箴言
第一章
1ダビデの子イスラエルの王ソロモンの箴言
2こは人に智慧と訓誨とをしらしめ哲言を暁らせ
3さとき訓と公義と公平と正直とをえしめ
4拙者にさとりを與へ少者に知識と謹愼とを得させん爲なり
5智慧ある者は之を聞て學にすすみ 哲者は智略をうべし
6人これによりて箴言と譬喩と智慧ある者の言とその隠語とを悟らん
7ヱホバを畏るるは知識の本なり 愚なる者は智慧と訓誨とを軽んず
8我が子よ汝の父の敎をきけ 汝の母の法を棄ることなかれ
9これ汝の首の美しき冠となり 汝の項の妝飾とならん
10わが子よ惡者なんぢ誘ふとも從ふことなかれ
11彼等なんぢにむかひて請ふ われらと偕にきたれ 我儕まちぶせして人の血を流し 無辜ものを故なきに伏てねらひ
12陰府のごとく彼等を活たるままにて呑み 壯健なる者を墳に下る者のごとくになさん
13われら各樣のたふとき財貨をえ 奪ひ取たる物をもて我儕の家に盈さん
14汝われらと偕に籤をひけ 我儕とともに一の金嚢を持べしと云とも
15我が子よ彼等とともに途を歩むことなかれ 汝の足を禁めてその路にゆくこと勿れ
16そは彼らの足は惡に趨り 血を流さんとて急げばなり
17(すべて鳥の目の前にて羅を張は徒勞なり)
18彼等はおのれの血のために埋伏し おのれの命をふしてねらふ
19凡て利を貧る者の途はかくの如し 是その持主をして生命をうしなはしむるなり
20智慧外に呼はり衢に其聲をあげ
21熱閙しき所にさけび 城市の門の口邑の中にその言をのべていふ
22なんぢら拙者のつたなきを愛し 嘲笑者のあざけりを樂しみ 愚なる者の知識を惡むは幾時までぞや
23わが督斥にしたがひて心を改めよ 視よわれ我が霊を汝らにそそぎ 我が言をなんぢらに示さん
24われ呼たれども汝らこたへず 手を伸たれども顧る者なく
25かへつて我がすべての勸告をすて我が督斥を受ざりしに由り
26われ汝らが禍災にあふとき之を笑ひ 汝らの恐懼きたらんとき嘲るべし
27これは汝らのおそれ颶風の如くきたり 汝らのほろび颺風の如くきたり 艱難とかなしみと汝らにきたらん時なり
28そのとき彼等われを呼ばん 然れどわれ應へじ 只管に我を求めん されど我に遇じ
29かれら知識を憎み又ヱホバを畏るることを悦ばず
30わが勸に從はず凡て我督斥をいやしめたるによりて
31己の途の果を食ひおのれの策略に飽べし
32拙者の違逆はおのれを殺し 愚なる者の幸福はおのれを滅さん
33されど我に聞ものは平穩に住ひかつ禍害にあふ恐怖なくして安然ならん
第二章
1我が子よ汝もし我が言をうけ 我が誡命を汝のこころに蔵め
2斯て汝の耳を智慧に傾け汝の心をさとりにむけ
3もし知識を呼求め聰明をえんと汝の聲をあげ
4銀の如くこれを探り 秘れたる寳の如くこれを尋ねば
5汝ヱホバを畏るることを暁り 神を知ることを得べし
6そはヱホバは智慧をあたへ 知識と聰明とその口より出づればなり
7かれは義人のために聰明をたくはへ 直く行む者の盾となる
8そは公平の途をたもち その聖徒の途すぢを守りたまへばなり
9斯て汝はつひに公義と公平と正直と一切の善道を暁らん
10すなはち智慧なんぢの心にいり 知識なんぢの霊魂に樂しからん
11謹愼なんぢを守り 聰明なんぢをたもちて
12惡き途よりすくひ虚偽をかたる者より救はん
13彼等は直き途をはなれて幽暗き路に行み
14惡を行ふを樂しみ 惡者のいつはりを悦び
15その途はまがり その行爲は邪曲なり
16聰明はまた汝を妓女より救ひ 言をもて諂ふ婦より救はん
17彼はわかき時の侶をすて その神に契約せしことを忘るるなり
18その家は死に下り その途は陰府に赴く
19凡てかれにゆく者は歸らず また生命の途に達らざるなり
20聰明汝をたもちてよき途に行ませ 義人の途を守らしめん
21そは義人は地にながらへをり 完全者は地に止らん
22されど惡者は地より亡され悖逆者は地より抜さらるべし
第三章
1我が子よわが法を忘るるなかれ 汝の心にわが誡命をまもれ
2さらば此事は汝の日をながくし生命の年を延べ平康をなんぢに加ふべし
3仁慈と眞實とを汝より離すことなかれ 之を汝の項にむすび これを汝の心の碑にしるせ
4さらばなんぢ神と人との前に恩寵と好名とを得べし
5汝こころを盡してヱホバに倚賴め おのれの聰明に倚ることなかれ
6汝すべての途にてヱホバをみとめよ さらばなんぢの途を直くしたまふべし
7自から看て聰明とする勿れ ヱホバを畏れて惡を離れよ
8これ汝の身に良薬となり汝の骨に滋潤とならん
9汝の貨財と汝がすべての產物の初生をもてヱホバをあがめよ
10さらば汝の倉庫はみちて餘り 汝の酒醡は新しき酒にて溢れん
11我子よ汝ヱホバの懲治をかろんずる勿れ その譴責を受くるを厭ふこと勿れ
12それヱホバはその愛する者をいましめたまふ あたかも父のその愛する子を譴むるが如し
13智慧を求め得る人および聰明をうる人は福なり
14そは智慧を獲るは銀を獲るに愈りその利は精金よりも善ければなり
15智慧は眞珠よりも尊し 汝の凡ての財貨も之と比ぶるに足らず
16其右の手には長壽あり その左の手には富と尊貴とあり
17その途は樂しき途なり その徑すぢは悉く平康し
18これは執る者には生命の樹なり これ持ものは福なり
19ヱホバ智慧をもて地をさだめ 聰明をもて天を置たまへり
20その知識によりて海洋はわきいで 雲は露をそそぐなり
21我が子よこれらを汝の眼より離す勿れ 聰明と謹愼とを守れ
22然ばこれは汝の霊魂の生命となり汝の項の妝飾とならん
23かくて汝やすらかに汝の途をゆかん 又なんぢの足つまづかじ
24なんぢ臥とき怖るるところあらず 臥ときは酣く睡らん
25なんぢ猝然なる恐懼をおそれず 惡者の滅亡きたる時も之を怖るまじ
26そはヱホバは汝の倚賴むものにして汝の足を守りてとらはれしめたまはざるべければなり
27汝の手善をなす力あらば之を爲すべき者に爲さざること勿れ
28もし汝に物あらば汝の鄰に向ひ 去て復來れ明日われ汝に予へんといふなかれ
29汝の鄰なんぢの傍に安らかに居らば之にむかひて惡を謀ること勿れ
30人もし汝に惡を爲さずば故なく之と爭ふこと勿れ
31暴虐人を羨むことなく そのすべての途を好とすることなかれ
32そは邪曲なる者はヱホバに惡まるればなり されど義者はその親き者とせらるべし
33ヱホバの呪詛は惡者の家にあり されど義者の室はかれにめぐまる
34彼は嘲笑者をあざけり 謙る者に恩惠をあたへたまふ
35智者は尊榮をえ 愚なる者は羞辱之をとりさるべし
第四章
1小子等よ父の訓をきけ 聰明を知んために耳をかたむけよ
2われ善敎を汝らにさづく わが律を棄つることなかれ
3われも我が父には子にして 我が母の目には獨の愛子なりき
4父われを敎へていへらく我が言を汝の心にとどめ わが誡命をまもれ 然らば生べし
5智慧をえ聰明をえよ これを忘るるなかれ また我が口の言に身をそむくるなかれ
6智慧をすつることなかれ彼なんぢを守らん 彼を愛せよ彼なんぢを保たん
7智慧は第一なるものなり 智慧をえよ 凡て汝の得たる物をもて聰明をえよ
8彼を尊べ さらば彼なんぢを高く擧げん もし彼を懐かば彼汝を尊榮からしめん
9かれ美しき飾を汝の首に置き 榮の冠弁を汝に予へん
10我が子よきけ 我が言を納れよ さらば汝の生命の年おほからん
11われ智慧の道を汝に敎へ義しき徑筋に汝を導けり
12歩くとき汝の歩は艱まず 趨るときも躓かじ
13堅く訓誨を執りて離すこと勿れ これを守れ これは汝の生命なり
14邪曲なる者の途に入ることなかれ 惡者の路をあやむこと勿れ
15これを避よ 過ること勿れ 離れて去れ
16そは彼等は惡を爲さざれば睡らず 人を躓かせざればいねず
17不義のパンを食ひ暴虐の酒を飮めばなり
18義者の途は旭光のごとし いよいよ光輝をまして晝の正午にいたる
19惡者の途は幽冥のごとし 彼らはその蹟くもののなになるを知ざるなり
20わが子よ我が言をきけ 我が語るところに汝の耳を傾けよ
21之を汝の目より離すこと勿れ 汝の心のうちに守れ
22是は之を得るものの生命にしてまたその全體の良薬なり
23すべての操守べき物よりもまさりて汝の心を守れ そは生命の流これより出ればなり
24虚偽の口を汝より棄さり 惡き口唇を汝より遠くはなせ
25汝の目は正く視 汝の眼瞼は汝の前を眞直に視るべし
26汝の足の徑をかんがへはかり 汝のすべての道を直くせよ
27右にも左にも偏ること勿れ汝の足を惡より離れしめよ
第五章
1我が子よわが智慧をきけ 汝の耳をわが聰明に傾け
2しかしてなんぢ謹愼を守り汝の口唇に知識を保つべし
3娼妓の口唇は蜜を滴らし 其口は脂よりも滑なり
4されど其終は茵蔯の如くに苦く兩刃の劍の如くに利し
5その足は死に下り その歩は陰府に趣く
6彼は生命の途に入らず 其徑はさだかならねども自ら之を知ざるなり
7小子等よいま我にきけ 我が口の言を棄つる勿れ
8汝の途を彼より遠く離れしめよ 其家の門に近づくことなかれ
9恐くは汝の榮を他人にわたし 汝の年を憐憫なき者にわたすにいたらん
10恐くは他人なんぢの資財によりて盈され 汝の勞苦は他人の家にあらん
11終にいたりて汝の身なんぢの體亡ぶる時なんぢ泣悲みていはん
12われ敎をいとひ 心に譴責をかろんじ
13我が師の聲をきかず 我を敎ふる者に耳を傾けず
14あつまりの中會衆のうちにてほとんど諸の惡に陷れりと
15汝おのれの水溜より水を飮み おのれの泉より流るる水をのめ
16汝の流をほかに溢れしめ 汝の河の水を衢に流れしむべけんや
17これを自己に歸せしめ 他人をして汝と偕にこに與らしむること勿れ
18汝の泉に福祉を受しめ 汝の少き時の妻を樂しめ
19彼は愛しき麀のごとく美しき鹿の如し その乳房をもて常にたれりとし その愛をもて常によろこべ
20我子よ何なればあそびめをたのしみ 淫婦の胸を懐くや
21それ人の途はヱホバの目の前にあり 彼はすべて其行爲を量りたまふ
22惡者はおのれの愆にとらへられ その罪の繩に繋る
23彼は訓誨なきによりて死 その多くの愚なることに由りて亡ぶべし
第六章
1我子よ汝もし朋友のために保證をなし 他人のために汝の手を拍ば
2汝その口の言によりてわなにかかり その口の言によりてとらへらるるなり
3我子よ汝友の手に陷りしならば斯して自ら救へ すなはち往て自ら謙だり只管なんぢの友に求め
4汝の目をして睡らしむることなく 汝の眼瞼をして閉しむること勿れ
5かりうどの手より鹿ののがるるごとく 鳥とる者の手より鳥ののがるる如くして みづからを救へ
6惰者よ蟻にゆき其爲すところを觀て智慧をえよ
7蟻は首領なく有司なく君主なけれども
8夏のうちに食をそなへ 収穫のときに糧を斂む
9惰者よ汝いづれの時まで臥息むや いづれの時まで睡りて起ざるや
10しばらく臥ししばらく睡り 手を叉きてまた片時やすむ
11さらば汝の貧窮は盗人の如くきたり汝の缺乏は兵士の如くきたるべし
12邪曲なる人あしき人は虚偽の言をもて事を行ふ
13彼は眼をもて眴せし 脚をもてしらせ 指をもて示す
14その心に虚偽をたもち 常に惡をはかり 爭端を起す
15この故にその禍害にはかに來り 援助なくして立刻に敗らるべし
16ヱホバの憎みたまふもの六あり 否その心に嫌ひたまふもの七あり
17即ち驕る目いつはりをいふ舌 つみなき人の血を流す手
18惡き謀計をめぐらす心 すみやかに惡に趨る足
19詐僞をのぶる證人 および兄弟のうちに爭端をおこす者なり
20我子よ汝の父の誡命を守り 汝の母の法を棄る勿れ
21常にこれを汝の心にむす び之をなんぢの頸に佩よ
22これは汝のゆくとき汝をみちびき 汝の寝るとき汝をまもり 汝の寤るとき汝とかたらん
23それ誡命は燈火なり 法は光なり 敎訓の懲治は生命の道なり
24これは汝をまもりて惡き婦よりまぬかれしめ 汝をたもちて淫婦の舌の諂媚にまどはされざらしめん
25その艶美を心に戀ふことなかれ その眼瞼に捕へらるること勿れ
26それ娼妓のために人はただ僅に一撮の糧をのこすのみにいたる 又淫婦は人の尊き生命を求むるなり
27人は火を懐に抱きてその衣を焚れざらんや
28人は熱火を踏て其足を焚れざらんや
29その隣の妻と姦淫をおこなふ者もかくあるべし 凡て之に捫る者は罪なしとせられず
30竊む者もし饑しときに其饑を充さん爲にぬすめるならば人これを藐ぜじ
31もし捕へられなばその七倍を償ひ其家の所有をことごとく出さざるべからず
32婦と姦淫をおこなふ者は智慧なきなり 之を行ふ者はおのれの霊魂を亡し
33傷と陵辱とをうけて其恥を雪ぐこと能はず
34妒忌その夫をして忿怒をもやさしむればその怨を報ゆるときかならず寛さじ
35いかなる贖物をも顧みず 衆多の饋物をなすともやはらがざるべし
第七章
1我子よわが言をまもり我が誡命を汝の心にたくはへよ
2我が誡命をまもりで生命をえよ 我法を守ること汝の眸子を守るが如くせよ
3これを汝の指にむすび これを汝の心の碑に銘せ
4なんぢ智慧にむかひて汝はわが姉妹なりといひ 明理にむかひて汝はわが友なりといへ
5さらば汝をまもりて淫婦にまよはざらしめ 言をもて媚る娼妓にとほざからしめん
6われ我室の牖により檑子よりのぞきて
7拙き者のうち幼弱者のうちに一人の智慧なき者あるを觀たり
8彼衢をすぎ婦の門にちかづき其家の路にゆき
9黄昏に半宵に夜半に黑暗の中にあるけり
10時に娼妓の衣を着たる狡らなる婦かれにあふ
11この婦は譁しくしてつつしみなく 其足は家に止らず
12あるときは衢にあり 或時はひろばにあり すみずみにたちて人をうかがふ
13この婦かれをひきて接吻し恥しらぬ面をもていひけるは
14われ酬恩祭を献げ今日すでにわが誓願を償せり
15これによりて我なんぢを迎へんとていで 汝の面をたづねて汝に逢へり
16わが榻には美しき褥およびエジプトの文枲をしき
17沒藥蘆薈桂皮をもて我が榻にそそげり
18來れわれら詰朝まで情をつくし愛をかよはして相なぐさめん
19そは夫は家にあらず遠く旅立して
20手に金嚢をとれり 望月ならでは家に歸らじと
21多の婉言をもて惑し口唇の諂媚をもて誘へば
22わかき人ただちにこれに隨へり あだかも牛の宰地にゆくが如く 愚なる者の桎梏をかけらるる爲にゆくが如し
23遂には矢その肝を刺さん 鳥の速かに羅にいりてその生命を喪ふに至るを知ざるがごとし
24小子等よいま我にきけ 我が口の言に耳を傾けよ
25なんぢの心を淫婦の道にかたむくること勿れ またこれが徑に迷ふこと勿れ
26そは彼は多の人を傷つけて仆せり 彼に殺されたる者ぞ多かる
27その家は陰府の途にして死の室に下りゆく
第八章
1智慧は呼はらざるか 聰明は聲を出さざるか
2彼は路のほとりの高處また街衢のなかに立ち
3邑のもろもろの門 邑の口および門々の入口にて呼はりいふ
4人々よわれ汝をよび 我が聲をもて人の子等をよぶ
5拙き者よなんぢら聰明に明かなれ 愚なる者よ汝ら明かなる心を得よ
6汝きけ われ善事をかたらん わが口唇をひらきて正事をいださん
7我が口は眞實を述べ わが口唇はあしき事を憎むなり
8わが口の言はみな義し そのうちに虚偽と奸邪とあることなし
9是みな智者の明かにするところ 知識をうる者の正とするところなり
10なんぢら銀をうくるよりは我が敎をうけよ 精金よりもむしろ知識をえよ
11それ智慧は眞珠に愈れり 凡の寳も之に比ぶるに足らず
12われ智慧は聰明をすみかとし 知識と謹愼にいたる
13ヱホバを畏るるとは惡を憎むことなり 我は傲慢と驕奢 惡道と虚偽の口とを憎む
14謀略と聰明は我にあり 我は了知なり 我は能力あり
15我に由て王者は政をなし 君たる者は義しき律をたて
16我によりて主たる者および牧伯たちなど凡て地の審判人は世ををさむ
17われを愛する者は我これを愛す 我を切に求むるものは我に遇ん
18富と榮とは我にあり 貴き寳と公義とも亦然り
19わが果は金よりも精金よりも愈り わが利は精銀よりもよし
20我は義しき道にあゆみ 公平なる路徑のなかを行む
21これ我を愛する者に貨財をえさせ 又その庫を充しめん爲なり
22ヱホバいにしへ其御わざをなしそめたまへる前に その道の始として我をつくりたまひき
23永遠より元始より地の有ざりし前より我は立られ
24いまだ海洋あらず いまだ大なるみづの泉あらざりしとき我すでに生れ
25山いまださだめられず 陵いまだ有ざりし前に我すでに生れたり
26即ち神いまだ地をも野をも地の塵の根元をも造り給はざりし時なり
27かれ天をつくり海の面に穹蒼を張たまひしとき我かしこに在りき
28彼うへに雲氣をかたく定め 淵の泉をつよくならしめ
29海にその限界をたて 水をしてその岸を踰えざらしめ また地の基を定めたまへるとき
30我はその傍にありて創造者となり 日々に欣び恒にその前に樂み
31その地にて樂み又世の人を喜べり
32されば小子等よ いま我にきけ わが道をまもる者は福ひなり
33敎をききて智慧をえよ 之を棄ることなかれ
34凡そ我にきき 日々わが門の傍にまち わが戸口の柱のわきにたつ人は福ひなり
35そは我を得る者は生命をえ ヱホバより恩寵を獲ればなり
36我を失ふものは自己の生命を害ふ すべて我を惡むものは死を愛するなり
第九章
1智慧はその家を建て その七の柱を砍成し
2その畜を宰り その酒を混和せ その筵をそなへ
3その婢女をつかはして邑の高處に呼はりいはしむ
4拙者よここに來れと また智慧なき者にいふ
5汝等きたりて我が糧を食ひ わがまぜあはせたる酒をのみ
6拙劣をすてて生命をえ 聰明のみちを行め
7嘲笑者をいましむる者は恥を己にえ 惡人を責むる者は疵を己にえん
8嘲笑者を責むることなかれ 恐くは彼なんぢを惡まん 智慧ある者をせめよ 彼なんぢを愛せん
9智慧ある者に授けよ 彼はますます智慧をえん 義者を敎へよ 彼は知識に進まん
10ヱホバを畏るることは智慧の根本なり 聖者を知るは聰明なり
11我により汝の日は多くせられ 汝のいのちの年は増べし
12汝もし智慧あらば自己のために智慧あるなり 汝もし嘲らば汝ひとり之を負ん
13愚なる婦は嘩しく且つたなくして何事をも知らず
14その家の門に坐し邑のたかき處にある座にすわり
15道をますぐに過る往來の人を招きていふ
16拙者よここに來れと また智慧なき人にむかひては之にいふ
17竊みたる水は甘く密かに食ふ糧は美味ありと
18彼處にある者は死し者その客は陰府のふかき處にあることを是等の人は知らざるなり
第十章
1ソロモンの箴言 智慧ある子は父を欣ばす 愚なる子は母の憂なり
2不義の財は益なし されど正義は救ひて死を脱かれしむ
3ヱホバは義者の霊魂を餓ゑしめず 惡者にその欲するところを得ざらしむ
4手をものうくして動くものは貧くなり 勤めはたらく者の手は富を得
5夏のうちに斂むる者は智き子なり 収穫の時にねむる者は辱をきたす子なり
6義者の首には福祉きたり 惡者の口は強暴を掩ふ
7義者の名は讃られ 惡者の名は腐る
8心の智き者は誡命を受く されど口の頑愚なる者は滅さる
9直くあゆむ者はそのあゆむこと安し されどその途を曲ぐる者は知らるべし
10眼をもて眴せする者は憂をおこし 口の頑愚なる者は亡さる
11義者の口は生命の泉なり 惡者の口は強暴を掩ふ
12怨恨は爭端をおこし 愛はすべての愆を掩ふ
13哲者のくちびるには智慧あり 智慧なき者の背のためには鞭あり
14智慧ある者は知識をたくはふ 愚かなる者の口はいまにも滅亡をきたらす
15富者の資財はその堅き城なり 貧者のともしきはそのほろびなり
16義者が動作は生命にいたり 惡者の利得は罪にいたる
17敎をまもる者は生命の道にあり懲戒をすつる者はあやまりにおちいる
18怨をかくす者には虚偽のくちびるあり 誹謗をいだす者は愚かなる者なり
19言おほけれぼ罪なきことあたはず その口唇を禁むるものは智慧あり
20義者の舌は精銀のごとし 惡者の心は値すくなし
21義者の口唇はおほくの人をやしなひ 愚なる者は智慧なきに由て死ぬ
22ヱホバの祝福は人を富す 人の勞苦はこれに加ふるところなし
23愚かなる者は惡をなすを戯れごとのごとくす 智慧のさとかる人にとりても是のごとし
24惡者の怖るるところは自己にきたり 義者のねがふところはあたへらる
25狂風のすぐるとき惡者は無に歸せん 義者は窮なくたもつ基のごとし
26惰る者のこれを遣すものに於るは酢の歯に於るが如く煙の目に於るが如し
27ヱホバを畏るることは人の日を多くす されど惡者の年はちぢめらる
28義者の望は喜悦にいたり惡者の望は絶べし
29ヱホバの途は直者の城となり 惡を行ふものの滅亡となる
30義者は何時までも動かされず 惡者は地に住むことを得じ
31義者の口は智慧をいだすなり 虚偽の舌は抜るべし
32義者のくちびるは喜ばるべきことをわきまへ 惡者の口はいつはりを語る
第十一章
1いつはりの權衝はヱホバに惡まれ 義しき法馬は彼に欣ばる
2驕傲きたれば辱も亦きたる謙だる者には智慧あり
3直者の端荘は己を導き悖逆者の邪曲は己を亡す
4寳は震怒の日に益なし されど正義は救ふて死をまぬかれしむ
5完全者はその正義によりてその途を直くせられ 惡者はその惡によりて跌るべし
6直者はその正義によりて救はれ 悖逆者は自己の惡によりて執へらる
7惡人は死るときにその望たえ 不義なる者の望もまた絶べし
8義者は艱難より救はれ 惡者はこれに代る
9邪曲なる者は口をもてその鄰を亡す されど義しき者はその知識によりて救はる
10義しきもの幸福を受ればその城邑に歓喜あり 惡きもの亡さるれば歓喜の聲おこる
11城邑は直者の祝ふに倚て高く擧られ 惡者の口によりて亡さる
12その鄰を侮る者は智慧なし 聰明人はその口を噤む
13往て人の是非をいふ者は密事を洩し 心の忠信なる者は事を隱す
14はかりごとなければ民たふれ 議士多ければ平安なり
15他人のために保證をなす者は苦難をうけ 保證を嫌ふ者は平安なり
16柔順なる婦は榮譽をえ 強き男子は資財を得
17慈悲ある者は己の霊魂に益をくはへ 殘忍者はおのれの身を擾はす
18惡者の獲る報はむなしく 義を播くものの得る報賞は確し
19堅く義をたもつ者は生命にいたり 惡を追もとむる者はおのれの死をまねく
20心の戻れる者はヱホバに憎まれ 直く道を歩む者は彼に悦ばる
21手に手をあはするとも惡人は罪をまぬかれず 義人の苗裔は救を得
22美しき婦のつつしみなきは金の環の豕の鼻にあるが如し
23義人のねがふところは凡て福祉にいたり 惡人ののぞむところは震怒にいたる
24ほどこし散して反りて増ものあり 與ふべきを吝みてかへりて貧しきにいたる者あり
25施與を好むものは肥え 人を潤ほす者はまた利潤をうく
26穀物を蔵めて糶ざる者は民に詛はる 然れど售る者の首には祝福あり
27善をもとむる者は恩惠をえん 惡をもとむる者には惡き事きたらん
28おのれの富を恃むものは仆れん されど義者は樹の靑葉のごとくさかえん
29おのれの家をくるしむるものは風をえて所有とせん 愚なる者は心の智きものの僕とならん
30義人の果は生命の樹なり 智慧ある者は人を捕ふ
31みよ義人すらも世にありて報をうくべし况て惡人と罪人とをや
第十二章
1訓誨を愛する者は知識を愛す 懲戒を惡むものは畜のごとし
2善人はヱホバの恩寵をうけ 惡き謀略を設くる人はヱホバに罰せらる
3人は惡をもて堅く立ことあたはず 義人の根は動くことなし
4賢き婦はその夫の冠弁なり 辱をきたらする婦は夫をしてその骨に腐あるが如くならしむ
5義者のおもひは直し 惡者の計るところは虚偽なり
6惡者の言は人の血を流さんとて伺ふ されど直者の口は人を救ふなり
7惡者はたふされて無ものとならん されど義者の家は立べし
8人はその聰明にしたがひて譽られ 心の悖れる者は藐めらる
9卑賤してしもべある者は自らたかぶりて食に乏き者に愈る
10義者はその畜の生命を顧みる されど惡者は殘忍をもてその憐憫とす
11おのれの田地を耕すものは食にあく 放蕩なる人にしたがふ者は智慧なし
12惡者はあしき人の獲たる物をうらやみ 義者の根は芽をいだす
13惡者はくちびるの愆によりて罟に陷る されど義者は患難の中よりまぬかれいでん
14人はその口の徳によりて福祉に飽ん 人の手の行爲はその人の身にかへるべし
15愚なる者はみづからその道を見て正しとす されど智慧ある者はすすめを容る
16愚なる者はただちに怒をあらはし 智きものは恥をつつむ
17眞實をいふものは正義を述べ いつはりの證人は虚偽をいふ
18妄りに言をいだし劍をもて刺がごとくする者あり されど智慧ある者の舌は人をいやす
19眞理をいふ口唇は何時までも存つ されど虚偽をいふ舌はただ瞬息のあひだのみなり
20惡事をはかる者の心には欺詐あり 和平を謀る者には歓喜あり
21義者には何の禍害も來らず 惡者はわざはひをもて充さる
22いつはりの口唇はヱホバに憎まれ 眞實をおこなふ者は彼に悦ばる
23賢人は知識をかくす されど愚なる者のこころは愚なる事を述ぶ
24勤めはたらく者の手は人ををさむるにいたり惰者は人に服ふるにいたる
25うれひ人の心にあれば之を屈ます されど善言はこれを樂します
26義者はその友に道を示す されど惡者は自ら途にまよふ
27惰者はおのれの猟獲たる物をも燔ず 勉めはたらくことは人の貴とき寳なり
28義しき道には生命ありその道すぢには死なし
第十三章
1智慧ある子は父の敎訓をきき 戯謔者は懲治をきかず
2人はその口の徳によりて福祉をくらひ悖逆者の霊魂は強暴をくらふ
3その口を守る者はその生命を守る その口唇を大きくひらく者には滅亡きたる
4惰る者はこころに慕へども得ることなし 勤めはたらく者の心は豊饒なり
5義者は虚偽の言をにくみ 惡者ははぢをかうむらせ面を赤くせしむ
6義は道を直くあゆむ者をまもり 惡は罪人を倒す
7自ら富めりといひあらはして些少の所有もなき者あり 自ら貧しと稱へて資財おほき者あり
8人の資財はその生命を贖ふものとなるあり 然ど貧者は威嚇をきくことあらず
9義者の光は輝き惡者の燈火はけさる
10驕傲はただ爭端を生ず 勸告をきく者は智慧あり
11詭計をもて得たる資財は減る されど手をもて聚めたくはふる者はこれを増すことを得
12望を得ること遅きときは心を疾しめ 願ふ所旣にとぐるときは生命の樹を得たるがごとし
13御言をかろんずる者は亡され 誡命をおそるる者は報賞を得
14智慧ある人の敎訓はいのちの泉なり 能く人をして死の罟を脱れしむ
15善にして哲きものは恩を蒙る されど悖逆者の途は艱難なり
16凡そ賢者は知識に由りて事をおこなひ 愚なる者はおのれの痴を顯す
17惡き使者は災禍に陷る されど忠信なる使者は良薬の如し
18貧乏と恥辱とは敎訓をすつる者にきたる されど譴責を守る者は尊まる
19望を得れば心に甘し 愚なる者は惡を棄つることを嫌ふ
20智慧ある者と偕にあゆむものは智慧をえ 愚なる者の友となる者はあしくなる
21わざはひは罪人を追ひ 義者は善報をうく
22善人はその產業を子孫に遺す されど罪人の資財は義者のために蓄へらる
23貧しき者の新田にはおほくの糧あり されど不義によりて亡る者あり
24鞭をくはへざる者はその子を憎むなり 子を愛する者はしきりに之をいましむ
25義しき者は食をえて飽く されど惡者の腹は空し
第十四章
1智慧ある婦はその家をたて 愚なる婦はおのれの手をもて之を毀つ
2直くあゆむ者はヱホバを畏れ 曲りてあゆむ者はこれを侮る
3愚なる者の口にはその傲のために鞭笞あり 智者の口唇はおのれを守る
4牛なければ飼蒭倉むなし牛の力によりて生產る物おほし
5忠信の證人はいつはらず 虚偽のあかしびとは謊言を吐く
6嘲笑者は智慧を求むれどもえず 哲者は知識を得ること容易し
7汝おろかなる者の前を離れされ つひに知識の彼にあるを見ざるべし
8賢者の智慧はおのれの道を暁るにあり 愚なる者の痴は欺くにあり
9おろろかなる者は罪をかろんず されど義者の中には恩惠あり
10心の苦みは心みづから知る其よろこびには他人あづからず
11惡者の家は亡され 正直き者の幕屋はさかゆ
12人のみづから見て正しとする途にしてその終はつひに死にいたる途となるものあり
13笑ふ時にも心に悲あり 歓樂の終に憂あり
14心の悖れる者はおのれの途に飽かん 善人もまた自己に飽かん
15拙者はすべての言を信ず 賢者はその行を愼む
16智慧ある者は怖れて惡をはなれ 愚なる者はたかぶりて怖れず
17怒り易き者は愚なることを行ひ 惡き謀計を設くる者は惡まる
18拙者は愚なる事を得て所有となし 賢者は知識をもて冠弁となす
19惡者は善者の前に俯伏し 罪ある者は義者の門に俯伏す
20貧者はその鄰にさへも惡まる されど富者を愛する者はおほし
21その鄰を藐むる者は罪あり 困苦者を憐むものは幸福あり
22惡を謀る者は自己をあやまるにあらずや 善を謀る者には憐憫と眞實とあり
23すべての勤勞には利益あり されど口唇のことばは貧乏をきたらするのみなり
24智慧ある者の財寳はその冠弁となる 愚なる者のおろかはただ痴なり
25眞實の證人は人のいのちを救ふ 謊言を吐く者は偽人なり
26ヱホバを畏るることは堅き依賴なり その兒輩は逃避場をうべし
27ヱホバを畏るることは生命の泉なり 人を死の罟より脱れしむ
28王の榮は民の多きにあり 牧伯の衰敗は民を失ふにあり
29怒を遅くする者は大なる知識あり 氣の短き者は愚なることを顯す
30心の安穩なるは身のいのちなり 娼嫉は骨の腐なり
31貧者を虐ぐる者はその造主を侮るなり 彼をうやまふ者は貧者をあはれむ
32惡者はその惡のうちにて亡され義者はその死ぬる時にも望あり
33智慧は哲者の心にとどまり 愚なる者の衷にある事はあらはる
34義は國を高くし罪は民を辱しむ
35さとき僕は王の恩を蒙ぶり 辱をきたらす者はその震怒にあふ
第十五章
1柔和なる答は憤恨をとどめ厲しき言は怒を激す
2智慧ある者の舌は知識を善きものとおもはしめ 愚なる者の口はおろかをはく
3ヱホバの目は何處にもありて惡人と善人とを鑒みる
4温柔き舌は生命の樹なり 悖れる舌は霊魂を傷ましむ
5愚なる者はその父の訓をかろんず 誡命をまもる者は賢者なり
6義者の家には多くの資財あり 惡者の利潤には擾累あり
7智者のくちびるは知識をひろむ 愚なる者の心は定りなし
8惡者の祭物はヱホバに憎まれ 直き人の祈は彼に悦ばる
9惡者の道はヱホバに憎まれ 正義をもとむる者は彼に愛せらる
10道をはなるる者には嚴しき懲治あり 譴責を惡む者は死ぬべし
11陰府と沉淪とはヱホバの目の前にあり 况て人の心をや
12嘲笑者は誡めらるることを好まず また智慧ある者に近づかず
13心に喜樂あれば顔色よろこばし 心に憂苦あれば氣ふさぐ
14哲者のこころは知識をたづね 愚なる者の口は愚をくらふ
15艱難者の日はことごとく惡く 心の懽べる者は恒に酒宴にあり
16すこしの物を有てヱホバを畏るるは多の寳をもちて擾煩あるに愈る
17蔬菜をくらひて互に愛するは肥たる牛を食ひて互に恨むるに愈る
18憤ほり易きものは爭端をおこし 怒をおそくする者は爭端をとどむ
19惰者の道は棘の籬に似たり 直者の途は平坦なり
20智慧ある子は父をよろこばせ 愚なる人はその母をかろんず
21無知なる者は愚なる事をよろこび 哲者はその途を直くす
22相議ることあらざれば謀計やぶる 議者おほければ謀計かならず成る
23人はその口の答によりて喜樂をう 言語を出して時に適ふはいかに善らずや
24智人の途は生命の路にして上へ昇りゆく これ下にあるところの陰府を離れんが爲なり
25ヱホバはたかぶる者の家をほろぼし 寡婦の地界をさだめたまふ
26あしき謀計はヱホバに憎まれ 温柔き言は潔白し
27不義の利をむさぼる者はその家をわづらはせ 賄賂をにくむ者は活ながらふべし
28義者の心は答ふべきことを考へ 惡者の口は惡を吐く
29ヱホバは惡者に遠ざかり 義者の祈祷をききたまふ
30目の光は心をよろこばせ 好音信は骨をうるほす
31生命の誡命をきくところの耳は智慧ある者の中間に駐まる
32敎をすつる者は自己の生命をかろんずるなり 懲治をきく者は聰明を得
33ヱホバを畏るることは智慧の訓なり 謙遜は尊貴に先だつ
第十六章
1心に謀るところは人にあり 舌の答はヱホバより出づ
2人の途はおのれの目にことごとく潔しと見ゆ 惟ヱホバ霊魂をはかりたまふ
3なんぢの作爲をヱホバに託せよ さらば汝の謀るところ必ず成るべし
4ヱホバはすべての物をおのおのその用のために造り 惡人をも惡き日のために造りたまへり
5すべて心たかぶる者はヱホバに惡まれ 手に手をあはするとも罪をまぬかれじ
6憐憫と眞實とによりて愆は贖はる ヱホバを畏るることによりて人惡を離る
7ヱホバもし人の途を喜ばば その人の敵をも之と和がしむべし
8義によりて得たるところの僅少なる物は不義によりて得たる多の資財にまさる
9人は心におのれの途を考へはかる されどその歩履を導くものはヱホバなり
10王のくちびるには神のさばきあり 審判するときその口あやまる可らず
11公平の權衡と天秤とはヱホバのものなり 嚢にある法馬もことごとく彼の造りしものなり
12惡をおこなふことは王の憎むところなり 是その位は公義によりて堅く立ばなり
13義しき口唇は王によろこばる 彼等は正直をいふものを愛す
14王の怒は死の使者のごとし 智慧ある人はこれをなだむ
15王の面の光には生命あり その恩寵は春雨の雲のごとし
16智慧を得るは金をうるよりも更に善らずや 聰明をうるは銀を得るよりも望まし
17惡を離るるは直き人の路なり おのれの道を守るは霊魂を守るなり
18驕傲は滅亡にさきだち誇る心は傾跌にさきだつ
19卑き者に交りて謙だるは驕ぶる者と偕にありて贓物をわかつに愈る
20愼みて御言をおこなふ者は益をうべし ヱホバに倚賴むものは福なり
21心に智慧あれば哲者と稱へらる くちびる甘ければ人の知識をます
22明哲はこれを持つものに生命の泉となる 愚なる者をいましむる者はおのれの痴是なり
23智慧ある者の心はおのれの口ををしへ 又おのれの口唇に知識をます
24こころよき言は蜂蜜のごとくにして 霊魂に甘く骨に良薬となる
25人の自から見て正しとする途にして その終はつひに死にいたる途となるものあり
26勞をるものは飮食のために骨をる 是その口おのれに迫ればなり
27邪曲なる人は惡を掘る その口唇には烈しき火のごときものあり
28いつはる者はあらそひを起し つけぐちする者は朋友を離れしむ
29強暴人はその鄰をいざなひ 之を善らざる途にみちびく
30その目を閉て惡を謀り その口唇を蹙めて惡事を成遂ぐ
31白髮は榮の冠弁なり 義しき途にてこれを見ん
32怒を遅くする者は勇士に愈り おのれの心を治むる者は城を攻取る者に愈る
33人は籤をひく されど事をさだむるは全くヱホバにあり
第十七章
1睦じうして一塊の乾けるパンあるは あらそひありて宰れる畜の盈たる家に愈る
2かしこき僕は恥をきたらする子ををさめ 且その子の兄弟の中にありて產業を分ち取る
3銀を試むる者は坩堝 金を試むる者は鑢 人の心を試むる者はヱホバなり
4惡を行ふものは虚偽のくちびるにきき 虚偽をいふ者はあしき舌に耳を傾ぶく
5貧人を嘲るものはその造主をあなどるなり 人の災禍を喜ぶものは罪をまぬかれず
6孫は老人の冠弁なり 父は子の榮なり
7勝れたる事をいふは愚なる人に適はず 况て虚偽をいふ口唇は君たる者に適はんや
8贈物はこれを受る者の目には貴き珠のごとし その向ふところにて凡て幸福を買ふ
9愛を追求むる者は人の過失をおほふ 人の事を言ひふるる者は朋友をあひ離れしむ
10一句の誡命の智人に徹るは百囘扑つことの愚なる人に徹るよりも深し
11叛きもとる者はただ惡きことのみをもとむ 比故に彼にむかひて殘忍なる使者遣はさる
12愚なる者の愚妄をなすにあはんよりは寧ろ子をとられたる牝熊にあへ
13惡をもて善に報ゆる者は惡その家を離れじ
14爭端の起源は堤より水をもらすに似たり この故にあらそひの起らざる先にこれを止むべし
15惡者を義とし義者を惡しとするこの二の者はヱホバに憎まる
16愚なる者はすでに心なし何ぞ智慧をかはんとて手にその價の金をもつや
17朋友はいづれの時にも愛す 兄弟は危難の時のために生る
18智慧なき人は手を拍てその友の前にて保證をなす
19爭端をこのむ者は罪を好み その門を高くする者は敗壞を求む
20邪曲なる心ある者はさいはひを得ず その舌をみだりにする者はわざはひに陷る
21愚なる者を產むものは自己の憂を生じ 愚なる者の父は喜樂を得ず
22心のたのしみは良薬なり 霊魂のうれひは骨を枯す
23惡者は人の懐より賄賂をうけて審判の道をまぐ
24智慧は哲者の面のまへにあり されど愚なる者は目を地の極にそそぐ
25愚なる子は其父の憂となり 亦これを生る母の煩勞となる
26義者を罰するは善らず 貴き者をその義きがために扑は善らず
27言を寡くする者は知識あり 心の靜なる者は哲人なり
28愚なる者も默するときは智慧ある者と思はれ その口唇を閉るときは哲者とおもはるべし
第十八章
1自己を人と異にする者はおのれの欲するところのみを求めてすべての善き考察にもとる
2愚なる者は明哲を喜ばず 惟おのれの心意を顯すことを喜ぶ
3惡者きたれば藐視したがひてきたり 恥きたれば凌辱もともに來る
4人の口の言は深水の如し 湧てながるる川 智慧の泉なり
5惡者を偏視るは善らず 審判をなして義者を惡しとするも亦善らず
6愚なる者の口唇はあらそひを起し その口は打るることを招く
7愚なる者の口はおのれの敗壞となり その口唇はおのれの霊魂の罟となる
8人の是非をいふものの言はたはぶれのごとしといへども反つて腹の奧にいる
9その行爲をおこたる者は滅すものの兄弟なり
10ヱホバの名はかたき櫓のごとし 義者は之に走りいりて救を得
11富者の資財はその堅き城なり これを高き石垣の如くに思ふ
12人の心のたかぶりは滅亡に先だち 謙遜はたふとまるる事にさきだつ
13いまだ事をきかざるさきに應ふる者は愚にして辱をかうぶる
14人の心は尚其疾を忍ぶべし されど心の傷める時は誰かこれに耐んや
15哲者の心は知識をえ 智慧ある者の耳は知識を求む
16人の贈物はその人のために道をひらき かつ貴きものの前にこれを導く
17先に訴訟の理由をのぶるものは正義に似たれども その鄰人きたり詰問ひてその事を明かにす
18籤は爭端をとどめ且つよきものの間にへだてとなる
19怒れる兄弟はかたき城にもまさりて説き伏せがたし 兄弟のあらそひは櫓の貫木のごとし
20人は口の徳によりて腹をあかし その口唇の徳によりて自ら飽べし
21死生は舌の權能にあり これを愛する者はその果を食はん
22妻を得るものは美物を得るなり 且ヱホバより恩寵をあたへらる
23貧者は哀なる言をもて乞ひ 富人は厲しき答をなす
24多の友をまうくる人は遂にその身を亡す 但し兄弟よりもたのもしき知己もまたあり
第十九章
1ただしく歩むまづしき者は くちびるの悖れる愚なる者に愈る
2心に思慮なければ善らず 足にて急ぐものは道にまよふ
3人はおのれの痴によりて道につまづき 反て心にヱホバを怨む
4資財はおほくの友をあつむ されど貧者はその友に疎まる
5虚偽の證人は罰をまぬかれず 謊言をはくものは避るることをえず
6君に媚る者はおほし 凡そ人は贈物を與ふる者の友となるなり
7貧者はその兄弟すらも皆これをにくむ 况てその友これに遠ざからざらんや 言をはなちてこれを呼とも去てかへらざるなり
8智慧を得る者はおのれの霊魂を愛す 聰明をたもつ者は善福を得ん
9虚偽の證人は罰をまぬかれず 謊言をはく者はほろぶべし
10愚なる者の驕奢に居るは適当からず 况て僕にして上に在る者を治むることをや
11聰明は人に怒をしのばしむ 過失を宥すは人の榮譽なり
12王の怒は獅の吼るが如く その恩典は草の上におく露のごとし
13愚なる子はその父の災禍なり 妻の相爭そふは雨漏のたえぬにひとし
14家と資財とは先祖より承嗣ぐもの 賢き妻はヱホバより賜ふものなり
15懶惰は人を酣寐せしむ 懈怠人は饑べし
16誡命を守るものは自己の霊魂を守るなり その道をかろむるものは死ぬべし
17貧者をあはれむ者はヱホバに貸すなり その施濟はヱホバ償ひたまはん
18望ある間に汝の子を打て これを殺すこころを起すなかれ
19怒ることの烈しき者は罰をうく 汝もしこれを救ふともしばしば然せざるを得じ
20なんぢ勸をきき訓をうけよ 然ばなんぢの終に智慧あらん
21人の心には多くの計畫あり されど惟ヱホバの旨のみ立べし
22人のよろこびは施濟をするにあり 貧者は謊人に愈る
23ヱホバを畏るることは人をして生命にいたらしめ かつ恒に飽足りて災禍に遇ざらしむ
24惰者はその手を盤にいるるも之をその口に擧ることをだにせず
25嘲笑者を打て さらば拙者も愼まん 哲者を譴めよ さらばかれ知識を得ん
26父を煩はし母を逐ふは羞赧をきたらし凌辱をまねく子なり
27わが子よ哲言を離れしむる敎を聽くことを息めよ
28惡き證人は審判を嘲り 惡者の口は惡を呑む
29審判は嘲笑者のために備へられ 鞭は愚なる者の背のために備へらる
第二十章
1酒は人をして嘲らせ 濃酒は人をして騒がしむ 之に迷はさるる者は無智なり
2王の震怒は獅の吼るがごとし 彼を怒らする者は自己のいのちを害ふ
3穩かに居りて爭はざるは人の榮譽なりすべて愚なる者は怒り爭ふ
4惰者は寒ければとて耕さず この故に収穫のときにおよびて求るとも得るところなし
5人の心にある謀計は深き井の水のごとし 然れど哲人はこれを汲出す
6凡そ人は各自おのれの善を誇る されど誰か忠信なる者に遇しぞ
7身を正しくして歩履む義人はその後の子孫に福祉あるべし
8審判の位に坐する王はその目をもてすべての惡を散す
9たれか我わが心をきよめ わが罪を潔められたりといひ得るや
10二種の權衡二種の斗量は等しくヱホバに憎まる
11幼子といへどもその動作によりておのれの根性の清きか或は正しきかをあらはす
12聽くところの耳と視るところの眼とはともにヱホバの造り給へるものなり
13なんぢ睡眠を愛すること勿れ 恐くは貧窮にいたらん 汝の眼をひらけ 然らば糧に飽べし
14買者はいふ惡し惡しと 然れど去りて後はみづから誇る
15金もあり眞珠も多くあれど貴き器は知識のくちびるなり
16人の保證をなす者よりは先その衣をとれ 他人の保證をなす者をばかたくとらへよ
17欺きとりし糧は人に甜し されど後にはその口に沙を充されん
18謀計は相議るによりて成る 戰はんとせば先よく議るべし
19あるきめぐりて人の是非をいふ者は密事をもらす 口唇をひらきてあるくものと交ること勿れ
20おのれの父母を罵るものはその燈火くらやみの中に消ゆべし
21初に俄に得たる產業はその終さいはひならず
22われ惡に報いんと言ふこと勿れ ヱホバを待て 彼なんぢを救はん
23二種の法馬はヱホバに憎まる 虚偽の權衡は善らず
24人の歩履はヱホバによる 人いかで自らその道を明かにせんや
25漫に誓願をたつることは其人の罟となる誓願をたててのちに考ふることも亦然り
26賢き王は箕をもて簸るごとく惡人を散し 車輪をもて碾すごとく之を罰す
27人の霊魂はヱホバの燈火にして人の心の奧を窺ふ
28王は仁慈と眞實をもて自らたもつ その位もまた恩惠のおこなひによりて堅くなる
29少者の榮はその力 おいたる者の美しきは白髮なり
30傷つくまでに打たば惡きところきよまり 打てる鞭は腹の底までもとほる
第二十一章
1王の心はヱホバの手の中にありて恰かも水の流れのごとし 彼その聖旨のままに之を導きたまふ
2人の道はおのれの目に正しとみゆ されどヱホバは人の心をはかりたまふ
3正義と公平を行ふは犠牲よりも愈りてヱホバに悦ばる
4高ぶる目と驕る心とは惡人の光にしてただ罪のみ
5勤めはたらく者の圖るところは遂にその身を豊裕ならしめ 凡てさわがしく急ぐ者は貧乏をいたす
6虚偽の舌をもて財を得るは吹はらはるる雲烟のごとし 之を求むる者は死を求むるなり
7惡者の殘虐は自己を亡す これ義しきを行ふことを好まざればなり
8罪人の道は曲り 潔者の行爲は直し
9相爭ふ婦と偕に室に居らんよりは屋蓋の隅にをるはよし
10惡者の霊魂は惡をねがふ その鄰も彼にあはれみ見られず
11あざけるもの罰をうくれば拙者は智慧を得 ちゑあるもの敎をうくれば知識を得
12義しき神は惡者の家をみとめて惡者を滅亡に投いれたまふ
13耳を掩ひて貧者の呼ぶ聲をきかざる者は おのれ自ら呼ぶときもまた聽れざるべし
14潜なる饋物は忿恨をなだめ 懐中の賄賂は烈しき瞋恚をやはらぐ
15公義を行ふことは義者の喜樂にして 惡を行ふものの敗壞なり
16さとりの道を離るる人は死し者の集會の中にをらん
17宴樂を好むものは貧人となり 酒と膏とを好むものは富をいたさじ
18惡者は義者のあがなひとなり 悖れる者は直き者に代る
19爭ひ怒る婦と偕にをらんよりは荒野に居るはよし
20智慧ある者の家には貴き寳と膏とあり 愚なる人は之を呑つくす
21正義と憐憫と追求むる者は生命と正義と尊貴とを得べし
22智慧ある者は強者の城にのぼりて その堅く賴むところを倒す
23口と舌とを守る者はその霊魂を守りて患難に遇せじ
24高ぶり驕る者を嘲笑者となづく これ驕奢を逞しくして行ふものなり
25惰者の情慾はおのれの身を殺す 是はその手を肯て働かせざればなり
26人は終日しきりに慾を圖る されど義者は與へて吝まず
27惡者の献物は憎まる 况て惡き事のために献ぐる者をや
28虚偽の證人は滅さる 然れど聽く人は恒にいふべし
29惡人はその面を厚くし 義者はその道を謹む
30ヱホバにむかひては智慧も明哲も謀略もなすところなし
31戰闘の日のために馬を備ふ されど勝利はヱホバによる
第二十二章
1嘉名は大なる富にまさり恩寵は銀また金よりも佳し
2富者と貧者と偕に世にをる 凡て之を造りし者はヱホバなり
3賢者は災禍を見てみづから避け 拙者はすすみて罰をうく
4謙遜とヱホバを畏るる事との報は富と尊貴と生命となり
5悖れる者の途には荊棘と罟とあり 霊魂を守る者は遠くこれを離れん
6子をその道に從ひて敎へよ 然ばその老たる時も之を離れじ
7富者は貧者を治め借者は貸人の僕となる
8惡を播くものは禍害を穡り その怒の杖は廢るべし
9人を見て惠む者はまた惠まる 此はその糧を貧者に與ふればなり
10嘲笑者を逐へば爭論も亦さり 且闘諍も恥辱もやむ
11心の潔きを愛する者はその口唇に憐憫をもてり 王その友とならん
12ヱホバの目は知識ある者を守る 彼は悖れる者の言を敗りたまふ
13惰者はいふ獅そとにあり われ衢にて殺されんと
14妓婦の口は深き坑なり ヱホバに憎まるる者これに陷らん
15痴なること子の心の中に繋がる 懲治の鞭これを逐いだす
16貧者を虐げて自らを富さんとする者と富者に與ふる者とは遂にかならず貧しくなる
17汝の耳を傾ぶけて智慧ある者の言をきき且なんぢの心をわが知識に用ゐよ
18之を汝の腹にたもちて 盡くなんぢの口唇にそなはらしめば樂しかるべし
19汝をしてヱホバに倚賴ましめんが爲にわれ今日これを汝に敎ふ
20われ勸言と知識とをふくみたる勝れし言を汝の爲に録ししにあらずや
21これ汝をして眞の言の確實なることを暁らしめ 且なんぢを遣しし者に眞の言を持歸らしめん爲なり
22弱き者を弱きがために掠むることなかれ 艱難者を門にて壓つくること勿れ
23そはヱホバその訴を糺し且かれらを害ふものの生命をそこなはん
24怒る者と交ること勿れ 憤ほる人とともに往ことなかれ
25恐くは汝その道に效ひてみづから罟に陷らん
26なんぢ人と手をうつ者となることなかれ 人の負債の保證をなすこと勿れ
27汝もし償ふべきものあらずば人なんぢの下なる臥牀までも奪ひ取ん 是豈よからんや
28なんぢの先祖がたてし古き地界を移すこと勿れ
29汝その業に巧なる人を見るか 斯る人は王の前に立ん かならず賤者の前にたたじ
第二十三章
1なんぢ侯たる者とともに坐して食ふときは 愼みて汝の前にある者の誰なるかを思へ
2汝もし食を嗜む者ならば汝の喉に刀をあてよ
3その珍饈を貧り食ふこと勿れ これ迷惑の食物なればなり
4富を得んと思煩らふこと勿れ 自己の明哲を恃むこと勿れ
5なんぢ虚しきに歸すべき者に目をとむるか 富はかならず自ら翅を生じて鷲のごとく天に飛さらん
6惡目をする者の糧をくらふことなく その珍饈をむさぼりねがふことなかれ
7そはその心に思ふごとくその人となりも亦しかればなり 彼なんぢに食へ飮めといふこといへどもその心は汝に眞實ならず
8汝つひにその食へる物を吐出すにいたり 且その出しし懇懃の言もむなしくならん
9愚なる者の耳に語ること勿れ 彼なんぢが言の示す明哲を藐めん
10古き地界を移すことなかれ 孤子の畑を侵すことなかれ
11そはかれが贖者は強し 必ず汝に對らひて之が訴をのべん
12汝の心を敎に用ゐ 汝の耳を知識の言に傾けよ
13子を懲すことを爲ざるなかれ 鞭をもて彼を打とも死ることあらじ
14もし鞭をもて彼をうたばその霊魂を陰府より救ふことをえん
15わが子よもし汝のこころ智からば我が心もまた歓び
16もし汝の口唇ただしき事をいはば我が腎腸も喜ぶべし
17なんぢ心に罪人をうらやむ勿れ ただ終日ヱホバを畏れよ
18そは必ず應報ありて汝の望は廢らざればなり
19わが子よ 汝ききて智慧をえ かつ汝の心を道にかたぶけよ
20酒にふけり肉をたしむものと交ること勿れ
21それ酒にふける者と肉を嗜む者とは貧しくなり 睡眠を貧る者は敞れたる衣をきるにいたらん
22汝を生る父にきけ 汝の老たる母を軽んずる勿れ
23眞理を買へ これを售るなかれ 智慧と誡命と知識とまた然あれ
24義き者の父は大によろこび 智慧ある子を生る者はこれがために樂しまん
25汝の父母を樂しませ 汝を生る者を喜ばせよ
26わが子よ汝の心を我にあたへ 汝の目にわが途を樂しめ
27それ妓婦は深き坑のごとく 淫婦は狭き井のごとし
28彼は盗賊のごとく人を窺ひ かつ世の人の中に悖れる者を増なり
29禍害ある者は誰ぞ 憂愁ある者は誰ぞ 爭端をなす者は誰ぞ 煩慮ある者は誰ぞ 故なくして傷をうくる者は誰ぞ 赤目ある者は誰ぞ
30是すなはち酒に夜をふかすもの 往て混和せたる酒を味ふる者なり
31酒はあかく盃の中に泡だち滑かにくだる 汝これを見るなかれ
32是は終に蛇のごとく噬み蝮の如く刺すべし
33また汝の目は怪しきものを見 なんぢの心は諕言をいはん
34汝は海のなかに偃すもののごとく帆桅の上に偃すもののごとし
35汝いはん人われを撃ども我いたまず 我を拷けども我おぼえず 我さめなばまた酒を求めんと
第二十四章
1なんぢ惡き人を羨むことなかれ 又これと偕に居らんことを願ふなかれ
2そはその心に暴虐をはかり その口唇に人を害ふことをいへばなり
3家は智慧によりて建られ 明哲によりて堅くせられ
4また室は知識によりて各種の貴く美しき寳にて充されん
5智慧ある者は強し 知識ある人は力をます
6汝よき謀計をもて戰闘をなせ 勝利は議者の多きによる
7智慧は高くして愚なる者の及ぶところにあらず 愚なる者は門にて口を啓くことをえず
8惡をなさんと謀る者を邪曲なる者と稱ふ
9愚なる者の謀るところは罪なり 嘲笑者は人に憎まる
10汝もし患難の日に氣を挫かば汝の力は弱し
11なんぢ死地に曳れゆく者を拯へ 滅亡によろめきゆく者をすくはざる勿れ
12汝われら之を知らずといふとも心をはかる者これを暁らざらんや 汝の霊魂をまもる者これを知ざらんや 彼はおのおのの行爲によりて人に報ゆべし
13わが子よ蜜を食へ 是は美ものなり また蜂のすの滴瀝を食へ 是はなんぢの口に甘し
14智慧の汝の霊魂におけるも是の如しと知れ これを得ばかならず報いありて汝の望すたれじ
15惡者よ義者の家を窺ふことなかれ その安居所を攻ること勿れ
16そは義者は七次たふるるともまた起く されど惡者は禍災によりて亡ぶ
17汝の仇たふるるとき樂しむこと勿れ 彼の亡ぶるときこころに喜ぶことなかれ
18恐くはヱホバこれを見て惡しとし その震怒を彼より離れしめたまはん
19なんぢ惡者を怒ることなかれ 邪曲なる者を羨むなかれ
20それ惡者には後の善賚なし 邪曲なる者の燈火は滅されん
21わが子よヱホバと王とを畏れよ 叛逆者に交ること勿れ
22斯るものらの災禍は速におこる この兩者の滅亡はたれか知えんや
23是等もまた智慧ある者の箴言なり 偏り鞫するは善らず
24罪人に告て汝は義しといふものをは衆人これを詛ひ諸民これを惡まん
25これを譴る者は恩をえん また福祉これにきたるべし
26ほどよき應答をなす者は口唇に接吻するなり
27外にて汝の工をととのへ田圃にてこれを自己のためにそなへ 然るのち汝の家を建よ
28故なく汝の鄰に敵して證することなかれ 汝なんぞ口唇をもて欺くべけんや
29彼の我に爲しし如く我も亦かれになすべし われ人の爲ししところに循ひてこれに報いんといふこと勿れ
30われ曾て惰人の田圃と智慧なき人の葡萄園とをすぎて見しに
31荊棘あまねく生え薊その地面を掩ひ その石垣くづれゐたり
32我これをみて心をとどめ これを觀て敎をえたり
33しばらく臥し 暫らく睡り 手を叉きて又しばらく休む
34さらば汝の貧窮は盗人のごとく汝の缺乏は兵士の如くきたるべし
第二十五章
1此等もまたソロモンの箴言なり ユダの王ヒゼキヤに屬せる人々これを輯めたり
2事を隱すは神の榮譽なり 事を窮むるは王の榮譽なり
3天の高さと地の深さと 王たる者の心とは測るべからず
4銀より渣滓を除け さらば銀工の用ふべき器いでん
5王の前より惡者をのぞけ 然ばその位義によりて堅く立ん
6王の前に自ら高ぶることなかれ 貴人の場に立つことなかれ
7なんぢが目に見る王の前にて下にさげらるるよりは ここに上れといはるること愈れり
8汝かろがろしく出でて爭ふことなかれ 恐くは終にいたりて汝の鄰に辱しめられん その時なんぢ如何になさんとするか
9なんぢ鄰と爭ふことあらば只これと爭へ 人の密事を洩すなかれ
10恐くは聞者なんぢを卑しめん 汝そしられて止ざらん
11機にかなひて語る言は銀の彫刻物に金の林檎を嵌たるが如し
12智慧をもて譴むる者の之をきく者の耳におけることは 金の耳環と精金の飾のごとし
13忠信なる使者は之を遣す者におけること穡收の日に冷かなる雪あるがごとし 能その主の心を喜ばしむ
14おくりものすと偽りて誇る人は雨なき雲風の如し
15怒を緩くすれば君も言を容る 柔かなる舌は骨を折く
16なんぢ蜜を得るか 惟これを足る程に食へ 恐くは食ひ過して之を吐出さん
17なんぢの足を鄰の家にしげくするなかれ 恐くは彼なんぢを厭ひ惡まん
18その鄰に敵して虚偽の證をたつる人は斧刃または利き箭のごとし
19艱難に遇ふとき忠實ならぬ者を賴むは惡しき歯または跛たる足を恃むがごとし
20心の傷める人の前に歌をうたふは寒き日に衣をぬぐが如く 曹達のうへに酢を注ぐが如し
21なんぢの仇もし饑ゑなば之に糧をくらはせ もし渇かば之に水を飮ませよ
22なんぢ斯するは火をこれが首に積むなり ヱホバなんぢに報いたまふべし
23北風は雨をおこし かげごとをいふ舌は人の顔をいからす
24爭ふ婦と偕に室に居らんより屋蓋の隅にをるは宜し
25遠き國よりきたる好き消息は渇きたる人における冷かなる水のごとし
26義者の惡者の前に服するは井の濁れるがごとく泉の汚れたるがごとし
27蜜をおほく食ふは善らず 人おのれの榮譽をもとむるは榮譽にあらず
28おのれの心を制へざる人は石垣なき壞れたる城のごとし
第二十六章
1榮譽の愚なる者に適はざるは夏の時に雪ふり 穡收の時に雨ふるがごとし
2故なき詛は雀の翔り燕の飛ぶが如くにきたるものにあらず
3馬の爲には策あり 驢馬の爲には銜あり 愚なる者の背のために杖あり
4愚なる者の痴にしたがひて答ふること勿れ 恐くはおのれも是と同じからん
5愚なる者の痴にしたがひて之に答へよ 恐くは彼おのれの目に自らを智者と見ん
6愚なる者に托して事を言おくる者はおのれの足をきり身に害をうく
7跛者の足は用なし 愚なる者の口の箴もかくのごとし
8榮譽を愚なる者に與ふるは石を投石索に繋ぐが如し
9愚なる者の口にたもつ箴言は酔へるものの刺ある杖を手にて擧ぐるがごとし
10愚なる者を傭ひ流浪者を傭ふ者は すべての人を傷くる射手の如し
11狗のかへり來りてその吐たる物を食ふがごとく 愚なる者は重ねてその痴なる事をおこなふ
12汝おのれの目に自らを智慧ある者とする人を見るか 彼よりも却て愚なる人に望あり
13惰者は途に獅あり 衢に獅ありといふ
14戸の蝶鉸によりて轉るごとく惰者はその牀に輾轉す
15惰者はその手を盤にいるるも之をその口に擧ることを厭ふ
16惰者はおのれの目に自らを善く答ふる七人の者よりも智慧ありとなす
17路をよぎり自己に關りなき爭擾にたづさはる者は狗の耳をとらふる者のごとし
18 26:19旣にその鄰を欺くことをなして我はただ戯れしのみといふ者は 火箭または鎗または死を擲つ狂人のごとし
20薪なければ火はきえ 人の是非をいふ者なければ爭端はやむ
21煨火に炭をつぎ火に薪をくぶるがごとく爭論を好む人は爭論を起す
22人の是非をいふものの言はたはぶれのごとしと雖もかへつて腹の奧に入る
23温かき口唇をもちて惡き心あるは銀の滓をきせたる瓦片のごとし
24恨むる者は口唇をもて自ら飾れども 心の衷には虚偽をいだく
25彼その聲を和らかにするとも之を信ずるなかれ その心に七の憎むべき者あればなり
26たとひ虚偽をもてその恨をかくすとも その惡は會集の中に顯はる
27坑を掘るものは自ら之に陷らん 石を轉ばしあぐる者の上にはその石まろびかへらん
28虚偽の舌はおのれの害す者を憎み 諂ふ口は滅亡をきたらす
第二十七章
1なんぢ明日のことを誇るなかれ そは一日の生ずるところの如何なるを知ざればなり
2汝おのれの口をもて自ら讃むることなく人をして己を讃めしめよ 自己の口唇をもてせず 他人をして己をほめしめよ
3石は重く沙は軽からず 然ど愚なる者の怒はこの二よりも重し
4忿怒は猛く憤恨は烈し されど嫉妬の前には誰か立ことをを得ん
5明白に譴むるに秘に愛するに愈る
6愛する者の傷つくるは眞實よりし 敵の接吻するは偽詐よりするなり
7飽るものは蜂の蜜をも踐つく されど饑たる者には苦き物さへもすべて甘し
8その家を離れてさまよふ人は その巣を離れてさまよふ鳥のごとし
9膏と香とは人の心をよろこばすなり 心よりして勸言を與ふる友の美しきもまた斯のごとし
10なんぢの友と汝の父の友とを棄るなかれ なんぢ患難にあふ日に兄弟の家にいることなかれ 親しき隣は疏き兄弟に愈れり
11わが子よ智慧を得てわが心を悦ばせよ 然ば我をそしる者に我こたふることを得ん
12賢者は禍害を見てみづから避け 拙者はすすみて罰をうく
13人の保證をなす者よりは先その衣をとれ 他人の保證をなす者をば固くとらへよ
14晨はやく起て大聲にその鄰を祝すれば却て呪詛と見なされん
15相爭ふ婦は雨ふる日に絶ずある雨漏のごとし
16これを制ふるものは風をおさふるがごとく 右の手に膏をつかむがごとし
17鐵は鐵をとぐ 斯のごとくその友の面を研なり
18無花果の樹をまもる者はその果をくらふ 主を貴ぶものは譽を得
19水に照せば面と面と相肖るがごとく 人の心は人の心に似たり
20陰府と沈淪とは飽ことなく 人の目もまた飽ことなし
21坩堝によりて銀をためし鑢によりて金をためし その讃らるる所によりて人をためす
22なんぢ愚なる者を臼にいれ杵をもて麥と偕にこれを搗ともその愚は去らざるなり
23なんぢの羊の情况をよく知り なんぢの群に心を留めよ
24富は永く保つものにあらず いかで位は世々にたもたん
25艸枯れ苗いで山の蔬菜あつめらる
26羔羊はなんぢの衣服を出し 牝羊は田圃を買ふ價となり
27牝羊の乳はおほくして汝となんぢの家人の糧となり汝の女をやしなふにたる
第二十八章
1惡者は逐ふ者なけれども逃げ 義者は獅子のごとくに勇まし
2國の罪によりて侯伯多くなり 智くして知識ある人によりて國は長く保つ
3弱者を虐ぐる貧人は糧をのこさざる暴しき雨のごとし
4律法を棄るものは惡者をほめ 律法を守る者はこれに敵す
5惡人は義きことを覺らず ヱホバを求むる者は凡の事をさとる
6義しくあゆむ貧者は曲れる路をあゆむ富者に愈る
7律法を守る者は智子なり 放蕩なる者に交るものは父を辱かしむ
8利息と高利とをもてその財產を増すものは貧人をめぐむ者のために之をたくはふるなり
9耳をそむけて律法を聞ざる者はその祈すらも憎まる
10義者を惡き道に惑す者はみづから自己の阱に陷らん されど質直なる者は福祉をつぐべし
11富者はおのれの目に自らを智慧ある者となす されど聰明ある貧者は彼をはかり知る
12義者の喜ぶときは大なる榮あり 惡者の起るときは民身を匿す
13その罪を隱すものは榮ゆることなし 然ど認らはして之を離るる者は憐憫をうけん
14恒に畏るる人は幸福なり その心を剛愎にする者は災禍に陷るべし
15貧しき民を治むるあしき侯伯は吼る獅子あるひは饑たる熊のごとし
16智からざる君はおほく暴虐をおこなふ 不義の利を惡む者は遐齢をうべし
17人を殺してその血を心に負ふ者は墓に奔るなり 人これを阻むること勿れ
18義く行む者は救をえ 曲れる路に行む者は直に跌れん
19おのれの田地を耕す者は糧にあき 放蕩なる者に從ふものは貧乏に飽く
20忠信なる人は多くの幸福をえ 速かに富を得んとする者は罪を免れず
21人を偏視るはよからず 人はただ一片のパンのために愆を犯すなり
22惡目をもつ者は財をえんとて急がはしく 却て貧窮のおのれに來るを知らず
23人を譴むる者は舌をもて諂ふ者よりも大なる感謝をうく
24父母の物を竊みて罪ならずといふ者は滅す者の友なり
25心に貧る者は爭端を起し ヱホバに倚賴むものは豊饒になるべし
26おのれの心を恃む者は愚なり 智慧をもて行む者は救をえん
27貧者に賙すものは乏しからず その目を掩ふ者は詛を受ること多し
28惡者の起るときは人匿れ その滅るときは義者ます
第二十九章
1しばしば責られてもなほ強項なる者は救はるることなくして猝然に滅されん
2義者ませば民よろこび 惡きもの權を掌らば民かなしむ
3智慧を愛する人はその父を悦ばせ 妓婦に交る者はその財產を費す
4王は公義をもて國を堅うす されど租税を征取る者はこれを滅す
5その鄰に諂ふ者はかれの脚の前に羅を張る
6惡人の罪の中には罟あり 然ど義者は歓び樂しむ
7義きものは貧きものの訟をかへりみる 然ど惡人は之を知ることを願はず
8嘲笑人は城邑を擾し 智慧ある者は怒をしづむ
9智慧ある人おろかなる人と爭へば或は怒り或は笑ひて休むことなし
10血をながす人は直き人を惡む されど義き者はその生命を救はんことを求む
11愚なる者はその怒をことごとく露はし 智慧ある者は之を心に蔵む
12君王もし虚偽の言を聽かばその臣みな惡し
13貧者と苛酷者と偕に世にをる ヱホバは彼等の目に光をあたへ給ふ
14眞實をもて弱者を審判する王はその位つねに堅く立つべし
15鞭と譴責とは智慧をあたふ 任意になしおかれたる子はその母を辱しむ
16惡きもの多ければ罪も亦おほし 義者は彼等の傾覆をみん
17なんぢの子を懲せ さらば彼なんぢを安からしめ 又なんぢの心に喜樂を與へん
18默示なければ民は放肆にす 律法を守るものは福ひなり
19僕は言をもて譴むるとも改めず 彼は知れども從はざればなり
20なんぢ言を謹まざる人を見しや 彼よりは却て愚なる者に望あり
21僕をその幼なき時より柔かに育てなば終には子の如くならしめん
22怒る人は爭端を起し憤る人は罪おほし
23人の傲慢はおのれを卑くし 心に謙だる者は榮譽を得
24盗人に黨する者はおのれの霊魂を惡むなり 彼は誓を聽けども説述べず
25人を畏るれば罟におちいる ヱホバをたのむ者は護られん
26君の慈悲を求むる者はおほし 然れど人の事を定むるはヱホバによる
27不義をなす人は義者の惡むところ 義くあゆむ人は惡者の惡むところなり
第三十章
1ヤケの子アグルの語なる箴言 かれイテエルにむかひて之をいへり 即ちイテエルとウカルとにいへる所のものなり
2我は人よりも愚なり 我には人の聰明あらず
3我いまた智慧をならひ得ず またいまだ至聖きものを暁ることをえず
4天に昇りまた降りし者は誰か 風をその掌中に聚めし者は誰か 水を衣につつみし者は誰か 地のすべての限界を定めし者は誰か その名は何ぞ その子の名は何ぞ 汝これを知るや
5神の言はみな潔よし 神は彼を賴むものの盾なり
6汝その言に加ふること勿れ 恐くは彼なんぢをせめ 又なんぢを謊る者となしたまはん
7われ二の事をなんぢに求めたり 我が死ざる先にこれをたまへ
8即ち虚假と謊言とを我より離れしめ 我をして貧からしめずまた富しめず 惟なくてならぬ糧をあたへ給へ
9そは我あきて神を知ずといひヱホバは誰なりやといはんことを恐れ また貧くして窃盗をなし我が神の名を汚さんことを恐るればなり
10なんぢ僕をその主に讒ることなかれ 恐くは彼なんぢを詛ひてなんぢ罪せられん
11その父を詛ひその母を祝せざる世類あり
12おのれの目に自らを潔者となして尚その汚穢を滌はれざる世類あり
13また一の世類あり 嗚呼その眼はいかに高きぞや その瞼は昂れり
14その歯は劍のごとく その牙は刃のごとき世類あり 彼等は貧き者を地より呑み 窮乏者を人の中より食ふ
15蛭に二人の女あり 與ヘよ與へよと呼はる 飽ことを知ざるもの三あり 否な四あり皆たれりといはず
16即ち陰府姙まざる胎水に滿されざる地 足りといはざる火これなり
17おのれの父を嘲り母に從ふことをいやしとする眼は 谷の鴉これを抜いだし鷲の雛これを食はん
18わが奇とするもの三あり否な四あり共にわが識ざる者なり
19即ち空にとぷ鷲の路 磐の上にはふ蛇の路 海にはしる舟の路 男の女にあふの路これなり
20淫婦の途も亦しかり 彼は食ひてその口を拭ひ われ惡きことを爲ざりきといふ
21地は三の者によりて震ふ否な四の者によりて耐ることあたはざるなり
22即ち僕たるもの王となるに因り愚なるもの糧に飽るにより
23厭忌はれたる婦の嫁ぐにより婢女その主母に續に因りてなり
24地に四の物あり微小といへども最智し
25蟻は力なき者なれどもその糧を夏のうちに備ふ
26山鼠ば強からざれどもその室を磐につくる
27蝗は王なけれどもみな隊を立ていづ
28守宮は手をもてつかまり王の宮にをる
29善あゆむもの三あり否な四あり皆よく歩く
30獣の中にて最も強くもろもろのものの前より退かざる獅子
31肚帶せし戰馬 牡野羊 および當ること能はざる王これなり
32汝もし愚にして自から高ぶり或は惡きことを計らば汝の手を口に當つべし
33それ乳を搾れば乾酪いで鼻を搾れば血いで 怒を激ふれば爭端おこる
第三十一章
1レムエル王のことば即ちその母の彼に敎へし箴言なり
2わが子よ何を言んか わが胎の子よ何をいはんか 我が願ひて得たる子よ何をいはんか
3なんぢの力を女につひやすなかれ 王を滅すものに汝の途をまかする勿れ
4レムエルよ酒を飮は王の爲べき事に非ず 王の爲べき事にあらず 醇醪を求むるは牧伯の爲すべき事にあらず
5恐くは酒を飮て律法をわすれ 且すべて惱まさるる者の審判を枉げん
6醇醪を亡びんとする者にあたへ 酒を心の傷める者にあたへよ
7かれ飮てその貧窮をわすれ 復その苦楚を憶はざるべし
8なんぢ瘖者のため又すべての孤者の訟のために口をひらけ
9なんぢ口をひらきて義しき審判をなし貧者と窮乏者の訟を糺せ
10誰か賢き女を見出すことを得ん その價は眞珠よりも貴とし
11その夫の心は彼を恃み その產業は乏しくならじ
12彼が存命ふる間はその夫に善事をなして惡き事をなさず
13彼は羊の毛と麻とを求め喜びて手から操き
14商賈の舟のごとく遠き國よりその糧を運び
15夜のあけぬ先に起てその家人に糧をあたへ その婢女に日用の分をあたふ
16田畝をはかりて之を買ひ その手の操作をもて葡萄園を植ゑ
17力をもて腰に帶し その手を強くす
18彼はその利潤の益あるを知る その燈火は終夜きえず
19かれ手を紡線車にのべ その指に紡錘をとり
20手を貧者にのべ 手を困苦者に舒ぶ
21彼は家人の爲に雪をおそれず 蓋その家人みな蕃紅の衣をきればなり
22彼はおのれの爲に美しき褥子をつくり 細布と紫とをもてその衣とせり
23その夫はその地の長老とともに邑の門に坐するによりて人に知るるなり
24彼は細布の衣を製りてこれをうり 帶をつくりて商賈にあたふ
25彼は筋力と尊貴とを衣とし且のちの日を笑ふ
26彼は口を啓きて智慧をのぶ 仁愛の敎誨その舌にあり
27かれはその家の事を鑒み 怠惰の糧を食はず
28その衆子は起て彼を祝す その夫も彼を讃ていふ
29賢く事をなす女子は多けれども 汝はすべての女子に愈れり
30艶麗はいつはりなり 美色は呼吸のごとし 惟ヱホバを畏るる女は譽られん
31その手の操作の果をこれにあたへ その行爲によりてこれを邑の門にほめよ