢに安息日を守れと命じたまふなり
16汝の神ヱホバの汝に命じたまふごとく汝の父母を敬へ是汝の神ヱホバの汝に賜ふ地において汝の日の長からんため汝に祥のあらんためなり
17汝殺す勿れ
18汝姦淫する勿れ
19汝盗むなかれ
20汝その隣に對して虚妄の證據をたつる勿れ
21汝その隣人の妻を貧るなかれまた隣人の家 田野 僕 婢牛 驢馬ならびに凡て汝の隣人の所有を貧るなかれ
22是等の言をヱホバ山において火の中雲の中黑雲の中より大なる聲をもて汝らの全會衆に告たまひしが此外には言ことを爲ず之を二枚の石の版に書して我に授けたまへり
23時にその山は火にて燒をりしが汝ら黑暗の中よりその聲の出るを聞におよびて汝らの支派の長および長老等我に進みよりて
24言けるは視よ我らの神ヱホバその榮光とその大なる事を我らに示したまひて我らその聲の火の中より出るを聞り我ら今日ヱホバ人と言ひたまふてその人の尚生るを見る
25我らなんぞ死にいたるべけんや此大なる火われらを燒ほろぼさんとするなり我らもし此上になほ我らの神ヱホバの聲を聞ば死べし
26凡そ肉身の者の中誰か能く活神の火の中より言ひたまふ聲を我らのごとくに聞てなほ生る者あらんや
27請ふ汝進みゆきて我らの神ヱホバの言たまふとこるを都て聽き我らの神ヱホバの汝に告給ふところを都て我らに告よ我ら聽て行はんと
28ヱホバなんぢらが我に語れる言の聲を聞てヱホバ我に言たまひけるは我この民が汝に語れる言の聲を聞り彼らの言ところは皆善し
29只願しきは彼等が斯のごとき心を懐いて恒に我を畏れ吾が誡命を守りてその身もその子孫も永く福祉を得にいたらん事なり
30汝ゆきて彼らに言へ汝らおのおのその天幕にかへるべしと
31然ど汝は此にて我傍に立て我なんぢに諸の誡命と法度と律法とを告しめさん汝これを彼らに敎へ我が彼らに與へて產業となさしむる地において彼らにこれを行はしむべしと
32然ば汝らの神ヱホバの汝等に命じたまふごとくに汝ら謹みて行ふべし右にも左にも曲るべからず
33汝らの神ヱホバの汝らに命じたまふ一切の道に歩め然せば汝らは生ることを得かつ福祉を得て汝らの產業とする地に汝らの日を長うすることを得ん
第六章
1是すなはち汝らの神ヱホバが汝らに敎へよと命じたまふところの誡命と法度と律法とにして汝らがその濟りゆきて獲ところの地にて行ふべき者なり
2是は汝と汝の子および汝の孫をしてその生命ながらふる日の間つねに汝の神ヱホバを畏れしめて我が汝らに命ずるその諸の法度と誡命とを守らしめんため又なんぢの日を永からしめんための者なり
3然ばイスラエルよ聽て謹んでこれを行へ然せば汝は福祉を獲汝の先祖の神ヱホバの汝に言たまひしごとく乳と蜜の流るる國にて汝の數おほいに増ん
4イスラエルよ聽け我らの神ヱホバは惟一のヱホバなり
5汝心を盡し精神を盡し力を盡して汝の神ヱホバを愛すべし
6今日わが汝に命ずる是らの言は汝これをその心にあらしめ
7勤て汝の子等に敎へ家に坐する時も路を歩む時も寝る時も興る時もこれを語るべし
8汝またこれを汝の手に結びて號となし汝の目の間におきて誌となし
9また汝の家の柱と汝の門に書記すべし
10汝の神ヱホバその汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブにむかひて汝に與んと誓ひたりし地に汝を入しめん時は汝をして汝が建たる者にあらざる大なる美しき邑々を得させ
11汝が盈せるに非る諸の佳物を盈せる家を得させ汝が堀たる者にあらざる堀井を得させたまふべし汝は食ひて飽ん
12然る時は汝愼め汝をエジプトの地奴隸たる家より導き出ししヱホバを忘るる勿れ
13汝の神ヱホバを畏れてこれに事へその名を指て誓ふことをすべし
14汝ら他の神々すなはち汝の四周なる民の神々に從ふべからず
15汝らの中にいます汝の神ヱホバは嫉妬神なれば恐くは汝の神ヱホバ汝にむかひて怒を發し汝を地の面より滅し去たまはん
16汝マツサにおいて試みしごとく汝の神ヱホバを試むるなかれ
17汝らの神ヱホバの汝らに命じたまへる誡命と律法と法度とを汝ら謹みて守るべし
18汝ヱホバの義と視善と視たまふ事を行ふべし然せば汝福祉を獲かつヱホバの汝の先祖に誓ひたまひしかの美地に入てこれを產業となすことを得ん
19ヱホバまたその言たまひし如く汝の敵をことごとく汝の前より逐はらひたまはん
20後の日に至りて汝の子なんぢに問てこの汝らの神ヱホバが汝らに命じたまひし誡命と法度と律法とは何のためなるやと言ば
21汝その子に告て言べし我らは昔エジプトにありてパロの奴隸たりしがヱホバ強き手をもて我らをエジプトより導き出したまへり
22即ちヱホバわれらの目の前において大なる畏るべき徴と奇蹟をエジプトとパロとその全家とに示したまひ
23我らを其處より導き出して其曾て我等の先祖に誓ひし地に我らを入せて之を我らに與へたまへり
24而してヱホバ我らにこの諸の法度を守れと命じたまふ是われらをして我らの神ヱホバを畏れて常に幸ならしめんため又ヱホバ今日のごとく我らを守りて生命を保たしめんとてなりき
25我らもしその命ぜられたるごとく此一切の誡命を我らの神ヱホバの前に謹んで守らば是われらの義となるべしと
第七章
1汝の神ヱホバ汝が往て獲べきところの地に汝を導きいり多の國々の民ヘテ人ギルガシ人アモリ人カナン人ペリジ人ヒビ人ヱブス人など汝よりも數多くして力ある七の民を汝の前より逐はらひたまはん時
2すなはち汝の神ヱホバかれらを汝に付して汝にこれを撃せたまはん時は汝かれらをことごとく滅すべし彼らと何の契約をもなすべからず彼らを憫むべからず
3また彼らと婚姻をなすべからず汝の女子を彼の男子に與ふべからず彼の女子を汝の男子に娶るべからず
4其は彼ら汝の男子を惑はして我を離れしめ之をして他の神々に事へしむるありてヱホバこれがために汝らにむかひて怒を發し俄然に汝を滅したまふにいたるべければなり
5汝らは反て斯かれらに行ふべし即ちかれらの壇を毀ちその偶像を打擢きそのアシラ像を斫たふし火をもてその雕像を焚べし
6其は汝は汝の神ヱホバの聖民なればなり汝の神ヱホバは地の面の諸の民の中より汝を擇びて己の寶の民となしたまへり
7ヱホバの汝らを愛し汝らを擇びたまひしは汝らが萬の民よりも數多かりしに因にあらず汝らは萬の民の中にて最も小き者なればなり
8但ヱホバ汝らを愛するに因りまた汝らの先祖等に誓し誓を保たんとするに因てヱホバ強き手をもて汝らを導きいだし汝らを其奴隸たりし家よりエジプトの王パロの手より贖ひいだしたまへるなり
9汝知べし汝の神ヱホバは神にましまし眞實の神にましまして之を愛しその誡命を守る者には契約を保ち恩惠をほどこして千代にいたり
10また之を惡む者には覿面にその報をなしてこれを滅ぼしたまふヱホバは己を惡む者には緩ならず覿面にこれに報いたまふなり
11然ば汝わが今日汝に命ずるところの誡命と法度と律法とを守りてこれを行ふべし
12汝らもし是らの律法を聽きこれを守り行はば汝の神ヱホバ汝の先祖等に誓ひし契約を保ちて汝に恩惠をほどこしたまはん
13即ち汝を愛し汝を惠み汝の數を増したまひその昔なんぢに與へんと汝らの先祖等に誓たりし地において汝の兒女をめぐみ汝の地の產物穀物酒油等を殖し汝の牛の產汝の羊の產を増たまふべし
14汝は惠まるること萬の民に愈らん汝らの中および汝らの家畜の中には男も女も子なき者は無るべし
15ヱホバまた諸の疾病を汝の身より除きたまひ汝らが知る彼のエジプトの惡き病を汝の身に臨ましめず但汝を惡む者に之を臨ませたまふべし
16汝は汝の神ヱホバの汝に付したまはんところの民をことごとく滅しつくすべし彼らを憫み見べからずまた彼らの神に事ふべからずその事汝の罟となればなり
17汝是らの民は我よりも衆ければ我いかでか之を逐はらふことを得んと心に謂ふか
18汝かれらを懼るるなかれ汝の神ヱホバがパロとエジプトに爲たまひしところの事を善く憶えよ
19即ち汝が眼に見たる大なる試煉と徴證と奇蹟と強き手と伸たる腕とを憶えよ汝の神ヱホバこれをもて汝を導き出したまへり是のごとく汝の神ヱホバまた汝が懼るる一切の民に爲たまふべし
20即ち汝の神ヱホバ黄蜂を彼らの中に遣りて終に彼らの遺れる者と汝の面を避て匿れたる者とを滅したまはん
21汝かれらを懼るる勿れ其は汝の神ヱホバ能力ある畏るべき神汝らの中にいませばなり
22汝の神ヱホバ是等の國人を漸々に汝の前より逐はらひたまはん汝は急速に彼らを滅しつくす可らず恐くは野の獣殖て汝に逼らん
23汝の神ヱホバかれらを汝に付し大にこれを惶れ慄かしめて終にこれを滅し盡し
24彼らの王等を汝の手に付したまはん汝かれらの名を天が下より削るべし汝には當ることを得る者なくして汝つひに之を滅ぼし盡すに至らん
25汝かれらの神の雕像を火にて焚べし之に著せたる銀あるひは金を貧るべからず之を己に取べからず恐くは汝これに因て罟にかからん是は汝の神ヱホバの憎みたまふ者なれば也
26憎むべき物を汝の家に携へいるべからず恐くは汝も其ごとくに詛はるる者とならん汝これを大に忌み痛く嫌ふべし是は詛ふべき者なればなり
第八章
1我が今日なんぢに命ずるところの諸の誡命を汝ら謹んで行ふべし然せば汝ら生ることを得かつ殖増しヱホバの汝の先祖等に誓たまひし地に入てこれを產業となすことを得ん
2汝記念べし汝の神ヱホバこの四十年の間汝をして曠野の路に歩ましめたまへり是汝を苦しめて汝を試驗み汝の心の如何なるか汝がその誡命を守るや否やを知んためなりき
3即ち汝を苦しめ汝を饑しめまた汝も知ず汝の先祖等も知ざるところのマナを汝らに食はせたまへり是人はパン而已にて生る者にあらず人はヱホバの口より出る言によりて生る者なりと汝に知しめんが爲なり
4この四十年のあひだ汝の衣服は古びて朽ず汝の足は腫ざりし
5汝また心に念ふべし人のその子を懲戒ごとく汝の神ヱホバも汝を懲戒たまふなり
6汝の神ヱホバの誡命を守りその道にあゆみてこれを畏るべし
7汝の神ヱホバ汝をして美地に到らしめたまふ是は谷にも山にも水の流あり泉あり瀦水ある地
8小麥 大麥 葡萄 無花果および石榴ある地油 橄欖および蜜のある地
9汝の食ふ食物に缺るところなく汝に何も乏しきところあらざる地なりその地の石はすなはち鐵その山よりは銅を掘とるべし
10汝は食ひて飽き汝の神ヱホバにその美地を己にたまひし事を謝すべし
11汝わが今日なんぢに命ずるヱホバの誡命と律法と法度とを守らずして汝の神ヱホバを忘るるにいたらざるやう愼めよ
12汝食ひて飽き美しき家を建て住ふに至り
13また汝の牛羊殖増し汝の金銀殖増し汝の所有みな殖増にいたらん時に
14恐くは汝心に驕りて汝の神ヱホバを忘れんヱホバは汝をエジプトの地奴隸たる家より導き出し
15汝をみちびきて彼の大にして畏るべき曠野すなはち蛇火の蛇蠍などありて水あらざる乾ける地を通り汝らのために堅き磐の中より水を出し
16汝の先祖等の知ざるマナを曠野にて汝に食せたまへり是みな汝を苦しめ汝を試みて終に福祉を汝にたまはんとてなりき
17汝我力とわが手の動作によりて我この資財を得たりと心に謂なかれ
18汝の神ヱホバを憶えよ其はヱホバ汝に資財を得の力をたまふなればなり斯したまふは汝の先祖等に誓し契約を今日の如く行はんとてなり
19汝もし汝の神ヱホバを忘れ果て他の神々に從がひ之に事へこれを拝むことを爲ば我今日汝らに證をなす汝らはかならず滅亡ん
20ヱホバの汝らの前に滅ぼしたまひし國々の民のごとく汝らも滅亡べし是なんぢらの神ヱホバの聲に汝らしたがはざればなり
第九章
1イスラエルよ聽け汝は今日ヨルダンを濟りゆき汝よりも大にして強き國々に入てこれを取んとすその邑々は大にして石垣は天に達り
2その民は汝が知ところのアナクの子孫にして大くかつ身長たかし汝また人の言るを聞り云く誰かアナクの子孫の前に立ことを得んと
3汝今日知る汝の神ヱホバは燬つくす火にましまして汝の前に進みたまふとヱホバかならず彼らを滅ぼし彼らを汝の前に攻伏たまはんヱホバの汝に言たまひし如く汝かれらを逐はらひ速かに彼らを滅ぼすべし
4汝の神ヱホバ汝の前より彼らを逐はらひたまはん後に汝心に言なかれ云く我の義がためにヱホバ我をこの地に導きいりてこれを獲させたまへりとそはこの國々の民の惡きがためにヱホバ之を汝の前より逐はらひたまふなり
5汝の往てその地を獲は汝の義きによるにあらず又なんぢの心の直によるに非ずこの國々の民惡きが故に汝の神ヱホバこれを汝の前より逐はらひたまふなりヱホバの斯したまふはまた汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓たりし言を行はんとてなり
6汝知る汝の神ヱホバの汝に此美地を與へて獲させたまふは汝の義きによるに非ず汝は項の強き民なればなり
7汝曠野に於て汝の神ヱホバを怒せし事を憶えて忘るる勿れ汝らはエジプトの地を出し日より此處にいたる日まで常にヱホバに悖れり
8ホレブにおいて汝らヱホバを怒せたればヱホバ汝らを怒りて汝らを滅ぼさんとしたまへり
9かの時われ石の板すなはちヱホバの汝らに立たまへる契約を載る石の板を受んとて山に上り四十日四十夜山に居りパンも食ず水も飮ざりき
10ヱホバ我に神の指をもて書しるしたる文字ある石の板二枚を授けたまへりその上には集會の日にヱホバが山において火の中より汝らに告たまひし言をことごとく載す
11すなはち四十日四十夜過し時ヱホバ我にその契約を載る板なる石の板二枚を授け
12而してヱホバ我に言たまひけるは汝起あがりて速かに此より下れ汝がエジプトより導き出しし民は惡き事を行ふなり彼らは早くもわが彼らに命ぜし道を離れて自己のために偶像を鋳造れりと
13ヱホバまた我に言たまひけるは我この民を觀たり視よ是は項の強き民なり
14我を阻むるなかれ我かれらを滅ぼしその名を天が下より抹さり汝をして彼らよりも強くまた大なる民とならしむべし
15是に於て我身をめぐらして山を下りけるが山は火にて燒をる又その契約の板二枚はわが兩の手にあり
16斯て我觀しに汝らはその神ヱホバにむかひて罪を犯し自己のために犢を鋳造りて早くもヱホバの汝らに命じたまひし道を離れたりしかば
17我その二枚の板をとりてわが兩の手よりこれを擲ち汝らの目の前にこれを碎けり
18而して我は前のごとく四十日四十夜ヱホバの前に伏て居りパンも食ず水も飮ざりき是は汝らヱホバの目の前に惡き事をおこなひ之を怒せて大に罪を獲たればなり
19ヱホバ忿怒を發し憤恨をおこし汝らを怒りて滅ぼさんとしたまひしかば我懼れたりしが此度もまたヱホバ我に聽たまへり
20ヱホバまた痛くアロンを怒りてこれを滅ぼさんとしたまひしかば我その時またアロンのために祈れり
21斯て我なんぢらが作りて罪を犯しし犢を取り火をもて之を燒きこれを搗きこれを善く打碎きて細き塵となしその塵を山より流れ下るところの渓流に投棄たり
22汝らはタベラ、マツサおよびキブロテハツタワにおいてもまたヱホバを怒らせたり
23またヱホバ、カデシバルネアより汝らを遣さんとせし時言たまひけるは汝ら上りゆきて我がなんぢらに與ふる地を獲て產業とせよと然るに汝らはその神ヱホバの命に悖り之を信ぜずまたその言を聽ざりき
24我が汝らを識し日より以來汝らは常にヱホバに悖りしなり
25かの時ヱホバ汝らを滅さんと言たまひしに因て我最初に伏たる如く四十日四十夜ヱホバの前に伏し
26ヱホバに祈りて言けるは主ヱホバよ汝その大なる權能をもて贖ひ強き手をもてエジプトより導き出しし汝の民汝の產業を滅したまふ勿れ
27汝の僕アブラハム、イサク、ヤコブを念たまへ此民の剛愎と惡と罪とを鑑みたまふ勿れ
28恐くは汝が我らを導き出したまひし國の人言んヱホバその約せし地にかれらを導きいること能はざるに因りまた彼らを惡むに因て彼らを導き出して曠野に殺せりと
29抑かれらは汝の民汝の產業にして汝が強き能力をもて腕を伸て導き出したまひし者なり
第十章
1かの時ヱホバ我に言たまひけるは汝石の板二枚を前のごとくに斫て作りまた木の櫃一箇を作りて山に登り來れ
2汝が碎きしかの前の板に載たる言を我その板に書さん汝これをその櫃に蔵むべし
3我すなはち合歓木をもて櫃一箇を作りまた石の板二枚を前のごとくに斫て作りその板二枚を手に執て山に登りしかば
4ヱホバかの集會の日に山において火の中より汝らに告たるその十誡を前に書したるごとくその板に書し而してヱホバこれを我に授けたまへり
5是に於て我身を轉らして山より下りその板を我が造りしかの櫃に蔵めたり今なほその中にありヱホバの我に命じたまへる如し
6斯てイスラエルの子孫はヤカン人の井より出たちてモセラにいたれりアロン其處に死て其處に葬られその子エレアザルこれに代りて祭司となれり
7又其處より出たちてグデゴダにいたりグデゴダより出たちてヨテバにいたれりこの地には水の流多かりき
8かの時ヱホバ、レビの支派を區分てヱホバの契約の櫃を舁しめヱホバの前に立てこれに事へしめ又ヱホバの名をもて祝することを爲せたまへり其事今日にいたる
9是をもてレビはその兄弟等の中に分なくまた產業なし惟ヱホバその產業たり汝の神ヱホバの彼に言たまへる如し
10我は前の日數のごとく四十日四十夜山に居しがヱホバその時にもまた我に聽たまへりヱホバ汝を滅すことを好みたまはざりき
11斯てヱホバ我に言たまひけるは汝起あがり民に先だちて進み行き彼らをして我が之に與へんとその先祖に誓ひたる地に入てこれを獲せしめよ
12イスラエルよ今汝の神ヱホバの汝に要めたまふ事は何ぞや惟是のみ即ち汝がその神ヱホバを畏れその一切の道に歩み之を愛し心を盡し精神を盡して汝の神ヱホバに事へ
13又我が今日汝らに命ずるヱホバの誡命と法度とを守りて身に福祉を得るの事のみ
14夫天と諸天の天および地とその中にある者は皆汝の神ヱホバに屬す
15然るにヱホバただ汝の先祖等を悦こびて之を愛しその後の子孫たる汝らを萬の民の中より選びたまへり今日のごとし
16然ば汝ら心に割禮を行へ重て項を強くする勿れ
17汝の神ヱホバは神の神主の主大にしてかつ權能ある畏るべき神にましまし人を偏り視ずまた賄賂を受ず
18孤兒と寡婦のために審判を行ひまた旅客を愛してこれに食物と衣服を與へたまふ
19汝ら旅客を愛すべし其は汝らもエジプトの國に旅客たりし事あればなり
20汝の神ヱホバを畏れ之に事へこれに附從がひその名を指て誓ふことをすべし
21彼は汝の讃べき者また汝の神にして汝が目に見たる此等の大なる畏るべき事業をなしたまへり
22汝の先祖等は僅か七十人にてエジプトに下りたりしに今汝の神ヱホバ汝をして天空の星のごとくに多くならしめたまへり
第十一章
1然ば汝の神ヱホバを愛し常にその職守と法度と律法と誡命とを守るべし
2汝らの子女は知ずまた見ざれば我これに言ず惟汝らに言ふ汝らは今日すでに汝らの神ヱホバの懲戒とその大なる事とその強き手とその伸たる腕とを知り
3またそのエジプトの中においてエジプト王パロとその全國にむかひておこなひたまひし徴證と行爲とを知り
4またヱホバがエジプトの軍勢とその馬とその車とに爲たまひし事すなはち彼らが汝らの後を追きたれる時に紅海の水を彼らの上に覆ひかからしめ之を滅ぼして今日までその跡方なからしめし事を知り
5また此處にいたるまで曠野に於て汝らに爲たまひし事等を知り
6またそのルベンの子孫なるエリアブの子等ダタンとアビラムに爲たまひし事すなはちイスラエルの全家の眞中において地その口を啓きて彼らとその家族とその天幕とその足下に立つ者とを呑つくしし事を知なり
7即ち汝らはヱホバの行ひたまひし此諸の大なる作爲を目に覩たり
8然ば汝ら我今日汝らに命ずる誡命を盡く守るべし然せば汝らは強くなり汝らが濟りゆきて獲んとする地にいりて之を獲ことを得
9またヱホバが汝らと汝らの後の子孫にあたへんと汝らの先祖等に誓たまひし地乳と蜜との流るる國において汝らの日を長うすることを得ん
10汝らが進みいりて獲んとする地は汝らが出來りしエジプトの地のごとくならず彼處にては汝ら種を播き足をもて之に灌漑げりその状蔬菜園におけるが如し
11然ど汝らが濟りゆきて獲ところの地は山と谷の多き地にして天よりの雨水を吸ふなり
12その地は汝の神ヱホバの顧みたまふ者にして年の始より年の終まで汝の神ヱホバの目常にその上に在り
13汝らもし我今日なんぢらに命ずる吾命令を善守りて汝らの神ヱホバを愛し心を盡し精神を盡して之に事へなば
14我なんぢらの地の雨を秋の雨春の雨ともに時に隨ひて降し汝らをしてその穀物を收入しめ且酒と油を獲せしめ
15また汝の家畜のために野に草を生ぜしむべし汝は食ひて飽ん
16汝ら自ら愼むべし心迷ひ翻へりて他の神々に事へこれを拝む勿れ
17恐くはヱホバ汝らにむかひて怒を發して天を閉たまひ雨ふらず地物を生ぜずなりて汝らそのヱホバに賜れる美地より速かに滅亡るに至らん
18汝ら是等の我言を汝らの心と魂との中に蔵めまた之を汝らの手に結びて徴となし汝らの目の間におきて誌となし
19之をなんぢらの子等に敎へ家に坐する時も路を歩む時も寝る時も興る時もこれを語り
20また汝の家の柱となんぢの門に之を書記べし
21然せばヱホバが汝らの先祖等に與へんと誓ひたまひし地に汝らのをる日および汝らの子等のをる日は數多くして天の地を覆ふ日の久きが如くならん
22汝らもし我が汝らに命ずる此一切の誡命を善く守りてこれを行ひ汝等の神ヱホバを愛しその一切の道に歩み之に附從がはば
23ヱホバこの國々の民をことごとく汝らの前より逐はらひたまはん而して汝らは己よりも大にして能力ある國々を獲にいたるべし
24凡そ汝らが足の蹠にて踏む處は皆汝らの有とならん即ち汝らの境界は曠野よりレバノンに亘りまたユフラテ河といふ河より西の海に亘るべし
25汝らの前に立ことを得る人あらじ汝らの神ヱホバ汝らが踏いるところの地の人々をして汝らを怖ぢ汝らを畏れしめたまふこと其嘗て汝らに言たまひし如くならん
26視よ我今日汝らの前に祝福と呪詛とを置く
27汝らもし我が今日なんぢらに命ずる汝らの神ヱホバの誡命に遵はば祝福を得ん
28汝らもし汝らの神ヱホバの誡命に遵はず翻へりて我が今日なんぢらに命ずる道を離れ素知ざりし他の神々に從がひなば呪詛を蒙らん
29汝の神ヱホバ汝が往て獲んとする地に汝を導きいりたまふ時は汝ゲリジム山に祝福を置きエバル山に呪詛をおくべし
30この二山はヨルダンの彼旁アラバに住るカナン人の地において日の出る方の道の後にありギルガルに對ひてモレの橡樹と相去こと遠らざるにあらずや
31汝らはヨルダンを濟り汝らの神ヱホバの汝らに賜ふ地に進みいりて之を獲んとす必ずこれを獲て其處に住ことを得ん
32然ば我が今日なんぢらに授くるところの法度と律法を汝らことごとく守りて行ふべし
第十二章
1是は汝の先祖等の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふところの地において汝らが世に生存ふる日の間常に守り行ふべき法度と律法となり
2汝らが逐はらふ國々の民がその神々に事へし處は山にある者も岡にある者も靑樹の下にある者もみな之を盡く毀ち
3その壇を毀ちその柱を碎きそのアシラ像を火にて燒きまたその神々の雕像を斫倒して之が名をその處より絶去べし
4但し汝らの神ヱホバには汝ら是のごとく爲べからず
5汝らの神ヱホバがその名を置んとて汝らの支派の中より擇びたまふ處なるヱホバの住居を汝ら尋ね求めて其處にいたり
6汝らの燔祭と犠牲汝らの什一と汝らの手の擧祭汝らの願還と自意の禮物および汝らの牛羊の首出等を汝ら其處に携へ詣り
7其處にて汝らの神ヱホバの前に食をなし又汝らと汝らの家族皆その手を勞して獲たる物をもて快樂を取べし是なんぢの神ヱホバの祝福によりて獲たるものなればなり
8汝ら彼處にては我らが今日此に爲ごとく各々その目に善と見ところを爲べからす
9汝らは尚いまだ汝らの神ヱホバの賜ふ安息と產業にいたらざるなり
10然ど汝らヨルダンを渡り汝らの神ヱホバの汝らに與へて獲させたまふ地に住にいたらん時またヱホバ汝らの周圍の敵を除き汝らに安息を賜ひて汝等安泰に住ふにいたらん時は
11汝らの神ヱホバその名を置んために一の處を擇びたまはん汝ら其處に我が命ずる物を都て携へゆくべし即ち汝らの燔祭と犠牲と汝らの什一と汝らの手の擧祭および汝らがヱホバに誓願をたてて献んと誓ひし一切の佳物とを携へいたるべし
12汝らは汝らの男子女子僕婢とともに汝らの神ヱホバの前に樂むべしまた汝らの門の内にをるレビ人とも然すべし其は是は汝らの中間に分なく產業なき者なればなり
13汝愼め凡て汝が自ら擇ぶ處にて燔祭を献ることをする勿れ
14唯汝らの支派の一の中にヱホバの選びたまはんその處に於て汝燔祭を献げまた我が汝に命ずる一切の事を爲べし
15彼處にては汝の神ヱホバの汝にたまふ祝福に循ひて汝その心に好む獣畜を汝の門の内に殺してその肉を食ふことを得即ち汚れたる人も潔き人もこれを食ふを得ること羚羊と牡鹿に於けるが如し
16但しその血は食ふべからず水の如くにこれを地に灌ぐべし
17汝の穀物と酒と油の什一および汝の牛羊の首出ならびに汝が立し誓願を還すための禮物と汝の自意の禮物および汝の手の擧祭の品は汝これを汝の門の内に食ふべからず
18汝の神ヱホバの選びたまふ處において汝の神ヱホバの前に汝これを食ふべし即ち汝の男子女子僕婢および汝の門の内にをるレビ人とともに之を食ひ汝の手を勞して獲たる一切の物をもて汝の神ヱホバの前に快樂を取べし
19汝愼め汝が世に生存ふる日の間レビ人を棄る勿れ
20汝の神ヱホバ汝に言しごとくに汝の境界を廣くしたまふに及び汝心に肉を食ふことを欲して言ん我肉を食はんと然る時は汝すべてその心に好む肉を食ふことを得べし
21もし汝の神ヱホバのその名を置んとて擇びたまへる處汝と離るること遠からば我が汝に命ぜし如く汝そのヱホバに賜はれる牛羊を宰り汝の門の内にて凡てその心に好む者を食ふべし
22牡鹿と羚羊を食ふがごとく汝これを食ふことを得汚れたる者も潔き者も均くこれを食ふことを得るなり
23唯堅く愼みてその血を食はざれ血はこれが生命なればなり汝その生命を肉とともに食ふべからず
24汝これを食ふ勿れ水のごとくにこれを地に灌ぐべし
25汝血を食はざれ汝もし斯ヱホバの善と觀たをふ事を爲ば汝の身と汝の後の子孫とに福祉あらん
26唯汝の献げたる聖物と誓願の物とはこれをヱホバの擇びたまふ處に携へゆくべし
27汝燔祭を献る時はその肉と血を汝の神ヱホバの壇に供ふべくまた犠牲を献る時はその血を汝の神ヱホバの壇の上に灌ぎその肉を食ふべし
28わが汝に命ずる是等の言を汝聽て守れ汝かく汝の神ヱホバの善と觀正と觀たまふ事を爲ば汝と汝の後の子孫に永く福祉あらん
29汝の神ヱホバ汝が往て逐はらはんとする國々の民を汝の前より絶去たまひて汝つひにその國々を獲てその地に住にいたらん時は
30汝みづから愼め彼らが汝の前に亡びたる後汝かれらに倣ひて罟にかかる勿れまた彼らの神を尋求めこの國々の民は如何なる樣にてその神々に事へたるか我もその如くにせんと言ことなかれ
31汝の神ヱホバに向ひては汝然す可らず彼らはヱホバの忌かつ憎みたまふ諸の事をその神にむかひて爲しその男子女子をさへ火にて焚てその神々に献げたり
32我が汝らに命ずるこの一切の言をなんぢら守りて行ふべし汝これを増なかれまた之を減すなかれ
第十三章
1汝らの中に預言者あるひは夢者興りて徴證と奇蹟を汝に見し
2汝に告て我らは今より汝と我とが是まで識ざりし他の神々に從ひて之に事へんと言ことあらんにその徴證または奇蹟これが言ごとく成とも
3汝その預言者または夢者の言に聽したがふ勿れ其は汝等の神ヱホバ汝らが心を盡し精神を盡して汝らの神ヱホバを愛するや否やを知んとて斯なんぢらを試みたまふなればなり
4汝らは汝らの神ヱホバに從ひて歩み之を畏れその誡命を守りその言に遵ひ之に事へこれに附從ふべし
5その預言者または夢者をば殺すべし是は彼汝らをして汝らをエジプトの國より導き出し奴隸の家より贖ひ取たる汝らの神ヱホバに背かせんとし汝の神ヱホバの汝に歩めと命ぜし道より汝を誘ひ出さんとして語るに因てなり汝斯して汝の中より惡を除き去べし
6汝の母の生る汝の兄弟または汝の男子女子または汝の懐の妻または汝と身命を共にする汝の友潜に汝を誘ひて言あらん汝も汝の先祖等も識ざりし他の神々に我ら往て事へん
7即ち汝の周圍にある國々の神の或は汝に近く或は汝に遠くして地の此極より地の彼極までに鎮り坐る者に我ら事へんと斯言ことあるとも
8汝これに從ふ勿れ之に聽なかれ之を惜み視る勿れ之を憐むなかれ之を庇ひ匿す勿れ
9汝かならず之を殺すべし之を殺すには汝まづ之に手を下し然る後に民みな手を下すべし
10彼はエジプトの國奴隸の家より汝を導き出したまひし汝の神ヱホバより汝を誘ひ離さんと求めたれば汝石をもて之を撃殺すべし
11然せばイスラエルみな聞て懼れ重ねて斯る惡き事を汝らの中に行はざらん
12汝聞に汝の神ヱホバの汝に與へて住しめたまへる汝の邑の一に
13邪僻なる人々興り我らは今まで識ざりし他の神々に往て事へんと言てその邑に住む人を誘ひ惑はしたりと言あらば
14汝これを尋ね探り善問べし若その事眞にその言確にして斯る憎むべき事汝らの中に行はれたらば
15汝かならずその邑に住む者を刃にかけて撃ころしその邑とその中に居る一切の者およびその家畜を刃にかけて盡く撃ころすべし
16またその中より獲たる掠取物は凡てこれをその衢に集め火をもてその邑とその一切の掠取物をことごとく焚て汝の神ヱホバに供ふべし是は永く荒邱となりて再び建なほさるること無るべきなり
17斯汝この詛はれし物を少許も汝の手に附おく勿れ然せばヱホバその烈しき怒を靜め汝に慈悲を加へて汝を憐れみ汝の先祖等に誓ひしごとく汝の數を衆くしたまはん
18汝もし汝の神ヱホバの言を聽き我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を守り汝の神ヱホバの善と觀たまふ事を行はば是のごとくなるべし
第十四章
1汝らは汝等の神ヱホバの子等なり汝ら死る者のために己が身に傷くべからずまた己が目の間にあたる頂の髮を剃べからず
2其は汝は汝の神ヱホバの聖民なればなりヱホバは地の面の諸の民の中より汝を擇びて己の寶の民となし給へり
3汝穢はしき物は何をも食ふ勿れ
4汝らが食ふべき獣畜は是なり即ち牛 羊 山羊
5牡鹿 羚羊 小鹿 麣 麞 麈 麖など
6凡て獣畜の中蹄の分れ割て二つの蹄を成る反芻獣は汝ら之を食ふべし
7但し反芻者と蹄の分れたる者の中汝らの食ふべからざる者は是なり即ち駱駝 兎および山鼠是らは反芻ども蹄わかれざれば汝らには汚れたる者なり
8また豚是は蹄わかるれども反芻ことをせざれば汝らには汚たる者なり汝ら是等の物の肉を食ふべからずまたその死體に捫るべからず
9水にをる諸の物の中是のごとき者を汝ら食ふべし即ち凡て翅と鱗のある者は皆汝ら之を食ふべし
10凡て翅と鱗のあらざる者は汝らこれを食ふべからず是は汝らには汚たる者なり
11また凡て潔き鳥は皆汝らこれを食ふべし
12但し是等は食ふべからず即ち鵰黄鷹鳶
13鸇鷹 黑鷹の類
14各種の鴉の類
15駝鳥 梟 鴎 雀鷹の類
16鸛 鷺 白鳥
17鸅鸕 大鷹 鵜
18鶴 鸚鵡の類 鷸および蝙蝠
19また凡て羽翼ありて匍ところの者は汝らには汚たる者なり汝らこれを食ふべからず
20凡て羽翼をもて飛ところの潔き物は汝らこれを食ふべし
21凡そ自ら死たる者は汝ら食ふべからず汝の門の内にをる他國の人に之を與へて食しかべし又これを異邦人に賣も可し汝は汝の神ヱホバの聖民なればなり汝山羊羔をその母の乳にて煮べからず
22汝かならず年々に田畝に種蒔て獲ところの產物の什一を取べし
23而して汝の神ヱホバの前すなはちヱホバのその名を置んとて擇びたまはん處において汝の穀物と酒と油の什一を食ひまた汝の牛羊の首出を食ひ斯して汝の神ヱホバを常に畏るることを學ぶべし
24但しその路行に勝がたくして之を携へいたること能はざる時または汝の神ヱホバのその名を置んとて擇びたまへる處汝を離るること餘りに遠き時は汝もし汝の神ヱホバの恩惠に潤ふ身ならば
25その物を金に易へその金を包みて手に執り汝の神ヱホバの擇びたまへる處に往き
26凡て汝の心の好む物をその金に易べし即ち牛羊葡萄酒濃酒など凡て汝が心に欲する物をもとめ其處にて汝の神ヱホバの前にこれを食ひ汝と汝の家族ともに樂むべし
27汝の門の内にをるレビ人を棄る勿れ是は汝の中間に分なく產業なき者なればなり
28三年の末に到る毎にその年の產物の十分の一を盡く持出してこれを汝の門の内に儲蓄ふべし
29然る時は汝の中間に分なく產業なきレビ人および汝の門の内にをる他國の人と孤子と寡婦など來りてこれを食ひて飽ん斯せば汝の神ヱホバ汝が手をもて爲ところの諸の事において汝に福祉を賜ふべし
第十五章
1七年の終に至るごとに汝放釋を行ふべし
2その放釋の例は是のごとし凡てその鄰に貸ことを爲しその債主は之を放釋べしその鄰またはその兄弟にこれを督促べからず是はヱホバの放釋と稱へらるればなり
3異國の人には汝これを督促ことを得されど汝の兄弟に貸たる物は汝の手よりこれを放釋べし
4斯せば汝らの中間に貧者なからん其は汝の神ヱホバその汝に與へて產業となさしめたまふ地において大に汝を祝福たまふべければなり
5只汝もし謹みて汝の神ヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるこの誡命を盡く守り行ふに於ては是のごとくなるべし
6汝の神ヱホバ汝に言しごとく汝を祝福たまふべければ汝は衆多の國人に貸ことを得べし然ど借こと有じまた汝は衆多の國人を治めん然ど彼らは汝を治むることあらじ
7汝の神ヱホバの汝に賜ふ地において若汝の兄弟の貧き人汝の門の中にをらばその貧しき兄弟にむかひて汝の心を剛愎にする勿れまた汝の手を閉る勿れ
8かならず汝の手をこれに開き必ずその要むる物をこれに貸あたへてこれが乏しきを補ふべし
9汝愼め心に惡き念を起し第七年放釋の年近づけりと言て汝の貧き兄弟に目をかけざる勿れ汝もし斯之に何をも與へずしてその人これがために汝をヱホバに訴へなば汝罪を獲ん
10汝かならず之に與ふることを爲べしまた之に與ふる時は心に惜むこと勿れ其は此事のために汝の神ヱホバ汝の諸の事業と汝の手の諸の働作とに於て汝を祝福たまふべければなり
11貧き者は何時までも國にたゆること無るべければ我汝に命じて言ふ汝かならず汝の國の中なる汝の兄弟の困難者と貧乏者とに汝の手を開くべし
12汝の兄弟たるヘブルの男またはヘブルの女汝の許に賣れたらんに若六年なんぢに事へたらば第七年に汝これを放ちて去しむべし
13汝これを放ちて去しむる時は空手にて去しむべからず
14汝の群と禾場と搾場の中より贈物を取て之が肩に負すべし即ち汝の神ヱホバの汝を祝福て賜ふところの物をこれに與ふべし
15汝記憶べし汝はエジプトの國に奴隸たりしが汝の神ヱホバ汝を贖ひ出したまへり是故に我今日この事を汝に命ず
16その人もし汝と汝の家を愛し汝と偕にをるを善として汝にむかひ我汝を離れて去を好まずと言ば
17汝錐を取て彼の耳を戸に刺とほすべし然せば彼は永く汝の僕たるべし汝の婢にもまた是のごとくすべし
18汝これを放ちて去しむるを難き事と見るべからず其は彼が六年汝に事へて働きしは工價を取る傭人の二倍に當ればなり汝斯なさば汝の神ヱホバ汝が凡て爲ところの事に於て汝をめぐみたまふべし
19汝の牛羊の產る初子は皆これを聖別て汝の神ヱホバに歸せしむべし汝の牛の初子をもちゐて何の工作をも爲べからず又汝の羊の初子の毛を剪べからず
20汝の神ヱホバの選びたまへる處にてヱホバの前に汝と汝の家族年々にこれを食ふべし
21然どその畜もし疵ある者すなはち跛足盲目なるなど凡て惡き疵ある者なる時は汝の神ヱホバにこれを宰りて献ぐべからず
22汝の門の内にこれを食ふべし汚れたる者も潔き者も均くこれを食ふを得ること牡鹿と羚羊のごとし
23但しその血はこれを食ふべからず水のごとくにこれを地に灌ぐべし
第十六章
1汝アビブの月を守り汝の神ヱホバに對ひて逾越節を行なへ其はアビブの月に於て汝の神ヱホバ夜の間に汝をエジプトより導き出したまひたればなり
2汝すなはちヱホバのその名を置んとて擇びたまふ處にて羊および牛を宰り汝の神ヱホバの前に逾越節をなすべし
3酵いれたるパンを之とともに食ふべからず七日の間酵いれぬパン即ち憂患のパンを之とともに食ふべし其は汝エジプトの國より出る時は急ぎて出たればなり斯おこなひて汝その世に生存ふる日の間恒に汝がエジプトの國より出來し日を誌ゆべし
4その七日の間は汝の四方の境の内にパン酵の見ること有しむべからず又なんぢが初の日の薄暮に宰りたる者の肉を翌朝まで存しおくべからず
5汝の神ヱホバの汝に賜ふ汝の門の内にて逾越の牲畜を宰ることを爲べからず
6惟汝の神ヱホバのその名を置んとて選びたまふ處にて汝薄暮の日の入る頃汝がエジプトより出たる時刻に逾越の牲畜を宰るべし
7而して汝の神ヱホバの選びたまふ處にて汝これを燔て食ひ朝におよびて汝の天幕に歸り往くべし
8汝六日の間酵いれぬパンを食ひ第七日に汝の神ヱホバの前に會を開くべし何の職業をも爲べからず
9汝また七七日を計ふべし即ち穀物に鎌をいれ初る時よりしてその七七日を計へ始むべきなり
10而して汝の神ヱホバの前に七週の節筵を行なひ汝の神ヱホバの汝を祝福たまふ所にしたがひ汝の力に應じてその心に願ふ禮物を献ぐべし
11斯して汝と汝の男子女子僕婢および汝の門の内に居るレビ人ならびに汝らの中間にをる賓旅と孤子と寡婦みなともに汝の神ヱホバのその名を置んとて選びたまふ處にて汝の神ヱホバの前に樂むべし
12汝その昔エジプトに奴隸たりしことを誌え是等の法度を守り行ふべし
13汝禾場と搾場の物を収蔵たる時七日の間結茅節をおこなふべし
14節筵をなす時には汝と汝の男子女子僕婢および汝の門の内なるレビ人賓旅孤子寡婦など皆ともに樂むべし
15ヱホバの選びたまふ處にて汝七日の間なんぢの神ヱホバの前に節筵をなすべし汝の神ヱホバ汝の諸の產物と汝が手の諸の工事とについて汝を祝福たまふべければ汝かならず樂むことを爲べし
16汝の中間の男は皆なんぢの神ヱホバの擇びたまふ處にて一年に三次即ち酵いれぬパンの節と七週の節と結茅の節とに於てヱホバの前に出べし但し空手にてヱホバの前に出べからず
17各人汝の神ヱホバに賜はる恩惠にしたがひて其力におよぶ程の物を献ぐべし
18汝の神ヱホバの汝に賜ふ一切の邑々に汝の支派に循がひて士師と官人を立べし彼らはまだ義き審判をもて民を審判べし
19汝裁判を枉べからず人を偏視るべからずまた賄賂を取べからず賄賂は智者の目を暗まし義者の言を枉ればなり
20汝ただ公義を而已求むべし然せば汝生存へて汝の神ヱホバの汝に賜ふ地を獲にいたらん
21汝の神ヱホバのために築くところの壇の傍にアシラの木像を立べからず
22また汝の神ヱホバの惡みたまふ偶像を己のために造るべからず
第十七章
1凡て疵あり惡き處ある牛羊は汝これを汝の神ヱホバに献ぐべからず斯る者は汝の神ヱホバの忌嫌ひたまふ者なればなり
2汝の神ヱホバの汝に賜ふ邑々の中にて汝らの中間に若し或男または女汝の神ヱホバの目の前に惡事を行ひてその契約に悖り
3往て他の神々に事へてこれを拝み我が命ぜざる日や月や天の衆群などを拝むあらんに
4その事を汝に告る者ありて汝これを聞き細かにこれを査べ見るにその事眞にその言確にしてイスラエルの中に斯る憎むべき事行はれ居たらば
5汝その惡き事を行へる男または女を汝の門に曳いだし石をもてその男または女を撃殺すべし
6殺すべき者は二人の證人または三人の證人の口に依てこれを殺すべし惟一人の證人の口のみをもて之を殺すことは爲べからず
7斯る者を殺すには證人まづその手を之に加へ然る後に民みなその手を加ふべし汝かく惡事を汝らの中より除くべし
8汝の門の内に訟へ爭ふ事おこるに當りその事件もし血を相流す事または權理を相爭ふ事または互に相撃たる事などにして汝に裁判かぬる者ならば汝起あがりて汝の神ヱホバの選びたまふ處に上り往き
9祭司なるレビ人と當時の士師とに詣りて問べし彼ら裁判の言詞を汝に示さん
10ヱホバの選びたまふ處にて彼らが汝に示す命令の言のごとくに汝行ひ凡て彼らが汝に敎ふるごとくに愼みて爲べし
11即ち故らが汝に敎ふる律法の命令に循がひ彼らが汝に告る裁判に依て行ふべし彼らが汝に示す言に違ふて右にも左にも偏るべからず
12人もし自ら壇斷にしその汝の神ヱホバの前に立て事ふる祭司またはその士師に聽したがはざる有ばその人を殺しイスラエルの中より惡を除くべし
13然せば民みな聞て畏れ重て壇斷に事をなさざらん
14汝の神ヱホバの汝に賜ふ地に汝いたり之を獲て其處に住におよべる時汝もし我周圍の一切の國人のごとくに我も王をわが上に立んと言あらば
15只なんぢの神ヱホバの選びたまふ人を汝の上にたてて王となすべしまた汝の上に王を立るには汝の兄弟の中の人をもてすべし汝の兄弟ならざる他國の人を汝の上に立べからず
16但し王となれる者は馬を多く得んとすべからず又馬を多く得んために民を率てエジプトに還るべからず其はヱホバなんぢらに向ひて汝らはこの後かさねて此路に歸るべからずと宣ひたればなり
17また妻を多くその身に有て心を迷すべからずまた金銀を己のために多く蓄積べからず
18彼その國の位に坐するにいたらば祭司なるレビ人の前にある書よりしてこの律法を一の書に書寫さしめ
19世に生存ふる日の間つねにこれを己の許に置て誦み斯してその神ヱホバを畏るることを學びこの律法の一切の言と是等の法度を守りて行ふべし
20然せば彼の心その兄弟の上に高ぶること無くまたその誡命を離れて右にも左にもまがること無してその子女とともにその國においてイスラエルの中にその日を永うすることを得ん
第十八章
1祭司たるレビ人およびレビの支派は都てイスラエルの中に分なく產業なし彼らはヱホバの火祭の品とその產業の物を食ふべし
2彼らはその兄弟の中間に產業を有じヱホバこれが產業たるたり即ちその曾て之に言たまひしが如し
3祭司が民より受べき分は是なり即ち凡て犠牲を献ぐる者は牛にもあれ羊にもあれその肩と兩方の頬と胃とを祭司に與ふべし
4また汝の穀物と酒と油の初および羊の毛の初をも之にあたふべし
5其は汝の神ヱホバ汝の諸の支派の中より彼を選び出し彼とその子孫をして永くヱホバの名をもて立て奉事をなさしめたまへばなり
6レビ人はイスラエルの全地の中何の處に居る者にもあれその寄寓たる汝の邑を出てヱホバの選びたま處に到るあらば
7その人はヱホバの前に侍るその諸兄弟のレビ人とおなじくその神ヱホバの名をもて奉事をなすことを得べし
8その人の得て食ふ分は彼らと同じ但しその父の遺業を賣て獲たる物はこの外に彼に屬す
9汝の神ヱホバの汝に賜ふ池にいたるに及びて汝その國々の民の憎むべき行爲を倣ひ行ふなかれ
10汝らの中間にその男子女子をして火の中を通らしむる者あるべからずまた卜筮する者邪法を行なふ者禁厭する者魔術を使ふ者
11法印を結ぶ者憑鬼する者巫覡の業をなす者死人に詢ことをする者あるべからず
12凡て是等の事を爲す者はヱホバこれを憎たまふ汝の神ヱホバが彼らを汝の前より逐はらひたまひしも是等の憎むべき事のありしに因てなり
13汝の神ヱホバの前に汝完き者たれ
14汝が逐はらふ故の國々の民は邪法師卜筮師などに聽ことをなせり然ど汝には汝の神ヱホバ然する事を許したまはず
15汝の神ヱホバ汝の中汝の兄弟の中より我のごとき一箇の預言者を汝のために興したまはん汝ら之に聽ことをすべし
16是まったく汝が集會の日にホレブにおいて汝の神ヱホバに求めたる所なり即ち汝言けらく我をして重てこの我神ヱホバの聲を聞しむる勿れまた重てこの大なる火を見さする勿れ恐くは我死んと
17是においてヱホバ我に言たまひけるは彼らの言る所は善し
18我かれら兄弟の中より汝のごとき一箇の預言者を彼らのために興し我言をその口に授けん我が彼に命ずる言を彼ことごとく彼らに告べし
19凡て彼が吾名をもて語るところの吾言に聽したがはざる者は我これを罰せん
20但し預言者もし我が語れと命ぜざる言を吾名をもて縦肆に語りまたは他の神々の名をもて語ることを爲すならばその預言者は殺さるべし
21汝あるひは心に謂ん我ら如何にしてその言のヱホバの言たまふ者にあらざるを知んと
22然ば若し預言者ありてヱホバの名をもて語ることをなすにその言就ずまた效あらざる時は是ヱホバの語りたまふ言にあらずしてその預言者が縦肆に語るところなり汝その預言者を畏るるに及ばす
第十九章
1汝の神ヱホバこの國々の民を滅し絶ち汝の神ヱホバこれが地を汝に賜ふて汝つひにこれを獲その邑々とその家々に住にいたる時は
2汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地の中に三の邑を汝のために區別べし
3而して汝これに道路を開きまた汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地の全體を三の區に分ち凡て人を殺せる者をして其處に逃れしむべし
4人を殺せる者の彼處に逃れて生命を全うすべきその事は是のごとし即ち凡て素より惡むことも無く知ずしてその鄰人を殺せる者
5例ば人木を伐んとてその鄰人とともに林に入り手に斧を執て木を斫んと撃おろす時にその頭の鐵柯より脱てその鄰人にあたりて之を死しめたるが如き是なり斯る人は是等の邑の一に逃れて生命を全うすべし
6恐くは復仇する者心熱してその殺人者を追かけ道路長きにおいては遂に追しきて之を殺さん然るにその人は素より之を惡みたる者にあらざれば殺さるべき理あらざるなり
7是をもて我なんぢに命じて三の邑を汝のために區別べしと言り
8汝の神ヱホバ汝の先祖等に誓ひしごとく汝の境界を廣め汝の先祖等に與へんと言し地を盡く汝に賜ふにいたらん時
9即ち汝我が今日なんぢに命ずるこの一切の誡命を守りてこれを行なひ汝の神ヱホバを愛し恒にその道に歩まん時はこの三の外にまた三の邑を増加ふべし
10是汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地に辜なき者の血を流すこと無らんためなり斯せずばその血汝に歸せん
11然どもし人その隣人を惡みて之を附覘ひ起かかり撃てその生命を傷ひて之を死しめ而してこの邑の一に逃れたる事あらば
12その邑の長老等人を遣て之を其處より曳きたらしめ復仇者の手にこれを付して殺さしむべし
13汝かれを憫み視るべからず辜なき者の血を流せる咎をイスラエルより除くべし然せば汝に福祉あらん
14汝の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふ地の中において汝が嗣ぐところの產業に汝の先人の定めたる汝の鄰の地界を侵すべからず
15何の惡にもあれ凡てその犯すところの罪は只一人の證人によりて定むべからず二人の證人の口によりまたは三人の證人の口によりてその事を定むべし
16もし偽妄の證人起りて某の人は惡事をなせりと言たつること有ば
17その相爭ふ二人の者ヱホバの前に至り當時の祭司と士師の前に立べし
18然る時士師詳細にこれを査べ視るにその證人もし偽妄の證人にしてその兄弟にむかひて虚妄の證をなしたる者なる時は
19汝兄弟に彼が蒙らさんと謀れる所を彼に蒙らし斯して汝らの中より惡事を除くべし
20然せばその遺れる者等聞て畏れその後かさねて斯る惡き事を汝らの中におこなはじ
21汝憫み視ることをすべからず生命は生命眼は眼歯は歯手は手足は足をもて償はしむべし
第二十章
1汝その敵と戰はんとて出るに當り馬と車を見また汝よりも數多き民を見るもこれに懼るる勿れ其は汝をエジプトの國より導き上りし汝の神ヱホバなんぢとともに在せばなり
2汝ら戰闘に臨む時は祭司進みいで民に告て
3之に言べしイスラエルよ聽け汝らは今日なんぢらの敵と戰はんとて進み來れり心に臆する勿れ懼るるなかれ倉皇なかれ彼らに怖るなかれ
4其は汝らの神ヱホバ汝らとともに行き汝らのために汝らの敵と戰ひて汝らを救ひたまふべければなりと
5斯てまた有司等民に告て言べし誰か新しき家を建て之に移らざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰闘に死て他の人これに移らん
6誰か菓物園を作りてその果を食はざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰闘に死て他の人これを食はん
7誰か女と契りて之を娶らざる者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くは自己戰闘に死て他の人これを娶らんと
8有司等なほまた民に告て言べし誰か懼れて心に臆する者あるかその人は家に歸りゆくべし恐くはその兄弟たちの心これが心のごとく挫けんと
9有司等かく民に告ることを終たらば軍勢の長等を立て民を率しむべし
10汝ある邑に進みゆきて之を攻んとする時は先これに平穩に降ることを勸むべし
11その邑もし平穩に降らんと答へてその門を汝に開かば其處なる民をして都て汝に貢を納しめ汝に事へしむべし
12其もし平穩に汝に降ることを肯んぜずして汝と戰かはんとせば汝これを攻べし
13而して汝の神ヱホバこれを汝の手に付したまふに至らば刃をもてその中の男を盡く撃殺すべし
14惟その婦女嬰孩家畜および凡てその邑の中にて汝が奪ひ獲たる物は盡く己に取べし抑汝がその敵より奪ひ獲たる物は汝の神ヱホバの汝に賜ふ者なれば汝これをもて樂むべし
15汝を離るることの遠き邑々すなはち是等の國々に屬せざるところの邑々には凡てかくのごとく行なふべし
16但し汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふこの國々の邑々においては呼吸する者を一人も生し存べからず
17即ちヘテ人 アモリ人 カナン人 ペリジ人 ヒビ人 ヱブス人などは汝かならずこれを滅ぼし盡して汝の神ヱホバの汝に命じたまへる如くすべし
18斯するは彼らがその神々にむかひて行ふところの憎むべき事を汝らに敎へて之を倣ひおこなはしめ汝らをして汝らの神ヱホバに罪を獲せしむる事のなからんためなり
19汝久しく邑を圍みて之を攻取んとする時においても斧を振ふて其處の樹を砍枯すべからず是は汝の食となるべき者なり且その城攻において田野の樹あに人のごとく汝の前に立ふさがらんや
20但し果を結ばざる樹と知る樹はこれを砍り枯し汝と戰ふ邑にむかひて之をもて雲梯を築きその降るまで之を攻るも宜し
第二十一章
1汝の神ヱホバの汝に與へて獲させたまふ地において若し人殺されて野に仆れをるあらんに之を殺せる者の誰なるかを知ざる時は
2汝の長老等と士師等出きたりその人の殺されをる處よりその四周の邑々までを度るべし
3而してその人の殺されをる處に最も近き邑すなはちその邑の長老等は未だ使はず未だ軛を負せて牽ざるところの少き牝牛を取り
4邑の長老等その牝牛を耕すことも種蒔こともせざる流つきせぬ谷に牽ゆきその谷において牝牛の頸を折べし
5その時は祭司たるレビの子孫等其處に進み來るべし彼らは汝の神ヱホバが選びて己に事へしめまたヱホバの名をもて祝することを爲しめたまふ者にて一切の訴訟と一切の爭競は彼らの口によりて決定るべきが故なり
6而してその人の殺されをりし處に最も近き邑の長老等その谷にて頸を折たる牝牛の上において手を洗ひ
7答へて言べし我らの手はこの血を流さず我らの目はこれを見ざりしなり
8ヱホバよ汝が贖ひし汝の民イスラエルを赦したまへこの辜なき者の血を流せる罰を汝の民イスラエルの中に降したまふ勿れと斯せば彼らその血の罪を赦されん
9汝かくヱホバの善と觀たまふ事をおこなひその辜なき者の血を流せる咎を汝らの中より除くべし
10汝出て汝の敵と戰ふにあたり汝の神ヱホバこれを汝の手に付したまひて汝これを俘虜となしたる時
11汝もしその俘虜の中に貌美しき女あるを見てこれを悦び取て妻となさんとせば
12汝の家の中にこれを携へゆくべし而して彼はその髮を剃り爪を截り
13まだ俘虜の衣服を脱すてて汝の家に居りその父母のために一月のあひだ哀哭べし然る後なんぢ故の處に入りてこれが夫となりこれを汝の妻とすべし
14その後汝もし彼を好まずなりなば彼の心のままに去ゆかしむべし決して金のためにこれを賣べからず汝すでにこれを犯したれば之を嚴く待遇べからざるなり
15人二人の妻ありてその一人は愛する者一人は惡む者ならんにその愛する者と惡む者の二人ともに男の子を生ありてその長子もし惡む婦の產る者なる時は
16その子等に己の所有を嗣しむる日にその惡む婦の產る長子を措てその愛する婦の產る子を長子となすべからず
17必ずその惡む者の產る子を長子となし己の所有を分つ時にこれには二倍を與ふべし是は己の力の始にして長子の權これに屬すればなり
18人にもし放肆にして背悖る子ありその父の言にも母の言にも順はず父母これを責るも聽ことをせざる時は
19その父母これを執へてその處の門にいたり邑の長老等に就き
20邑の長老たちに言べし我らの此子は放肆にして背悖る者我らの言にしたがはざる者放蕩にして酒に耽る者なりと
21然る時は邑の人みな石をもて之を撃殺すべし汝かく汝らの中より惡事を除き去べし然せばイスラエルみな聞て懼れん
22人もし死にあたる罪を犯して死刑に遇ことありて汝これを木に懸て曝す時は
23翌朝までその體を木の上に留おくべからず必ずこれをその日の中に埋むべし其は木に懸らるる者はヱホバに詛はるる者なればなり斯するは汝の神ヱホバの汝に賜ふて產業となさしめたまふ地の汚れざらんためなり
第二十二章
1汝の兄弟の牛または羊の迷ひをるを見てこれを見すて置べからず必ずこれを汝の兄弟に牽ゆきて歸すべし
2汝の兄弟もし汝に近からざるか又は汝かれを知ざる時はこれを汝の家に牽ゆきて汝の許におき汝の兄弟の尋ねきたるに及びて之を彼に還すべし
3汝の兄弟の驢馬におけるも是のごとく爲しまたその衣服におけるも斯なすべし凡て汝の兄弟の失ひたる遺失物を得たる時も汝かく爲べし之を見すておくべからず
4また汝の兄弟の驢馬または牛の途に踣れをるを見て見すておくべからず必ずこれを助け起すべし
5女は男の衣服を纒ふべからずまた男は女の衣裳を著べからず凡て斯する者は汝の神ヱホバこれを憎みたまふなり
6汝鳥の巣の路の頭または樹の上または土の上にあるを見んに雛または卵その中にありて母鳥その雛または卵の上に伏をらばその母鳥を雛とともに取べからず
7かならずその母鳥を去しめ唯その雛のみをとるべし然せば汝福祉を獲かつ汝の日を永うすることを得ん
8汝新しき家を建る時はその屋蓋の周圍に欄杆を設くべし是は人その上より堕てこれが血の汝の家に歸すること無らんためなり
9汝菓物園に異類の種を混て播べからず然せば汝が播たる種より產する物および汝の菓物園より出る菓物みな聖物とならん
10汝牛と驢馬とを耦せて耕すことを爲べからず
11汝毛と麻とをまじへたる衣服を著べからず
12汝が上に纒ふ衣服の裾の四方に繸をつくべし
13人もし妻を娶り之とともに寝て後これを嫌ひ
14我この婦人を娶りしが之と寝たる時にその處女なるを見ざりしと言て誹謗の辭抦を設けこれに惡き名を負せなば
15その女の父と母その女の處女なる證跡を取り門にをる邑の長老等にこれを差出し
16而してその女の父長老等に言べし我この人にわが女子を與へて妻となさしめしにこの人これを嫌ひ
17誹謗の辭抦を設けて言ふ我なんぢの女子の處女なるを見ざりしと然るに吾女子の處女なりし證跡は此にありと斯いひてその父母かの布を邑の長老等の前に展べし
18然る時は邑の長老等その人を執へてこれを鞭ち
19又これに銀百シケルを罰してその女の父に償はしむべし其はイスラエルの處女に惡き名を負せたればなり斯てその人はこれを妻とすべし一生これを去ことを得ず
20然どこの事もし眞にしてその女の處女なる證跡あらざる時は
21その女をこれが父の家の門に曳いだしその邑の人々石をもてこれを撃ころすべし其は彼その父の家にて淫なる事をなしてイスラエルの中に惡をおこなひたればなり汝かく惡事を汝らの中より除くべし
22もし夫に適し婦と寝る男あるを見ばその婦と寝たる男と其婦とをともに殺し斯して惡事をイスラエルの中より除くべし
23處女なる婦人すでに夫に適の約をなせる後ある男これに邑の内に遇てこれを犯さば
24汝らその二人を邑の門に曳いだし石をもてこれを撃ころすべし是その女は邑の内にありながら叫ぶことをせざるに因りまたその男はその鄰の妻を辱しめたるに因てなり汝かく惡事を汝らの中より除くべし
25然ど男もし人に適の約をなしし女に野にて遇ひこれを強て犯すあらば之を犯しし男のみを殺すべし
26その女には何をも爲べからず女には死にあたる罪なし人その鄰人に起むかひてこれを殺せるとその事おなじ
27其は男野にてこれに遇たるが故にその人に適の約をなしし女叫びたれども拯ふ者なかりしなり
28男もし未だ人に適の約をなさざる處女なる婦に遇ひこれを執へて犯すありてその二人見あらはされなば
29これを犯せる男その女の父に銀五十シケルを與へて之を己の妻とすべし彼その女を辱しめたれば一生これを去るべからざるなり
30人その父の妻を娶るべからずその父の被を掀開べからず
第二十三章
1外腎を傷なひたる者または玉莖を切りたる者はヱホバの會に入べからず
2私子はヱホバの會にいるべからず是は十代までもヱホバの會にいるべからざるなり
3アンモン人およびモアブ人はヱホバの會にいる可らず故らは十代までも何時までもヱホバの會にいるべからざるなり
4是汝らがエジプトより出きたりし時に彼らはパンと水とをもて汝らを途に迎へずメソポタミアのペトル人ベオルの子バラムを倩ひて汝を詛はせんと爲たればなり
5然れども汝の神ヱホバ、バラムに聽ことを爲給はずして汝の神ヱホバその呪詛を變て汝のために祝福となしたまへり是汝の神ヱホバ汝を愛したまふが故なり
6汝一生いつまでも彼らのために平安をもまた福禄をも求むべからず
7汝エドム人を惡べからず是は汝の兄弟なればなりまたエジプト人を惡むべからず汝もこれが國に客たりしこと有ばなり
8彼等の生たる子等は三代におよばばヱホバの會にいることを得べし
9汝軍旅を出して汝の敵を攻る時は諸の惡き事を自ら謹むべし
10汝らの中間にもし夜中計ずも汚穢にふれて身の潔からざる人あらば陣營の外にいづべし陣營の内に入べからず
11而して薄暮に水をもて身を洗ひ日の入て後陣營に入べし
12汝陣營の外に一箇の處を設けおき便する時は其處に往べし
13また器具の中に小鍬を備へおき外に出て便する時はこれをもて土を掘り身を返してその汝より出たる物を蓋ふべし
14其は汝の神ヱホバ汝を救ひ汝の敵を汝に付さんとて汝の陣營の中を歩きたまへばなり是をもて汝の陣營を聖潔すべし然せば汝の中に汚穢物あるを見て汝を離れたまふこと有ざるべし
15その主人を避て汝の許に逃きたる僕をその主人に交すべからす
16その者をして汝らの中に汝とともに居しめ汝の一の邑の中にて之が善と見て擇ぶ處に住しむべし之を虐遇べからず
17イスラエルの女子の中に娼妓あるべからずイスラエルの男子の中に男娼あるべからず
18娼妓の得たる價および狗の價を汝の神ヱホバの家に携へいりて何の誓願にも用ゐるべからず是等はともに汝の神ヱホバの憎みたまふ者なればなり
19汝の兄弟より利息を取べからず即ち金の利息食物の利息など凡て利息を生ずべき物の利息を取べからず
20他國の人よりは汝利息を取も宜し惟汝の兄弟よりは利息を取べからず然ば汝が往て獲ところの地において汝の神ヱホバ凡て汝が手に爲ところの事に福祥をくだしたまふべし
21汝の神ヱホバに誓願をかけなば之か還すことを怠るべからず汝の神ヱホバかならずこれを汝に要めたまふべし怠る時は汝罪あり
22汝誓願をかけざるも罪を獲ること有じ
23汝が口より出しし事は守りて行ふべし凡て自意の禮物は汝の神ヱホバに汝が誓願し口をもて約せしごとくに行ふべし
24汝の鄰の葡萄園に至る時汝意にまかせてその葡萄を飽まで食ふも宜し然ど器の中に取いるべからず
25また汝の鄰の麥圃にいたる時汝手にてその穂を摘食ふも宜し然ど汝の鄰の麥圃に鎌をいるべからず
第二十四章
1人妻を取てこれを娶れる後恥べき所のこれにあるを見てこれを好まずなりたらば離縁状を書てこれが手に交しこれをその家より出すべし
2その婦これが家より出たる後往て他の人に嫁ぐことをせんに
3後の夫もこれを嫌ひ離縁状を書てその手にわたして之を家より出し又はこれを妻にめとれるその後の夫死るあるも
4是は已に身を汚玷したるに因て之を出したるその先の夫ふたたびこれを妻にめとるべからず是ヱホバの憎みたまふ事なればなり汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地に汝罪を負すなかれ
5人あらたに妻を娶りたる時は之を軍に出すべからずまた何の職務をもこれに任すべからずその人は一年家に間居してその娶れる妻を慰むべし
6人その磨礱を質におくべからず是その生命をつなぐ物を質におくなればなり
7イスラエルの子孫の中なるその兄弟を拐帶してこれを使ひまたはこれを賣る人あるを見ばその拐帶者を殺し然して汝らの中より惡を除くべし
8汝癩病を愼み凡て祭司たるレビ人が汝らに敎ふる所を善く守りて行ふべし即ち我が彼らに命ぜしごとくに汝ら守りて行ふべし
9汝らがエジプトより出きたれる路にて汝の神ヱホバがミリアムに爲たまひしところの事を誌えよ
10凡て汝の鄰に物を貸あたふる時は汝みづからこれが家にいりてその質物を取べからず
11汝は外に立をり汝が貸たる人その質物を外に持いだして汝に付すべし
12その人もし困苦者ならば之が質物を留おきて睡眠に就べからず
13かならず日の入る頃その質物を之に還すべし然せばその人おのれの上衣をまとふて睡眠につくことを得て汝を祝せん是汝の神ヱホバの前において汝の義となるべし
14困苦る貧き傭人は汝の兄弟にもあれ又は汝の地にてなんぢの門の内に寄寓る他國の人にもあれ之を虐ぐべからず
15當日にこれが値をはらふべし日の入るまで延すべからず其は貧き者にてその心にこれを慕へばなり恐らくは彼ヱホバに汝を訴ふるありて汝罪を獲ん
16父はその子等の故によりて殺さるべからず子等はその父の故によりて殺さるべからず各人おのれの罪によりて殺さるべきなり
17汝他國の人または孤子の審判を曲べからずまた寡婦の衣服を質に取べからず
18汝誌ゆべし汝はエジプトに奴隸たりしが汝の神ヱホバ汝を其處より贖ひいだしたまへり是をもて我この事をなせと汝に命ずるなり
19汝田野にて穀物を刈る時もしその一束を田野に忘れおきたらば返りてこれを取べからず他國の人と孤子と寡婦とにこれを取すべし然せば汝の神ヱホバ凡て汝が手に作ところの事に祝福を降したまはん
20汝橄欖を打落す時は再びその枝をさがすべからずその遺れる者を他國の人と孤子と寡婦とに取すべし
21また葡萄園の葡萄を摘とる時はその遺れる者を再びさがすべからず他國の人と孤子と寡婦とにこれを取すべし
22汝誌ゆべし汝はエジプトの國に奴隸たりしなり是をもて我この事を爲せと汝に命ず
第二十五章
1人と人との間に爭辯ありて來りて審判を求むる時は士師これを鞫きその義き者を義とし惡き者を惡とすべし
2その惡き者もし鞭つべき者ならば士師これを伏せその罪にしたがひて數のごとく自己の前にてこれを扑すべし
3これを扑ことは四十を逾べからず若これを逾て是よりも多く扑ときは汝その汝の兄弟を賤め視にいたらん
4穀物を碾す牛に口籠をかく可らず
5兄弟ともに居んにその中の一人死て子を遺さざる時はその死たる者の妻いでて他人に嫁ぐべからず其夫の兄弟これの所に入りこれを娶りて妻となし斯してその夫の兄弟たる道をこれに盡し
6而してその婦の生ところの初子をもてその死たる兄弟の後を嗣しめその名をイスラエルの中に絶ざらしむべし
7然どその人もしその兄弟の妻をめとることを肯ぜずばその兄弟の妻門にいたりて長老等に言べし吾夫の兄弟はその兄弟の名をイスラエルの中に興ることを肯ぜず吾夫の兄弟たる道を盡すことをせずと
8然る時はその邑の長老等かれを呼よせて諭すべし然るも彼堅く執て我はこれを娶ることを好まずと言ば
9その兄弟の妻長老等の前にて彼の側にいたりこれが鞋をその足より脱せその面に唾して答て言べしその兄弟の家を興ることを肯ぜざる者には斯のごとくすべきなりと
10またその人の名は鞋を脱たる者の家とイスラエルの中に稱へらるべし
11人二人あひ爭そふ時に一人の者の妻その夫を撃つ者の手より夫を救はんとて進みより手を伸てその人の陰所を執ふるあらば
12汝その婦の手を切おとすべし之を憫れみ視るべからず
13汝の嚢の中に一箇は大く一箇は小き二種の權衡石をいれおくべからず
14汝の家に一箇は大く一箇は小き二種の升斗をおくべからず
15唯十分なる公正き權衡を有べくまた十分なる公正き升斗を有べし然せば汝の神ヱホバの汝にたまふ地に汝の日永からん
16凡て斯る事をなす者凡て正しからざる事をなす者は汝の神ヱホバこれを憎みたまふなり
17汝らがエジプトより出きたりし時その路においてアマレクが汝に爲たりし事を記憶よ
18即ち彼らは汝を途に迎へ汝の疲れ倦たるに乗じて汝の後なる弱き者等を攻撃り斯かれらは神を畏れざりき
19然ば汝の神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地において汝の神ヱホバ汝にその周圍の敵を盡く攻ふせて安泰ならしめたまふに至らば汝アマレクの名を天が下より塗抹て之をおぼゆる者なからしむべし
第二十六章
1汝その神ヱホバの汝に與へて產業となさしめたまふ地にいりこれを獲てそこに住にいたらば
2汝の神ヱホバの汝に與へたまへる地の諸の土產の初を取て筐にいれ汝の神ヱホバのその名を置んとて選びたまふ處にこれを携へゆくべし
3而して汝當時の祭司に詣り之にいふべし我は今日なんぢの神ヱホバに申さん我はヱホバが我らに與へんと我らの先祖等に誓ひたまひし地に至れりと
4然る時は祭司汝の手よりその筐をとりて汝の神ヱホバの壇のまへに之を置べし
5汝また汝の神ヱホバの前に陳て言べし我先祖は憫然なる一人のスリア人なりしが僅少の人を將てエジプトに下りゆきて其處に寄寓をりそこにて終に大にして強く人口おほき民となれり
6然るにエジプト人我らに害を加へ我らを惱まし辛き力役を我らに負せたりしに因て
7我等先祖等の神ヱホバに向ひて呼はりければヱホバわれらの聲を聽き我らの艱難と勞苦と虐遇を顧みたまひ
8而してヱホバ強き手を出し腕を伸べ大なる威嚇と徴證と奇跡とをもてエジプトより我らを導きいだし
9この處に我らを携へいりてこの地すなはち乳と蜜との流るる地を我らに賜へり
10ヱホバよ今我なんぢが我に賜ひし地の產物の初を持きたれりと斯いひて汝その筐を汝の神ヱホバの前にそなへ汝の神ヱホバの前に禮拝をなすべし
11而して汝は汝の神ヱホバの汝と汝の家に降したまへる諸の善事のためにレビ人および汝の中間なる旅客とともに樂むべし
12第三年すなはち十に一を取の年に汝その諸の產物の什一を取りレビ人と客旅と孤子と寡婦とにこれを與へて汝の門の内に食ひ飽しめたる時は
13汝の神ヱホバの前に言べし我は聖物を家より執いだしまたレビ人と客旅と孤子と寡婦とにこれを與へ全く汝が我に命じたまひし命令のごとくせり我は汝の命令に背かずまたこれを忘れざるなり
14我はこの聖物を喪の中に食ひし事なくをた汚穢たる身をもて之を携へ出しし事なくまた死人のためにこれを贈りし事なきなり我はわが神ヱホバの言に聽したがひて凡て汝が我に命じたまへるごとく行へり
15願くは汝の聖住所なる天より臨み觀汝の民イスラエルと汝の我らに與へし地とに福祉をくだしたまへ是は我がわれらの先祖等に誓ひたまひし乳と蜜との流るる地なり
16今日汝の神ヱホバこれらの法度と律法とを行ふことを汝に命じたまふ然ば汝心を盡し精心を盡してこれを守りおこなふべし
17今日なんぢヱホバを認めて汝の神となし且その道に歩みその法度と誡法と律法とを守りその聲に聽したがはんと言り
18今日ヱホバまたその言しごとく汝を認めてその寶の民となし且汝にその諸の誡命を守れと言たまへり
19ヱホバ汝の名譽と聲聞と榮耀とをしてその造れる諸の國の人にまさらしめたまはん汝はその神ヱホバの聖民となることその言たまひしごとくならん
第二十七章
1モーセ、イスラエルの長老等とともにありて民に命じて曰ふ我が今日なんぢらに命ずるこの誡命を汝ら全く守るべし
2汝らヨルダンを濟り汝の神ヱホバが汝に與へたまふ地にいる時は大なる石數箇を立て石灰をその上に塗り
3旣に濟りて後この律法の諸の言語をその上に書すべし然すれば汝の神ヱホバの汝にたまふ地なる乳と蜜の流るる國に汝いるを得ること汝の先祖等の神ヱホバの汝に言たまひしごとくならん
4即ち汝らヨルダンを濟るにおよばば我が今日なんぢらに命ずるその石をエバル山に立て石灰をその上に塗べし
5また其處に汝の神ヱホバのために石の壇一座を築くべし但し之を築くには鐵の器を用ゐるべからず
6汝新石をもて汝の神ヱホバのその壇を築きその上にて汝の神ヱホバに燔祭を献ぐべし
7汝また彼處にて酬恩祭を獻げその物を食ひて汝の神ヱホバの前に樂むべし
8汝この律法の諸の言語をその石の上に明白に書すべし
9モーセまた祭司たるレビ人とともにイスラエルの全家に告て曰ふイスラエルよ謹みて聽け汝は今日汝の神ヱホバの民となれり
10然ば汝の神ヱホバの聲に聽從ひ我が今日汝に命ずる之が誡命と法度をおこなふべし
11その日にモーセまた民に命じて言ふ
12汝らがヨルダンを渡りし後是らの者ゲリジム山にたちて民を祝すべし即ちシメオン、レビ、ユダ、イツサカル、ヨセフおよびベニヤミン
13また是らの者はエバル山にたちて呪詛ことをすべし即ちルベン、ガド、アセル、ゼブルン、ダンおよびナフタリ
14レビ人大聲にてイスラエルの人々に告て言べし
15偶像は工人の手の作にしてヱホバの憎みたまふ者なれば凡てこれを刻みまたは鋳造りて密に安置く人は詛はるべしと民みな對へてアーメンといふべし
16その父母を軽んずる者は詛はるべし民みな對てアーメンといふべし
17その鄰の地界を侵す者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
18盲者をして路に迷はしむる者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
19客旅孤子および寡婦の審判を枉る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
20その父の妻と寝る者はその父を辱しむるなれば詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
21凡て獣畜と交る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
22その父の女子またはその母の女子たる己の姉妹と寝る者は詛はるべし民みな對へてアーメンとふべし
23その妻の母と寝る者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
24暗の中にその鄰を撃つ者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
25報酬をうけて無辜者を殺してその血を流す者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
26この律法の言を守りて行はざる者は詛はるべし民みな對へてアーメンといふべし
第二十八章
1汝もし善く汝の神ヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を守りて行はば汝の神ヱホバ汝をして地の諸の國人の上に立しめたまふべし
2汝もし汝の神ヱホバの言に聽したがふ時はこの諸の福祉汝に臨み汝におよばん
3汝は邑の内にても福祉を得田野にても福祉を得ん
4また汝の胎の產汝の地の產汝の家畜の產汝の牛の產汝の羊の產に福祉あらん
5また汝の飯籃と汝の捏盤に福祉あらん
6汝は入にも福祉を得出るにも福祉を得べし
7汝の敵起て汝を攻るあればヱホバ汝をして之を打敗らしめたまふべし彼らは一條の路より攻きたり汝の前にて七條の路より逃はしらん
8ヱホバ命じて福祉を汝の倉庫に降しまた汝が手にて爲ところの事に降し汝の神ヱホバの汝に與ふる地においてヱホバ汝を祝福たまふべし
9汝もし汝の神ヱホバの誡命を守りてその道に歩まばヱホバ汝に誓ひしごとく汝を立て己の聖民となしたまふべし
10然る時は地の民みな汝がヱホバの名をもて稱へらるるを視て汝を畏れん
11ヱホバが汝に與へんと汝の先祖等に誓ひたまひし地においてヱホバ汝の佳物すなはち汝の身の產と汝の家畜の產と汝の地の產とを饒にしたまふべし
12ヱホバその寶の蔵なる天を啓き雨をその時にしたがびて汝の地に降し汝の手の諸の行爲に祝福をたまはん汝は許多の國々の民に貸ことをなすに至らん借ことなかるべし
13ヱホバ汝をして首とならしめたまはん尾とはならしめたまはじ汝は只上におらん下には居じ汝もし我が今日汝に命ずる汝の神ヱホバの誡命に聽したがひてこれを守りおこなはばかならず斯のごとくなるべし
14汝わが今日汝に命ずるこの言語を離れ右または左にまがりて他の神々にしたがひ事ふることをすべからず
15汝もし汝の神ヱホバの言に聽したがはず我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命と法度とを守りおこなはずば此もろもろの呪詛汝に臨み汝におよぶべし
16汝は邑の内にても詛はれ田野にても詛はれん
17また汝の飯籃も汝の捏盤も詛はれん
18汝の胎の產汝の地の產汝の牛の產汝の羊の產も詛はれん
19汝は入にも詛はれ出るにも詛はれん
20ヱホバ汝をしてその凡て手をもて爲ところにおいて呪詛と恐懼と鑓責を蒙らしめたまふべければ汝は滅びて速かに亡はてん是は汝惡き事をおこなひて我を棄るによりてなり
21ヱホバ疫病を汝の身に着せて遂に汝をその往て得るとこるの地より滅ぼし絶たまはん
22ヱホバまた癆瘵と熱病と傷寒と瘧疾と刀劍と枯死と汚腐とをもて汝を撃なやましたまふべし是らの物汝を追ひ汝をして滅びうせしめん
23汝の頭の上なる天は銅のごとくになり汝の下なる地は鐵のごとくになるべし
24ヱホバまた雨のかはりに沙と灰とを汝の地に降せたまはん是らの物天より汝の上に下りて遂に汝を滅ぼさん
25ヱホバまた汝をして汝の敵に打敗られしめたまふべし汝は彼らにむかひて一條の路より進み彼らの前にて七條の路より逃はしらん而して汝はまた地の諸の國にて虐遇にあはん
26汝の死屍は空の諸の鳥と地の獣の食とならん然るもこれを逐はらふ者あらじ
27ヱホバまたエジプトの瘍瘡と痔と癰と癢とをもて汝を撃たまはん汝はこれより愈ることあらじ
28ヱホバまた汝を撃ち汝をして狂ひ且目くらみて心に驚き悸れしめたまはん
29汝は瞽者が暗にたどるごとく眞晝においても尚たどらん汝その途によりて福祉を得ることあらじ汝は只つねに虐げられ掠められんのみ汝を救ふ者なかるべし
30汝妻を娶る時は他の人これと寝ん汝家を建るもその中に住ことを得ず葡萄園を作るもその葡萄を摘とることを得じ
31汝の牛汝の目の前に宰らるるも汝は之を食ふことを得ず汝の驢馬は汝の目の前にて奪ひさられん再び汝にかへることあらじ又なんぢの羊は汝の敵の有とならん然ど汝にはこれを救ふ道あらじ
32汝の男子と汝の女子は他邦の民の有とならん汝は終日これを慕ひ望みて目を喪ふに至らん汝の手には何の力もあらじ
33汝の地の產物および汝の努苦て得たる物は汝の識ざる民これを食はん汝は只つねに虐げられ窘められん而已
34汝はその目に見るところの事によりて心狂ふに至らん
35ヱホバ汝の膝と脛とに惡くして愈ざる瘍瘡を生ぜしめて終に足の蹠より頭の頂にまでおよぼしたまはん
36ヱホバ汝と汝が立たる王とを携へて汝も汝の先祖等も知ざりし國々に移し給はん汝は其處にて木または石なる他の神々に事ふるあらん
37汝はヱホバの汝を遣はしたまふ國々にて人の詑異む者となり諺語となり諷刺とならん
38汝は多分の種を田野に携へ出すもその刈とるとこるは少かるべし蝗これを食ふべければなり
39汝葡萄園を作りてこれに培ふもその酒を飮ことを得ずまたその果を斂むることを得じ蟲これを食ふべければなり
40汝の國には遍く橄欖の樹あらん然ど汝はその油を身に膏ことを得じ其果みな堕べければなり
41汝男子女子を擧くるもこれを汝の有とすることを得じ皆擄へゆかるべければなり
42汝の諸の樹および汝の地の產物はみな蝗これを取て食ふべし
43汝の中間にある他國の人はますます高くなりゆきて汝の上に出で汝はますます卑くなりゆかん
44彼は汝に貸ことをせん汝は彼に貸ことを得じ彼は首となり汝は尾とならん
45この諸の災禍汝に臨み汝を追ひ汝に及びてつひに汝を滅ぼさん是は汝その神ヱホバの言に聽したがはず其なんぢに命じたまへる誡命と法度とを守らざるによるなり
46是等の事は恒になんぢと汝の子孫の上にありて徴證となり人を驚かす者となるべし
47なんぢ萬の物の豊饒なる中にて心に歓び樂みて汝の神ヱホバに事へざるに因り
48饑ゑ渇きかつ裸になり萬の物に乏しくしてヱホバの汝に攻きたらせたまふところの敵に事ふるに至らん彼鐵の軛をなんぢの頸につけて遂に汝をほろぼさん
49即ちヱホバ遠方より地の極所より一の民を鵰の飛がごとくに汝に攻きたらしめたまはん是は汝がその言語を知ざる民
50その面の猛惡なる民にして老たる者の身を顧みず幼稚者を憐まず
51汝の家畜の產と汝の地の產を食ひて汝をほろぼし穀物をも酒をも油をも牛の產をも羊の產をも汝のために遺さずして終に全く汝を滅さん
52その民は汝の全國において汝の一切の邑々を攻圍み遂にその汝が賴む堅固なる高き石垣をことごとく打圮し汝の神ヱホバの汝にたまへる國の中なる一切の邑々をことごとく攻圍むべし
53汝は敵に圍まれ烈しく攻なやまさるるによりて終にその汝の神ヱホバに賜はれる汝の胎の產なる男子女子の肉を食ふにいたらん
54汝らの中の柔生育にして軟弱なる男すらもその兄弟とその懐の妻とその遺れる子女とを疾視
55自己の食ふその子等の肉をこの中の誰にも與ふることを好まざらん是は汝の敵汝の一切の邑々を圍み烈しく汝を攻なやまして何物をも其人に遺さざればなり
56又汝らの中の柔生育にして繊弱なる婦女すなはちその柔生育にして繊弱なるがために足の蹠を土につくることをも敢てせざる者すらもその懐の夫とその男子とその女子とを疾視
57己の足の間より出る胞衣と己の產ところの子を取て密にこれを食はん是は汝の敵なんぢの邑々を圍み烈しくこれを攻なやますによりて何物をも得ざればなり
58汝もしこの書に記したるこの律法の一切の言を守りて行はず汝の神ヱホバと云榮ある畏るべき名を畏れずば
59ヱホバ汝の災禍と汝の子孫の災禍を烈しくしたまはん其災禍は大にして久しくその疾病は重くして久しかるべし
60ヱホバまた汝が懼れし疾病なるエジプトの諸の疾病を持きたりて汝の身に纏ひ附しめたまはん
61また此律法の書に載ざる諸の疾病と諸の災害を汝の滅ぶるまでヱホバ汝に降したまはん
62汝らは空の星のごとくに衆多かりしも汝の神ヱホバの言に聽したがはざるによりて殘り寡に打なさるべし
63ヱホバさきに汝らを善して汝等を衆くすることを喜びしごとく今はヱホバ汝らを滅ぼし絶すことを喜びたまはん汝らは其往て獲ところの地より抜さらるべし
64ヱホバ地のこの極よりかの極までの國々の中に汝を散したまはん汝は其處にて汝も汝の先祖等も知ざりし木または石なる他の神々に事へん
65その國々の中にありて汝は安寧を得ずまた汝の足の跖を休むる所を得じ其處にてヱホバ汝をして心慄き目昏み精神亂れしめたまはん
66汝の生命は細き糸に懸るが如く汝に見ゆ汝は夜晝となく恐怖をいだき汝の生命おぼつかなしと思はん
67汝心に懼るる所によりまた目に見る所によりて朝においては言ん嗚呼夕ならば善らんとまた夕においては言ん嗚呼朝ならば善らんと
68ヱホバなんぢを舟にのせ彼の昔わが汝に告て汝は再びこれを見ることあらじと言たるその路より汝をエジプトに曳ゆきたまはん彼處にて人汝らを賣て汝らの敵の奴婢となさん汝らを買ふ人もあらじ
第二十九章
1ヱホバ、モーセに命じモアブの地にてイスラエルの子孫と契約を結ばしめたまふその言は斯のごとし是はホレブにてかれらと結びし契約の外なる者なり
2モーセ、イスラエルの全家を呼あつめて之に言けるは汝らはヱホバがエジプトの地において汝らの目の前にてパロとその臣下とその全地とに爲たまひし一切の事を觀たり
3即ち其大なる試煉と徴證と大なる奇跡とを汝目に觀たるなり
4然るにヱホバ今日にいたるまで汝らの心をして悟ることなく目をして見ることなく耳をして聞ことなからしめたまへり
5四十年の間われ汝らを導きて曠野を通りしが汝らの身の衣服は古びず汝の足の鞋は古びざりき
6汝らはまたパンをも食はず葡萄酒をも濃酒をも飮ざりき斯ありて汝らは我が汝らの神ヱホバなることを知り
7汝らこの處に來りし時ヘシボンの王シホンおよびバシヤンの王オグ我らを迎へて戰ひしが我らこれを打敗りて
8その地を取りこれをルベン人とガド人とマナセの半支派とに與へて產業となさしめたり
9然ば汝らこの契約の言を守りてこれを行ふべし然れば汝らの凡て爲ところに祥あらん
10汝らみな今日なんぢらの神ヱホバの前に立つ即ち汝らの首領等なんぢらの支派なんぢらの長老等および汝らの牧司等などイスラエルの一切の人
11汝らの小き者等汝らの妻ならびに汝らの營の中にをる客旅など凡て汝のために薪を割る者より水を汲む者にいたるまで皆ヱホバの前に立て
12汝の神ヱホバの契約に入んとし又汝の神ヱホバの汝にむかひて今日なしたまふところの誓に入んとす
13然ばヱホバさきに汝に言しごとくまた汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓ひしごとく今日なんぢを立て己の民となし己みづから汝の神となりたまはん
14我はただ汝らと而已此契約と誓とを結ぶにあらず
15今日此にてわれらの神ヱホバの前に我らとともにたちをる者ならびに今日われらとともに此にたち居ざる者ともこれを結ぶなり
16我らは如何にエジプトの地に住をりしか如何に國々を通り來りしか汝らこれを知り
17汝らはまた木石金銀にて造れる憎むべき物および偶像のその國々にあるを見たり
18然ば汝らの中に今日その心に我らの神ヱホバを離れて其等の國々の神に往て事ふる男女宗族支派などあるべからず又なんぢらの中に葶藶または茵蔯を生ずる根あるべからず
19斯る人はこの呪詛の言を聞もその心に自ら幸福なりと思ひて言ん我はわが心を剛愎にして事をなすも尚平安なり終には酔飽る者をもて渇ける者を除くにいたらんと
20是のごとき人はヱホバかならず之を赦したまはじ還てヱホバの忿怒と嫉妬の火これが上に燃えまたこの書にしるしたる災禍みなその身に加はらんヱホバつひにその人の名を天が下より抹さりたまふべし
21ヱホバすなはちイスラエルの諸の支派の中よりその人を分ちてこれに災禍を下しこの律法の書にしるしたる契約中の諸の呪詛のごとくしたまはん
22汝等の後に起る汝らの子孫の代の人および遠き國より來る客旅この地の災禍を見またヱホバがこの地に流行せたまふ疾病を見て言ところあらん
23即ち彼ら見るにその全地は硫黄となり鹽となり且燒土となりて種も蒔れず產する所もなく何の草もその上に生せずして彼の昔ヱホバがその震怒と忿恨とをもて毀ちたましソドム、ゴモラ、アデマ、ゼポイムの毀たれたると同じかるべければ
24彼らも國々の人もみな言んヱホバ何とて斯この地になしたるやこの烈しき大なる震怒は何事ぞやと
25その時人應へて曰ん彼らはその先祖たちの神ヱホバがエジプトの地より彼らを導きいだして彼らと結びたるその契約を棄て
26往て己の識ずまた授らざる他の神々に事へてこれを拝みたるが故なり
27是をもてヱホバこの地にむかひて震怒を發しこの書にしるしたる諸の災禍をこれに下し
28而してヱホバ震怒と忿恨と大なる憤怨をもて彼らをこの地より抜とりてこれを他の國に投やれりその状今日のごとし
29隠微たる事は我らの神ヱホバに屬する者なりまた顯露されたる事は我らと我らの子孫に屬し我らをしてこの律法の諸の言を行はしむる者なり
第三十章
1我が汝らの前に陳たるこの諸の祝福と呪詛の事すでに汝に臨み汝その神ヱホバに逐やられたる諸の國々において此事を心に考ふるにいたり
2汝と汝の子等ともに汝の神ヱホバに起かへり我が今日なんぢに命ずる所に全たく循がひて心をつくし精神をつくしてヱホバの言に聽したがはば
3汝の神ヱホバ汝の俘擄を解て汝を憐れみ汝の神ヱホバ汝を顧みその汝を散しし國々より汝を集めたまはん
4汝たとひ天涯に逐やらるるとも汝の神ヱホバ其處より汝を集め其處より汝を携へかへりたまはん
5汝の神ヱホバ汝をしてその先祖の有ちし地に歸らしめたまふて汝またこれを有つにいたらんヱホバまた汝を善し汝を増て汝の先祖よりも衆からしめたまはん
6而して汝の神ヱホバ汝の心と汝の子等の心に割禮を施こし汝をして心を盡し精神をつくして汝の神ヱホバを愛せしめ斯して汝に生命を得させたまふべし
7汝の神ヱホバまた汝の敵と汝を惡み攻る者とにこの諸の災禍をかうむらせたまはん
8然ど汝は再びヱホバの言に聽したがひ我が今日なんぢに命ずるその一切の誡命を行ふにいたらん
9然る時は汝の神ヱホバ汝をして汝が手をかくる諸の物と汝の胎の產と汝の家畜の產と汝の地の產に富しめて汝を善したまはん即ちヱホバ汝の先祖たちを悦こびしごとく再び汝を悦こびて汝を善したまはん
10是は汝その神ヱホバの言に聽したがひ此律法の書にしるされたる誡命と法度を守り心をつくし精神を盡して汝の神ヱホバに歸するによりてなり
11我が今日なんぢに命ずる誡命は汝が理會がたき者にあらずまた汝に遠き者にあらず
12是は天に在ならねば汝は誰か我らのために天にのぼりてこれを我らに持くだり我らにこれを聞せて行はせんかと曰ふにおよばず
13また是は海の外にあるならねば汝は誰か我らのために海をわたりゆきてこれを我らに持きたり我らにこれを聞せて行はせんかと曰におよばず
14是言は甚だ汝に近くして汝の口にあり汝の心にあれば汝これを行ふことを得べし
15視よ我今日生命と福徳および死と災禍を汝の前に置り
16即ち我今日汝にむかひて汝の神ヱホバを愛しその道に歩みその誡命と法度と律法とを守ることを命ずるなり然なさば汝生ながらへてその數衆くならんまた汝の神ヱホバ汝が往て獲るところの地にて汝を祝福たまふべし
17然ど汝もし心をひるがへして聽從がはず誘はれて他の神々を拝みまたこれに事へなば
18我今日汝らに告ぐ汝らは必ず滅びん汝らはヨルダンを渡りゆきて獲るところの地にて汝らの日を永うすることを得ざらん
19我今日天と地を呼て證となす我は生命と死および祝福と呪詛を汝らの前に置り汝生命をえらぶべし然せば汝と汝の子孫生存らふることを得ん
20即ち汝の神ヱホバを愛してその言を聽き且これに附從がふべし斯する時は汝生命を得かつその日を永うすることを得ヱホバが汝の先祖アブラハム、イサク、ヤコブに與へんと誓ひたまひし地に住ことを得ん
第三十一章
1茲にモーセ往てイスラエルの一切の人にこの言をのべたり
2即ちこれに言けるは我は今日すでに百二十歳なれば最早出入をすること能はず且またヱホバ我にむかひて汝はこのヨルダンを濟ることを得ずと宣へり
3汝の神ヱホバみづから汝に先だちて渡りゆき汝の前よりこの國々の人を滅ぼしさりて汝にこれを獲させたまふべしまたヱホバのかつて宣まひしごとくヨシユア汝を率ゐて濟るべし
4ヱホバさきにアモリ人の王シホンとオグおよび之が地になしたる如くまた彼らにも爲てこれを滅ぼしたまはん
5ヱホバかれらを汝らの前に付したまふべければ汝らは我が汝らに命ぜし一切の命令のごとくこれに爲べし
6汝ら心を強くしかつ勇め彼らを懼るる勿れ彼らの前に慄くなかれ其は汝の神ヱホバみづから汝とともに往きたまへばなり必ず汝を離れず汝を棄たまはじ
7斯てモーセ、ヨシユアを呼びイスラエルの一切の人の目の前にてこれに言ふ汝はこの民とともに往き在昔ヱホバがかれらの先祖たちに與へんと誓ひたまひし地に入るべきが故に心を強くしかつ勇め汝彼らにこれを獲さすることを得べし
8ヱホバみづから汝に先だちて往きたまはんまた汝とともに居り汝を離れず汝を棄たまはじ懼るる勿れ驚くなかれ
9モーセこの律法を書きヱホバの契約の櫃を舁ところのレビの子孫たる祭司およびイスラエルの諸の長老等に授けたり
10而してモーセ彼らに命じて言けるは七年の末年すなはち放釋の年の節期にいたり結茅の節において
11イスラエルの人皆なんぢの神ヱホバの前に出んとてヱホバの選びたまふ處に來らんその時に汝イスラエルの一切の人の前にこの律法を誦てこれに聞すべし
12即ち男女子等および汝の門の内なる他國の人など一切の民を集め彼らをしてこれを聽かつ學ばしむべし然すれば彼等汝らの神ヱホバを畏れてこの律法の言を守り行はん
13また彼らの子等のこれを知ざる者も之を聞て汝らの神ヱホバを畏るることを學ばん汝らそのヨルダンを濟りゆきて獲ところの地に存ふる日の間つねに斯すべし
14ヱホバまたモーセに言たまひけるは視よ汝の死る日近しヨシユアを召てともに集會の幕屋に立て我かれに命ずるところあらんとモーセとヨシユアすなはち往て集會の幕屋に立けるに
15ヱホバ幕屋において雲の柱の中に現はれたまへりその雲の柱は幕屋の門口の上に駐まれり
16ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝は先祖たちとともに寝らん此民は起あがりその往ところの他國の神々を慕ひて之と姦淫を行ひかつ我を棄て我が彼らとむすびし契約を破らん
17その日には我かれらにむかひて怒を發し彼らを棄て吾面をかれらに隱すべければ彼らは呑ほろぼされ許多の災害と艱難かれらに臨まん是をもてその日に彼ら言ん是等の災禍の我らにのぞむは我らの神ヱホバわれらとともに在さざるによるならずやと
18然るも彼ら諸の惡をおこなひて他の神々に歸するによりて我その日にはかならず吾面をかれらに隱さん
19然ば汝ら今この歌を書きイスラエルの子孫にこれを敎へてその口に念ぜしめ此歌をしてイスラエルの子孫にむかひて我の證とならしめよ
20我かれらの先祖たちに誓ひし乳と蜜の流るる地にかれらを導きいらんに彼らは食ひて飽き肥太るにおよばば翻へりて他の神々に歸してこれに事へ我を軽んじ吾契約を破らん
21而して許多の災禍と艱難彼らに臨むにいたる時はこの歌かれらに對ひて證をなす者とならん其はこの歌かれらの口にありて忘るることなかるべければなり我いまだわが誓ひし地に彼らを導きいらざるに彼らは早く已に思ひ量る所あり我これを知ると
22モーセすなはちその日にこの歌を書てこれをイスラエルの子孫に敎へたり
23ヱホバまたヌンの子ヨシユアに命じて曰たまはく汝はイスラエルの子孫を我が其に誓ひし地に導きいるべきが故に心を強くしかつ勇め我なんぢとともに在べしと
24モーセこの律法の言をことごとく書に書しるすことを終たる時
25モーセ、ヱホバの契約の櫃を舁ところのレビ人に命じて言けるは
26この律法の書をとりて汝らの神ヱホバの契約の櫃の傍にこれを置き之をして汝にむかひて證をなす者たらしめよ
27我なんぢの悖る事と頑梗なるとを知る見よ今日わが生存へて汝らとともにある間すら汝らはヱホバに悖れり况てわが死たる後においてをや
28汝らの諸支派の長老等および牧伯たちを吾許に集めよ我これらの言をかれらに語り聞せ天と地とを呼てかれらに證をなさしめん
29我しる我が死たる後には汝ら必らず惡き事を行ひ我が汝らに命ぜし道を離れん而して後の日に災害なんぢらに臨まん是なんぢらヱホバの惡と觀たまふ事をおこなひ汝らの手の行爲をもてヱホバを怒らするによりてなり
30かくてモーセ、イスラエルの全會衆にこの歌の言をことごとく語り聞せたり
第三十二章
1天よ耳を傾むけよ我語らん地よ吾口の言を聽け
2わが敎は雨の降るがごとし吾言は露のおくがごとく靀の若艸の上にふるごとく細雨の靑艸の上にくだるが如し
3我はヱホバの御名を頌揚ん我らの神に汝ら榮光を歸せよ
4ヱホバは磐にましましてその御行爲は完くその道はみな正しまた眞實ある神にましまして惡きところ無し只正くして直くいます
5彼らはヱホバにむかひて惡き事をおこなふ者にてその子にはあらず只これが玷となるのみ其人と爲は邪僻にして曲れり
6愚にして智慧なき民よ汝らがヱホバに報ゆること是のごとくなるかヱホバは汝の父にして汝を贖ひまた汝を造り汝を建たまはずや
7昔の日を憶え過にし世代の年を念へよ汝の父に問べし彼汝に示さん汝の中の年老に問べし彼ら汝に語らん
8至高者人の子を四方に散して萬の民にその產業を分ちイスラエルの子孫の數に照して諸の民の境界を定めたまへり
9ヱホバの分はその民にしてヤユブはその產業たり
10ヱホバこれを荒野の地に見これに獣の吼る曠野に遇ひ環りかこみて之をいたはり眼の珠のごとくにこれを護りたまへり
11鵰のその巣雛を喚起しその子の上に翺翔ごとくヱホバその羽を展て彼らを載せその翼をもてこれを負たまへり
12ヱホバは只独にてかれを導きたまへり別神はこれとともならざりき
13ヱホバかれに地の高處を乗とほらせ田園の產物を食はせ石の中より蜜を吸しめ磐の中より油を吸しめ
14牛の乳 羊の乳 羔羊の脂 バシヤンより出る牡羊 牡山羊および小麥の最も佳き者をこれに食はせたまひき汝はまた葡萄の汁の紅き酒を飮り
15然るにヱシユルンは肥て踢ことを爲す汝は肥太りて大きくなり己を造りし神を棄て己が救拯の磐を軽んず
16彼らは別神をもて之が嫉妬をおこし憎むべき者をもて之が震怒を惹く
17彼らが犠牲をささぐる者は鬼にして神にあらず彼らが識ざりし鬼神近頃新に出たる者汝らの遠つ親の畏まざりし者なり
18汝を生し磐をば汝これを棄て汝を造りし神をば汝これを忘る
19ヱホバこれを見その男子女子を怒りてこれを棄たまふ
20すなはち曰たまはく我わが面をかれらに隱さん我かれらの終を觀ん彼らはみな背き悖る類の者眞實あらざる子等なり
21彼らは神ならぬ者をもて我に嫉妬を起させ虚き者をもて我を怒らせたれば我も民ならぬ者をもて彼らに嫉妬を起させ愚なる民をもて彼らを怒らせん
22即ちわが震怒によりて火燃いで深き陰府に燃いたりまた地とその產物とを燒つくし山々の基をもやさん
23我禍災をかれらの上に積かさね吾矢をかれらにむかひて射つくさん
24彼らは饑て痩おとろへ熱の病患と惡き疫とによりて滅びん我またかれらをして獣の歯にかからしめ地に匍ふ者の毒にあたらしめん
25外には劒内には恐惶ありて少き男をも少き女をも幼兒をも白髮の人をも滅ぼさん
26我は曰ふ我彼等を吹掃ひ彼らの事をして世の中に記憶らるること無らしめんと
27然れども我は敵人の怒を恐る即ち敵人どれを見あやまりて言ん我らの手能くこれを爲り是はすべてヱホバの爲るにあらずと
28彼らはまつたく智慧なき民なりその中には知識ある者なし
29嗚呼彼らもし智慧あらば之を了りてその身の終を思慮らんものを
30彼らの磐これを賣ずヱホバごれを付さずば爭か一人にて千人を逐ひ二人にて萬人を敗ることを得ん
31彼らの磐は我らの磐にしかず我らの敵たる者等も然認めたり
32彼らの葡萄の樹はソドムの葡萄の樹またゴモラの野より出たる者その葡萄は毒葡萄その球は苦し
33その葡萄酒は蛇の毒のごとく蝮の惡き毒のごとし
34是は我の許に蓄へあり我の庫に封じこめ有にあらずや
35彼らの足の躚かん時に我仇をかへし應報をなさんその災禍の日は近く其がために備へられたる事は迅速にいたる
36ヱホバつひにその民を鞫きまたその僕に憐憫をくはへたまはん其は彼らの力のすでに去うせて繋がれたる者も繋がれざる者もあらずなれるを見たまへばなり
37ヱホバ言たまはん彼らの神々は何處にをるや彼らが賴める磐は何處ぞや
38即ちその犠牲の膏油を食ひその灌祭の酒を飮たる者は何處にをるや其等をして起て汝らを助けしめ汝らを護しめよ
39汝ら今觀よ我こそは彼なり我の外には神なし殺すこと活すこと撃こと愈すことは凡て我是を爲す我手より救ひ出すことを得る者あらず
40我天にむかひて手をあげて言ふ我は永遠に活く
41我わが閃爍く刃を磨ぎ審判をわが手に握る時はかならず仇をわが敵にかへし我を惡む者に返報をなさん
42我わが箭をして血に酔しめ吾劍をして肉を食しめん即ち殺るる者と擄らるる者の血を之に飮せ敵の髮おほき首の肉をこれに食はせん
43國々の民よ汝らヱホバの民のために歓悦をなせ其はヱホバその僕の血のために返報をなしその敵に仇をかへしその地とその民の汚穢をのぞきたまへばなり
44モーセ、ヌンの子ヨシユアとともに到りてこの歌の言をことごとく民に誦きかせたり
45モーセこの言語をことごとくイスラエルの一切の人に告をはりて
46これに言けるは我が今日なんぢらに對ひて證するこの一切の言語を汝ら心に蔵め汝らの子等にこの律法の一切の言語を守りおこなふことを命ずべし
47抑この言は汝らには虚しき言にあらず是は汝らの生命なりこの言によりて汝らはそのヨルダンを濟りゆきて獲ところの地にて汝らの生命を永うすることを得るなり
48この日にヱホバ、モーセに告て言たまはく
49汝ヱリコに對するモアブの地のアバリム山に登りてネボ山にいたり我がイスラエルの子孫にあたへて產業となさしむるカナンの地を觀わたせよ
50汝はその登れる山に死て汝の民に列ならん是汝の兄弟アロンがホル山に死てその民に列りしごとくなるべし
51是は汝らチンの曠野なるカデシのメリバの水の邊においてイスラエルの子孫の中間にて我に悖りイスラエルの子孫の中に我の聖きことを顯さざりしが故なり
52然ども汝は我がイスラエルの子孫に與ふる地を汝の前に觀わたすことを得ん但しその地には汝いることを得じ
第三十三章
1神の人モーセその死る前にイスラエルの子孫を祝せりその祝せし言は是のごとし云く
2ヱホバ、シナイより來りセイルより彼らにむかひて昇りバランの山より光明を發ちて出で千萬の聖者の中間よりして格りたまへりその右の手には輝やける火ありき
3ヱホバは民を愛したまふ其聖者は皆その手にあり皆その足下に坐りその言によりて起あがる
4モーセわれらに律法を命ぜり是はヤコブの會衆の產業たり
5民の首領等イスラエルの諸の支派あひ集れる時に彼はヱシユルンの中に王たりき
6ルベンは生ん死はせじ然どその人數は寡少ならん
7ユダにつきては斯いふヱホバよユダの聲を聽きこれをその民に引かへしたまへ彼はその手をもて己のために戰はん願くは汝これを助けてその敵にあたらしめたまへ
8レビについては言ふ汝のトンミムとウリムは汝の聖人に歸す汝かつてマツサにて彼を試みメリバの水の邊にてかれと爭へり
9彼はその父またはその母につきて言り我はこれを見ずと又彼は自己の兄弟を認ずまた自己の子等を顧みざりき是はなんぢの言に遵がひ汝の契約を守りてなり
10彼らは汝の式例をヤコブに敎へ汝の律法をイスラエルに敎へ又香を汝の鼻の前にそなへ燔祭を汝の壇の上にささぐ
11ヱホバよ彼の所有を祝し彼が手の作爲を悦こびて納れたまへ又起てこれに逆らふ者とこれを惡む者との腰を摧きて復起あがることあたはざらしめたまへ
12ベニヤミンについては言ふヱホバの愛する者安然にヱホバとともにあり日々にその庇護をかうむりてその肩の間に居ん
13ヨセフについては言ふ願くはその地ヱホバの祝福をかうむらんことを即ち天の寶物なる露淵の底なる水
14日によりて產する寶物月によりて生ずる寶物
15古山の嶺の寶物老嶽の寶物
16地の寶物地の中の產物および柴の中に居たまひし者の恩惠などヨセフの首に臨みその兄弟と別になりたる者の頂に降らん
17彼の牛の首出はその身に榮光ありてその角は兕の角のごとく之をもて國々の民を衝たふして直に地の四方の極にまで至る是はエフライムの萬々是はマナセの千々なり
18ゼブルンについては言ふゼブルンよ汝は外に出て快樂を得よイツサカルよ汝は家に居て快樂を得よ
19彼らは國々の民を山に招き其處にて義の犠牲を献げん又海の中に盈る物を得て食ひ沙の中に蔵れたる物を得て食はん
20ガドについては言ふガドをして大ならしむる者は讃べき哉ガドは獅子のごとくに伏し腕と首の頂とを掻裂ん
21彼は初穂の地を自己のために選べり其處には大將の分もこもれり彼は民の首領等とともに至りイスラエルとともにヱホバの公義と審判とをなこなへり
22ダンについては言ふダンは小獅子のごとくバシヤンより跳り出づ
23ナフタリについては言ふナフタリよ汝は大に福祉をかうむりヱホバの恩惠にうるほふて西と南の部を獲ん
24アセルについては言ふアセルは他の子等よりも幸福なりまた其兄弟等にこえて惠まれその足を膏の中に浸さん
25汝の門閂は鐵のごとく銅のごとし汝の能力は汝が日々に需むるところに循はん
26ヱシユルンよ全能の神のごとき者は外に無し是は天に乗て汝を助け雲に駕てその威光をあらはしたまふ
27永久に在す神は住所なり下には永遠の腕あり敵人を汝の前より驅はらひて言たまふ滅ぼせよと
28イスラエルは安然に住をりヤコブの泉は穀と酒との多き地に獨り在らんその天はまた露をこれに降すべし
29イスラエルよ汝は幸福なり誰か汝のごとくヱホバに救はれし民たらんヱホバは汝を護る楯汝の榮光の劍なり汝の敵は汝に諂ひ服せん汝はかれらの高處を踐ん
第三十四章
1斯てモーセ、モアブの平野よりネボ山にのぼりヱリコに對するピスガの嶺にいたりければヱホバ之にギレアデの全地をダンまで見し
2ナフタリの全部エフライムとマナセの地およびユダの全地を西の海まで見し
3南の地と棕櫚の邑なるヱリコの谷の原をゾアルまで見したまへり
4而してヱホバかれに言たまひけるは我がアブラハム、イサク、ヤコブにむかひ之を汝の子孫にあたへんと言て誓ひたりし地は是なり我なんぢをして之を汝の目に觀ことを得せしむ然ど汝は彼處に濟りゆくことを得ずと
5斯の如くヱホバの僕モーセはヱホバの言の如くモアブの地に死り
6ヱホバ、ベテペオルに對するモアブの地の谷にこれを葬り給へり今日までその墓を知る人なし
7モーセはその死たる時百二十歳なりしがその目は曚まずその氣力は衰へざりき
8イスラエルの子孫モアブの地において三十日のあひだモーセのために哭泣をなしけるがモーセのために哭き哀しむ日つひに滿り
9ヌンの子ヨシユアは心に智慧の充る者なりモーセその手をこれが上に按たるによりて然るなりイスラエルの子孫は之に聽したがひヱホバのモーセに命じたまひし如くおこなへり
10イスラエルの中にはこの後モーセのごとき預言者おこらざりきモーセはヱホバが面を對せて知たまへる者なりき
11即ちヱホバ、エジプトの地においてかれをパロとその臣下とその全地とにつかはして諸々の徴證と奇蹟を行はせたまへり
12またイスラエルの一切の人の目の前にてモーセその大なる能力をあらはし大なる畏るべき事を行へり