ゼカリヤ書
第一章
1ダリヨスの二年八月のヱホバの言イドの子ベレキヤの子なる預言者ゼカリヤに臨めり云く
2ヱホバいたく汝らの父等を怒りたまへり
3萬軍のヱホバかく言ふと汝かれらに告よ萬軍のヱホバ言ふ汝ら我に歸れ萬軍のヱホバいふ我も汝らに歸らん
4汝らの父等のごとくならざれ前の預言者等かれらに向ひて呼はりて言り萬軍のヱホバかく言たまふ請ふ汝らその惡き道を離れその惡き行を棄てて歸れと然るに彼等は聽ず耳を我に傾けざりきヱホバこれを言ふ
5汝らの父等は何處にありや預言者たち永遠に生んや
6然ながら我僕なる預言者等に我が命じたる吾言とわが法度とは汝らの父等に追及たるに非ずや然ゆゑに彼らかへりて言り萬軍のヱホバ我らの道に循ひ我らの行に循ひて我らに爲んと思ひたまひし事を我らに爲たまへりと
7ダリヨスの二年十一月すなはちセバテといふ月の二十四日にヱホバの言イドの子ベレキヤの子なる預言者ゼカリヤに臨めり云く
8我夜觀しに一箇の人赤馬に乗て谷の裏なる鳥拈樹の中に立ちその後に赤馬駁馬白馬をる
9我わが主よ是等は何ぞやと問けるに我と語ふ天の使われにむかひて是等の何なるをわれ汝に示さんと言り
10鳥拈樹の中に立る人答へて言けるは是等は地上を遍く歩かしめんとてヱホバの遣したまひし者なりと
11彼ら答へて鳥拈樹の中に立るヱホバの使に言けるは我ら地上を行めぐり觀しに全地は穩にして安し
12ヱホバの使こたへて言ふ萬軍のヱホバよ汝いつまでヱルサレムとユダの邑々を恤みたまはざるか汝はこれを怒りたまひてすでに七十年になりぬと
13ヱホバ我と語ふ天の使に嘉事慰事をもて答へたまへり
14かくて我と語ふ天の使我に言けるは汝呼はりて言へ萬軍のヱホバかく言たまふ我ヱルサレムのためシオンのために甚だしく心を熱して嫉妬おもひ
15安居せる國々の民を太く怒る其は我すこしく怒りしに彼ら力を出して之に害を加へたればなり
16ヱホバかく言ふ是故に我憐憫をもてヱルサレムに歸る萬軍のヱホバのたまふ我室その中に建られ量繩ヱルサレムに張られん
17汝また呼はりて言へ萬軍のヱホバかく宣ふ我邑々には再び嘉物あふれんヱホバふたたびシオンを慰め再びヱルサレムを簡びたまふべしと
18かくて我目を擧て觀しに四の角ありければ
19我に語ふ天の使に是等は何なるやと問しに彼われに答へけるは是等はユダ、イスラエルおよびヱルサレムを散したる角なりと
20時にヱホバ四箇の鍛冶を我に見し給へり
21我是等は何を爲んとて來れるやと問しに斯こたへ給へり是等の角はユダを散して人にその頭を擧しめざりし者なるが今この四箇の者來りて之を威しかのユダの地にむかひて角を擧て之を散せし諸國の角を擲たんとす
第二章
1茲に我目を擧て觀しに一箇の人量繩を手に執居ければ
2汝は何處へ往くやと問しにヱルサレムを量りてその廣と長の幾何なるを觀んとすと我に答ふ
3時に我に語ふ天の使出行たりしが又一箇の天の使出きたりて之に會ひ
4之に言けるは走ゆきてこの少き人に告て言へヱルサレムはその中に人と畜と饒なるによりて野原のごとくに廣く亘るべし
5ヱホバ言たまふ我その四周にて火の垣となりその中にて榮光とならん
6ヱホバいひたまふ來れ來れ北の地より逃きたれ我なんぢらを四方の天風のごとくに行わたらしむればなりヱホバこれを言ふ
7來れバビロンの女子とともに居るシオンよ遁れ來れ
8萬軍のヱホバかく言たまふヱホバ汝等を擄へゆきし國々へ榮光のために我儕を遣したまふ汝らを打つ者は彼の目の珠を打なればなり
9即ち我手をかれらの上に搖ん彼らは己に事へし者の俘虜となるべし汝らは萬軍のヱホバの我を遣したまへるなるを知ん
10ヱホバ言たまふシオンの女子よ喜び樂め我きたりて汝の中に住ばなり
11その日には許多の民ヱホバに附て我民とならん我なんぢの中に住べし汝は萬軍のヱホバの我を遣したまへるなるを知ん
12ヱホバ聖地の中にてユダを取て己の分となし再びヱルサレムを簡びたまふべし
13ヱホバ起てその聖住所よりいでたまへば凡そ血肉ある者ヱホバの前に粛然たれ
第三章
1彼祭司の長ヨシユアがヱホバの使の前に立ちサタンのその右に立てこれに敵しをるを我に見す
2ヱホバ、サタンに言たまひけるはサタンよヱホバ汝をせむべし即ちヱルサレムを簡びしヱホバ汝をいましむ是は火の中より取いだしたる燃柴ならずやと
3ヨシユア汚なき衣服を衣て使の前に立をりしが
4ヱホバ己の前に立る者等に告て汚なき衣服を之に脱せよと宣ひまたヨシユアに向ひて觀よ我なんぢの罪を汝の身より取のぞけり汝に美服を衣すべしと宣へり
5我また潔き冠冕をその首に冠らせよと言り是において潔き冠冕をその首に冠らせ衣服をこれに衣すヱホバの使は立をる
6ヱホバの使證してヨシユアに言ふ
7萬軍のヱホバかく言たまふ汝もし我道を歩みわが職守を守らば我家を司どり我庭を守ることを得ん我また此に立る者等の中に往來する路を汝に與ふべし
8祭司の長ヨシユアよ請ふ汝と汝の前に坐する汝の同僚とともに聽べし彼らは即ち前表となるべき人なり我かならず我僕たる枝を來らすべし
9ヨシユアの前に我が立るところの石を視よ此一箇の石の上に七箇の目あり我自らその彫刻をなす萬軍のヱホバこれを言ふなり我この地の罪を一日の内に除くべし
10萬軍のヱホバ言たまふ其日には汝等おのおの互に相招きて葡萄の樹の下無花果の樹の下にあらん
第四章
1我に語へる天の使また來りて我を呼醒せり我は睡れる人の呼醒されしごとくなりき
2彼我にむかひて汝何を見るやと言ければ我いへり我觀に惣金の燈臺一箇ありてその頂に油を容る噐ありまた燈臺の上に七箇の燭盞ありその燭盞は燈臺の頂にありて之に各七本づつの管あり
3また燈臺の側に橄欖の樹二本ありて一は油を容る噐の右にあり一はその左にあり
4我答へて我と語ふ天の使の問言けるは我主よ是等は何ぞやと
5我と語ふ天の使我に答へて汝是等の何なるを知ざるかと言しにより我主よ知ずとわれ言り
6彼また答へて我に言けるはゼルバベルにヱホバの告たまふ言は是のごとし萬軍のヱホバ宣ふ是は權勢に由らず能力に由らず我靈に由るなり
7ゼルバベルの前にあたれる大山よ汝は何者ぞ汝は平地とならん彼は恩惠あれ之に恩惠あれと呼はる聲をたてて頭石を曳いださん
8ヱホバの言われに臨めり云く
9ゼルバベルの手この室の石礎を置たり彼の手これを成終ん汝しらん萬軍のヱホバ我を汝等に遣したまひしと
10誰か小き事の日を藐視むる者ぞ夫の七の者は遍く全地に往來するヱホバの目なり準繩のゼルバベルの手にあるを見て喜ばん
11我また彼に問て燈臺の右左にある此二本の橄欖の樹は何なるやと言ひ
12重ねてまた彼に問て此二本の金の管によりて金の油をその中より斟ぎ出す二枝の橄欖は何ぞやと言しに
13彼われに答へて汝是等の何なるを知ざるかと言ければ我主よ知ずと言けるに
14彼言らく是等は油の二箇の子にして全地の主の前に立つ者なり
第五章
1我また目を擧て觀しに卷物の飛あり
2彼われに汝何を見るやと言ければ我言ふ我卷物の飛ぶを見る其長は二十キユビトその寛は十キユビト
3彼またわれに言けるは是は全地の表面を往めぐる呪詛の言なり凡て竊む者は卷物のこの面に照して除かれ凡て誓ふ者は卷物の彼の面に照して除かるべし
4萬軍のヱホバのたまふ我これを出せり是は竊盗者の家に入りまた我名を指て僞り誓ふ者の家に入てその家の中に宿りその木と石とを並せて盡く之を燒べしと
5我に語へる天の使進み來りて我に言けるは請ふ目を擧てこの出きたれる物の何なるを見よ
6これは何なるやと我言ければ彼言ふ此出來れる者はエパ舛なり又言ふ全地において彼等の形状は是のごとしと
7かくて鉛の圓き蓋を取あぐれば一人の婦人エパ舛の中に坐し居る
8彼是は罪惡なりと言てその婦人をエパ舛の中に投いれ鉛の錘をその舛の口に投かぶらせたり
9我また目を擧て觀しに婦人二人出きたれり之に鶴の翼のごとき翼ありてその翼風を含む彼等そのエパ舛を天地の間に持擧ぐ
10我すなはち我に語ふ天の使にむかひて彼等エパ舛を何處へ携へゆくなるやと言けるに
11彼我に言ふシナルの地にて之がために家を建んとてなり是は彼處に置られてその臺の上に立ん
第六章
1我また目を擧て觀しに四輌の車二の山の間より出きたれりその山は銅の山なり
2第一の車には赤馬を着け第二の車には黑馬を着け
3第三の車には白馬を着け第四の車には白點なる強馬を着く
4我すなはち我に語ふ天の使に問て我主よ是等は何なるやと言けるに
5天の使こたへて我に言ふ是は四の天風にして全地の主の前より罷り出たる者なり
6黑馬は北の地をさして進み行き白馬その後に從ふ又白點馬は南の地をさして進みゆき
7強馬は進み出て地を徧く行めぐらんとす彼汝ら往き地を徧くめぐれと言たまひければ則ち地を行めぐれり
8彼われを呼て我に告て言ふこの北の地に往る者等は北の地にて我靈を安んず
9ヱホバの言われに臨めり曰く
10汝かの囚虜人の中の者ヘルダイ、トビヤおよびヱダヤより取ことをせよ即ちその日に汝かれらがバビロンより歸りて宿りをるゼパニヤの子ヨシヤの家に到り
11金銀を取て冠冕を造りヨザダクの子なる祭司の長ヨシユアの首にこれを冠らせ
12彼に語りて言べし萬軍のヱホバ斯言たまふ視よ人ありその名を枝といふ彼おのれの處より生いでてヱホバの宮を建ん
13即ち彼者ヱホバの宮を建て尊榮を帶びその位に坐して政事を施しその位にありて祭司とならん此二の者の間に平和の計議あるべし
14偖またその冠冕はヘレム、トビヤ、ユダヤおよびゼパニヤの子ヘンの記念のために之をヱホバの殿に納むべし
15遠き處の者等來りてヱホバの殿を建ん而して汝らは萬軍のヱホバの我を遣したまひしなるを知にいたらん汝らもし汝らの神ヱホバの聲に聽したがはば是のごとくなるべし
第七章
1ダリヨス王の四年の九月すなはちキスリウといふ月の四日にヱホバの言ゼカリヤに臨めり
2ベテルかの時シヤレゼル、レゲンメレクおよびその從者を遣してヱホバを和めさせ
3かつ萬軍のヱホバの室にをる祭司に問しめ且預言者に問しめて言けらく我今まで年久しく爲きたりしごとく尚五月をもて哭きかつ齋戒すべきやと
4ここにおいて萬軍のヱホバの言我に臨めり云く
5國の諸民および祭司に告て言へ汝らは七十年のあひだ五月と七月とに斷食しかつ哀哭せしがその斷食せし時果して我にむかひて斷食せしや
6汝ら食ひかつ飮は全く己のために食ひ己のために飮ならずや
7在昔ヱルサレムおよび周圍の邑々人の住ふありて平安なりし時南の地および平野にも人の住ひをりし時に已往の預言者によりてヱホバの宣ひたりし言を汝ら知ざるや
8ヱホバの言ゼカリヤに臨めり云く
9萬軍のヱホバかく宣へり云く正義き審判を行ひ互に相愛しみ相憐め
10寡婦孤兒旅客および貧者を虐ぐるなかれ人を害せんと心に圖る勿れと
11然るに彼等は肯て耳を傾けず背を向け耳を鈍くして聽ず
12且その心を金剛石のごとくし萬軍のヱホバがその御霊をもて已往の預言者に由て傳へたまひし律法と言詞に聽したがはざりき是をもて大なる怒萬軍のヱホバより出て臨めり
13彼かく呼はりたれども彼等聽ざりき其ごとく彼ら呼はるとも我聽じ萬軍のヱホバこれを言ふ
14我かれらをその識ざる諸の國に吹散すべし其後にてこの地は荒て往來する者なきに至らん彼等かく美しき國を荒地となす
第八章
1萬軍のヱホバの言われに臨めり曰く
2萬軍のヱホバかく言たまふ我シオンのために甚だしく心を熱して妬く思ひ大なる忿怒を起して之がために妬く思ふ
3ヱホバかく言たまふ今我シオンに歸れり我ヱルサレムの中に住んヱルサレムは誠實ある邑と稱へられ萬軍のヱホバの山は聖山と稱へらるべし
4萬軍のヱホバかく言たまふヱルサレムの街衢には再び老たる男老たる女坐せん皆年高くして各々杖を手に持べし
5またその邑の街衢には男の兒女の兒滿て街衢に遊び戯れん
6萬軍のヱホバかく言たまふこの事その日には此民の遺餘者の目に奇といふとも我目に何の奇きこと有んや萬軍のヱホバこれを言ふ
7萬軍のヱホバかく言たまふ視よ我わが民を日の出る國より日の入る國より救ひ出し
8かれらを携へ來りてヱルサレムの中に住しめん彼らは我民となり我は彼らの神となりて共に誠實と正義に居ん
9萬軍のヱホバかく言たまふ汝ら萬軍のヱホバの室なる殿を建んとて其基礎を置たる日に起りし預言者等の口の言詞を今日聞く者よ汝らの腕を強くせよ
10此日の先には人も工の價を得ず獸畜も工の價を得ず出者も入者も仇の故をもて安然ならざりき即ち我人々をして互に相攻しめたり
11然れども今は我此民の遺餘者に對すること曩の日の如くならずと萬軍のヱホバ言たまふ
12即ち平安の種子あるべし葡萄の樹は果を結び地は產物を出し天は露を與へん我この民の遺餘者にこれを盡く獲さすべし
13ユダの家およびイスラエルの家よ汝らが國々の中に呪詛となりしごとく此度は我なんぢらを救ふて祝言とならしめん懼るる勿れ汝らの腕を強くせよ
14萬軍のヱホバかく言たまふ在昔汝らの先祖我を怒らせし時に我これに災禍を降さんと思ひて之を悔ざりき萬軍のヱホバこれを言ふ
15是のごとく我また今日ヱルサレムとユダの家に福祉を降さんと思ふ汝ら懼るる勿れ
16汝らの爲べき事は是なり汝ら各々たがひに眞實を言べし又汝等の門にて審判する時は眞實を執て平和の審判を爲べし
17汝等すべて人の災害を心に圖る勿れ僞の誓を好む勿れ是等はみな我が惡む者なりとヱホバ言たまふ
18萬軍のヱホバの言われに臨めり云く
19萬軍のヱホバかく言たまふ四月の斷食五月の斷食七月の斷食十月の斷食かへつてユダの家の宴樂となり欣喜となり佳節となるべし惟なんぢら眞實と平和を愛すべし
20萬軍のヱホバかく言たまふ國々の民および衆多の邑の居民來り就ん
21即ちこの邑の居民往てかの邑の者に向ひ我儕すみやかに往てヱホバを和め萬軍のヱホバを求めんと言んに我も往べしと答へん
22衆多の民強き國民ヱルサレムに來りて萬軍のヱホバを求めヱホバを和めん
23萬軍のヱホバかく言たまふ其日には諸の國語の民十人にてユダヤ人一箇の裾を拉へん即ち之を拉へて言ん我ら汝らと與に往べし其は我ら神の汝らと偕にいますを聞たればなり
第九章
1ヱホバの言詞の重負ハデラクの地に臨むダマスコはその止る所なりヱホバ世の人を眷みイスラエルの一切の支派を眷みたまへばなり
2之に界するハマテも然りツロ、シドンも亦はなはだ怜悧ければ同じく然るべし
3ツロは自己のために城郭を構へ銀を塵のごとくに積み金を街衢の土のごとくに積めり
4視よ主これを攻取り海にて之が力を打ほろぼしたまふべし是は火にて焚うせん
5アシケロンこれを見て懼れガザもこれを見て太く慄ふエクロンもその望む所の者辱しめらるるに因て亦然りガザには王絶えアシケロンには住者なきに至らん
6アシドドにはまた雑種の民すまん我ペリシテ人が誇る所の者を絶べし
7我これが口より血を取除き之が齒の間より憎むべき物を取除かん是も遺りて我儕の神に歸しユダの牧伯のごとくに成べしまたエクロンはヱブス人のごとくになるべし
8我わが家のために陣を張て敵軍に當り之をして往來すること無らしめん虐遇者かさねて逼ること無るべし我いま我目をもて親ら見ればなり
9シオンの女よ大に喜べヱルサレムの女よ呼はれ視よ汝の王汝に來る彼は正義して拯救を賜り柔和にして驢馬に乗る即ち牝驢馬の子なる駒に乗るなり
10我エフライムより車を絶ちヱルサレムより馬を絶ん戰爭弓も絶るべし彼國々の民に平和を諭さん其政治は海より海に及び河より地の極におよぶべし
11汝についてはまた汝の契約の血のために我かの水なき坑より汝の被俘人を放ち出さん
12望を懷く被俘人よ汝等城に歸れ我今日もなほ告て言ふ我かならず倍して汝等に賚ふべし
13我ユダを張て弓となしエフライムを矢となして之につがへんシオンよ我汝の人々を振起してギリシヤの人々を攻しめ汝をして大丈夫の劍のごとくならしむべし
14ヱホバこれが上に顯れてその箭を電光のごとくに射いだしたまはん主ヱホバ喇叭を吹ならし南の暴風に乗て出來まさん
15萬軍のヱホバ彼らを護りたまはん彼等は食ふことを爲し投石器の石を踏つけん彼等は飮ことを爲し酒に醉るごとくに聲を擧ん其これに盈さるることは血を盛る鉢のごとく祭壇の隅のごとくなるべし
16彼らの神ヱホバ當日に彼らを救ひその民を羊のごとくに救ひたまはん彼等は冠冕の玉のごとくになりて其地に輝くべし
17その福祉は如何計ぞや其美麗は如何計ぞや穀物は童男を長ぜしめ新酒は童女を長ぜしむ
第十章
1汝ら春の雨の時に雨をヱホバに乞へヱホバは電光を造り大雨を人々に賜ひ田野において草蔬を各々に賜ふべし
2夫テラピムは空虚き事を言ひ卜筮師はその見る所眞實ならずして虚僞の夢を語る其慰むる所は徒然なり是をもて民は羊のごとくに迷ひ牧者なきに因て惱む
3我牧者にむかひて怒を發す我牡山羊を罰せん萬軍のヱホバその群なるユダの家を顧み之をしてその美しき軍馬のごとくならしめたまふ
4隅石彼より出で釘かれより出で軍弓かれより出で宰たる者みな齊く彼より出ん
5彼等戰ふ時は勇士のごとくにして街衢の泥の中に敵を蹂躙らんヱホバかれらとともに在せば彼ら戰はん馬に騎れる者等すなはち媿を抱くべし
6我ユダの家を強くしヨセフの家を救はん我かれらを恤むが故に彼らをして歸り住しめん彼らは我に棄られし事なきが如くなるべし我は彼らの神ヱホバなり我かれらに聽べし
7エフライム人は勇士に等しくして酒を飮たるごとく心に歡ばん其子等は見て喜びヱホバに因て心に樂しまん
8我かれらに向ひて嘯きて之を集めん其は我これを贖ひたればなり彼等は昔殖増たる如くに殖増ん
9我かれらを國々の民の中に捲ん彼等は遠き國において我をおぼへん彼らは其子等とともに生ながらへて歸り來るべし
10我かれらをエジプトの國より携へかへりアッスリヤより彼等を集めギレアデの地およびレバノンに彼らを携へゆかんその居處も無きほどなるべし
11彼艱難の海を通り海の浪を撃破りたまふナイルの淵は盡く涸るアッスリヤの傲慢は卑くせられエジプトの杖は移り去ん
12我彼らをしてヱホバに由て強くならしめん彼等はヱホバの名をもて歩まんヱホバこれを言たまふ
第十一章
1レバノンよ汝の門を啓き火をして汝の香柏を焚しめよ
2松よ叫べ香柏は倒れ威嚴樹はそこなはれたりバシヤンの橡よ叫べ高らかなる林は倒れたり
3牧者の叫ぶ聲あり其榮そこなはれたればなり猛き獅子の吼る聲ありヨルダンの叢そこなはれたればなり
4我神ヱホバかく言たまふ宰らるべき羔を牧へ
5之を買ふ者は之を宰るとも罪なし之を賣る者は言ふ我富を得ればヱホバを祝すべしと其牧者もこれを惜まざるなり
6ヱホバ言たまふ我かさねて地の居民を惜まじ視よ我人を各々その隣人の手に付しその王の手に付さん彼ら地を荒すべし我これを彼らの手より救ひ出さじ
7我すなはち其宰らるべき羊を牧り是は最も憫然なる羊なり我みづから二本の杖を取り一を恩と名け一を結と名けてその羊を牧り
8我一月に牧者三人を絶り我心に彼らを厭ひしが彼等も心に我を惡めり
9我いへり我は汝らを飼はじ死る者は死に絶るる者は絶れ遺る者は互にその肉を食ひあふべし
10我恩といふ杖を取て之を折れり是諸の民に立し我契約を廢せんとてなりき
11是は其日に廢せられたり是に於てかの我に聽したがひし憫然なる羊は之をヱホバの言なりしと知れり
12我彼らに向ひて汝等もし善と視なば我價を我に授けよ若しからずば止めよと言ければ彼等すなはち銀三十を權りて我價とせり
13ヱホバ我に言たまひけるは彼等に我が估價せられしその善價を陶人に投あたへよと我すなはち銀三十を取てヱホバの室に投いれて陶人に歸せしむ
14我また結といふ杖を折れり是ユダとイスラエルの間の和好を絶んとてなりき
15ヱホバ我に言たまはく汝また愚なる牧者の器を取れ
16視よ我地に一人の牧者を興さん彼は亡ぶる者を顧みず迷へる者を尋ねず傷つける者を醫さず健剛なる者を飼はず肥たる者の肉を食ひ且その蹄を裂ん
17其羊の群を棄る惡き牧者は禍なるかな劍その腕に臨みその右の目に臨まん其腕は全く枯えその右の目は全く盲れん
第十二章
1イスラエルにかかはるヱホバの言詞の重負 ヱホバ即ち天を舒べ地の基を置ゑ人のうちの靈魂を造る者言たまふ
2視よ我ヱルサレムをしてその周圍の國民を蹌踉はする杯とならしむべしヱルサレムの攻圍まるる時是はユダにも及ばん
3其日には我ヱルサレムをして諸の國民に對ひて重石とならしむべし之を持擧る者は大傷を受ん地上の諸國みな集りて之に攻寄べし
4ヱホバ言たまふ當日には我一切の馬を撃て駭かせその騎手を撃て狂はせん而して我ユダの家の上に我目を開き諸の國民の馬を撃て盲になすべし
5ユダの牧伯等その心の中に謂んヱルサレムの居民はその神萬軍のヱホバに由て我力となるべしと
6當日には我ユダの牧伯等をして薪の下にある火盤のごとく麥束の下にある炬火のごとくならしむべし彼等は右左にむかひその周圍の國民を盡く焚んヱルサレム人はなほヱルサレムにてその本の處に居ことを得べし
7ヱホバまづユダの幕屋を救ひたまはん是ダビデの家の榮およびヱルサレムの居民の榮のユダに勝ること無らんためたり
8當日ヱホバ、ヱルサレムの居民を護りたまはん彼らの中の弱き者もその日にはダビデのごとくなるべしまたダビデの家は神のごとく彼らに先だつヱホバの使のごとくなるべし
9その日には我ヱルサレムに攻きたる國民をことごとく滅すことを務むべし
10我ダビデの家およびヱルサレムの居民に恩惠と祈禱の靈をそそがん彼等はその刺たりし我を仰ぎ觀獨子のため哭くがごとく之がために哭き長子のために悲しむがごとく之がために痛く悲しまん
11その日にはヱルサレムに大なる哀哭あらん是はメギドンの谷なるハダデリンモンに在し哀哭のごとくなるべし
12國中の族おのおの別れ居て哀哭べし即ちダビデの族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭きナタンの家の族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭かん
13レビの家の族別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭きシメイの族別れ居て哀哭きその妻等わかれ居て哀哭かん
14その他の族も凡て然りすなはち族おのおの別れ居て哀哭きその妻等別れ居て哀哭くべし
第十三章
1その日罪と汚穢を清むる一の泉ダビデの家とヱルサレムの居民のために開くべし
2萬軍のヱホバ言たまふ其日には我地より偶像の名を絶のぞき重て人に記憶らるること無らしむべし我また預言者および汚穢の靈を地より去しむべし
3人もしなほ預言することあらば其生の父母これに言ん汝は生べからず汝はヱホバの名をもて虚僞を語るなりと而してその生の父母これが預言しをるを刺ん
4その日には預言者等預言するに方りてその異象を羞ん重て人を欺かんために毛衣を纒はじ
5彼言ん我は預言者にあらず地を耕へす者なり即ち我は若き時より人に買れたりと
6若これに向ひて然らば汝の兩手の間の傷は何ぞやと言あらば是は我が愛する者の家にて受たる傷なりと答へん
7萬軍のヱホバ言たまふ劍よ起て我牧者わが伴侶なる人を攻よ牧者を撃て然らばその羊散らん我また我手を小き者等の上に伸べし
8ヱホバ言たまふ全地の人二分は絶れて死に三分の一はその中に遺らん
9我その三分の一を携へて火にいれ銀を熬分るごとくに之を熬分け金を試むるごとくに之を試むべし彼らわが名を呼ん我これにこたへん我これは我民なりと言ん彼等またヱホバは我神なりと言ん
第十四章
1視よヱホバの日來る汝の貨財奪はれて汝の中にて分たるべし
2我萬國の民を集めてヱルサレムを攻撃しめん邑は取られ家は掠められ婦女は犯され邑の人は半は擄へられてゆかん然どその餘の民は邑より絶れじ
3その時ヱホバ出きたりて其等の國人を攻撃たまはん在昔その軍陣の日に戰ひたまひしごとくなるべし
4其日にはヱルサレムの前に當りて東にあるところの橄欖山の上に彼の足立たん而して橄欖山その眞中より西東に裂て甚だ大なる谷を成しその山の半は北に半は南に移るべし
5汝らは我山の谷に逃いらん其山の谷はアザルにまで及ぶべし汝らはユダの王ウジヤの世に地震を避て逃しごとくに逃ん我神ヱホバ來りたまはん諸の聖者なんぢとともなるべし
6その日には光明なかるべく輝く者消うすべし
7茲に只一の日あるべしヱホバこれを知たまふ是は晝にもあらず夜にもあらず夕暮の頃に明くなるべし
8その日に活る水ヱルサレムより出でその半は東の海にその半は西の海に流れん夏も冬も然あるべし
9ヱホバ全地の王となりたまはん其日には只ヱホバのみ只その御名のみにならん
10全地はアラバのごとくなりてゲバよりヱルサレムの南のリンモンまでの間のごとくなるべし而してヱルサレムは高くなりてその故の處に立ちベニヤミンの門より第一の門の處に及び隅の門にいたりハナニエルの戍樓より王の酒榨倉までに渉るべし
11その中には人住ん重て呪詛あらじヱルサレムは安然に立べし
12ヱルサレムを攻撃し諸の民にヱホバ災禍を降してこれを撃なやましたまふこと是のごとくなるべし即ち彼らその足にて立をる中に肉腐れ目その孔の中にて腐れ舌その口の中にて腐れん
13その日にはヱホバかれらをして大に狼狽しめたまはん彼らは各々人の手を執へん此手と彼手撃あふべし
14ユダもまたヱルサレムに於て戰ふべしその四周の一切の國人の財寳金銀衣服など甚だ多く聚められん
15また馬騾駱駝驢馬およびその諸營の一切の家畜の蒙る災禍もこの災禍のごとくなるべし
16ヱルサレムに攻きたりし諸の國人の遺れる者はみな歳々に上りきてその王なる萬軍のヱホバを拜み結茅の節を守るにいたるべし
17地上の諸族の中その王なる萬軍のヱホバを拜みにヱルサレムに上らざる者の上には凡て雨ふらざるべし
18例ばエジプトの族もし上り來らざる時はその上に雨ふらじヱホバその結茅の節を守りに上らざる一切の國人を撃なやます災禍を之に降したまふべし
19エジプトの罪凡て結茅の節を守りに上り來らざる國人の罪是のごとくなるべし
20その日には馬の鈴にまでヱホバに聖としるさん又ヱホバの家の鍋は壇の前の鉢と等しかるべし
21ヱルサレムおよびユダの鍋は都て萬軍のヱホバの聖物となるべし凡そ犠牲を獻ぐる者は來りてこれを取り其中にて祭肉を煮ん其日には萬軍のヱホバの室に最早カナン人あらざるべし