エレミヤの哀歌

第一章

1ああ(かな)しいかな古昔(むかし)(ひと)のみちみちたりし(この)都邑(みやこ) いまは(さび)しき(さま)にて()寡婦(やもめ)のごとくになれり (ああ)もろもろの(たみ)(うち)にて(おほ)いなりし(もの) もろもろの(くに)(なか)女王(によわう)たりし(もの) いまはかへつて(みつぎ)をいるる(もの)となりぬ 2(かれ)よもすがら(いた)()きかなしみて(なみだ)(かほ)にながる その(こひ)(びと)(なか)にはこれを(なぐさ)むる(もの)ひとりだに()く その(とも)これに(そむ)きてその(あだ)となれり 3ユダは艱難(なやみ)(ゆゑ)によりまた(おほ)いなる苦役(くえき)のゆゑによりて(とら)はれゆき もろもろの(くに)(すま)ひて安息(やすみ)()ず これを()ふものみな狭隘(はざま)にてこれに(おひ)しきぬ 4シオンの道路(みち)節會(せちゑ)(のぼ)()(もの)なきがために(かな)しみ その(もん)はことごとく()れ その祭司(さいし)(なげ)き その處女(をとめ)(うれ)へ シオンもまた(みづ)から(くる)しむ 5その(あだ)(かしら)となり その(てき)(さか)ゆ その(とが)(おほ)きによりてヱホバこれをなやませたまへるなり そのわかき子等(こら)(とら)はれて(あだ)(まへ)にゆけり 6シオンの(むすめ)よりはその榮華(さかえ)ことごとく(はな)れされり またその牧伯等(きみたち)(くさ)()ざる鹿(しか)のごとくに()り おのれを()ふものの(まへ)(ちから)つかれて(あゆ)みゆけり 7ヱルサレムはその艱難(なやみ)窘迫(くるしみ)(とき)むかしの()にありしもろもろの(たの)しき(もの)(おも)()づ その(たみ)(あだ)()におちいり(たれ)もこれを(たす)くるものなき(とき) 仇人(あだびと)これを()てその(あら)はてたるを(わら)8ヱルサレムははなはだしく(つみ)ををかしたれば汚穢(けがれ)たる(もの)のごとくになれり (さき)にこれを(たふ)とびたる(もの)もその裸體(はだか)()しによりて(みな)これをいやしむ (これ)もまたみづから(なげ)()をそむけて退(しり)ぞけり 9その汚穢(けがれ)これが(もすそ)にあり (かれ)その終局(をはり)をおもはざりき 此故(このゆゑ)(おど)ろくまでに零落(おちぶれ)たり 一人(ひとり)(なぐ)さむる(もの)だに()し ヱホバよわが艱難(なやみ)をかへりみたまへ (てき)(かち)ほこれり 10(てき)すでに()(のべ)てその財寳(たから)をことごとく(うば)ひたり (なんぢ)さきに異邦人(ことくにびと)()はなんぢの公會(こうくわい)にいるべからずと(めい)じおきたまひしに (かれ)らが聖所(せいじよ)(をか)しいるをシオンは()たり 11その(たみ)はみな(なげ)きて食物(くひもの)をもとめ その生命(いのち)(ささ)へんがために財寳(たから)(いだ)して(しよく)にかへたり ヱホバよ()そなはし(われ)のいやしめらるるを(かへ)りみたまへ 12すべて行路人(みちゆくひと)よ なんぢら(なに)ともおもはざるか ヱホバその(はげ)しき震怒(いかり)()(われ)をなやましてわれに(くだ)したまへるこの憂苦(うれひ)にひとしき憂苦(うれひ)また()にあるべきや(かん)がへ()13ヱホバ(うへ)より()をくだしわが(ほね)にいれて(これ)克服(かちふく)せしめ (あみ)()りわが(あし)をとらへて(われ)(うしろ)にむかしめ (われ)をして終日(ひねもす)(こころ)さびしくかつ(やみ)わづらはしめたまふ 14わが愆尤(とが)(くびき)(しゆ)御手(みて)にて(むす)ばれ(もろもろ)(とが)あひ(まつ)はりてわが(くび)にのれり (これ)はわが(ちから)をしておとろへしむ (しゆ)われを(あた)たりがたき(もの)()にわたしたまへり 15(しゆ)われの(うち)なる勇士(ますらを)をことごとく(のぞ)節會(せちゑ)をもよほして(われ)(せめ)め わが(わか)(ひと)(うち)ほろぼしたまへり (しゆ)酒榨(さかぶね)をふむがごとくにユダの處女(をとめ)をふみたまへり 16これがために(われ)なげく わが()やわが()には(みづ)ながる わがたましひを(いか)すべき(なぐ)さむるものわれに(とほ)ければなり わが子等(こら)(てき)(かて)るによりて(ほろ)びうせにき 17シオンは()をのぶれども(たれ)もこれを(なぐ)さむる(もの)なし ヤコブにつきてはヱホバ(めい)をくだしてその周圍(まはり)(たみ)をこれが(てき)とならしめたまふ ヱルサレムは(かれ)らの(なか)にありて(けが)れたる(もの)のごとくなりぬ 18ヱホバは(ただ)(われ)その命令(おふせ)にそむきたるなり 一切(すべて)(たみ)よわれに()け わが憂苦(うれひ)をかへりみよ わが處女(をとめ)もわかき(をとこ)俘囚(とらはれ)(ゆけ)19われわが戀人(こひびと)(よび)たれども(かれ)らはわれを(あざ)むけり わが祭司(さいし)およびわが長老(としより)生命(いのち)(つな)がんとて食物(くひもの)(もと)むる()都邑(まち)(うち)にて氣息(いき)たえたり 20ヱホバよかへりみたまへ (われ)はなやみてをり わが(はらわた)わきかへり わが(こころ)わが(うち)顛倒(てんたう)(われ)(はなはだ)しく(もと)りたればなり (そと)には(つるぎ)ありてわが()(ころ)(うち)には()のごとき(もの)あり 21かれらはわが嗟歎(なげく)をきけり (われ)をなぐさむるもの一人(ひとり)だに()し わが(てき)みなわが艱難(なやみ)をききおよび (なんぢ)のこれを(なし)たまひしを(よろ)こべり (なんぢ)はさきに(つぐ)しらせしその()(きた)らせたまはん (しか)して(かれ)らもつひに(わが)ごとくに()るべし 22ねがはくは彼等(かれら)(あた)へし艱難(なやみ)をことごとくなんぢの御前(みまへ)にあらはし (さき)にわがもろもろの罪愆(つみとが)のために(われ)におこなひし(ごと)(かれ)らにも(おこな)ひたまへ わが嗟歎(なげき)(おほ)くわが(こころ)はうれひかなしむなり

第二章

1ああヱホバ震怒(いかり)をおこし 黑雲(くろくも)をもてシオンの(むすめ)(おほ)ひたまひ イスラエルの榮光(さかえ)(てん)より()におとし その震怒(いかり)()(おのれ)足凳(あしだい)(こころ)にとめたまはざりき 2(しゆ)ヤコブのすべての住居(すみか)(のみ)つくしてあはれまず 震怒(いかり)によりてユダの(むすめ)保砦(とりで)(こぼ)ち これを()にたふし その(くに)とその牧伯等(きみたち)(はづ)かしめ 3(はげ)しき震怒(いかり)をもてイスラエルのすべての(つの)()(てき)(まへ)にて(おのれ)(みぎ)()をひきちぢめ 四面(あたり)()きつくす(もゆ)()のごとくヤコブを()4(てき)のごとく(ゆみ)()(あだ)のごとく(みぎ)()(のべ)()(すべ)()(よろ)こばしきものを(ほろぼ)し シオンの(むすめ)幕屋(まくや)()のごとくその(いかり)をそそぎたまへり 5(しゆ)(てき)のごとくに(なり)たまひてイスラエルを(のみ)ほろぼし その(もろもろ)殿(との)(のみ)ほろぼし そのもろもろの保砦(とりで)をこぼち ユダの(むすめ)(うへ)憂愁(うれひ)悲哀(かなしみ)(まし)くはへ 6(その)のごとく(おのれ)幕屋(まくや)(あら)し その集會(あつまり)(ところ)をほろぼしたまへり ヱホバ節會(せちゑ)安息日(あんそくにち)とをシオンに(わす)れしめ (はげ)しき(いかり)によりて(わう)祭司(さいし)とをいやしめ(すて)たまへり 7(しゆ)その祭壇(さいだん)忌棄(いみす)て その聖所(せいじよ)(きら)(にく)みて その(もろもろ)殿(との)石垣(いしがき)(てき)()にわたしたまへり (かれ)らは節會(せちゑ)()のごとくヱホバの(いへ)にて(こゑ)をたつ 8ヱホバ、シオンの(むすめ)石垣(いしがき)(こぼ)たんと(おも)ひさだめ (なは)()り こぼち(すす)みてその()をひかず (ほり)石垣(いしがき)とをして(かな)しましめたまふ (これ)らは(とも)(うれ)9その(もん)()(うづ)もれ ヱホバその關木(くわんぬき)をこぼちくだき その(わう)ともろもろの牧伯(きみ)律法(おきて)なき國人(くにびと)(なか)にあり その預言者(よげんしや)はヱホバより異象(いしやう)(かうむ)らず 10シオンの(むすめ)長老等(としよりたち)()(すわ)りて(もく)(かうべ)(はひ)をかむり ()(あさ)をまとふ ヱルサレムの處女(をとめ)(かうべ)()()11わが()(なみだ)(ため)(つぶ)れんとし わが(はらわた)(わき)かへり わが(きも)()(まみ)る わが(たみ)(むすめ)ほろぼされ 幼少(をさなき)ものや乳哺子(ちのみご)(つか)れはてて(まち)街衢(ちまた)氣息(いき)たへなんとすればなり 12かれらは(きず)(おへ)(もの)(ごと)(まち)のちまたにて氣息(いき)たえなんとし (はは)(ふところ)にその靈魂(たましひ)をそそがんとし (はは)にむかひて()穀物(こくもつ)(さけ)とはいづくにあるやと 13ヱルサレムの(むすめ)(われ)なにをもて(なんぢ)にあかしし (なに)をもて(なんぢ)にならべんや シオンの處女(をとめ)よ われ(なに)をもて(なんぢ)になぞらへて(なんぢ)をなぐさめんや (なんぢ)のやぶれは(うみ)のごとく(おほい)なり (ああ)たれか()(なんぢ)(いや)さんや 14なんぢの預言者(よげんしや)(むな)しき(こと)(おろか)なることとなんぢに預言(よげん)し かつて(なんぢ)不義(ふぎ)をあらはしてその俘囚(とらはれ)をまぬかれしめんとはせざりき その預言(よげん)するところは(ただ)むなしき重荷(おもに)および追放(おひはな)たるる根本(もと)となるべき(こと)のみ 15すべて往來(ゆきき)(ひと)なんぢにむかひて()()ち ヱルサレムの(むすめ)にむかひて(あざけ)りわらひ かつ(かうべ)をふりて()美麗(うるはしき)(きはみ)全地(ぜんち)欣喜(よろこび)ととなへたりし(まち)(これ)なるかと 16なんぢのもろもろの(てき)はなんぢに(むか)ひて(くち)()け あざけり(わら)ひて切齒(はがみ)をなす (かく)()ふわれら(これ)(のみ)つくしたり (これ)われらが(のぞ)みたりし()なり (われ)(すで)(これ)にあへり (われ)らすでに(これ)()たりと 17ヱホバはその(さだ)めたまへることを()し いにしへより(その)(めい)じたまひし(ことば)(はた)したまへり ヱホバはほろぼして(あはれ)れまず (てき)をして(なんぢ)にかちほこらしめ(なんぢ)(あだ)(つの)をたかくしたまへり 18かれらの(こころ)(しゆ)にむかひて(よば)はれり シオンの(むすめ)墻垣(かき)よ なんぢ()(ひる)(かは)(ごと)(なみだ)をながせ みづから(やす)んずることをせず (なんぢ)瞳子(ひとみ)(やす)むることなかれ 19なんぢ()初更(しよかう)(おき)いでて(よび)さけべ (しゆ)御前(おんまへ)(なんぢ)(こころ)(みづ)のごとく(そそ)街衢(ちまた)のほとりに(うゑ)たふるるなんぢの幼兒(をさなご)生命(いのち)のために(しゆ)にむかひて兩手(もろて)をあげよ 20ヱホバよ()たまへ (なんぢ)これを(たれ)におこなひしか (ねが)はくは(かへり)みたまへ 婦人(をんな)おのが()なるその(いだ)(そだ)てし孩兒(をさなご)(くら)ふべけんや 祭司(さいし)預言者(よげんしや)()(しゆ)聖所(せいじよ)において(ころ)さるべけんや 21をさなきも(おい)たるも街衢(ちまた)にて()()し わが處女(をとめ)(わか)(をとこ)(やいば)にかかりて(たふ)れたり なんぢはその震怒(いかり)()にこれを(ころ)し これを(ほふ)りて(あは)れみたまはざりき 22なんぢ節會(せちゑ)()のごとくわが(おそ)るるところの(もの)四方(よも)より(よび)あつめたまへり ヱホバの震怒(いかり)()には(のが)れたる(もの)なく(また)のこりたる(もの)なかりき わが(いだ)(そだ)てし(もの)はみなわが(てき)のためにほろぼされたり

第三章

1(われ)はかれの震怒(いかり)(しもと)によりて艱難(なやみ)(あひ)たる(ひと)なり 2かれは(われ)をひきて黑暗(くらき)をあゆませ光明(ひかり)にゆかしめたまはず 3まことに屢々(しばしば)その()をむけて終日(ひねもす)われを(せめ)なやまし 4わが(にく)肌膚(はだへ)をおとろへしめ わが(ほね)(くだ)5われにむかひて患苦(くるしみ)艱難(なやみ)(きづ)きこれをもて(われ)(かこ)6われをして長久(とこしなへ)(しに)(もの)のごとく(くら)(ところ)(すま)しめ 7(われ)をかこみて(いづ)ること(あた)はざらしめわが鏈索(くさり)(おも)くしたまへり 8(われ)さけびて(たすけ)をもとめしとき(かれ)わが祈禱(いのり)をふせぎ 9(きり)たる(いし)をもてわが(みち)(ふさ)ぎわが(みち)をまげたまへり 10その(われ)(たい)することは(ふし)(うか)がふ(くま)のごとく(ひそ)みかくるる獅子(しし)のごとし 11われに(みち)(はな)れしめ (われ)をひきさきて(ひとり)くるしましめ 12(ゆみ)()りてわれを()(さき)(まと)となし 13矢筒(えびら)()をもてわが(こし)()ぬきたまへり 14われはわがすべての(たみ)のあざけりとなり 終日(ひねもす)うたひそしらる 15かれ(われ)をして(にが)(もの)(あか)しめ茵蔯(いんちん)(のま)しめ 16小石(こいし)をもてわが()(くだ)(はひ)をもて(われ)(おほ)ひたまへり 17なんぢわが靈魂(たましひ)をして平和(へいわ)(とほ)くはなれしめたまへば(われ)福祉(さいはひ)をわすれたり 18(ここ)において(われ)みづから(いへ)り わが氣力(ちから)うせゆきぬ ヱホバより(なに)(のぞ)むべきところ()しと 19ねがはくは()艱難(なやみ)苦楚(くるしみ)茵蔯(いんちん)膽汁(たんじふ)とを(こころ)(とめ)たまへ 20わがたましひは(いま)なほ(これ)らの(こと)(おも)ひてわが(うち)(ふさ)21われこの(こと)(こころ)におもひ(おこ)せり この(ゆゑ)(のぞみ)をいだくなり 22われらの(なほ)ほろびざるはヱホバの仁愛(いつくしみ)によりその憐憫(あはれみ)(つき)ざるに()23これは(あさ)ごとに(あらた)なり なんぢの誠實(まこと)はおほいなるかな 24わが靈魂(たましひ)()ふ ヱホバはわが(ぶん)なり このゆゑに(われ)(かれ)()(のぞ)まん 25ヱホバはおのれを()(のぞ)(もの)とおのれを(たづ)ねもとむる(ひと)恩惠(めぐみ)をほどこしたまふ 26ヱホバの救拯(すくひ)をのぞみて(しづか)にこれを(まつ)()27(ひと)わかき(とき)(くびき)(おふ)()28ヱホバこれを(おは)せたまふなれば(ひとり)()して(もく)すべし 29(くち)(ちり)につけよ あるひは(のぞみ)あらん 30おのれを()(もの)(ほほ)をむけ 充足(みちた)れるまでに恥辱(はづかしめ)をうけよ 31そは(しゆ)永久(とこしなへ)(すつ)ることを(なし)たまはざるべければなり 32かれは患難(なやみ)(あた)(たま)ふといへどもその慈悲(あはれみ)おほいなればまた憐憫(あはれみ)(くは)へたまふなり 33(こころ)より()(ひと)をなやましかつ(くる)しめ(たま)ふにはあらざるなり 34()のもろもろの俘囚人(とらはれびと)(あし)(した)にふみにじり 35至高者(いとたかきもの)(かほ)(まへ)にて(ひと)()()36(ひと)詞訟(うつたへ)(かが)むることは(しゆ)のよろこび(たま)はざるところなり 37(しゆ)(めい)じたまふにあらずば(たれ)(こと)(のべ)んにその(こと)(すなは)(なら)んや 38(わざはひ)(さいはひ)もともに至高者(いとたかきもの)(くち)より(いづ)るにあらずや 39(いけ)(ひと)なんぞ怨言(つぶやく)べけんや (ひと)おのれの(つみ)(ばつ)せらるるをつぶやくべけんや 40我等(われら)みづからの(おこなひ)をしらべかつ(かへり)みてヱホバに(かへ)るべし 41(われ)(てん)にいます(かみ)にむかひて()とともに(こころ)をも(あぐ)べし 42われらは(つみ)ををかし(われ)らは(そむ)きたり なんぢこれを(ゆる)したまはざりき 43なんぢ震怒(いかり)をもてみづから(おほ)(われ)らを追攻(おひせ)(ころ)してあはれまず 44(くも)をもてみづから(おほ)祈禱(いのり)をして(つう)ぜざらしめ 45もろもろの(たみ)(なか)にわれらを塵埃(ちりあくた)となしたまへり 46(てき)(みな)われらにむかひて(くち)()れり 47恐懼(おそれ)陷阱(おとしあな)また暴行(あらび)滅亡(ほろび)(われ)らに(きた)れり 48わが(たみ)(むすめ)滅亡(ほろび)によりてわが()には(なみだ)(かは)ながる 49わが()(たえ)(なみだ)をそそぎて(やま)50(てん)よりヱホバの(のぞ)()(かへり)みたまふ(とき)にまで(いた)らん 51わが(まち)一切(すべて)女等(むすめども)(ゆゑ)によりてわが()はわが(こころ)をいたましむ 52(ゆゑ)なくして(われ)(てき)する(もの)ども(とり)(おふ)ごとくにいたく(われ)をおひ 53わが生命(いのち)(あな)(なか)にほろぼし わが(うへ)(いし)(なげ)かけ 54また(みづ)わが(かしら)(うへ)(あふ)(われ)みづから(いへ)(ほろ)びうせぬと 55ヱホバよ われ(ふか)(あな)(そこ)より(なんぢ)()(よべ)56なんぢ()(こゑ)(きき)たまへり わが哀歎(なげき)祈求(いのり)(みみ)をおほひたまふなかれ 57わが(なんぢ)(よび)たりし(とき)なんぢは(ちかづ)よりたまひて(おそ)るるなかれと(のたま)へり 58(しゆ)よなんぢはわが靈魂(たましひ)(うつたへ)(たす)()べ わが生命(いのち)(あがな)(たま)へり 59ヱホバよ なんぢは()がかうむりたる不義(ふぎ)()たまへり (ねが)はくは(われ)(ただ)しき審判(さばき)(あた)へたまへ 60なんぢは(かれ)らが(われ)(うら)み われを(がい)せんとはかるを(すべ)()たまへり 61ヱホバよなんぢは(かれ)らが(われ)(ののし)(われ)(がい)せんとはかるを(すべ)(きき)たまへり 62かの(たち)(われ)(さか)らふ者等(ものども)言語(ことば)およびその終日(ひねもす)われを(せめ)んとて(めぐ)らす謀計(はかりごと)もまた(なんぢ)これを(きき)たまへり 63ねがはくは(かれ)らの起居(たちゐ)をかんがみたまへ (われ)はかれらに(うた)ひそしらる 64ヱホバよ なんぢは(かれ)らが()()すところに(した)がひて(むくい)をなし 65かれらをして(こころ)くらからしめたまはん なんぢの呪詛(のろひ)かれらに()せよ 66なんぢは震怒(いかり)をもてかれらを()ひ ヱホバの(てん)(した)よりかれらをほろぼし(たち)たまはん

第四章

1ああ黄金(わうごん)(ひかり)をうしなひ純金(じゆんきん)(いろ)(へん)聖所(せいじよ)(いし)はもろもろの街衢(ちまた)(くち)(なげ)すてられたり 2ああ精金(せいきん)にも(くら)ぶべきシオンの愛子等(あいしら)陶噐師(すゑものし)()(さく)なる(つち)(うつは)のごとくに見做(みなさ)3(やま)(いぬ)さへも乳房(ちぶさ)をたれてその()(ちち)(のま)(しか)るにわが(たみ)(むすめ)殘忍(むごく)荒野(あれの)鴕鳥(だてう)のごとくなれり 4乳哺兒(ちのみご)(した)(かわ)きて上顎(うはあご)にひたと()幼兒(をさなご)はパンをもとむるも(さき)てあたふる(もの)なし 5肥甘物(うまきもの)をくらひ()りし(もの)はおちぶれて街衢(ちまた)にあり (くれなゐ)衣服(ころも)にて(そだ)てられし(もの)(いま)塵堆(ちりづか)(いだ)6(いま)我民(わがたみ)(むすめ)のうくる(とが)(ばつ)はソドムの(つみ)(ばつ)よりもおほいなり ソドムは古昔(むかし)(ひと)()(くは)へらるることなくして(またた)(あひだ)にほろぼされしなり 7わが(たみ)(うち)なる(たふと)(ひと)從前(さき)には(ゆき)よりも咬潔(きよらか)(ちち)よりも(しろ)珊瑚(さんご)よりも(からだ)紅色(くれなゐ)にしてその形貌(かたち)のうるはしきこと藍玉(あをだま)のごとくなりしが 8いまはその(かほ)くろきが(うへ)(くろ)街衢(ちまた)にあるとも(ひと)にしられず その(かは)(ほね)にひたと()(かわ)きて(かれ)()のごとくなれり 9(つるぎ)にて(しね)(もの)(うゑ)(しね)(もの)よりもさいはひなり そは(かか)(もの)田圃(たはた)產物(なりいでもの)(つく)るによりて漸々(やうやう)におとろへゆき(ささ)れし(もの)のごとくに(なれ)ばなり 10わが(たみ)(むすめ)のほろぶる(とき)には情愛(なさけ)ふかき婦人等(をんなたち)さへも()づから(おのれ)子等(こども)()(しよく)となせり 11ヱホバその憤恨(いきどほり)をことごとく(もら)(はげ)しき(いかり)をそそぎ(たま)ひ シオンに()をもやしてその基礎(いしづゑ)までも(やか)しめ(たま)へり 12()(しよ)(わう)()のもろもろの(たみ)もすべてヱルサレムの(もん)(あだ)(てき)(うち)いらんとは(しん)ぜざりき 13(かく)なりしはその預言者(よげんしや)(つみ)によりその祭司(さいし)(とが)によれり かれらは(すなは)(ただ)しき(もの)()をその(まち)(なか)にながしたりき 14(いま)かれらは盲人(めくら)のごとく街衢(ちまた)にさまよひ ()()にて(けが)れをれば(ひと)その衣服(ころも)にふるるあたはず 15(ひと)かれらに(むか)ひて(よば)はり()()れよ(けが)らはし ()()(ふる)るなかれと (かれ)らはしり()りて流離(さすらへ)異邦人(いはうじん)中間(なか)にても人々(ひとびと)また()(かれ)らは(ここ)(やど)るべからずと 16ヱホバ(いか)れる(おもて)をもてこれを(ちら)(たま)へり (ふたた)びこれを(かへり)みたまはじ 人々(ひとびと)祭司(さいし)(かほ)をも(たふと)ばず長老(としより)をもあはれまざりき 17われらは(たの)まれぬ救援(たすけ)(のぞ)みて()つかれおとろふ (われ)らは(まち)ゐたりしが救拯(すくひ)をなすこと(あた)はざる國人(くにびと)(まち)をりぬ 18(てき)われらの(あし)をうかがへば(われ)らはおのれの街衢(ちまた)をも(ある)くことあたはず (われ)らの(をはり)ちかづけり (われ)らの()つきたり (すなは)(われ)らの(をはり)きたりぬ 19(われ)らを()ふものは天空(そら)ゆく(わし)よりも(はや)(やま)にて(われ)らを()()(ふし)てわれらを(うかが)20かの(われ)らが(はな)氣息(いき)たる(もの)ヱホバに(あぶら)そそがれたるものは陷阱(おとしあな)にて(とら)へられにき (これ)はわれらが異邦(ことくに)にありてもこの(かげ)(すま)んとおもひたりし(もの)なり 21ウズの()()むエドムの(むすめ)(よろこ)(たの)しめ (なんぢ)にもまたつひに(さかづき)めぐりゆかん なんぢも(ゑひ)(はだか)になるべし 22シオンの(むすめ)よ なんぢが(とが)(ばつ)はをはれり (かさ)ねてなんぢを(とら)へゆきたまはじ エドムの(むすめ)よ なんぢの(とが)(ばつ)したまはん (なんぢ)(つみ)(あら)はしたまはん

第五章

1ヱホバよ(われ)らにありし(ところ)(こと)をおもひたまへ (われ)らの恥辱(はづかしめ)をかへりみ()たまへ 2われらの產業(もちもの)外國人(とつくにびと)()し われらの家屋(いへ)他國人(あだしくにびと)(もの)となれり 3われらは孤子(みなしご)となりて(ちち)あらず われらの(はは)寡婦(やもめ)にひとし 4われらは(かね)(いだ)して自己(おのれ)(みづ)()み おのれの(たきぎ)()るにも(あたひ)をはらふ 5われらを()(もの)われらの(くび)(せま)(われ)らは(つか)れて(やす)むことを()6食物(くひもの)()(うゑ)(しの)がんとてエジプト(びと)およびアッスリヤ(びと)()(あた)へたり 7われらの(ちち)(つみ)ををかして(すで)()にあらず (われ)らその(つみ)()ふなり 8奴僕等(しもべども)われらを(せい)するに(たれ)ありて(われ)らを(これ)()よりすくひ(いだ)すものなし 9荒野(あれの)刀兵(つるぎ)(ゆゑ)によりて(われ)()(をか)して食物(くひもの)() 10饑饉(ききん)(はげ)しき(ねつ)()によりてわれらの皮膚(はだへ)(かまど)のごとく(ねつ)11シオンにて婦人(をんな)(たち)をかされユダの邑々(まちまち)にて處女等(をとめら)けがさる 12侯伯(きみ)たる(もの)(てき)()にて(つる)され (おい)たる(もの)(かほ)(たふ)とばれず 13(わか)(もの)石磨(いしうす)(にな)はせられ 童子(わらべ)(たきぎ)()ふてよろめき 14長老(としより)(もん)にあつまることを()(わか)(もの)はその(おん)(がく)(はい)せり 15(われ)らが(こころ)快樂(たのしみ)はすでに()み われらの跳舞(をどり)はかはりて悲哀(かなしみ)となり 16われらの冠冕(かんむり)(かうべ)より(おち)たり われら(つみ)ををかしたれば(わざはひ)なるかな 17これが(ため)(われ)らの(こころ)うれへ これらのために(われ)らが()くらくなれり 18シオンの(やま)(あれ)はて (やま)(いぬ)はその(うへ)(ある)くなり 19ヱホバよなんぢは永遠(とこしなへ)(いま)す なんぢの御位(みくらゐ)世々(よよ)かぎりなし 20(なに)とて(われ)らを(なが)(わす)れ われらを(かく)ひさしく(すて)おきたまふや 21ヱホバよねがはくは(われ)らをして(なんぢ)(かへ)らしめたまへ われら(かへ)るべし (われ)らの()(あらた)にして昔日(むかし)()のごとくならしめたまへ 22さりとも(なんぢ)まつたく(われ)らを()てたまひしや (いた)くわれらを(いか)りゐたまふや