サムエル記上

第一章

1エフライムの山地(さんち)のラマタイム・ゾピムに、エルカナという()(ひと)があった。エフライムびとで、エロハムの()であった。エロハムはエリウの()、エリウはトフの()、トフはツフの()である。 2エルカナには、ふたりの(つま)があって、ひとりの()はハンナといい、ひとりの()はペニンナといった。ペニンナには()どもがあったが、ハンナには()どもがなかった。
3この(ひと)(とし)ごとに、その(まち)からシロに(のぼ)っていって、万軍(ばんぐん)(しゅ)(はい)し、(しゅ)犠牲(ぎせい)をささげるのを(つね)とした。シロには、エリのふたりの()、ホフニとピネハスとがいて、(しゅ)(つか)える祭司(さいし)であった。 4エルカナは、犠牲(ぎせい)をささげる()(つま)ペニンナとそのむすこ(むすめ)にはみな、その()(まえ)(あた)えた。 5エルカナはハンナを(あい)していたが、彼女(かのじょ)には、ただ一つの()(まえ)(あた)えるだけであった。(しゅ)がその(たい)()ざされたからである。 6また彼女(かのじょ)(にく)んでいる()(つま)は、ひどく彼女(かのじょ)(なや)まして、(しゅ)がその(たい)()ざされたことを(うら)ませようとした。 7こうして(とし)()れ、(とし)()けたが、ハンナが(しゅ)(みや)(のぼ)るごとに、ペニンナは彼女(かのじょ)(なや)ましたので、ハンナは()いて()べることもしなかった。 8(おっと)エルカナは彼女(かのじょ)()った、「ハンナよ、なぜ()くのか。なぜ()べないのか。どうして(こころ)(かな)しむのか。わたしはあなたにとって十(にん)()どもよりもまさっているではないか」。
9シロで(かれ)らが()()いしたのち、ハンナは()ちあがった。その(とき)祭司(さいし)エリは(しゅ)神殿(しんでん)(はしら)のかたわらの()にすわっていた。 10ハンナは(こころ)(ふか)(かな)しみ、(しゅ)(いの)って、はげしく()いた。 11そして(ちか)いを()てて()った、「万軍(ばんぐん)(しゅ)よ、まことに、はしための(なや)みをかえりみ、わたしを(おぼ)え、はしためを(わす)れずに、はしために(おとこ)()(たま)わりますなら、わたしはその()一生(いっしょう)のあいだ(しゅ)にささげ、かみそりをその(あたま)にあてません」。
12彼女(かのじょ)(しゅ)(まえ)(なが)(いの)っていたので、エリは彼女(かのじょ)(くち)()をとめた。 13ハンナは(こころ)のうちで(もの)()っていたので、くちびるが(うご)くだけで、(こえ)(きこ)えなかった。それゆえエリは、()っているのだと(おも)って、 14彼女(かのじょ)()った、「いつまで()っているのか。()いをさましなさい」。 15しかしハンナは(こた)えた、「いいえ、わが(しゅ)よ。わたしは不幸(ふこう)(おんな)です。ぶどう(しゅ)()(さけ)()んだのではありません。ただ(しゅ)(まえ)(こころ)(そそ)()していたのです。 16はしためを、(わる)(おんな)(おも)わないでください。(つも)(うれ)いと(なや)みのゆえに、わたしは(いま)まで(もの)()っていたのです」。 17そこでエリは(こた)えた、「安心(あんしん)して()きなさい。どうかイスラエルの(かみ)があなたの(もと)める(ねが)いを()きとどけられるように」。 18彼女(かのじょ)()った、「どうぞ、はしためにも、あなたの(まえ)(めぐ)みを()させてください」。こうして、その(おんな)()って食事(しょくじ)し、その(かお)は、もはや(かな)しげではなくなった。
19(かれ)らは(あさ)(はや)()きて、(しゅ)(まえ)礼拝(れいはい)し、そして、ラマにある(いえ)(かえ)って()った。エルカナは(つま)ハンナを()り、(しゅ)彼女(かのじょ)(かえり)みられたので、 20彼女(かのじょ)はみごもり、その(とき)(めぐ)ってきて、(おとこ)()()み、「わたしがこの()(しゅ)(もと)めたからだ」といって、その()をサムエルと()づけた。
21エルカナその(ひと)とその家族(かぞく)とはみな(のぼ)っていって、(とし)ごとの犠牲(ぎせい)と、(ちか)いの(そな)(もの)とをささげた。 22しかしハンナは(のぼ)って()かず、(おっと)()った、「わたしはこの()乳離(ちばな)れしてから、(しゅ)(まえ)()れていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。 23(おっと)エルカナは彼女(かのじょ)()った、「あなたが()いと(おも)うようにして、この()乳離(ちばな)れするまで()ちなさい。ただどうか(しゅ)がその()われたことを実現(じつげん)してくださるように」。こうしてその(おんな)はとどまって、その()(ちち)をのませ、乳離(ちばな)れするのを()っていたが、 24乳離(ちばな)れした(とき)、三(さい)雄牛(おうし)(とう)麦粉(むぎこ)一エパ、ぶどう(しゅ)のはいった(かわ)(ぶくろ)一つを()り、その()()れて、シロにある(しゅ)(みや)()った。その()はなお(おさな)かった。 25そして(かれ)らはその(うし)(ころ)し、子供(こども)をエリのもとへ()れて()った。 26ハンナは()った、「わが(きみ)よ、あなたは()きておられます。わたしは、かつてここに()って、あなたの(まえ)で、(しゅ)(いの)った(おんな)です。 27この()(あた)えてくださいと、わたしは(いの)りましたが、(しゅ)はわたしの(もと)めた(ねが)いを()きとどけられました。 28それゆえ、わたしもこの()(しゅ)にささげます。この()一生(いっしょう)のあいだ(しゅ)にささげたものです」。
そして(かれ)らはそこで(しゅ)礼拝(れいはい)した。

第二章

1ハンナは(いの)って()った、
「わたしの(こころ)(しゅ)によって(よろこ)び、
わたしの(ちから)(しゅ)によって(つよ)められた、
わたしの(くち)(てき)をあざ(わら)う、
あなたの(すくい)によってわたしは(たの)しむからである。
2(しゅ)のように(せい)なるものはない、
あなたのほかには、だれもない、
われわれの(かみ)のような(いわ)はない。
3あなたがたは(かさ)ねて高慢(こうまん)(かた)ってはならない、
たかぶりの言葉(ことば)(くち)にすることをやめよ。
(しゅ)はすべてを()(かみ)であって、
もろもろのおこないは(しゅ)によって(はか)られる。
4勇士(ゆうし)(ゆみ)()れ、
(よわ)(もの)(ちから)()びる。
5()()りた(もの)(しょく)のために(やと)われ、
()えたものは、もはや()えることがない。
うまずめは七(にん)()()み、
(おお)くの()をもつ(おんな)孤独(こどく)となる。
6(しゅ)(ころ)し、また()かし、
陰府(よみ)にくだし、また(うえ)げられる。
7(しゅ)(まず)しくし、また()ませ、
(ひく)くし、また(たか)くされる。
8(まず)しい(もの)を、ちりのなかから()ちあがらせ、
(とぼ)しい(もの)を、あくたのなかから()()げて、
王侯(おうこう)(とも)にすわらせ、
栄誉(えいよ)(くらい)()がせられる。
()(はしら)(しゅ)のものであって、
その(はしら)(うえ)に、世界(せかい)をすえられたからである。
9(しゅ)はその聖徒(せいと)たちの(あし)(まも)られる、
しかし(わる)いものどもは暗黒(あんこく)のうちに(ほろ)びる。
(ひと)(ちから)をもって()つことができないからである。
10(しゅ)(あらそ)うものは粉々(こなごな)(くだ)かれるであろう、
(しゅ)(かれ)らにむかって(てん)から(かみなり)をとどろかし、
()のはてまでもさばき、(おう)(ちから)(あた)え、
(あぶら)そそがれた(もの)(ちから)(つよ)くされるであろう」。
11エルカナはラマにある(いえ)(かえ)ったが、(おさ)()祭司(さいし)エリの(まえ)にいて(しゅ)(つか)えた。
12さて、エリの()らは、よこしまな人々(ひとびと)で、(しゅ)(おそ)れなかった。 13(たみ)のささげ(もの)についての祭司(さいし)のならわしはこうである。(ひと)犠牲(ぎせい)をささげる(とき)、その(にく)()(あいだ)に、祭司(さいし)のしもべは、みつまたの(にく)()しを()()ってきて、 14それをかま、またはなべ、またはおおがま、または(はち)()きいれ、(にく)()しの()()げるものは祭司(さいし)がみな自分(じぶん)のものとした。(かれ)らはシロで、そこに()るすべてのイスラエルの(ひと)に、このようにした。 15人々(ひとびと)脂肪(しぼう)()(まえ)にもまた、祭司(さいし)のしもべがきて、犠牲(ぎせい)をささげる(ひと)()うのであった、「祭司(さいし)のために()(にく)(あた)えよ。祭司(さいし)はあなたから()(にく)()けない。(なま)(にく)がよい」。 16その(ひと)が、「まず脂肪(しぼう)()かせましょう。その(のち)ほしいだけ()ってください」と()うと、しもべは、「いや、(いま)もらいたい。くれないなら、わたしは(ちから)づくで、それを()ろう」と()う。 17このように、その若者(わかもの)たちの(つみ)は、(しゅ)(まえ)非常(ひじょう)(おお)きかった。この人々(ひとびと)(しゅ)(そな)(もの)(かろ)んじたからである。
18サムエルはまだ(おさな)く、()亜麻(あま)(ぬの)のエポデを()けて、(しゅ)(まえ)(つか)えていた。 19(はは)(かれ)のために(ちい)さい上着(うわぎ)(つく)り、(とし)ごとに、(おっと)(とも)にその(とし)犠牲(ぎせい)をささげるために(のぼ)(とき)、それを()ってきた。 20エリはいつもエルカナとその(つま)祝福(しゅくふく)して()った、「この(おんな)(しゅ)にささげた(もの)のかわりに、(しゅ)がこの(おんな)によってあなたに()(あた)えられるように」。そして(かれ)らはその(いえ)(かえ)るのを(つね)とした。
21こうして(しゅ)がハンナを(かえり)みられたので、ハンナはみごもって、三(にん)(おとこ)()とふたりの(おんな)()()んだ。わらべサムエルは(しゅ)(まえ)(そだ)った。
22エリはひじょうに(とし)をとった。そしてその()らがイスラエルの人々(ひとびと)にしたいろいろのことを()き、また会見(かいけん)幕屋(まくや)入口(いりぐち)(つと)めていた(おんな)たちと()たことを()いて、 23(かれ)らに()った、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべての(たみ)から、あなたがたの(わる)いおこないのことを()く。 24わが()らよ、それはいけない。わたしの()く、(しゅ)(たみ)()いふらしている風説(ふうせつ)()くない。 25もし(ひと)(ひと)(たい)して(つみ)(おか)すならば、(かみ)仲裁(ちゅうさい)されるであろう。しかし(ひと)(しゅ)(たい)して(つみ)(おか)すならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかし(かれ)らは(ちち)()うことに(みみ)(かたむ)けようともしなかった。(しゅ)(かれ)らを(ころ)そうとされたからである。
26わらべサムエルは(そだ)っていき、(しゅ)にも、人々(ひとびと)にも、ますます(あい)せられた。
27このとき、ひとりの(かみ)(ひと)が、エリのもとにきて()った、「(しゅ)はかく(おお)せられる、『あなたの先祖(せんぞ)(いえ)がエジプトでパロの(いえ)奴隷(どれい)であったとき、わたしはその先祖(せんぞ)(いえ)(みずか)らを(あらわ)した。 28そしてイスラエルのすべての部族(ぶぞく)のうちからそれを(えら)()して、わたしの祭司(さいし)とし、わたしの祭壇(さいだん)(のぼ)って、(こう)をたかせ、わたしの(まえ)でエポデを()けさせ、また、イスラエルの人々(ひとびと)火祭(かさい)をことごとくあなたの先祖(せんぞ)(いえ)(あた)えた。 29それにどうしてあなたがたは、わたしが(めい)じた犠牲(ぎせい)(そな)(もの)をむさぼりの()をもって()るのか。またなにゆえ、わたしよりも自分(じぶん)()らを(たっと)び、わたしの(たみ)イスラエルのささげるもろもろの(そな)(もの)の、(もっと)()部分(ぶぶん)をもって自分(じぶん)()やすのか』。 30それゆえイスラエルの(かみ)(しゅ)(おお)せられる、『わたしはかつて、「あなたの(いえ)とあなたの(ちち)(いえ)とは、永久(えいきゅう)にわたしの(まえ)(あゆ)むであろう」と()った』。しかし(いま)(しゅ)(おお)せられる、『(けっ)してそうはしない。わたしを(たっと)(もの)を、わたしは(たっと)び、わたしを(いや)しめる(もの)は、(かろ)んぜられるであろう。 31()よ、()()るであろう。その()、わたしはあなたの(ちから)と、あなたの(ちち)(いえ)(ちから)()ち、あなたの(いえ)年老(としお)いた(もの)をなくするであろう。 32そのとき、あなたは(わざわい)のうちにあって、イスラエルに(あた)えられるもろもろの繁栄(はんえい)を、ねたみ()るであろう。あなたの(いえ)には永久(えいきゅう)年老(としお)いた(もの)がいなくなるであろう。 33しかしあなたの一族(いちぞく)のひとりを、わたしの祭壇(さいだん)から()たないであろう。(かれ)(のこ)されてその()()きはらし、(こころ)(いた)めるであろう。またあなたの(いえ)(うま)()るものは、みなつるぎに()ぬであろう。 34あなたのふたりの()ホフニとピネハスの()(おこ)ることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりは(とも)(おな)()()ぬであろう。 35わたしは自分(じぶん)のために、ひとりの忠実(ちゅうじつ)祭司(さいし)(おこ)す。その(ひと)はわたしの(こころ)(おも)いとに(したが)って(おこな)うであろう。わたしはその(いえ)確立(かくりつ)しよう。その(ひと)はわたしが(あぶら)そそいだ(もの)(まえ)につねに(あゆ)むであろう。 36そしてあなたの(いえ)()(のこ)っている人々(ひとびと)はみなきて、(かれ)に一(まい)(ぎん)と一()のパンを()(もと)め、「どうぞ、わたしを祭司(さいし)(しょく)の一つに(にん)じ、一口(ひとくち)のパンでも()べることができるようにしてください」と()うであろう』」。

第三章

1わらべサムエルは、エリの(まえ)で、(しゅ)(つか)えていた。そのころ、(しゅ)言葉(ことば)はまれで、黙示(もくし)(つね)ではなかった。
2さてエリは、しだいに()がかすんで、()ることができなくなり、そのとき自分(じぶん)のへやで()ていた。 3(かみ)のともしびはまだ()えず、サムエルが(かみ)(はこ)のある(しゅ)神殿(しんでん)()ていた(とき)4(しゅ)は「サムエルよ、サムエルよ」と()ばれた。(かれ)は「はい、ここにおります」と()って、 5エリの(ところ)(はし)っていって()った、「あなたがお(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。しかしエリは()った、「わたしは()ばない。(かえ)って()なさい」。(かれ)()って()た。 6(しゅ)はまたかさねて「サムエルよ、サムエルよ」と()ばれた。サムエルは()きてエリのもとへ()って()った、「あなたがお(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。エリは()った、「()よ、わたしは()ばない。もう一()()なさい」。 7サムエルはまだ(しゅ)()らず、(しゅ)言葉(ことば)がまだ(かれ)(あらわ)されなかった。 8(しゅ)はまた三度目(どめ)にサムエルを()ばれたので、サムエルは()きてエリのもとへ()って()った、「あなたがお(およ)びになりました。わたしは、ここにおります」。その(とき)、エリは(しゅ)がわらべを()ばれたのであることを(さと)った。 9そしてエリはサムエルに()った、「()って()なさい。もしあなたを()ばれたら、『しもべは()きます。(しゅ)よ、お(はな)しください』と()いなさい」。サムエルは()って自分(じぶん)(ところ)()た。
10(しゅ)はきて()ち、(まえ)のように、「サムエルよ、サムエルよ」と()ばれたので、サムエルは()った、「しもべは()きます。お(はな)しください」。 11その(とき)(しゅ)はサムエルに()われた、「()よ、わたしはイスラエルのうちに一つの(こと)をする。それを()(もの)はみな、(みみ)が二つとも()るであろう。 12その()には、わたしが、かつてエリの(いえ)について(はな)したことを、はじめから(おわ)りまでことごとく、エリに(おこな)うであろう。 13わたしはエリに、(かれ)()っている悪事(あくじ)のゆえに、その(いえ)永久(えいきゅう)(ばっ)することを()げる。その()らが(かみ)をけがしているのに、(かれ)がそれをとめなかったからである。 14それゆえ、わたしはエリの(いえ)(ちか)う。エリの(いえ)(あく)は、犠牲(ぎせい)(そな)(もの)をもってしても、永久(えいきゅう)にあがなわれないであろう」。
15サムエルは(あさ)まで()て、(しゅ)(みや)()をあけたが、サムエルはその(まぼろし)のことをエリに(かた)るのを(おそ)れた。 16しかしエリはサムエルを()んで()った、「わが()サムエルよ」。サムエルは()った、「はい、ここにおります」。 17エリは()った、「何事(なにごと)をお()げになったのか。(かく)さず(はな)してください。もしお()げになったことを一つでも(かく)して、わたしに()わないならば、どうぞ(かみ)があなたを(ばっ)し、さらに(おも)(ばっ)せられるように」。 18そこでサムエルは、その(こと)をことごとく(はな)して、(なに)(かれ)(かく)さなかった。エリは()った、「それは(しゅ)である。どうぞ(しゅ)が、()いと(おも)うことを(おこな)われるように」。
19サムエルは(そだ)っていった。(しゅ)(かれ)(とも)におられて、その言葉(ことば)を一つも()()ちないようにされたので、 20ダンからベエルシバまで、イスラエルのすべての(ひと)は、サムエルが(しゅ)預言者(よげんしゃ)(さだ)められたことを()った。 21(しゅ)はふたたびシロで(あらわ)れられた。すなわち(しゅ)はシロで、(しゅ)言葉(ことば)によって、サムエルに(みずか)らを(あらわ)された。こうしてサムエルの言葉(ことば)は、あまねくイスラエルの人々(ひとびと)(およ)んだ。

第四章

1イスラエルびとは()てペリシテびとと(たたか)おうとして、エベネゼルのほとりに(じん)をしき、ペリシテびとはアペクに(じん)をしいた。 2ペリシテびとはイスラエルびとにむかって(じん)(そな)えをしたが、(たたか)うに(およ)んで、イスラエルびとはペリシテびとの(まえ)(やぶ)れ、ペリシテびとは戦場(せんじょう)において、おおよそ四千(にん)(ころ)した。 3(たみ)陣営(じんえい)退(しりぞ)いた(とき)、イスラエルの長老(ちょうろう)たちは()った、「なにゆえ、(しゅ)はきょう、ペリシテびとの(まえ)にわれわれを(やぶ)られたのか。シロへ()って(しゅ)契約(けいやく)(はこ)をここへ(たずさ)えてくることにしよう。そして(しゅ)をわれわれのうちに(むか)えて、(てき)()から(すく)っていただこう」。 4そこで(たみ)(ひと)をシロにつかわし、ケルビムの(うえ)()しておられる万軍(ばんぐん)(しゅ)契約(けいやく)(はこ)を、そこから(たずさ)えてこさせた。その(とき)エリのふたりの()、ホフニとピネハスは(かみ)契約(けいやく)(はこ)(とも)に、その(ところ)にいた。
5(しゅ)契約(けいやく)(はこ)陣営(じんえい)についた(とき)、イスラエルびとはみな大声(おおごえ)(さけ)んだので、()()(ひび)いた。 6ペリシテびとは、その(さけ)(ごえ)()いて()った、「ヘブルびとの陣営(じんえい)の、この(おお)きな(さけ)(ごえ)何事(なにごと)か」。そして(しゅ)(はこ)が、陣営(じんえい)()いたことを()った(とき)7ペリシテびとは(おそ)れて()った、「神々(かみがみ)陣営(じんえい)にきたのだ」。(かれ)らはまた()った、「ああ、われわれはわざわいである。このようなことは(いま)までなかった。 8ああ、われわれはわざわいである。だれがわれわれをこれらの(つよ)神々(かみがみ)()から(すく)()すことができようか。これらの神々(かみがみ)は、もろもろの(わざわい)をもってエジプトびとを荒野(あらの)()ったのだ。 9ペリシテびとよ、勇気(ゆうき)()して(おとこ)らしくせよ。ヘブルびとがあなたがたに(つか)えたように、あなたがたが(かれ)らに(つか)えることのないために、(おとこ)らしく(たたか)え」。
10こうしてペリシテびとが(たたか)ったので、イスラエルびとは(やぶ)れて、おのおのその(いえ)()げて(かえ)った。戦死者(せんししゃ)はひじょうに(おお)く、イスラエルの歩兵(ほへい)(たお)れたものは三万であった。 11また(かみ)(はこ)(うば)われ、エリのふたりの()、ホフニとピネハスは(ころ)された。
12その()ひとりのベニヤミンびとが、衣服(いふく)()き、(あたま)(つち)をかぶって、戦場(せんじょう)から(はし)ってシロにきた。 13(かれ)()いたとき、エリは(みち)のかたわらにある自分(じぶん)()にすわって()ちかまえていた。その(こころ)(かみ)(はこ)(こと)()づかっていたからである。その(ひと)(まち)にはいって、情報(じょうほう)をつたえたので、(まち)はこぞって(さけ)んだ。 14エリはその(さけ)(ごえ)()いて()った、「この(さわ)(こえ)(なに)か」。その(ひと)(いそ)いでエリの(ところ)へきてエリに()げた。 15その(とき)エリは九十八(さい)で、その()(かた)まって()ることができなかった。 16その(ひと)はエリに()った、「わたしは戦場(せんじょう)からきたものです。きょう戦場(せんじょう)からのがれたのです」。エリは()った、「わが()よ、様子(ようす)はどうであったか」。 17しらせをもたらしたその(ひと)(こた)えて()った、「イスラエルびとは、ペリシテびとの(まえ)から()げ、(たみ)のうちにはまた(おお)くの戦死者(せんししゃ)があり、あなたのふたりの()、ホフニとピネハスも()に、(かみ)(はこ)(うば)われました」。 18(かれ)(かみ)(はこ)のことを()ったとき、エリはその()から、あおむけに(もん)のかたわらに()ち、(くび)()って()んだ。()いて()(おも)かったからである。(かれ)のイスラエルをさばいたのは四十(ねん)であった。
19(かれ)(よめ)、ピネハスの(つま)はみごもって出産(しゅっさん)(とき)(ちか)づいていたが、(かみ)(はこ)(うば)われたこと、しゅうとと(おっと)()んだというしらせを()いたとき、陣痛(じんつう)(おこ)()をかがめて()()んだ。 20彼女(かのじょ)()にかかっている(とき)世話(せわ)をしていた(おんな)彼女(かのじょ)()った、「(おそ)れることはありません。(おとこ)()(うま)れました」。しかし彼女(かのじょ)(こた)えもせず、また(かえり)みもしなかった。 21ただ彼女(かのじょ)は「栄光(えいこう)はイスラエルを()った」と()って、その()をイカボデと()づけた。これは(かみ)(はこ)(うば)われたこと、また彼女(かのじょ)のしゅうとと(おっと)のことによるのである。 22彼女(かのじょ)はまた、「栄光(えいこう)はイスラエルを()った。(かみ)(はこ)(うば)われたからです」と()った。

第五章

1ペリシテびとは(かみ)(はこ)をぶんどって、エベネゼルからアシドドに(はこ)んできた。 2そしてペリシテびとはその(かみ)(はこ)()ってダゴンの(みや)(はこ)びこみ、ダゴンのかたわらに()いた。 3アシドドの人々(ひとびと)が、(つぎ)()(はや)()きて()ると、ダゴンが(しゅ)(はこ)(まえ)に、うつむきに()(たお)れていたので、(かれ)らはダゴンを(おこ)して、それをもとの(ところ)()いた。 4その(つぎ)(あさ)また(はや)()きて()ると、ダゴンはまた、(しゅ)(はこ)(まえ)に、うつむきに()(たお)れていた。そしてダゴンの(あたま)両手(りょうて)とは()れて(はな)れ、しきいの(うえ)にあり、ダゴンはただ胴体(どうたい)だけとなっていた。 5それゆえダゴンの祭司(さいし)たちやダゴンの(みや)にはいる人々(ひとびと)は、だれも今日(こんにち)にいたるまで、アシドドのダゴンのしきいを()まない。
6そして(しゅ)()はアシドドびとの(うえ)にきびしく(のぞ)み、(しゅ)腫物(はれもの)をもってアシドドとその領域(りょういき)人々(ひとびと)(おそ)れさせ、また(なや)まされた。 7アシドドの人々(ひとびと)は、このありさまを()()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)を、われわれの(ところ)に、とどめ()いてはならない。その(かみ)()が、われわれと、われわれの(かみ)ダゴンの(うえ)にきびしく(のぞ)むからである」。 8そこで(かれ)らは(ひと)をつかわして、ペリシテびとの(きみ)たちを(あつ)めて()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)をどうしましょう」。(かれ)らは()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)はガテに(うつ)そう」。人々(ひとびと)はイスラエルの(かみ)(はこ)をそこに(うつ)した。 9(かれ)らがそれを(うつ)すと、(しゅ)()がその(まち)(のぞ)み、非常(ひじょう)(さわ)ぎが()った。そして老若(ろうにゃく)()わず(まち)人々(ひとびと)()たれたので、(かれ)らの()腫物(はれもの)ができた。 10そこで人々(ひとびと)(かみ)(はこ)をエクロンに(おく)ったが、(かみ)(はこ)がエクロンに()いた(とき)、エクロンの人々(ひとびと)(さけ)んで()った、「(かれ)らがイスラエルの(かみ)(はこ)をわれわれの(ところ)(うつ)したのは、われわれと(たみ)(ほろ)ぼすためである」。 11そこで(かれ)らは(ひと)をつかわして、ペリシテびとの(きみ)たちをみな(あつ)めて()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)(おく)()して、もとの(ところ)(かえ)し、われわれと(たみ)(ほろ)ぼすことのないようにしよう」。(おそ)ろしい(さわ)ぎが町中(まちぢゅう)()っていたからである。そこには(かみ)()非常(ひじょう)にきびしく(のぞ)んでいたので、 12()なない(ひと)腫物(はれもの)をもって()たれ、(まち)(さけ)びは(てん)(たっ)した。

第六章

1(しゅ)(はこ)は七か(げつ)(あいだ)ペリシテびとの()にあった。 2ペリシテびとは、祭司(さいし)(うらな)()()んで()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)をどうしましょうか。どのようにして、それをもとの(ところ)(おく)(かえ)せばよいか()げてください」。 3(かれ)らは()った、「イスラエルの(かみ)(はこ)(おく)(かえ)(とき)には、それをむなしく(かえ)してはならない。(かなら)(かれ)にとがの(そな)(もの)をもって(つぐな)いをしなければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、また(かれ)()がなぜあなたがたを(はな)れないかを()ることができるであろう」。 4人々(ひとびと)()った、「われわれが(つぐな)うとがの(そな)(もの)には(なに)をしましょうか」。(かれ)らは(こた)えた、「ペリシテびとの(きみ)たちの(かず)にしたがって、(きん)腫物(はれもの)五つと(きん)のねずみ五つである。あなたがたすべてと、(きみ)たちに(のぞ)んだ(わざわい)は一つだからである。 5それゆえ、あなたがたの腫物(はれもの)(ぞう)と、()(あら)すねずみの(ぞう)(つく)り、イスラエルの(かみ)栄光(えいこう)()するならば、たぶん(かれ)は、あなたがた、およびあなたがたの神々(かみがみ)と、あなたがたの()に、その()(くわ)えることを(かる)くされるであろう。 6なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパロがその(こころ)をかたくなにしたように、自分(じぶん)(こころ)をかたくなにするのか。(かみ)(かれ)らを(なや)ましたので、(かれ)らは(たみ)()かせ、(たみ)()ったではないか。 7それゆえ(いま)(あたら)しい(くるま)(りょう)(つく)り、まだくびきを()けたことのない乳牛(にゅうぎゅう)(とう)をとり、その(うし)(くるま)につなぎ、そのおのおのの()(うし)乳牛(にゅうぎゅう)から(はな)して(いえ)()(かえ)り、 8(しゅ)(はこ)をとって、それをその(くるま)()せ、あなたがたがとがの(そな)(もの)として(かれ)(つぐな)(きん)(つく)(もの)を一つの(はこ)におさめてそのかたわらに()き、それを(おく)って()らせなさい。 9そして()ていて、それが自分(じぶん)領地(りょうち)()(みち)を、ベテシメシへ(のぼ)るならば、この(おお)いなる(わざわい)を、われわれに(くだ)したのは(かれ)である。しかし、そうしない(とき)は、われわれを()ったのは(かれ)()ではなく、その(こと)偶然(ぐうぜん)であったことを()るであろう」。
10人々(ひとびと)はそのようにした。すなわち、(かれ)らは二(とう)乳牛(にゅうぎゅう)をとって、これを(くるま)につなぎ、そのおのおのの()(うし)(いえ)()じこめ、 11(しゅ)(はこ)、および(きん)のねずみと、腫物(はれもの)(ぞう)をおさめた(はこ)とを(くるま)()せた。 12すると雌牛(めうし)はまっすぐにベテシメシの方向(ほうこう)へ、ひとすじに大路(おおじ)(あゆ)み、()きながら(すす)んでいって、(みぎ)にも(ひだり)にも(まが)らなかった。ペリシテびとの(きみ)たちは、ベテシメシの(さかい)までそのあとについていった。 13(とき)にベテシメシの人々(ひとびと)(たに)小麦(こむぎ)()()れていたが、()をあげて、その(はこ)()、それを(むか)えて(よろこ)んだ。 14(くるま)はベテシメシびとヨシュアの(はたけ)にはいって、そこにとどまった。その(ところ)(おお)きな(いし)があった。人々(ひとびと)(くるま)()()り、その雌牛(めうし)燔祭(はんさい)として(しゅ)にささげた。 15レビびとは(しゅ)(はこ)と、そのかたわらの、(きん)(つく)(もの)をおさめた(はこ)()りおろし、それを大石(おおいし)(うえ)()いた。そしてベテシメシの人々(ひとびと)は、その()(しゅ)燔祭(はんさい)(そな)え、犠牲(ぎせい)をささげた。 16ペリシテびとの五(にん)(きみ)たちはこれを()て、その()、エクロンに(かえ)った。
17ペリシテびとが、とがの(そな)(もの)として、(しゅ)(つぐな)いをした(きん)腫物(はれもの)は、(つぎ)のとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つであった。 18また(きん)のねずみは、城壁(じょうへき)をめぐらした(まち)から城壁(じょうへき)のない村里(むらざと)にいたるまで、すべて五(にん)(きみ)たちに(ぞく)するペリシテびとの(まち)(かず)にしたがって(つく)った。(しゅ)(はこ)をおろした(ところ)のかたわらにあった大石(おおいし)は、今日(こんにち)にいたるまで、ベテシメシびとヨシュアの(はたけ)にあって、あかしとなっている。
19ベテシメシの人々(ひとびと)(しゅ)(はこ)(なか)()たものがあったので、(しゅ)はこれを()たれた。すなわち(たみ)のうち七十(にん)()たれた。(しゅ)(たみ)()って(おお)くの(もの)(ころ)されたので、(たみ)はなげき(かな)しんだ。 20ベテシメシの人々(ひとびと)()った、「だれが、この(せい)なる(かみ)(しゅ)(まえ)()つことができようか。(しゅ)はわれわれを(はな)れてだれの(ところ)(のぼ)って()かれたらよいのか」。 21そして(かれ)らは、使者(ししゃ)をキリアテ・ヤリムの人々(ひとびと)につかわして()った、「ペリシテびとが(しゅ)(はこ)(かえ)したから、(くだ)ってきて、それをあなたがたの(ところ)(たずさ)(のぼ)ってください」。

第七章

1キリアテ・ヤリムの人々(ひとびと)は、きて、(しゅ)(はこ)(たずさ)(のぼ)り、(おか)(うえ)のアビナダブの(いえ)()ってきて、その()エレアザルを聖別(せいべつ)して、(しゅ)(はこ)(まも)らせた。 2その(はこ)(ひさ)しくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十(ねん)()た。イスラエルの全家(ぜんか)(しゅ)(した)って(なげ)いた。
3その(とき)サムエルはイスラエルの全家(ぜんか)()げていった、「もし、あなたがたが一心(いっしん)(しゅ)()(かえ)るのであれば、ほかの神々(かみがみ)とアシタロテを、あなたがたのうちから()()り、(こころ)(しゅ)()け、(しゅ)にのみ(つか)えなければならない。そうすれば、(しゅ)はあなたがたをペリシテびとの()から(すく)()されるであろう」。 4そこでイスラエルの人々(ひとびと)はバアルとアシタロテを()()り、ただ(しゅ)にのみ(つか)えた。
5サムエルはまた()った、「イスラエルびとを、ことごとくミヅパに(あつ)めなさい。わたしはあなたがたのために(しゅ)(いの)りましょう」。 6人々(ひとびと)はミヅパに(あつ)まり、(みず)をくんでそれを(しゅ)(まえ)(そそ)ぎ、その()断食(だんじき)してその(ところ)()った、「われわれは(しゅ)(たい)して(つみ)(おか)した」。サムエルはミヅパでイスラエルの人々(ひとびと)をさばいた。 7イスラエルの人々(ひとびと)のミヅパに(あつ)まったことがペリシテびとに(きこ)えたので、ペリシテびとの(きみ)たちは、イスラエルに()(のぼ)ってきた。イスラエルの人々(ひとびと)はそれを()いて、ペリシテびとを(おそ)れた。 8そしてイスラエルの人々(ひとびと)はサムエルに()った、「われわれのため、われわれの(かみ)(しゅ)(さけ)ぶことを、やめないでください。そうすれば(しゅ)がペリシテびとの()からわれわれを(すく)()されるでしょう」。 9そこでサムエルは(ちち)()小羊(こひつじ)(とう)をとり、これを(まった)燔祭(はんさい)として(しゅ)にささげた。そしてサムエルはイスラエルのために(しゅ)(さけ)んだので、(しゅ)はこれに(こた)えられた。 10サムエルが燔祭(はんさい)をささげていた(とき)、ペリシテびとはイスラエルと(たたか)おうとして(ちか)づいてきた。しかし(しゅ)はその()(おお)いなる(かみなり)をペリシテびとの(うえ)にとどろかせて、(かれ)らを(みだ)されたので、(かれ)らはイスラエルびとの(まえ)(やぶ)れて()げた。 11イスラエルの人々(ひとびと)はミヅパを()てペリシテびとを()い、これを()って、ベテカルの(した)まで()った。
12その(とき)サムエルは一つの(いし)をとってミヅパとエシャナの(あいだ)にすえ、「(しゅ)(いま)(いた)るまでわれわれを(たす)けられた」と()って、その()をエベネゼルと()づけた。 13こうしてペリシテびとは征服(せいふく)され、ふたたびイスラエルの領地(りょうち)に、はいらなかった。サムエルの一生(いっしょう)(あいだ)(しゅ)()が、ペリシテびとを(ふせ)いだ。 14ペリシテびとがイスラエルから()った町々(まちまち)は、エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲(しゅうい)()をもペリシテびとの()から()りかえした。またイスラエルとアモリびととの(あいだ)には平和(へいわ)があった。
15サムエルは一生(いっしょう)(あいだ)イスラエルをさばいた。 16(とし)ごとにサムエルはベテルとギルガル、およびミヅパを(めぐ)って、その所々(ところどころ)でイスラエルをさばき、 17ラマに(かえ)った。そこに(かれ)(いえ)があったからである。その(ところ)でも(かれ)はイスラエルをさばき、またそこで(しゅ)祭壇(さいだん)(きず)いた。

第八章

1サムエルは年老(としお)いて、その()らをイスラエルのさばきづかさとした。 2長子(ちょうし)()はヨエルといい、(つぎ)()()はアビヤと()った。(かれ)らはベエルシバでさばきづかさであった。 3しかしその()らは(ちち)(みち)(あゆ)まないで、()にむかい、まいないを()って、さばきを()げた。
4この(とき)、イスラエルの長老(ちょうろう)たちはみな(あつ)まってラマにおるサムエルのもとにきて、 5()った、「あなたは年老(としお)い、あなたの()たちはあなたの(みち)(あゆ)まない。(いま)ほかの国々(くにぐに)のように、われわれをさばく(おう)を、われわれのために()ててください」。 6しかし(かれ)らが、「われわれをさばく(おう)を、われわれに(あた)えよ」と()うのを()いて、サムエルは(よろこ)ばなかった。そしてサムエルが(しゅ)(いの)ると、 7(しゅ)はサムエルに()われた、「(たみ)が、すべてあなたに()(ところ)(こえ)()(したが)いなさい。(かれ)らが()てるのはあなたではなく、わたしを()てて、(かれ)らの(うえ)にわたしが(おう)であることを(みと)めないのである。 8(かれ)らは、わたしがエジプトから()(のぼ)った()から、きょうまで、わたしを()ててほかの神々(かみがみ)(つか)え、さまざまの(こと)をわたしにしたように、あなたにもしているのである。 9(いま)その(こえ)()(したが)いなさい。ただし、(ふか)(かれ)らを(いまし)めて、(かれ)らを(おさ)める(おう)のならわしを(かれ)らに(しめ)さなければならない」。
10サムエルは(おう)()てることを(もと)める(たみ)(しゅ)言葉(ことば)をことごとく()げて、 11()った、「あなたがたを(おさ)める(おう)のならわしは(つぎ)のとおりである。(かれ)はあなたがたのむすこを()って、戦車(せんしゃ)(たい)()れ、騎兵(きへい)とし、自分(じぶん)戦車(せんしゃ)(まえ)(はし)らせるであろう。 12(かれ)はまたそれを千(にん)(ちょう)、五十(にん)(ちょう)(にん)じ、またその()(たがや)させ、その作物(さくもつ)()らせ、またその武器(ぶき)戦車(せんしゃ)装備(そうび)(つく)らせるであろう。 13また、あなたがたの(むすめ)()って、(こう)をつくる(もの)とし、料理(りょうり)をする(もの)とし、パンを()(もの)とするであろう。 14また、あなたがたの(はたけ)とぶどう(はたけ)とオリブ(はたけ)(もっと)()(もの)()って、その家来(けらい)(あた)え、 15あなたがたの穀物(こくもつ)と、ぶどう(はたけ)の、十(ぶん)の一を()って、その役人(やくにん)家来(けらい)(あた)え、 16また、あなたがたの男女(だんじょ)奴隷(どれい)および、あなたがたの(もっと)()(うし)とろばを()って、自分(じぶん)のために(はたら)かせ、 17また、あなたがたの(ひつじ)の十(ぶん)の一を()り、あなたがたは、その奴隷(どれい)となるであろう。 18そしてその()あなたがたは自分(じぶん)のために(えら)んだ(おう)のゆえに()ばわるであろう。しかし(しゅ)はその()にあなたがたに(こた)えられないであろう」。
19ところが(たみ)はサムエルの(こえ)()(したが)うことを(こば)んで()った、「いいえ、われわれを(おさ)める(おう)がなければならない。 20われわれも()国々(くにぐに)のようになり、(おう)がわれわれをさばき、われわれを(ひき)いて、われわれの(たたか)いにたたかうのである」。 21サムエルは(たみ)言葉(ことば)をことごとく()いて、それを(しゅ)(みみ)()げた。 22(しゅ)はサムエルに()われた、「(かれ)らの(こえ)()(したが)い、(かれ)らのために(おう)()てよ」。サムエルはイスラエルの人々(ひとびと)()った、「あなたがたは、めいめいその(まち)(かえ)りなさい」。

第九章

1さて、ベニヤミンの(ひと)で、キシという()裕福(ゆうふく)(ひと)があった。キシはアビエルの()、アビエルはゼロルの()、ゼロルはベコラテの()、ベコラテはアピヤの()、アピヤはベニヤミンびとである。 2キシにはサウルという()()があった。(わか)くて(うるわ)しく、イスラエルの人々(ひとびと)のうちに(かれ)よりも(うるわ)しい(ひと)はなく、(たみ)のだれよりも(かた)から(うえ)()(たか)かった。
3サウルの(ちち)キシの(すう)(とう)のろばがいなくなった。そこでキシは、その()サウルに()った、「しもべをひとり()れて、()って()き、ろばを(さが)してきなさい」。 4そこでふたりはエフライムの山地(さんち)(とお)りすぎ、シャリシャの()(とお)()ぎたけれども見当(みあた)らず、シャリムの()(とお)()ぎたけれどもおらず、ベニヤミンの()(とお)()ぎたけれども見当(みあた)らなかった。
5(かれ)らがツフの()にきた(とき)、サウルは()れてきたしもべに()った、「さあ、(かえ)ろう。(ちち)は、ろばのことよりも、われわれのことを心配(しんぱい)するだろう」。 6ところが、しもべは()った、「この(まち)には(かみ)(ひと)がおられます。(たっと)(ひと)で、その()われることはみなそのとおりになります。その(ところ)()きましょう。われわれの()てきた(たび)のことについて(なに)(しめ)されるでしょう」。 7サウルはしもべに()った、「しかし()くのであれば、その(ひと)(なに)(おく)ろうか。(ふくろ)のパンはもはや、なくなり、(かみ)(ひと)()っていく(おく)(もの)がない。(なに)かありますか」。 8しもべは、またサウルに(こた)えた、「わたしの()に四(ぶん)の一シケルの(ぎん)があります。わたしはこれを、(かみ)(ひと)(あた)えて、われわれの(みち)(しめ)してもらいましょう」。 9——(むかし)イスラエルでは、(かみ)()うために()(とき)には、こう()った、「さあ、われわれは先見者(せんけんしゃ)のところへ()こう」。(いま)預言者(よげんしゃ)は、(むかし)先見者(せんけんしゃ)といわれていたのである。—— 10サウルはそのしもべに()った、「それは()い。さあ、()こう」。こうして(かれ)らは、(かみ)(ひと)のいるその(まち)()った。
11(かれ)らは(まち)()(さか)(のぼ)っている(とき)(みず)をくむために()てくるおとめたちに出会(であ)ったので、(かれ)らに()った、「先見者(せんけんしゃ)はここにおられますか」。 12おとめたちは(こた)えた、「おられます。ごらんなさい、この(さき)です。(いそ)いで()きなさい。(たみ)がきょう(たか)(ところ)犠牲(ぎせい)をささげるので、たった(いま)(まち)にこられたところです。 13あなたがたは、(まち)にはいるとすぐ、あのかたが(たか)(ところ)(のぼ)って食事(しょくじ)される(まえ)()えるでしょう。(たみ)はそのかたがこられるまでは食事(しょくじ)をしません。あのかたが犠牲(ぎせい)祝福(しゅくふく)されてから、(まね)かれた人々(ひとびと)食事(しょくじ)をするのです。さあ、(のぼ)っていきなさい。すぐに()えるでしょう」。 14こうして(かれ)らは(まち)(のぼ)っていった。そして(まち)(なか)に、はいろうとした(とき)、サムエルは(たか)(ところ)(のぼ)るため(かれ)らのほうに()かって()てきた。
15さてサウルが()る一(にち)(まえ)に、(しゅ)はサムエルの(みみ)()げて()われた、 16「あすの(いま)ごろ、あなたの(ところ)に、ベニヤミンの()から、ひとりの(ひと)をつかわすであろう。あなたはその(ひと)(あぶら)(そそ)いで、わたしの(たみ)イスラエルの(きみ)としなさい。(かれ)はわたしの(たみ)をペリシテびとの()から(すく)()すであろう。わたしの(たみ)(さけ)びがわたしに(とど)き、わたしがその(なや)みを(かえり)みるからである」。 17サムエルがサウルを()(とき)(しゅ)()われた、「()よ、わたしの()ったのはこの(ひと)である。この(ひと)がわたしの(たみ)(おさ)めるであろう」。 18そのときサウルは、(もん)(なか)でサムエルに(ちか)づいて()った、「先見者(せんけんしゃ)(いえ)はどこですか。どうか(おし)えてください」。 19サムエルはサウルに(こた)えた、「わたしがその先見者(せんけんしゃ)です。わたしの(まえ)()って、(たか)(ところ)(のぼ)りなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒(いっしょ)食事(しょくじ)しなさい。わたしはあすの(あさ)あなたを(かえ)らせ、あなたの(こころ)にあることをみな(しめ)しましょう。 20()(まえ)に、いなくなったあなたのろばは、もはや()つかったので(こころ)にかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべての(のぞ)ましきものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたの(ちち)(いえ)のすべての(ひと)のものではありませんか」。 21サウルは(こた)えた、「わたしはイスラエルのうちの(もっと)(ちい)さい部族(ぶぞく)のベニヤミンびとであって、わたしの一族(いちぞく)はまたベニヤミンのどの一族(いちぞく)よりも(いや)しいものではありませんか。どうしてあなたは、そのようなことをわたしに()われるのですか」。
22サムエルはサウルとそのしもべを(みちび)いて、へやにはいり、(まね)かれた三十(にん)ほどのうちの上座(かみざ)にすわらせた。 23そしてサムエルは料理(りょうり)(にん)()った、「あなたに(わた)して、()りのけておくようにと()っておいた(ぶん)()ってきなさい」。 24料理(りょうり)(にん)は、ももとその(うえ)部分(ぶぶん)()()げて、それをサウルの(まえ)()いた。そしてサムエルは()った、「ごらんなさい。()っておいた(もの)が、あなたの(まえ)()かれています。()しあがってください。あなたが客人(きゃくじん)たちと一緒(いっしょ)食事(しょくじ)ができるように、この(とき)まで、あなたのために()っておいたものです」。
こうしてサウルはその()サムエルと一緒(いっしょ)食事(しょくじ)をした。 25そして(かれ)らが(たか)(ところ)(くだ)って(まち)にはいった(とき)、サウルのために屋上(おくじょう)(とこ)(もう)けられ、(かれ)はその(うえ)()(よこ)たえて()た。 26そして夜明(よあ)けになって、サムエルは屋上(おくじょう)のサウルに()ばわって()った、「()きなさい。あなたをお(おく)りします」。サウルは()()がった。そしてサウルとサムエルのふたりは、(とも)(そと)()た。
27(かれ)らが(まち)はずれに(くだ)った(とき)、サムエルはサウルに()った、「あなたのしもべに(さき)()くように()いなさい。しもべが(さき)()ったら、あなたは、しばらくここに()ちとどまってください。(かみ)言葉(ことば)()らせましょう」。

第十章

1その(とき)サムエルは(あぶら)のびんを()って、サウルの(あたま)(そそ)ぎ、(かれ)(くち)づけして()った、「(しゅ)はあなたに(あぶら)(そそ)いで、その(たみ)イスラエルの(きみ)とされたではありませんか。あなたは(しゅ)(たみ)(おさ)め、周囲(しゅうい)(てき)()から(かれ)らを(すく)わなければならない。(しゅ)があなたに(あぶら)(そそ)いで、その()(ぎょう)(きみ)とされたことの、しるしは(つぎ)のとおりです。 2あなたがきょう、わたしを(はな)れて、()って()くとき、ベニヤミンの領地(りょうち)のゼルザにあるラケルの(はか)のかたわらで、ふたりの(ひと)()うでしょう。そして(かれ)らはあなたに()います、『あなたが(さが)しに()かれたろばは()つかりました。いま父上(ちちうえ)は、ろばよりもあなたがたの(こと)心配(しんぱい)して、「わが()のことは、どうしよう」と()っておられます』。 3あなたが、そこからなお(すす)んで、タボルのかしの()(ところ)()くと、そこでベテルに(のぼ)って(かみ)(おが)もうとする三(にん)(もの)()うでしょう。ひとりは三(とう)()やぎを()れ、ひとりは三つのパンを(たずさ)え、ひとりは、ぶどう(しゅ)のはいった(かわ)(ぶくろ)一つを(たずさ)えている。 4(かれ)らはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、その()から()けなければならない。 5その(のち)、あなたは(かみ)のギベアへ()く。そこはペリシテびとの守備(しゅび)(へい)のいる(ところ)である。あなたはその(ところ)()って、(まち)にはいる(とき)立琴(たてごと)()(つづみ)(ふえ)(こと)()人々(ひとびと)(さき)()かせて、預言(よげん)しながら(たか)(ところ)から()りてくる一群(いちぐん)預言者(よげんしゃ)()うでしょう。 6その(とき)(しゅ)(れい)があなたの(うえ)にもはげしく(くだ)って、あなたは(かれ)らと一緒(いっしょ)預言(よげん)し、(かわ)って(あたら)しい(ひと)となるでしょう。 7これらのしるしが、あなたの()()ったならば、あなたは手当(てあ)たりしだいになんでもしなさい。(かみ)があなたと一緒(いっしょ)におられるからです。 8あなたはわたしに先立(さきだ)ってギルガルに(くだ)らなければならない。わたしはあなたのもとに(くだ)っていって、燔祭(はんさい)(そな)え、酬恩祭(しゅうおんさい)をささげるでしょう。わたしがあなたのもとに()って、あなたのしなければならない(こと)をあなたに(しめ)すまで、七日(なぬか)のあいだ()たなければならない」。
9サウルが()をかえしてサムエルを(はな)れたとき、(かみ)(かれ)(あたら)しい(こころ)(あた)えられた。これらのしるしは(みな)その()()った。 10(かれ)らはギベアにきた(とき)預言者(よげんしゃ)一群(いちぐん)出会(であ)った。そして(かみ)(れい)が、はげしくサウルの(うえ)(くだ)り、(かれ)(かれ)らのうちにいて預言(よげん)した。 11もとからサウルを()っていた人々(ひとびと)はみな、サウルが預言者(よげんしゃ)たちと(とも)預言(よげん)するのを()(たがい)()った、「キシの()何事(なにごと)()ったのか。サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」。 12その(ところ)のひとりの(もの)(こた)えた、「(かれ)らの(ちち)はだれなのか」。それで「サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。 13サウルは預言(よげん)することを()えて、(たか)(ところ)()った。
14サウルのおじが、サウルとそのしもべとに()った、「あなたがたは、どこへ()ったのか」。サウルは()った、「ろばを(さが)しにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとに()きました」。 15サウルのおじは()った、「サムエルが、どんなことを()ったか、どうぞ(はな)してください」。 16サウルはおじに()った、「ろばが()つかったと、はっきり、わたしたちに()いました」。しかしサムエルが()った王国(おうこく)のことについて、おじには(なに)()げなかった。
17さて、サムエルは(たみ)をミヅパで(しゅ)(まえ)(あつ)め、 18イスラエルの人々(ひとびと)()った、「イスラエルの(かみ)(しゅ)はこう(おお)せられる、『わたしはイスラエルをエジプトから(みちび)()し、あなたがたをエジプトびとの()、およびすべてあなたがたをしえたげる王国(おうこく)()から(すく)()した』。 19しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをその(なや)みと(くる)しみの(なか)から(すく)われるあなたがたの(かみ)()て、その(うえ)、『いいえ、われわれの(うえ)(おう)()てよ』と()う。それゆえ(いま)、あなたがたは、部族(ぶぞく)にしたがい、また氏族(しぞく)にしたがって、(しゅ)(まえ)()なさい」。
20こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族(ぶぞく)()()せた(とき)、ベニヤミンの部族(ぶぞく)が、くじに(あた)った。 21またベニヤミンの部族(ぶぞく)をその氏族(しぞく)にしたがって()()せた(とき)、マテリの氏族(しぞく)が、くじに(あた)り、マテリの氏族(しぞく)(ひと)ごとに()()せた(とき)、キシの()サウルが、くじに(あた)った。しかし人々(ひとびと)(かれ)(さが)した(とき)()つからなかった。 22そこでまた(しゅ)に「その(ひと)はここにきているのですか」と()うと、(しゅ)()われた、「(かれ)荷物(にもつ)(あいだ)(かく)れている」。 23人々(ひとびと)(はし)って()って、(かれ)をそこから()れてきた。(かれ)(たみ)(なか)()ったが、(かた)から(うえ)は、(たみ)のどの(ひと)よりも(たか)かった。 24サムエルはすべての(たみ)()った、「(しゅ)(えら)ばれた(ひと)をごらんなさい。(たみ)のうちに(かれ)のような(ひと)はないではありませんか」。(たみ)はみな「(おう)万歳(ばんざい)」と(さけ)んだ。
25その(とき)サムエルは王国(おうこく)のならわしを(たみ)(かた)り、それを(しょ)にしるして、(しゅ)(まえ)におさめた。こうしてサムエルはすべての(たみ)をそれぞれ(いえ)(かえ)らせた。 26サウルもまたギベアにある(かれ)(いえ)(かえ)った。そして(かみ)にその(こころ)(うご)かされた勇士(ゆうし)たちも(かれ)(とも)()った。 27しかし、よこしまな人々(ひとびと)は「この(おとこ)がどうしてわれわれを(すく)うことができよう」と()って、(かれ)(かろ)んじ、(おく)(もの)をしなかった。しかしサウルは(だま)っていた。

第十一章

1アンモンびとナハシは(のぼ)ってきて、ヤベシ・ギレアデを()(かこ)んだ。ヤベシの人々(ひとびと)はナハシに()った、「われわれと契約(けいやく)(むす)びなさい。そうすればわれわれはあなたに(つか)えます」。 2しかしアンモンびとナハシは(かれ)らに()った、「(つぎ)条件(じょうけん)であなたがたと契約(けいやく)(むす)ぼう。すなわち、わたしが、あなたがたすべての(みぎ)()をえぐり()って、(ぜん)イスラエルをはずかしめるということだ」。 3ヤベシの長老(ちょうろう)たちは(かれ)()った、「われわれに七日(なぬか)猶予(ゆうよ)(あた)え、イスラエルの(ぜん)領土(りょうど)使者(ししゃ)(おく)ることを(ゆる)してください。そしてもしわれわれを(すく)(もの)がない(とき)降伏(こうふく)します」。 4こうして使者(ししゃ)が、サウルのギベアにきて、この(こと)(たみ)(みみ)()げたので、(たみ)はみな(こえ)をあげて()いた。
5その(とき)サウルは(はたけ)から(うし)のあとについてきた。そしてサウルは()った、「(たみ)()いているのは、どうしたのか」。人々(ひとびと)(かれ)にヤベシの人々(ひとびと)(こと)()げた。 6サウルがこの言葉(ことば)()いた(とき)(かみ)(れい)(はげ)しく(かれ)(うえ)(のぞ)んだので、(かれ)(いか)りははなはだしく()えた。 7(かれ)は一くびきの(うし)をとり、それを()()き、使者(ししゃ)()によってイスラエルの(ぜん)領土(りょうど)(おく)って()わせた、「だれであってもサウルとサムエルとに(したが)って()ない(もの)は、その(うし)がこのようにされるであろう」。(たみ)(しゅ)(おそ)れて、ひとりのように()てきた。 8サウルはベゼクでそれを(かぞ)えたが、イスラエルの人々(ひとびと)は三十万、ユダの人々(ひとびと)は三万であった。 9そして人々(ひとびと)は、きた使者(ししゃ)たちに()った、「ヤベシ・ギレアデの(ひと)にこう()いなさい、『あす、()(あつ)くなるころ、あなたがたは(すくい)()るであろう』と」。使者(ししゃ)(かえ)って、ヤベシの人々(ひとびと)()げたので、(かれ)らは(よろこ)んだ。 10そこでヤベシの人々(ひとびと)()った、「あす、われわれは降伏(こうふく)します。なんでも、あなたがたが()いと(おも)うことを、われわれにしてください」。 11()くる()、サウルは(たみ)を三つの部隊(ぶたい)()け、あかつきに(てき)陣営(じんえい)()()り、()(あつ)くなるころまで、アンモンびとを(ころ)した。()(のこ)った(もの)はちりぢりになって、ふたり一緒(いっしょ)にいるものはなかった。
12その(とき)(たみ)はサムエルに()った、「さきに、『サウルがどうしてわれわれを(おさ)めることができようか』と()ったものはだれでしょうか。その人々(ひとびと)()()してください。われわれはその人々(ひとびと)(ころ)します」。 13しかしサウルは()った、「(しゅ)はきょう、イスラエルに(すくい)(ほどこ)されたのですから、きょうは(ひと)(ころ)してはなりません」。 14そこでサムエルは(たみ)()った、「さあ、ギルガルへ()って、あそこで王国(おうこく)一新(いっしん)しよう」。 15こうして(たみ)はみなギルガルへ()って、その(ところ)(しゅ)(まえ)にサウルを(おう)とし、酬恩祭(しゅうおんさい)(しゅ)(まえ)にささげ、サウルとイスラエルの人々(ひとびと)(みな)、その(ところ)(おお)いに(いわ)った。

第十二章

1サムエルはイスラエルの人々(ひとびと)()った、「()よ、わたしは、あなたがたの言葉(ことば)()(したが)って、あなたがたの(うえ)(おう)()てた。 2()(おう)(いま)、あなたがたの(まえ)(あゆ)む。わたしは年老(としお)いて(かみ)(しろ)くなった。わたしの()らもあなたがたと(とも)にいる。わたしは(わか)(とき)から、きょうまで、あなたがたの(まえ)(あゆ)んだ。 3わたしはここにいる。(しゅ)(まえ)と、その(あぶら)そそがれた(もの)(まえ)に、わたしを(うった)えよ。わたしが、だれの(うし)()ったか。だれのろばを()ったか。だれを(あざむ)いたか。だれをしえたげたか。だれの()から、まいないを()って、自分(じぶん)()をくらましたか。もしそのようなことがあれば、わたしはそれを、あなたがたに(つぐな)おう」。 4(かれ)らは()った、「あなたは、われわれを(あざむ)いたことも、しえたげたこともありません。また(ひと)()から(なに)()ったことはありません」。 5サムエルは(かれ)らに()った、「あなたがたが、わたしの()のうちに、なんの不正(ふせい)をも()いださないことを、(しゅ)はあなたがたにあかしされる。その(あぶら)そそがれた(もの)も、きょうそれをあかしする」。(かれ)らは()った、「あかしされます」。
6サムエルは(たみ)()った、「モーセとアロンを()てて、あなたがたの先祖(せんぞ)をエジプトの()から(みちび)()された(しゅ)証人(しょうにん)です。 7それゆえ、あなたがたは(いま)()ちなさい。わたしは(しゅ)が、あなたがたとあなたがたの先祖(せんぞ)のために(おこな)われたすべての(すくい)のわざについて、(しゅ)(まえ)に、あなたがたと(ろん)じよう。 8ヤコブがエジプトに()って、エジプトびとが、(かれ)らを、しえたげた(とき)、あなたがたの先祖(せんぞ)(しゅ)()ばわったので、(しゅ)はモーセとアロンをつかわされた。そこで(かれ)らは、あなたがたの先祖(せんぞ)をエジプトから(みちび)()して、この(ところ)()まわせた。 9しかし、(かれ)らがその(かみ)(しゅ)(わす)れたので、(しゅ)(かれ)らをハゾルの(おう)ヤビンの(ぐん)(ちょう)シセラの()(わた)し、またペリシテびとの()とモアブの(おう)()にわたされた。そこで(かれ)らがイスラエルを()めたので、 10(たみ)(しゅ)()ばわって()った、『われわれは(しゅ)()て、バアルとアシタロテに(つか)えて、(つみ)(おか)しました。(いま)、われわれを(てき)()から(すく)()してください。われわれはあなたに(つか)えます』。 11(しゅ)はエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを周囲(しゅうい)(てき)()から(すく)()されたので、あなたがたは(やす)らかに()むことができた。 12ところが、アンモンびとの(おう)ナハシが()めてくるのを()たとき、あなたがたの(かみ)(しゅ)があなたがたの(おう)であるのに、あなたがたはわたしに、『いいえ、われわれを(おさ)める(おう)がなければならない』と()った。 13それゆえ、(いま)あなたがたの(えら)んだ(おう)、あなたがたが(もと)めた(おう)()なさい。(しゅ)はあなたがたの(うえ)(おう)()てられた。 14もし、あなたがたが(しゅ)(おそ)れ、(しゅ)(つか)えて、その(こえ)()(したが)い、(しゅ)(いまし)めにそむかず、あなたがたも、あなたがたを(おさ)める(おう)(とも)に、あなたがたの(かみ)(しゅ)(したが)うならば、それで()い。 15しかし、もしあなたがたが(しゅ)(こえ)()(したが)わず、(しゅ)(いまし)めにそむくならば、(しゅ)()は、あなたがたとあなたがたの(おう)()めるであろう。 16それゆえ、(いま)、あなたがたは()って、(しゅ)が、あなたがたの()(まえ)(おこな)われる、この(おお)いなる(こと)()なさい。 17きょうは小麦(こむぎ)(かり)(とき)ではないか。わたしは(しゅ)()ばわるであろう。そのとき(しゅ)(かみなり)(あめ)(くだ)して、あなたがたが(おう)(もと)めて、(しゅ)(まえ)(おか)した(つみ)(おお)いなることを()させ、また()らせられるであろう」。 18そしてサムエルが(しゅ)()ばわったので、(しゅ)はその()(かみなり)(あめ)(くだ)された。(たみ)(みな)ひじょうに(しゅ)とサムエルとを(おそ)れた。
19(たみ)はみなサムエルに()った、「しもべらのために、あなたの(かみ)(しゅ)(いの)って、われわれの()なないようにしてください。われわれは、もろもろの(つみ)(おか)した(うえ)に、また(おう)(もと)めて、(あく)(くわ)えました」。 20サムエルは(たみ)()った、「(おそ)れることはない。あなたがたは、このすべての(あく)をおこなった。しかし(しゅ)(したが)うことをやめず、(こころ)をつくして(しゅ)(つか)えなさい。 21むなしい(もの)(まよ)って()ってはならない。それは、あなたがたを(たす)けることも(すく)うこともできないむなしいものだからである。 22(しゅ)は、その(おお)いなる()のゆえに、その(たみ)()てられないであろう。(しゅ)が、あなたがたを自分(じぶん)(たみ)とすることを()しとされるからである。 23また、わたしは、あなたがたのために(いの)ることをやめて(しゅ)(つみ)(おか)すことは、けっしてしないであろう。わたしはまた()い、(ただ)しい(みち)を、あなたがたに(おし)えるであろう。 24あなたがたは、ただ(しゅ)(おそ)れ、(こころ)をつくして、誠実(せいじつ)(しゅ)(つか)えなければならない。そして(しゅ)がどんなに(おお)きいことをあなたがたのためにされたかを(かんが)えなければならない。 25しかし、あなたがたが、なおも(あく)(おこな)うならば、あなたがたも、あなたがたの(おう)も、(とも)(ほろ)ぼされるであろう」。

第十三章

1サウルは三十(さい)(おう)(くらい)につき、二(ねん)イスラエルを(おさ)めた。
2さてサウルはイスラエルびと三千を(えら)んだ。二千はサウルと(とも)にミクマシ、およびベテルの山地(さんち)におり、一千はヨナタンと(とも)にベニヤミンのギベアにいた。サウルはその()(たみ)を、おのおの、その天幕(てんまく)(かえ)らせた。 3ヨナタンは、ゲバにあるペリシテびとの守備(しゅび)(へい)(やぶ)った。ペリシテびとはそのことを()いた。そこで、サウルは国中(くにぢゅう)に、あまねく角笛(つのぶえ)()きならして()わせた、「ヘブルびとよ、()け」。 4イスラエルの(ひと)(みな)、サウルがペリシテびとの守備(しゅび)(へい)(やぶ)ったこと、そしてイスラエルがペリシテびとに(にく)まれるようになったことを()いた。こうして(たみ)()されて、ギルガルのサウルのもとに(あつ)まった。
5ペリシテびとはイスラエルと(たたか)うために(あつ)まった。戦車(せんしゃ)三千、騎兵(きへい)六千、(たみ)(はま)べの(すな)のように(おお)かった。(かれ)らは(のぼ)ってきて、ベテアベンの(ひがし)のミクマシに(じん)()った。 6イスラエルびとは、ひどく圧迫(あっぱく)され、味方(みかた)(あやう)くなったのを()て、ほら(あな)に、縦穴(たてあな)に、(いわ)に、(はか)に、ため(いけ)()(かく)した。 7また、あるヘブルびとはヨルダンを(わた)って、ガドとギレアデの()()った。しかしサウルはなおギルガルにいて、(たみ)はみな、ふるえながら(かれ)(したが)った。
8サウルは、サムエルが(さだ)めたように、七日(なぬか)のあいだ()ったが、サムエルがギルガルにこなかったので、(たみ)(かれ)(はな)れて()って()った。 9そこでサウルは()った、「燔祭(はんさい)酬恩祭(しゅうおんさい)をわたしの(ところ)()ってきなさい」。こうして(かれ)燔祭(はんさい)をささげた。 10その燔祭(はんさい)をささげ(おわ)ると、サムエルがきた。サウルはあいさつをしようと、(かれ)(むか)えに()た。 11その(とき)サムエルは()った、「あなたは(なに)をしたのですか」。サウルは()った、「(たみ)はわたしを(はな)れて()って()き、あなたは(さだ)まった()のうちにこられないのに、ペリシテびとがミクマシに(あつ)まったのを()たので、 12わたしは、ペリシテびとが(いま)にも、ギルガルに(くだ)ってきて、わたしを(おそ)うかも()れないのに、わたしはまだ(しゅ)(めぐ)みを(もと)めることをしていないと(おも)い、やむを()燔祭(はんさい)をささげました」。 13サムエルはサウルに()った、「あなたは(おろ)かなことをした。あなたは、あなたの(かみ)(しゅ)(めい)じられた命令(めいれい)(まも)らなかった。もし(まも)ったならば、(しゅ)(いま)あなたの王国(おうこく)(なが)くイスラエルの(うえ)確保(かくほ)されたであろう。 14しかし(いま)は、あなたの王国(おうこく)(つづ)かないであろう。(しゅ)自分(じぶん)(こころ)にかなう(ひと)(もと)めて、その(ひと)(たみ)(きみ)となることを(めい)じられた。あなたが(しゅ)(めい)じられた(こと)(まも)らなかったからである」。 15こうしてサムエルは()って、ギルガルからベニヤミンのギベアに(のぼ)っていった。
サウルは(とも)にいる(たみ)(かぞ)えてみたが、おおよそ六百(にん)あった。 16サウルとその()ヨナタン、ならびに、(とも)にいる(たみ)は、ベニヤミンのゲバにおり、ペリシテびとはミクマシに(じん)()っていた。 17そしてペリシテびとの(じん)から三つの部隊(ぶたい)にわかれた略奪(りゃくだつ)(たい)()てきて、一()(たい)はオフラの(ほう)()かって、シュアルの()()き、 18()(たい)はベテホロンの(ほう)()かい、一()(たい)荒野(あらの)(ほう)のゼボイムの(たに)()おろす(さかい)(ほう)()かった。
19そのころ、イスラエルの()にはどこにも鉄工(てっこう)がいなかった。ペリシテびとが「ヘブルびとはつるぎも、やりも(つく)ってはならない」と()ったからである。 20ただしイスラエルの(ひと)(みな)、そのすきざき、くわ、おの、かまに()をつけるときは、ペリシテびとの(ところ)(くだ)って()った。 21すきざきと、くわのための料金(りょうきん)は一ピムであり、おのに()をつけるのと、とげのあるむちを(なお)すのは三(ぶん)の一シケルであった。 22それでこの(たたか)いの()には、サウルおよびヨナタンと(とも)にいた(たみ)()には、つるぎもやりもなく、ただサウルとその()ヨナタンとがそれを()っていた。 23ペリシテびとの先陣(せんじん)はミクマシの(わた)りに(すす)()た。

第十四章

1ある()、サウルの()ヨナタンは、その武器(ぶき)()若者(わかもの)に「さあ、われわれは()こう(がわ)の、ペリシテびとの先陣(せんじん)(わた)って()こう」と()った。しかしヨナタンは(ちち)には()げなかった。 2サウルはギベアのはずれで、ミグロンにある、ざくろの()(した)にとどまっていたが、(とも)にいた(たみ)はおおよそ六百(にん)であった。 3またアヒヤはエポデを()()けて(とも)にいた。アヒヤはアヒトブの()、アヒトブはイカボデの兄弟(きょうだい)、イカボデはピネハスの()、ピネハスはシロにおいて(しゅ)祭司(さいし)であったエリの()である。(たみ)はヨナタンが()かけることを()らなかった。 4ヨナタンがペリシテびとの先陣(せんじん)(わた)って()こうとする(わた)りには、一方(いっぽう)(けわ)しい(いわ)があり、他方(たほう)にも(けわ)しい(いわ)があり、一方(いっぽう)()をボゼヅといい、他方(たほう)()をセネといった。 5(いわ)の一つはミクマシの(まえ)にあって(きた)にあり、一つはゲバの(まえ)にあって(みなみ)にあった。
6ヨナタンはその武器(ぶき)()若者(わかもの)()った、「さあ、われわれは、この割礼(かつれい)なき(もの)どもの先陣(せんじん)(わた)って()こう。(しゅ)がわれわれのために(なに)(おこな)われるであろう。(おお)くの(ひと)をもって(すく)うのも、(すく)ない(ひと)をもって(すく)うのも、(しゅ)にとっては、なんの(さまた)げもないからである」。 7武器(ぶき)()(もの)(かれ)()った、「あなたの(のぞ)みどおりにしなさい。わたしは一緒(いっしょ)にいます。わたしはあなたと(おな)(こころ)です」。 8ヨナタンはまた()った、「われわれは、あの人々(ひとびと)(ところ)(わた)っていって、(かれ)らに()(あらわ)そう。 9そして、もし(かれ)らがわれわれに、『こちらから()くまで()て』と()うならば、われわれはその()にとどまり、(かれ)らの(ところ)(のぼ)っていかないであろう。 10しかし、もし(かれ)らが『われわれのところへ(のぼ)ってこい』と()うならば、われわれは(のぼ)って()こう。(しゅ)(かれ)らをわれわれの()(わた)されるからである。これをもってしるしとしよう」。 11こうしてふたりはペリシテびとの先陣(せんじん)に、その()(あらわ)したので、ペリシテびとは()った、「()よ、ヘブルびとが、(かく)れていた(あな)から()てくる」。 12先陣(せんじん)人々(ひとびと)はヨナタンと、その武器(ぶき)()(もの)(さけ)んで()った、「われわれのところに(のぼ)ってこい。()に、もの()せてくれよう」。ヨナタンは、その武器(ぶき)()(もの)()った、「わたしのあとについて(のぼ)ってきなさい。(しゅ)(かれ)らをイスラエルの()(わた)されたのだ」。 13そしてヨナタンはよじ(のぼ)り、武器(ぶき)()(もの)もそのあとについて(のぼ)った。ペリシテびとはヨナタンの(まえ)(たお)れた。武器(ぶき)()(もの)も、あとについていってペリシテびとを(ころ)した。 14ヨナタンとその武器(ぶき)()(もの)とが、手始(てはじ)めに(ころ)したものは、おおよそ二十(にん)であって、このことは一くびきの(うし)(たがや)(はたけ)のおおよそ半分(はんぶん)(うち)(おこな)われた。 15そして陣営(じんえい)にいる(もの)()にいるもの、およびすべての(たみ)恐怖(きょうふ)(おそ)われ、先陣(せんじん)のもの、および略奪(りゃくだつ)(たい)までも、(おそ)れおののいた。また()(ふる)(うご)き、非常(ひじょう)(おお)きな恐怖(きょうふ)となった。
16ベニヤミンのギベアにいたサウルの番兵(ばんぺい)たちが()ると、ペリシテびとの群衆(ぐんしゅう)はくずれて右往左往(うおうさおう)していた。 17その(とき)サウルは、(とも)にいる(たみ)()った、「人数(にんずう)調(しら)べて、われわれのうちのだれが()()ったかを()よ」。人数(にんずう)調(しら)べたところ、ヨナタンとその武器(ぶき)()(もの)とがそこにいなかった。 18サウルはアヒヤに()った、「エポデをここに()ってきなさい」。その(とき)、アヒヤはイスラエルの人々(ひとびと)(まえ)でエポデを()()けていたからである。 19サウルが祭司(さいし)(かた)っている(あいだ)にも、ペリシテびとの陣営(じんえい)(さわ)ぎはますます(おお)きくなったので、サウルは祭司(さいし)()った、「()()きなさい」。 20こうしてサウルおよび(とも)にいる(たみ)(みな)(あつ)まって(たたか)いに()た。ペリシテびとはつるぎをもって同志(どうし)()ちしたので、非常(ひじょう)(おお)きな混乱(こんらん)となった。 21また(さき)にペリシテびとと(とも)にいて、(かれ)らと(とも)陣営(じんえい)にきていたヘブルびとたちも、(ひるがえ)ってサウルおよびヨナタンと(とも)にいるイスラエルびとにつくようになった。 22またエフライムの山地(さんち)()(かく)していたイスラエルびとたちも(みな)、ペリシテびとが()げると()いて、(かれ)らもまた(たたか)いに()て、それを追撃(ついげき)した。 23こうして(しゅ)はその()イスラエルを(すく)われた。そして(たたか)いはベテアベンに(うつ)った。
24しかしその()イスラエルの人々(ひとびと)(くる)しんだ。これはサウルが(たみ)(ちか)わせて「夕方(ゆうがた)まで、わたしが(てき)にあだを(かえ)すまで、食物(しょくもつ)()べる(もの)は、のろわれる」と()ったからである。それゆえ(たみ)のうちには、ひとりも食物(しょくもつ)(くち)にしたものはなかった。 25ところで、(たみ)がみな(もり)(なか)にはいると、()のおもてに(みつ)があった。 26(たみ)(もり)にはいった(とき)(みつ)のしたたっているのを()た。しかしだれもそれを()()って(くち)につけるものがなかった。(たみ)(ちか)いを(おそ)れたからである。 27しかしヨナタンは、(ちち)(たみ)(ちか)わせたことを()かなかったので、()()べてつえの(さき)(みつ)ばちの()(ひた)し、()()って(くち)につけた。すると(かれ)()がはっきりした。 28その(とき)(たみ)のひとりが()った、「あなたの(ちち)は、かたく(たみ)(ちか)わせて『きょう、食物(しょくもつ)()べる(もの)は、のろわれる』と()われました。それで(たみ)(つか)れているのです」。 29ヨナタンは()った、「(ちち)(くに)(なや)ませました。ごらんなさい。この(みつ)をすこしなめたばかりで、わたしの()がこんなに、はっきりしたではありませんか。 30まして、(たみ)がきょう(てき)からぶんどった(もの)を、じゅうぶん()べていたならば、さらに(おお)くのペリシテびとを(ころ)していたでしょうに」。
31その()イスラエルびとは、ペリシテびとを()って、ミクマシからアヤロンに(およ)んだ。そして(たみ)は、ひじょうに(つか)れたので、 32ぶんどり(もの)に、はせかかって、(ひつじ)(うし)()(うし)()って、それを()(うえ)(ころ)し、()のままでそれを()べた。 33人々(ひとびと)はサウルに()った、「(たみ)()のままで()べて、(しゅ)(つみ)(おか)しています」。サウルは()った、「あなたがたはそむいている。この(ところ)へ、わたしのもとに(おお)きな(いし)をころがしてきなさい」。 34サウルはまた()った、「あなたがたは(わか)れて、(たみ)(なか)にはいって、(かれ)らに()いなさい、『おのおの(うし)または、(ひつじ)()いてきてここでほふって()べなさい。()のままで()べて、(しゅ)(つみ)(おか)してはならない』」。そこで(たみ)(みな)、その(よる)、おのおの(うし)()いてきて、それを、その(ところ)でほふった。 35こうしてサウルは(しゅ)に一つの祭壇(さいだん)(きず)いた。これはサウルが(しゅ)のために(きず)いた最初(さいしょ)祭壇(さいだん)である。
36サウルは()った、「われわれは(よる)のうちにペリシテびとを()って(くだ)り、夜明(よあ)けまで(かれ)らをかすめて、ひとりも(のこ)らぬようにしよう」。人々(ひとびと)()った、「()いと(おも)われることを、なんでもしてください」。しかし祭司(さいし)()った、「われわれは、ここで、(かみ)(たず)ねましょう」。 37そこでサウルは(かみ)(うかが)った、「わたしはペリシテびとを()って(くだ)るべきでしょうか。あなたは(かれ)らをイスラエルの()(わた)されるでしょうか」。しかし(かみ)はその()(こた)えられなかった。 38そこでサウルは()った、「(たみ)(ちょう)たちよ、みなこの(ところ)(ちか)よりなさい。あなたがたは、よく()きわめて、きょうのこの(つみ)()きたわけを()らなければならない。 39イスラエルを(すく)(しゅ)()きておられる。たとい、それがわたしの()ヨナタンであっても、(かなら)()ななければならない」。しかし(たみ)のうちにはひとりも、これに(こた)えるものがいなかった。 40サウルはイスラエルのすべての(ひと)()った、「あなたがたは()こう(がわ)にいなさい。わたしとわたしの()ヨナタンはこちら(がわ)にいましょう」。(たみ)はサウルに()った、「()いと(おも)われることをしてください」。 41そこでサウルは()った、「イスラエルの(かみ)(しゅ)よ、あなたはきょう、なにゆえしもべに(こた)えられなかったのですか。もしこの(つみ)がわたしにあるか、またはわたしの()ヨナタンにあるのでしたら、イスラエルの(かみ)(しゅ)よ、ウリムをお(あた)えください。しかし、もしこの(つみ)が、あなたの(たみ)イスラエルにあるのでしたらトンミムをお(あた)えください」。こうしてヨナタンとサウルとが、くじに(あた)り、(たみ)はのがれた。 42サウルは()った、「わたしか、わたしの()ヨナタンかを()めるために、くじを()きなさい」。くじはヨナタンに(あた)った。
43サウルはヨナタンに()った、「あなたがしたことを、わたしに()いなさい」。ヨナタンは()った、「わたしは(たし)かに()にあったつえの(さき)(すこ)しばかりの(みつ)をつけて、なめました。わたしはここにいます。()覚悟(かくご)しています」。 44サウルは()った、「(かみ)がわたしをいくえにも(ばっ)してくださるように。ヨナタンよ、あなたは(かなら)()ななければならない」。 45その(とき)(たみ)はサウルに()った、「イスラエルのうちにこの(おお)いなる勝利(しょうり)をもたらしたヨナタンが()ななければならないのですか。(けっ)してそうではありません。(しゅ)()きておられます。ヨナタンの(かみ)()一すじも()(おと)してはなりません。(かれ)(かみ)(とも)にきょう(はたら)いたのです」。こうして(たみ)はヨナタンを(すく)ったので(かれ)()(まぬか)れた。 46サウルはペリシテびとを()うことをやめて()きあげ、ペリシテびとはその(くに)(かえ)った。
47サウルはイスラエルの(おう)となって、周囲(しゅうい)のもろもろの(てき)、すなわちモアブ、アンモンの人々(ひとびと)、エドム、ゾバの(おう)たちおよびペリシテびとと(たたか)い、すべて()かう(ところ)勝利(しょうり)()た。 48サウルは(いさ)ましく(はたら)き、アマレクびとを()って、イスラエルびとを略奪者(りゃくだつしゃ)()から(すく)()した。
49さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュアである。ふたりの(むすめ)()(つぎ)のとおりである。すなわち(あね)()はメラブ、(いもうと)()はミカルである。 50サウルの(つま)()はアヒノアムといい、アヒマアズの(むすめ)である。また(ぐん)(ちょう)()はアブネルといい、サウルのおじネルの()である。 51サウルの(ちち)キシとアブネルの(ちち)ネルとは、アビエルの()である。
52サウルの一生(いっしょう)(あいだ)、ペリシテびとと(はげ)しい(たたか)いがあった。サウルは(ちから)(つよ)(ひと)勇気(ゆうき)のある(ひと)()るごとに、それを()しかかえた。

第十五章

1さて、サムエルはサウルに()った、「(しゅ)は、わたしをつかわし、あなたに(あぶら)をそそいで、その(たみ)イスラエルの(おう)とされました。それゆえ、(いま)(しゅ)言葉(ことば)()きなさい。 2万軍(ばんぐん)(しゅ)は、こう(おお)せられる、『わたしは、アマレクがイスラエルにした(こと)、すなわちイスラエルがエジプトから(のぼ)ってきた(とき)、その途中(とちゅう)敵対(てきたい)したことについて(かれ)らを(ばっ)するであろう。 3(いま)()ってアマレクを()ち、そのすべての()(もの)(ほろ)ぼしつくせ。(かれ)らをゆるすな。(おとこ)(おんな)も、(おさ)()乳飲(ちの)()も、(うし)(ひつじ)も、らくだも、ろばも(みな)(ころ)せ』」。
4サウルは(たみ)()(あつ)め、テライムで人数(にんずう)調(しら)べたところ、歩兵(ほへい)は二十万、ユダの(ひと)は一万であった。 5そしてサウルはアマレクの(まち)()って、(たに)(へい)()せた。 6サウルはケニびとに()った、「さあ、あなたがたはアマレクびとを(はな)れて、(くだ)っていってください。(かれ)らと一緒(いっしょ)にあなたがたを(ほろ)ぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエルの人々(ひとびと)がエジプトから(のぼ)ってきた(とき)親切(しんせつ)にしてくれたのですから」。そこでケニびとはアマレクびとを(はな)れて()った。 7サウルはアマレクびとを()って、ハビラからエジプトの(ひがし)にあるシュルにまで(およ)んだ。 8そしてアマレクびとの(おう)アガグをいけどり、つるぎをもってその(たみ)をことごとく(ほろ)ぼした。 9しかしサウルと(たみ)はアガグをゆるし、また(ひつじ)(うし)(もっと)()いもの、()えたものならびに小羊(こひつじ)と、すべての()いものを(のこ)し、それらを(ほろ)ぼし(つく)すことを(この)まず、ただ()うちのない、つまらない(もの)(ほろ)ぼし(つく)した。
10その(とき)(しゅ)言葉(ことば)がサムエルに(のぞ)んだ、 11「わたしはサウルを(おう)としたことを()いる。(かれ)がそむいて、わたしに(したが)わず、わたしの言葉(ことば)(おこな)わなかったからである」。サムエルは(いか)って、夜通(よどお)し、(しゅ)()ばわった。 12そして(あさ)サウルに()うため、(はや)()きたが、サムエルに()げる(ひと)があった、「サウルはカルメルにきて、自分(じぶん)のために戦勝(せんしょう)記念碑(きねんひ)()て、()をかえして(すす)み、ギルガルへ(くだ)って()きました」。 13サムエルがサウルのもとへ()ると、サウルは(かれ)()った、「どうぞ、(しゅ)があなたを祝福(しゅくふく)されますように。わたしは(しゅ)言葉(ことば)実行(じっこう)しました」。 14サムエルは()った、「それならば、わたしの(みみ)にはいる、この(ひつじ)(こえ)と、わたしの()(うし)(こえ)は、いったい、なんですか」。 15サウルは()った、「人々(ひとびと)がアマレクびとの(ところ)から()いてきたのです。(たみ)は、あなたの(かみ)(しゅ)にささげるために、(ひつじ)(うし)(もっと)()いものを(のこ)したのです。そのほかは、われわれが(ほろ)ぼし(つく)しました」。 16サムエルはサウルに()った、「おやめなさい。昨夜(さくや)(しゅ)がわたしに()われたことを、あなたに()げましょう」。サウルは(かれ)()った、「()ってください」。
17サムエルは()った、「たとい、自分(じぶん)では(ちい)さいと(おも)っても、あなたはイスラエルの諸部族(しょぶぞく)(ちょう)ではありませんか。(しゅ)はあなたに(あぶら)(そそ)いでイスラエルの(おう)とされた。 18そして(しゅ)はあなたに使命(しめい)(さづ)け、つかわして()われた、『()って、(つみ)びとなるアマレクびとを(ほろ)ぼし(つく)せ。(かれ)らを皆殺(みなごろ)しにするまで(たたか)え』。 19それであるのに、どうしてあなたは(しゅ)(こえ)()(したが)わないで、ぶんどり(もの)にとびかかり、(しゅ)()(まえ)(あく)をおこなったのですか」。 20サウルはサムエルに()った、「わたしは(しゅ)(こえ)()(したが)い、(しゅ)がつかわされた使命(しめい)()びて()き、アマレクの(おう)アガグを()れてきて、アマレクびとを(ほろ)ぼし(つく)しました。 21しかし(たみ)(ほろ)ぼし(つく)すべきもののうち(もっと)()いものを、ギルガルで、あなたの(かみ)(しゅ)にささげるため、ぶんどり(もの)のうちから(ひつじ)(うし)()りました」。 22サムエルは()った、
(しゅ)はそのみ言葉(ことば)()(したが)(こと)(よろこ)ばれるように、
燔祭(はんさい)犠牲(ぎせい)(よろこ)ばれるであろうか。
()よ、(したが)うことは犠牲(ぎせい)にまさり、
()くことは雄羊(おひつじ)脂肪(しぼう)にまさる。
23そむくことは(うらな)いの(つみ)(ひと)しく、
強情(ごうじょう)偶像(ぐうぞう)礼拝(れいはい)(つみ)(ひと)しいからである。
あなたが(しゅ)のことばを()てたので、
(しゅ)もまたあなたを()てて、(おう)(くらい)から退(しりぞ)けられた」。
24サウルはサムエルに()った、「わたしは(しゅ)命令(めいれい)とあなたの言葉(ことば)にそむいて(つみ)(おか)しました。(たみ)(おそ)れて、その(こえ)()(したが)ったからです。 25どうぞ、(いま)わたしの(つみ)をゆるし、わたしと一緒(いっしょ)(かえ)って、(しゅ)(おが)ませてください」。 26サムエルはサウルに()った、「あなたと一緒(いっしょ)(かえ)りません。あなたが(しゅ)言葉(ことば)()てたので、(しゅ)もあなたを()てて、イスラエルの王位(おうい)から退(しりぞ)けられたからです」。 27こうしてサムエルが()ろうとして()をかえした(とき)、サウルがサムエルの上着(うわぎ)のすそを(とら)えたので、それは()けた。 28サムエルは(かれ)()った、「(しゅ)はきょう、あなたからイスラエルの王国(おうこく)()き、もっと()いあなたの隣人(りんじん)(あた)えられた。 29またイスラエルの栄光(えいこう)(いつわ)ることもなく、()いることもない。(かれ)(ひと)ではないから()いることはない」。 30サウルは()った、「わたしは(つみ)(おか)しましたが、どうぞ、(たみ)長老(ちょうろう)たち、およびイスラエルの(まえ)で、わたしを(たっと)び、わたしと一緒(いっしょ)(かえ)って、あなたの(かみ)(しゅ)(おが)ませてください」。 31そこでサムエルはサウルのあとについて(かえ)った。そしてサウルは(しゅ)(おが)んだ。
32(とき)にサムエルは()った、「わたしの(ところ)にアマレクびとの(おう)アガグを()いてきなさい」。アガグはうれしそうにサムエルの(ところ)にきた。アガグは「()(くる)しみはきっと()()ったのだ」と(おも)った。 33サムエルは()った、「あなたのつるぎは(おお)くの(おんな)子供(こども)(うしな)わせた。そのようにあなたの(はは)(おんな)のうちで(もっと)無惨(むざん)子供(こども)(うしな)(もの)となるであろう」。サムエルはギルガルで(しゅ)(まえ)に、アガグを寸断(すんだん)した。
34そしてサムエルはラマに()き、サウルは故郷(こきょう)のギベアに(のぼ)って、その(いえ)(かえ)った。 35サムエルは()()まで、二()とサウルを()なかった。しかしサムエルはサウルのために(かな)しんだ。また(しゅ)はサウルをイスラエルの(おう)としたことを()いられた。

第十六章

1さて(しゅ)はサムエルに()われた、「わたしがすでにサウルを()てて、イスラエルの王位(おうい)から退(しりぞ)けたのに、あなたはいつまで(かれ)のために(かな)しむのか。(つの)(あぶら)()たし、それをもって()きなさい。あなたをベツレヘムびとエッサイのもとにつかわします。わたしはその()たちのうちにひとりの(おう)(さが)()たからである」。 2サムエルは()った、「どうしてわたしは()くことができましょう。サウルがそれを()けば、わたしを(ころ)すでしょう」。(しゅ)()われた、「一(とう)()(うし)()いていって、『(しゅ)犠牲(ぎせい)をささげるためにきました』と()いなさい。 3そしてエッサイを犠牲(ぎせい)場所(ばしょ)()びなさい。その(とき)わたしはあなたのすることを(しめ)します。わたしがあなたに()げる(ひと)(あぶら)(そそ)がなければならない」。 4サムエルは(しゅ)(めい)じられたようにして、ベツレヘムへ()った。(まち)長老(ちょうろう)たちは、(おそ)れながら()て、(かれ)(むか)え、「(おだ)やかな(こと)のためにこられたのですか」と()った。 5サムエルは()った、「(おだ)やかな(こと)のためです。わたしは(しゅ)犠牲(ぎせい)をささげるためにきました。()をきよめて、犠牲(ぎせい)場所(ばしょ)にわたしと(とも)にきてください」。そしてサムエルはエッサイとその()たちをきよめて犠牲(ぎせい)()(まね)いた。
6(かれ)らがきた(とき)、サムエルはエリアブを()て、「自分(じぶん)(まえ)にいるこの(ひと)こそ、(しゅ)(あぶら)をそそがれる(ひと)だ」と(おも)った。 7しかし(しゅ)はサムエルに()われた、「(かお)かたちや()のたけを()てはならない。わたしはすでにその(ひと)()てた。わたしが()るところは(ひと)とは(こと)なる。(ひと)(そと)(かお)かたちを()(しゅ)(こころ)()る」。 8そこでエッサイはアビナダブを()んでサムエルの(まえ)(とお)らせた。サムエルは()った、「(しゅ)(えら)ばれたのはこの(ひと)でもない」。 9エッサイはシャンマを(とお)らせたが、サムエルは()った、「(しゅ)(えら)ばれたのはこの(ひと)でもない」。 10エッサイは七(にん)()にサムエルの(まえ)(とお)らせたが、サムエルはエッサイに()った、「(しゅ)(えら)ばれたのはこの(ひと)たちではない」。 11サムエルはエッサイに()った、「あなたのむすこたちは(みな)ここにいますか」。(かれ)()った、「まだ(すえ)()(のこ)っていますが(ひつじ)()っています」。サムエルはエッサイに()った、「(ひと)をやって(かれ)()れてきなさい。(かれ)がここに()るまで、われわれは食卓(しょくたく)につきません」。 12そこで(ひと)をやって(かれ)をつれてきた。(かれ)血色(けっしょく)のよい、()のきれいな、姿(すがた)(うつく)しい(ひと)であった。(しゅ)()われた、「()ってこれに(あぶら)をそそげ。これがその(ひと)である」。 13サムエルは(あぶら)(つの)をとって、その兄弟(きょうだい)たちの(なか)で、(かれ)(あぶら)をそそいだ。この()からのち、(しゅ)(れい)は、はげしくダビデの(うえ)(のぞ)んだ。そしてサムエルは()ってラマへ()った。
14さて(しゅ)(れい)はサウルを(はな)れ、(しゅ)から()悪霊(あくれい)(かれ)(なや)ました。 15サウルの家来(けらい)たちは(かれ)()った、「ごらんなさい。(かみ)から()悪霊(あくれい)があなたを(なや)ましているのです。 16どうぞ、われわれの主君(しゅくん)が、あなたの(まえ)(つか)えている家来(けらい)たちに(めい)じて、じょうずに(こと)をひく(もの)ひとりを(さが)させてください。(かみ)から()悪霊(あくれい)があなたに(のぞ)(とき)(かれ)()(こと)をひくならば、あなたは()くなられるでしょう」。 17そこでサウルは家来(けらい)たちに()った、「じょうずに(こと)をひく(もの)(さが)して、わたしのもとに()れてきなさい」。 18その(とき)、ひとりの若者(わかもの)がこたえた、「わたしはベツレヘムびとエッサイの()()ましたが、(こと)がじょうずで、勇気(ゆうき)もあり、いくさびとで、弁舌(べんぜつ)にひいで、姿(すがた)(うつく)しい(ひと)です。また(しゅ)(かれ)(とも)におられます」。 19そこでサウルはエッサイのもとに使者(ししゃ)をつかわして()った、「(ひつじ)()っているあなたの()ダビデをわたしのもとによこしなさい」。 20エッサイは、ろばにパンを()わせ、(かわ)(ぶくろ)にいれたぶどう(しゅ)(ふくろ)と、やぎの()とを()って、その()ダビデの()によってサウルに(おく)った。 21ダビデはサウルのもとにきて、(かれ)(つか)えた。サウルはひじょうにこれを(あい)して、その武器(ぶき)()(もの)とした。 22またサウルは(ひと)をつかわしてエッサイに()った、「ダビデをわたしに(つか)えさせてください。(かれ)はわたしの(こころ)にかないました」。 23(かみ)から()悪霊(あくれい)がサウルに(のぞ)(とき)、ダビデは(こと)をとり、()でそれをひくと、サウルは()(しず)まり、()くなって、悪霊(あくれい)(かれ)(はな)れた。

第十七章

1さてペリシテびとは、(ぐん)(あつ)めて(たたか)おうとし、ユダに(ぞく)するソコに(あつ)まって、ソコとアゼカの(あいだ)にあるエペス・ダミムに陣取(じんど)った。 2サウルとイスラエルの人々(ひとびと)(あつ)まってエラの(たに)陣取(じんど)り、ペリシテびとに(たい)して戦列(せんれつ)をしいた。 3ペリシテびとは()こうの(やま)(うえ)()ち、イスラエルはこちらの(やま)(うえ)()った。その(かん)(たに)があった。 4(とき)に、ペリシテびとの(じん)から、ガテのゴリアテという()の、(たたか)いをいどむ(もの)()てきた。()のたけは六キュビト(はん)5(あたま)には青銅(せいどう)のかぶとを(いただ)き、()には、うろことじのよろいを()ていた。そのよろいは青銅(せいどう)(おも)さ五千シケル。 6また(あし)には青銅(せいどう)のすね(とう)()け、(かた)には青銅(せいどう)()げやりを背負(せお)っていた。 7()()っているやりの()は、(はた)巻棒(まきぼう)のようであり、やりの()(てつ)は六百シケルであった。(かれ)(まえ)には、(たて)()(もの)(すす)んだ。 8ゴリアテは()ってイスラエルの戦列(せんれつ)()かって(さけ)んだ、「なにゆえ戦列(せんれつ)をつくって()てきたのか。わたしはペリシテびと、おまえたちはサウルの家来(けらい)ではないか。おまえたちから、ひとりを(えら)んで、わたしのところへ(くだ)ってこさせよ。 9もしその(ひと)(たたか)ってわたしを(ころ)すことができたら、われわれはおまえたちの家来(けらい)となる。しかしわたしが()ってその(ひと)(ころ)したら、おまえたちは、われわれの家来(けらい)になって(つか)えなければならない」。 10またこのペリシテびとは()った、「わたしは、きょうイスラエルの戦列(せんれつ)にいどむ。ひとりを()して、わたしと(たたか)わせよ」。 11サウルとイスラエルのすべての(ひと)は、ペリシテびとのこの言葉(ことば)()いて(おどろ)き、ひじょうに(おそ)れた。
12さて、ダビデはユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイという()(ひと)()で、この(ひと)(はち)(にん)()があったが、サウルの()には(とし)(すす)んで、すでに年老(としお)いていた。 13エッサイの()らのうち、(うえ)の三(にん)はサウルに(したが)って戦争(せんそう)()た。その(たたか)いに()た三(にん)()()は、長子(ちょうし)をエリアブといい、(つぎ)をアビナダブといい、(だい)三をシャンマと()った。 14ダビデは(すえ)()であって、(あに)(にん)はサウルにしたがった。 15ダビデはサウルの(ところ)から()ったりきたりして、ベツレヘムで(ちち)(ひつじ)()っていた。 16あのペリシテびとは四十(にち)(あいだ)朝夕(あさゆう)()てきて、(かれ)らの(まえ)()った。
17(とき)に、エッサイはその()ダビデに()った、「(あに)たちのため、このいり(むぎ)一エパと、この十()のパンをとって、(いそ)いで陣営(じんえい)にいる(あに)(ところ)()っていきなさい。 18またこの十の乾酪(かんらく)()って、千(にん)(ちょう)にもって()き、(あに)たちの安否(あんぴ)()とどけて、そのしるしをもらってきなさい」。
19さてサウルと(かれ)らおよびイスラエルのすべての(ひと)は、エラの(たに)でペリシテびとと(たたか)っていた。 20ダビデは(あさ)はやく()きて、(ひつじ)番人(ばんにん)(たく)し、エッサイが(めい)じたように食料(しょくりょう)(ひん)(たずさ)えて()った。(かれ)陣営(じんえい)()いた(とき)軍勢(ぐんぜい)は、ときの(こえ)をあげて戦線(せんせん)()ようとしていた。 21そしてイスラエルとペリシテびととは戦列(せんれつ)()いて、(ぐん)(ぐん)()()った。 22ダビデは荷物(にもつ)をおろして、荷物(にもつ)(まも)(もの)にあずけ、戦列(せんれつ)(ほう)(はし)って、(あに)たちの(ところ)()き、(かれ)らの安否(あんぴ)(たず)ねた。 23(あに)たちと(かた)っている(とき)、ペリシテびとの戦列(せんれつ)から、ガテのペリシテびとで、()をゴリアテという、あの(たたか)いをいどむ(もの)(のぼ)ってきて、(まえ)(おな)言葉(ことば)()ったので、ダビデはそれを()いた。
24イスラエルのすべての(ひと)は、その(ひと)()て、()けて()げ、ひじょうに(おそ)れた。 25イスラエルの人々(ひとびと)はまた()った、「あなたがたは、あの(のぼ)ってきた(ひと)()たか。(たし)かにイスラエルにいどむために(のぼ)ってきたのだ。(かれ)(ころ)(ひと)は、(おう)(おお)いなる(とみ)(あた)えて()ませ、その(むすめ)(あた)え、その(ちち)(いえ)にはイスラエルのうちで(ぜい)(まぬか)れさせるであろう」。 26ダビデはかたわらに()っている人々(ひとびと)()った、「このペリシテびとを(ころ)し、イスラエルの(はじ)をすすぐ(ひと)には、どうされるのですか。この割礼(かつれい)なきペリシテびとは何者(なにもの)なので、()ける(かみ)(ぐん)をいどむのか」。 27(たみ)(まえ)(おな)じように、「(かれ)(ころ)(ひと)にはこうされるであろう」と(こた)えた。
28(うえ)(あに)エリアブはダビデが人々(ひとびと)(かた)るのを()いて、ダビデに()かい(いか)りを(はっ)して()った、「なんのために(くだ)ってきたのか。()にいるわずかの(ひつじ)はだれに(たく)したのか。あなたのわがままと(わる)(こころ)はわかっている。(たたか)いを()るために(くだ)ってきたのだ」。 29ダビデは()った、「わたしが(いま)(なに)をしたというのですか。ただひと(こと)いっただけではありませんか」。 30またふり()いて、ほかの(ひと)(まえ)のように(かた)ったところ、(たみ)はまた(おな)じように(こた)えた。
31人々(ひとびと)はダビデの(かた)った言葉(ことば)()いて、それをサウルに()げたので、サウルは(かれ)()()せた。 32ダビデはサウルに()った、「だれも(かれ)のゆえに()(おと)してはなりません。しもべが()ってあのペリシテびとと(たたか)いましょう」。 33サウルはダビデに()った、「()って、あのペリシテびとと(たたか)うことはできない。あなたは年少(ねんしょう)だが、(かれ)(わか)(とき)からの軍人(ぐんじん)だからです」。 34しかしダビデはサウルに()った、「しもべは(ちち)(ひつじ)()っていたのですが、しし、あるいはくまがきて、()れの小羊(こひつじ)()った(とき)35わたしはそのあとを()って、これを()ち、小羊(こひつじ)をその(くち)から(すく)いだしました。その(けもの)がわたしにとびかかってきた(とき)は、ひげをつかまえて、それを()(ころ)しました。 36しもべはすでに、ししと、くまを(ころ)しました。この割礼(かつれい)なきペリシテびとも、()ける(かみ)(ぐん)をいどんだのですから、あの(けもの)の一(とう)のようになるでしょう」。 37ダビデはまた()った、「ししのつめ、くまのつめからわたしを(すく)()された(しゅ)は、またわたしを、このペリシテびとの()から(すく)()されるでしょう」。サウルはダビデに()った、「()きなさい。どうぞ(しゅ)があなたと(とも)におられるように」。 38そしてサウルは自分(じぶん)のいくさ(ころも)をダビデに()せ、青銅(せいどう)のかぶとを、その(あたま)にかぶらせ、また、うろことじのよろいを()にまとわせた。 39ダビデは、いくさ(ころも)(うえ)に、つるぎを()びて()こうとしたが、できなかった。それに()れていなかったからである。そこでダビデはサウルに()った、「わたしはこれらのものを()けていくことはできません。()れていないからです」。 40ダビデはそれらを()ぎすて、()につえをとり、谷間(たにま)からなめらかな(いし)()(えら)びとって自分(じぶん)()っている羊飼(ひつじかい)(ふくろ)()れ、()(いし)()げを()って、あのペリシテびとに(ちか)づいた。
41そのペリシテびとは(すす)んできてダビデに(ちか)づいた。そのたてを()(もの)(かれ)(まえ)にいた。 42ペリシテびとは()まわしてダビデを()、これを(あなど)った。まだ(わか)くて血色(けっしょく)がよく、姿(すがた)(うつく)しかったからである。 43ペリシテびとはダビデに()った、「つえを()って、()かってくるが、わたしは(いぬ)なのか」。ペリシテびとは、また神々(かみがみ)()によってダビデをのろった。 44ペリシテびとはダビデに()った、「さあ、()かってこい。おまえの(にく)を、(そら)(とり)()(けもの)のえじきにしてくれよう」。 45ダビデはペリシテびとに()った、「おまえはつるぎと、やりと、()げやりを()って、わたしに()かってくるが、わたしは万軍(ばんぐん)(しゅ)()、すなわち、おまえがいどんだ、イスラエルの(ぐん)(かみ)()によって、おまえに()()かう。 46きょう、(しゅ)は、おまえをわたしの()にわたされるであろう。わたしは、おまえを()って、(くび)をはね、ペリシテびとの軍勢(ぐんぜい)()かばねを、きょう、(そら)(とり)()野獣(やじゅう)のえじきにし、イスラエルに、(かみ)がおられることを(ぜん)()()らせよう。 47またこの(ぜん)会衆(かいしゅう)も、(しゅ)(すくい)(ほどこ)すのに、つるぎとやりを(もち)いられないことを()るであろう。この(たたか)いは(しゅ)(たたか)いであって、(しゅ)がわれわれの()におまえたちを(わた)されるからである」。
48そのペリシテびとが()()がり、(ちか)づいてきてダビデに()()かったので、ダビデは(いそ)戦線(せんせん)(はし)()て、ペリシテびとに()()かった。 49ダビデは()(ふくろ)()れて、その(なか)から一つの(いし)()り、(いし)()げで()げて、ペリシテびとの(ひたい)()ったので、(いし)はその(ひたい)()(はい)り、うつむきに()(たお)れた。
50こうしてダビデは(いし)()げと(いし)をもってペリシテびとに()ち、ペリシテびとを()って、これを(ころ)した。ダビデの()につるぎがなかったので、 51ダビデは(はし)りよってペリシテびとの(うえ)()り、そのつるぎを()って、さやから()きはなし、それをもって(かれ)(ころ)し、その(くび)をはねた。ペリシテの人々(ひとびと)は、その勇士(ゆうし)()んだのを()()げた。 52イスラエルとユダの人々(ひとびと)()ちあがり、ときをあげて、ペリシテびとを追撃(ついげき)し、ガテおよびエクロンの(もん)にまで(およ)んだ。そのためペリシテびとの負傷(ふしょう)(しゃ)は、シャライムからガテおよびエクロンに()(みち)(うえ)(たお)れた。 53イスラエルの人々(ひとびと)はペリシテびとの追撃(ついげき)()えて(かえ)り、その陣営(じんえい)略奪(りゃくだつ)した。 54ダビデは、あのペリシテびとの(くび)()ってエルサレムへ()って()ったが、その武器(ぶき)自分(じぶん)天幕(てんまく)()いた。
55サウルはダビデがあのペリシテびとに()かって()ていくのを()て、(ぐん)(ちょう)アブネルに()った、「アブネルよ、この若者(わかもの)はだれの()か」。アブネルは()った、「(おう)よ、あなたのいのちにかけて(ちか)います。わたしは()らないのです」。 56(おう)()った、「この若者(わかもの)がだれの()か、(たず)ねてみよ」。 57ダビデが、あのペリシテびとを(ころ)して(かえ)ってきた(とき)、アブネルは、ペリシテびとの(くび)()()っている(かれ)を、サウルの(まえ)()れて()った。 58サウルは(かれ)()った、「若者(わかもの)よ、あなたはだれの()か」。ダビデは(こた)えた、「あなたのしもべ、ベツレヘムびとエッサイの()です」。

第十八章

1ダビデがサウルに(かた)()えた(とき)、ヨナタンの(こころ)はダビデの(こころ)(むす)びつき、ヨナタンは自分(じぶん)(いのち)のようにダビデを(あい)した。 2この()、サウルはダビデを()しかかえて、(ちち)(いえ)(かえ)らせなかった。 3ヨナタンとダビデとは契約(けいやく)(むす)んだ。ヨナタンが自分(じぶん)(いのち)のようにダビデを(あい)したからである。 4ヨナタンは自分(じぶん)()ていた上着(うわぎ)()いでダビデに(あた)えた。また、そのいくさ(ころも)、およびつるぎも(ゆみ)(おび)も、そのようにした。 5ダビデはどこでもサウルがつかわす(ところ)()()って、てがらを()てたので、サウルは(かれ)(へい)隊長(たいちょう)とした。それはすべての(たみ)(こころ)にかない、またサウルの家来(けらい)たちの(こころ)にもかなった。
6人々(ひとびと)()()げてきた(とき)、すなわちダビデが、かのペリシテびとを(ころ)して(かえ)った(とき)(おんな)たちはイスラエルの町々(まちまち)から()てきて、()(つづみ)(いわ)(うた)三糸(みついと)(こと)をもって、(うた)いつ()いつ、サウル(おう)(むか)えた。 7(おんな)たちは(おど)りながら(たがい)(うた)いかわした、
「サウルは千を()(ころ)し、
ダビデは(まん)()(ころ)した」。
8サウルは、ひじょうに(いか)り、この言葉(ことば)()(わる)くして()った、「ダビデには(まん)()い、わたしには千と()う。この(うえ)(かれ)(あた)えるものは、(くに)のほかないではないか」。 9サウルは、この()からのちダビデをうかがった。
10(つぎ)()(かみ)から()悪霊(あくれい)がサウルにはげしく(のぞ)んで、サウルが(いえ)(なか)(くる)いわめいたので、ダビデは、いつものように、()(こと)をひいた。その(とき)、サウルの()にやりがあったので、 11サウルは「ダビデを(かべ)()(とお)そう」と(おも)って、そのやりをふり()げた。しかしダビデは二()()をかわしてサウルを()けた。
12(しゅ)がサウルを(はな)れて、ダビデと(とも)におられたので、サウルはダビデを(おそ)れた。 13それゆえサウルは、ダビデを(とお)ざけて、千(にん)(ちょう)としたので、ダビデは(たみ)(さき)()って出入(でい)りした。 14またダビデは、すべてそのすることに、てがらを()てた。(しゅ)(とも)におられたからである。 15サウルはダビデが(おお)きなてがらを()てるのを()(かれ)(おそ)れたが、 16イスラエルとユダのすべての(ひと)はダビデを(あい)した。(かれ)(たみ)(さき)()って出入(でい)りしたからである。
17その(とき)サウルはダビデに()った、「わたしの長女(ちょうじょ)メラブを、あなたに(つま)として(あた)えよう。ただ、あなたはわたしのために(いさ)ましく、(しゅ)(たたか)いを(たたか)いなさい」。サウルは「自分(じぶん)()(かれ)(ころ)さないで、ペリシテびとの()(ころ)そう」と(おも)ったからである。 18ダビデはサウルに()った、「わたしは何者(なにもの)なのでしょう。わたしの親族(しんぞく)、わたしの(ちち)一族(いちぞく)はイスラエルのうちで何者(なにもの)なのでしょう。そのわたしが、どうして(おう)のむこになることができましょう」。 19しかしサウルの(むすめ)メラブは、ダビデにとつぐべき(とき)になって、メホラびとアデリエルに(つま)として(あた)えられた。
20サウルの(むすめ)ミカルはダビデを(あい)した。人々(ひとびと)がそれをサウルに()げたとき、サウルはその(こと)(よろこ)んだ。 21サウルは「ミカルを(かれ)(あた)えて、(かれ)(あざむ)()だてとし、ペリシテびとの()(かれ)(ころ)そう」と(おも)ったので、サウルはふたたびダビデに()った、「あなたを、きょう、わたしのむこにします」。 22そしてサウルは家来(けらい)たちに(めい)じた、「ひそかにダビデに()いなさい、『(おう)はあなたが()()り、(おう)家来(けらい)たちも(みな)あなたを(あい)しています。それゆえ(おう)のむこになりなさい』」。 23そこでサウルの家来(けらい)たちはこの言葉(ことば)をダビデの(みみ)(かた)ったので、ダビデは()った、「わたしのような(まず)しく、(いや)しい(もの)が、(おう)のむこになることは、あなたがたには、たやすいことと(おも)われますか」。 24サウルの家来(けらい)たちはサウルに、「ダビデはこう()った」と()げた。 25サウルは()った、「あなたがたはダビデにこう()いなさい、『(おう)はなにも結納(ゆいのう)(のぞ)まれない。ただペリシテびとの(よう)(かわ)一百を()て、(おう)のあだを()つことを(のぞ)まれる』」。これはサウルが、ダビデをペリシテびとの()によって(たお)そうと(おも)ったからである。 26サウルの家来(けらい)たちが、この言葉(ことば)をダビデに()げた(とき)、ダビデは(おう)のむこになることを()しとした。そして(さだ)めた()がまだこないうちに、 27ダビデは従者(じゅうしゃ)をつれて、()って()き、ペリシテびと二百(にん)(ころ)して、その(よう)(かわ)(たずさ)(かえ)り、(おう)のむこになるために、それをことごとく(おう)にささげた。そこでサウルは(むすめ)ミカルを(かれ)(つま)として(あた)えた。 28しかしサウルは()て、(しゅ)がダビデと(とも)におられること、またイスラエルのすべての(ひと)がダビデを(あい)するのを()った(とき)29サウルは、ますますダビデを(おそ)れた。こうしてサウルは()えずダビデに(てき)した。
30さてペリシテびとの(きみ)たちが()めてきたが、ダビデは、(かれ)らが()めてくるごとに、サウルのどの家来(けらい)よりも(おお)くのてがらを()てたので、その()はひじょうに尊敬(そんけい)された。

第十九章

1サウルはその()ヨナタンおよびすべての家来(けらい)たちにダビデを(ころ)すようにと()った。しかしサウルの()ヨナタンは(ふか)くダビデを(あい)していた。 2ヨナタンはダビデに()った、「(ちち)サウルはあなたを(ころ)そうとしています。それゆえあすの(あさ)()をつけて、わからない場所(ばしょ)()(かく)していてください。 3わたしは()()って、あなたがいる野原(のはら)(ちち)のかたわらに()ち、(ちち)にあなたのことを(はな)しましょう。そして、(なに)かわたしにわかれば、あなたに()げましょう」。 4ヨナタンは(ちち)サウルにダビデのことをほめて()った、「(おう)よ、どうか家来(けらい)ダビデに(たい)して(つみ)(おか)さないでください。(かれ)は、あなたに(つみ)(おか)さず、また(かれ)のしたことは、あなたのためになることでした。 5(かれ)(いのち)をかけて、あのペリシテびとを(ころ)し、(しゅ)はイスラエルの人々(ひとびと)(おお)いなる勝利(しょうり)(あた)えられたのです。あなたはそれを()(よろこ)ばれました。それであるのに、どうしてゆえなくダビデを(ころ)し、(つみ)なき(もの)()(なが)して(つみ)(おか)そうとされるのですか」。 6サウルはヨナタンの言葉(ことば)()きいれた。そしてサウルは(ちか)った、「(しゅ)()きておられる。わたしは(けっ)して(かれ)(ころ)さない」。 7ヨナタンはダビデを()んでこれらのことをみなダビデに()げた。そしてヨナタンがダビデをサウルのもとに()れてきたので、ダビデは、もとのようにサウルの(まえ)にいた。
8ところがまた戦争(せんそう)がおこって、ダビデは()てペリシテびとと(たたか)い、(おお)いに(かれ)らを(ころ)したので、(かれ)らはその(まえ)から()()った。 9さてサウルが(いえ)にいて()にやりを()ってすわっていた(とき)(しゅ)から()悪霊(あくれい)がサウルに(のぞ)んだので、ダビデは(こと)をひいていたが、 10サウルはそのやりをもってダビデを(かべ)()(とお)そうとした。しかし(かれ)はサウルの(まえ)()をかわしたので、やりは(かべ)につきささった。そしてダビデは()()った。
11その(よる)、サウルはダビデの(いえ)使者(ししゃ)たちをつかわして見張(みは)りをさせ、(あさ)になって(かれ)(ころ)させようとした。しかしダビデの(つま)ミカルはダビデに()った、「もし今夜(こんや)のうちに、あなたが自分(じぶん)(いのち)(すく)わないならば、あすは(ころ)されるでしょう」。 12そしてミカルがダビデを(まど)からつりおろしたので、(かれ)()()った。 13ミカルは一つの(ぞう)をとって、寝床(ねどこ)(うえ)(よこ)たえ、その(あたま)にやぎの()(あみ)をかけ、着物(きもの)をもってそれをおおった。 14サウルはダビデを(とら)えるため使者(ししゃ)たちをつかわしたが、彼女(かのじょ)()った、「あの(ひと)病気(びょうき)です」。 15そこでサウルは、ダビデを()させようと使者(ししゃ)たちをつかわして()った、「(かれ)寝床(ねどこ)のまま、わたしの(ところ)()れてきなさい。わたしが(かれ)(ころ)そう」。 16使者(ししゃ)たちがはいって()ると、寝床(ねどこ)には(ぞう)(よこ)たえてあって、その(あたま)には、やぎの()(あみ)がかけてあった。 17サウルはミカルに()った、「あなたはどうして、このようにわたしを(あざむ)いて、わたしの(てき)()がしたのか」。ミカルはサウルに(こた)えた、「あの(ひと)はわたしに『()がしてくれ。さもないと、おまえを(ころ)す』と()いました」。
18ダビデは()()り、ラマにいるサムエルのもとへ()って、サウルが自分(じぶん)にしたすべてのことを(かれ)()げた。そしてダビデとサムエルは()ってナヨテに()んだ。 19ある(ひと)がサウルに「ダビデはラマのナヨテにいます」と()げたので、 20サウルは、ダビデを(とら)えるために、使者(ししゃ)たちをつかわした。(かれ)らは預言者(よげんしゃ)一群(いちぐん)預言(よげん)していて、サムエルが、そのうちの、かしらとなって()っているのを()たが、その(とき)(かみ)(れい)はサウルの使者(ししゃ)たちにも(のぞ)んで、(かれ)らもまた預言(よげん)した。 21サウルは、このことを()いて、()使者(ししゃ)たちをつかわしたが、(かれ)らもまた預言(よげん)した。サウルは三たび使者(ししゃ)たちをつかわしたが、(かれ)らもまた預言(よげん)した。 22そこでサウルはみずからラマに()き、セクの大井戸(おおいど)()いた(とき)()うて()った、「サムエルとダビデは、どこにおるか」。ひとりの(ひと)(こた)えた、「(かれ)らはラマのナヨテにいます」。 23そこでサウルはそこからラマのナヨテに()ったが、(かみ)(れい)はまた(かれ)にも(のぞ)んで、(かれ)はラマのナヨテに()くまで(ある)きながら預言(よげん)した。 24そして(かれ)もまた着物(きもの)()いで、(おな)じようにサムエルの(まえ)預言(よげん)し、一(にち)()(はだか)(たお)()していた。人々(ひとびと)が「サウルもまた預言者(よげんしゃ)たちのうちにいるのか」というのはこのためである。

第二十章

1ダビデはラマのナヨテから()げてきて、ヨナタンに()った、「わたしが(なに)をし、どのような(わる)いことがあり、あなたの(ちち)(まえ)にどんな(つみ)(おか)したので、わたしを(ころ)そうとされるのでしょうか」。 2ヨナタンは(かれ)()った、「(けっ)して(ころ)されることはありません。(ちち)(こと)大小(だいしょう)()わず、わたしに()げないですることはありません。どうして(ちち)がわたしにその(こと)(かく)しましょう。そのようなことはありません」。 3しかしダビデは(こた)えた、「あなたの(ちち)は、わたしがあなたの好意(こうい)をえていることをよく()っておられます。それで『ヨナタンが(かな)しむことのないように、これを()らせないでおこう』と(おも)っておられるのです。しかし、(しゅ)()きておられ、あなたの(たましい)()きています。わたしと()との(あいだ)は、ただ一()です」。 4ヨナタンはダビデに()った、「あなたが()われることはなんでもします」。 5ダビデはヨナタンに()った、「あすは、ついたちですから、わたしは(おう)一緒(いっしょ)食事(しょくじ)をしなければなりません。しかしわたしを()かせて三()()夕方(ゆうがた)まで、野原(のはら)(かく)れることを(ゆる)してください。 6もしあなたの(ちち)がわたしのことを(たず)ねられるならば、その(とき)()ってください、『ダビデはふるさとの(まち)ベツレヘムへ(いそ)いで()くことを(ゆる)してくださいと、しきりにわたしに(もと)めました。そこで全家(ぜんか)(とし)(まつり)があるからです』。 7もし(かれ)が「()し」と()われるなら、しもべは安全(あんぜん)ですが、(いか)られるなら、わたしに(がい)(くわ)える決心(けっしん)でおられるのを()ってください。 8あなたは、(しゅ)(まえ)で、しもべと契約(けいやく)(むす)んでくださいました。それでどうぞしもべにいつくしみを(ほどこ)してください。しかし、もしわたしに(わる)いことがあるならば、あなた(みずか)らわたしを(ころ)してください。どうしてあなたの(ちち)のもとへわたしを()いていかなければならないでしょう」。 9ヨナタンは()った、「そのようなことは(けっ)してありません。(ちち)があなたに(がい)(くわ)える決心(けっしん)をしていることがわたしにわかっているならば、わたしはそれをあなたに()げないでおきましょうか」。 10ダビデはヨナタンに()った、「あなたの(ちち)荒々(あらあら)しくあなたに(こた)えられる(とき)、だれがわたしに()げるでしょうか」。 11ヨナタンはダビデに()った、「さあ、野原(のはら)()ていこう」。こうしてふたりは野原(のはら)()()った。
12そしてヨナタンはダビデに()った、「イスラエルの(かみ)(しゅ)が、証人(しょうにん)です。明日(みょうにち)明後日(みょうごにち)(いま)ごろ、わたしが(ちち)(こころ)(さぐ)って、(ちち)がダビデに(たい)して()いのを()ながら、(ひと)をつかわしてあなたに()らせないようなことをするでしょうか。 13しかし、もし(ちち)があなたに(がい)(くわ)えようと(おも)っているのに、それをあなたに()らせず、あなたを()がして、安全(あんぜん)()らせないならば、(しゅ)よ、どうぞ幾重(いくえ)にも、このヨナタンを(ばっ)してください。どうぞ(しゅ)(ちち)(とも)におられたように、あなたと(とも)におられますように。 14もしわたしがなお()きながらえているならば、(しゅ)のいつくしみをわたしに(ほどこ)し、()(まぬか)れさせてください。 15またわたしの(いえ)をも、(なが)くあなたのいつくしみにあずからせてください。(しゅ)がダビデの(てき)をことごとく()のおもてから()(ほろ)ぼされる(とき)16ヨナタンの()をダビデの(いえ)から()やさないでください。どうぞ(しゅ)がダビデの(てき)に、あだを(かえ)されるように」。 17そしてヨナタンは(かさ)ねてダビデに(ちか)わせた。(かれ)(あい)したからである。ヨナタンは自分(じぶん)(いのち)のように(かれ)(あい)していた。
18ヨナタンはダビデに()った、「あすはついたちです。あなたの(せき)があいているので、どうしたのかと(たず)ねられるでしょう。 19()()には、きびしく(たず)ねられるでしょうから、(さき)にあなたが(かく)れた場所(ばしょ)()って、()こうの石塚(いしづか)のかたわらにいてください。 20わたしは(まと)()るようにして、()を三(ほん)、そのそばに(はな)ちます。 21そして、『()って()(さが)してきなさい』と()って子供(こども)をつかわしましょう。わたしが子供(こども)に、『()手前(てまえ)にある。それを()ってきなさい』と()うならば、その(とき)あなたはきてください。(しゅ)()きておられるように、あなたは安全(あんぜん)で、(なに)危険(きけん)がないからです。 22しかしわたしがその()(とも)に、『()()こうにある』と()うならば、その(とき)、あなたは()って()きなさい。(しゅ)があなたを()らせられるのです。 23あなたとわたしとで(はな)しあった(こと)については、(しゅ)(つね)にあなたとわたしとの(あいだ)におられます」。
24そこでダビデは野原(のはら)()(かく)した。さて、ついたちになったので、(おう)食事(しょくじ)をするため(せき)()いた。 25(おう)はいつものように(かべ)()りに(せき)()き、ヨナタンはその()かい(がわ)(せき)()き、アブネルはサウルの(よこ)(せき)()いたが、ダビデの場所(ばしょ)にはだれもいなかった。
26ところがその()サウルは(なに)()わなかった、「(かれ)(なに)()って(けが)れたのだろう。きっと(けが)れたのにちがいない」と(おも)ったからである。 27しかし、ふつか()すなわち、ついたちの()くる()も、ダビデの場所(ばしょ)はあいていたので、サウルは、その()ヨナタンに()った、「どうしてエッサイの()は、きのうもきょうも食事(しょくじ)にこないのか」。 28ヨナタンはサウルに(こた)えた、「ダビデは、ベツレヘムへ()くことを(ゆる)してくださいと、しきりにわたしに(もと)めました。 29(かれ)()いました、『わたしに()かせてください。われわれの一族(いちぞく)(まち)(まつり)をするので、(あに)がわたしに()るようにと(めい)じました。それでもし、あなたの(まえ)(めぐ)みを()ますならば、どうぞ、わたしに()くことを(ゆる)し、兄弟(きょうだい)たちに()わせてください』。それで(かれ)(おう)食卓(しょくたく)にこなかったのです」。
30その(とき)サウルはヨナタンにむかって(いか)りを(はっ)し、(かれ)()った、「あなたは(こころ)(まが)った、そむく(おんな)()んだ()だ。あなたがエッサイの()(えら)んで、自分(じぶん)()をはずかしめ、また(はは)()をはずかしめていることをわたしが()らないと(おも)うのか。 31エッサイの()がこの()()きながらえている(あいだ)は、あなたも、あなたの王国(おうこく)(かた)()っていくことはできない。それゆえ(いま)(ひと)をつかわして、(かれ)をわたしのもとに()れてこさせなさい。(かれ)(かなら)()ななければならない」。 32ヨナタンは(ちち)サウルに(こた)えた、「どうして(かれ)(ころ)されなければならないのですか。(かれ)(なに)をしたのですか」。 33ところがサウルはヨナタンを()とうとして、やりを(かれ)()かって()()げたので、ヨナタンは(ちち)がダビデを(ころ)そうと、(こころ)()めているのを()った。 34ヨナタンは(はげ)しく(いか)って(せき)()ち、その(つき)のふつかには食事(しょくじ)をしなかった。(ちち)がダビデをはずかしめたので、ダビデのために(うれ)えたからである。
35あくる(あさ)、ヨナタンは、ひとりの(ちい)さい子供(こども)()れて、ダビデと()()わせたように野原(のはら)()()った。 36そしてその()(とも)()った、「(はし)って()って、わたしの()()(さが)しなさい」。子供(こども)(はし)って()(あいだ)に、ヨナタンは()(かれ)(まえ)(ほう)(はな)った。 37そして子供(こども)が、ヨナタンの(はな)った()のところへ()った(とき)、ヨナタンは子供(こども)のうしろから()ばわって、「()()こうにあるではないか」と()った。 38ヨナタンはまた、その()(とも)のうしろから()ばわって()った、「(はや)くせよ、(いそ)げ。とどまるな」。その()(とも)()(ひろ)(あつ)めて主人(しゅじん)ヨナタンのもとにきた。 39しかし子供(こども)(なに)()らず、ヨナタンとダビデだけがそのことを()っていた。 40ヨナタンは自分(じぶん)武器(ぶき)をその()(とも)(わた)して()った、「あなたはこれを(まち)(はこ)んで()きなさい」。 41子供(こども)()ってしまうとダビデは石塚(いしづか)のかたわらをはなれて()ちいで、()にひれ()して三()敬礼(けいれい)した。そして、ふたりは(たがい)(くち)づけし、(たがい)()いた。やがてダビデは(こころ)()()いた。 42その(とき)ヨナタンはダビデに()った、「無事(ぶじ)()きなさい。われわれふたりは、『(しゅ)(つね)にわたしとあなたの(あいだ)におられ、また、わたしの子孫(しそん)とあなたの子孫(しそん)(あいだ)におられる』と()って、(しゅ)()をさして(ちか)ったのです」。こうしてダビデは()()り、ヨナタンは(まち)にはいった。

第二十一章

1ダビデはノブに()き、祭司(さいし)アヒメレクのところへ()った。アヒメレクはおののきながらダビデを(むか)えて()った、「どうしてあなたはひとりですか。だれも(とも)がいないのですか」。 2ダビデは祭司(さいし)アヒメレクに()った、「(おう)がわたしに一つの(こと)(めい)じて、『わたしがおまえをつかわしてさせる(こと)、またわたしが(めい)じたことについては、(なに)をも(ひと)()らせてはならない』と()われました。そこでわたしは、ある場所(ばしょ)若者(わかもの)たちを()たせてあります。 3ところで(いま)あなたの()もとにパン五()でもあれば、それをわたしにください。なければなんでも、あるものをください」。 4祭司(さいし)はダビデに(こた)えて()った、「(つね)のパンはわたしの()もとにありません。ただその若者(わかもの)たちが(おんな)(つつし)んでさえいたのでしたら、聖別(せいべつ)したパンがあります」。 5ダビデは祭司(さいし)(こた)えた、「わたしが(たたか)いに()るいつもの(とき)のように、われわれはたしかに(おんな)たちを(ちか)づけていません。若者(わかもの)たちの(うつわ)は、(つね)(たび)であったとしても、(きよ)いのです。まして、きょう、(かれ)らの(うつわ)(きよ)くないでしょうか」。 6そこで祭司(さいし)(かれ)聖別(せいべつ)したパンを(あた)えた。その(ところ)に、(そな)えのパンのほかにパンがなく、このパンは、これを()()げる()に、あたたかいパンと()きかえるため、(しゅ)(まえ)から()(とり)さげたものである。
7その()、その(ところ)に、サウルのしもべのひとりが、(しゅ)(まえ)()()かれていた。その()はドエグといい、エドムびとであって、サウルの牧者(ぼくしゃ)(ちょう)であった。
8ダビデはまたアヒメレクに()った、「ここに、あなたの()もとに、やりかつるぎがありませんか。(おう)(こと)(きゅう)(よう)したので、わたしはつるぎも武器(ぶき)()ってこなかったのです」。 9祭司(さいし)()った、「あなたがエラの(たに)(ころ)したペリシテびとゴリアテのつるぎが、(ぬの)(つつ)んでエポデのうしろにあります。もしあなたがこれを()ろうとおもわれるなら、お()りください。ここにはそのほかにはありません」。ダビデは()った、「それにまさるものはありません。それをわたしにください」。 10ダビデはその()サウルを(おそ)れて、()ってガテの(おう)アキシのところへ()げて()った。 11アキシの家来(けらい)たちはアキシに()った、「これはあの(くに)(おう)ダビデではありませんか。人々(ひとびと)(おど)りながら、(たがい)(うた)いかわして、
『サウルは千を()(ころ)し、
ダビデは(まん)()(ころ)した』
()ったのは、この(ひと)のことではありませんか」。 12ダビデは、これらの言葉(ことば)(こころ)におき、ガテの(おう)アキシを、ひじょうに(おそ)れたので、 13人々(ひとびと)(まえ)で、わざと挙動(きょどう)()え、(とら)えられて気違(きちが)いのふりをし、(もん)のとびらを()ちたたき、よだれを(なが)して、ひげに(つた)わらせた。 14アキシは家来(けらい)たちに()った、「あなたがたの()るように、この(ひと)気違(きちが)いだ。どうして(かれ)をわたしの(ところ)()れてきたのか。 15わたしに気違(きちが)いが必要(ひつよう)なのか。この(もの)()れてきて、わたしの(まえ)(くる)わせようというのか。この(もの)をわたしの(いえ)()れようとするのか」。

第二十二章

1こうしてダビデはその(ところ)()り、アドラムのほら(あな)へのがれた。(かれ)兄弟(きょうだい)たちと(ちち)(いえ)(もの)(みな)、これを()き、その(ところ)(くだ)って(かれ)のもとにきた。 2また、しえたげられている人々(ひとびと)負債(ふさい)のある人々(ひとびと)(こころ)不満(ふまん)のある人々(ひとびと)(みな)(かれ)のもとに(あつ)まってきて、(かれ)はその(ちょう)となった。おおよそ四百(にん)人々(ひとびと)(かれ)(とも)にあった。
3ダビデはそこからモアブのミヅパへ()き、モアブの(おう)()った、「(かみ)がわたしのためにどんなことをされるかわかるまで、どうぞわたしの父母(ふぼ)をあなたの(ところ)におらせてください」。 4そして(かれ)はモアブの(おう)(かれ)らを(たく)したので、(かれ)らはダビデが要害(ようがい)におる(あいだ)(おう)(ところ)におった。 5さて、預言者(よげんしゃ)ガドはダビデに()った、「要害(ようがい)にとどまっていないで、()ってユダの()()きなさい」。そこでダビデは()って、ハレテの(もり)()った。
6サウルは、ダビデおよび(かれ)(とも)にいる人々(ひとびと)()つかったということを()いた。サウルはギベアで、やりを()にもって、(おか)のぎょりゅうの()(した)にすわっており、家来(けらい)たちはみなそのまわりに()っていた。 7サウルはまわりに()っている家来(けらい)たちに()った、「あなたがたベニヤミンびとは()きなさい。エッサイの()もまた、あなたがたおのおのに(はたけ)やぶどう(はたけ)(あた)え、おのおのを千(にん)(ちょう)、百(にん)(ちょう)にするであろうか。 8あなたがたは(みな)(とも)にはかってわたしに(てき)した。わたしの()がエッサイの()契約(けいやく)(むす)んでも、それをわたしに()げるものはなく、またあなたがたのうち、ひとりもわたしのために(うれ)えず、きょうのように、わたしの()がわたしのしもべをそそのかしてわたしに(さか)らわせ、(みち)(かれ)がわたしを()()せするようになっても、わたしに()げる(もの)はない」。 9その(とき)エドムびとドエグは、サウルの家来(けらい)たちのそばに()っていたが、(こた)えて()った、「わたしはエッサイの()がノブにいるアヒトブの()アヒメレクの(ところ)にきたのを()ました。 10アヒメレクは(かれ)のために(しゅ)()い、また(かれ)食物(しょくもつ)(あた)え、ペリシテびとゴリアテのつるぎを(あた)えました」。
11そこで(おう)(ひと)をつかわして、アヒトブの()祭司(さいし)アヒメレクとその(ちち)(いえ)のすべての(もの)、すなわちノブの祭司(さいし)たちを()したので、みな(おう)(ところ)にきた。 12サウルは()った、「アヒトブの()よ、()きなさい」。(かれ)(こた)えた、「わが(しゅ)よ、わたしはここにおります」。 13サウルは(かれ)()った、「どうしてあなたはエッサイの()(とも)にはかってわたしに(てき)し、(かれ)にパンとつるぎを(あた)え、(かれ)のために(かみ)()い、きょうのように(かれ)をわたしに(さか)らって()たせ、(みち)()()せさせるのか」。 14アヒメレクは(おう)(こた)えて()った、「あなたの家来(けらい)のうち、ダビデのように忠義(ちゅうぎ)(もの)がほかにありますか。(かれ)(おう)(むすめ)婿(むこ)であり、近衛(このえ)(へい)(ちょう)であって、あなたの(いえ)(たっと)ばれる(ひと)ではありませんか。 15(かれ)のために(かみ)()うたのは、きょう(はじ)めてでしょうか。いいえ、(けっ)してそうではありません。(おう)よ、どうぞ、しもべと(ちち)全家(ぜんか)(つみ)()わせないでください。しもべは、これについては、(こと)大小(だいしょう)()わず、(なに)をも()らなかったのです」。 16(おう)()った、「アヒメレクよ、あなたは(かなら)(ころ)されなければならない。あなたの(ちち)全家(ぜんか)(おな)じである」。 17そして(おう)はまわりに()っている近衛(このえ)(へい)()った、「()をひるがえして、(しゅ)祭司(さいし)たちを(ころ)しなさい。(かれ)らもダビデと協力(きょうりょく)していて、ダビデの()げたのを()りながら、それをわたしに()げなかったからです」。ところが(おう)家来(けらい)たちは(しゅ)祭司(さいし)たちを(ころ)すために()(くだ)そうとはしなかった。 18そこで(おう)はドエグに()った、「あなたが()をひるがえして、祭司(さいし)たちを(ころ)しなさい」。エドムびとドエグは()をひるがえして祭司(さいし)たちを()ち、その()亜麻(あま)(ぬの)のエポデを()につけている(もの)八十五(にん)(ころ)した。 19(かれ)はまた、つるぎをもって祭司(さいし)(まち)ノブを()ち、つるぎをもって(おとこ)(おんな)(おさ)()乳飲(ちの)()(うし)、ろば、(ひつじ)(ころ)した。
20しかしアヒトブの()アヒメレクの()たちのひとりで、()をアビヤタルという(ひと)は、のがれてダビデの(ところ)(はし)った。 21そしてアビヤタルは、サウルが(しゅ)祭司(さいし)たちを(ころ)したことをダビデに()げたので、 22ダビデはアビヤタルに()った、「あの()、エドムびとドエグがあそこにいたので、わたしは(かれ)がきっとサウルに()げるであろうと(おも)った。わたしがあなたの(ちち)(いえ)人々(ひとびと)(いのち)(うしな)わせるもととなったのです。 23あなたはわたしの(ところ)にとどまってください。(おそ)れることはありません。あなたの(いのち)(もと)める(もの)は、わたしの(いのち)をも(もと)めているのです。わたしの(ところ)におられるならば、あなたは安全(あんぜん)でしょう」。

第二十三章

1さて人々(ひとびと)はダビデに()げて()った、「ペリシテびとがケイラを()めて、()()穀物(こくもつ)をかすめています」。 2そこでダビデは(しゅ)()うて()った、「わたしが()って、このペリシテびとを()ちましょうか」。(しゅ)はダビデに()われた、「()ってペリシテびとを()ち、ケイラを(すく)いなさい」。 3しかしダビデの従者(じゅうしゃ)たちは(かれ)()った、「われわれは、ユダのここにおってさえ、(おそ)れているのに、ましてケイラへ()って、ペリシテびとの(ぐん)(あた)ることができましょうか」。 4ダビデが(かさ)ねて(しゅ)()うたところ、(しゅ)(かれ)(こた)えて()われた、「()って、ケイラへ(くだ)りなさい。わたしはペリシテびとをあなたの()(わた)します」。 5ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちはケイラへ()って、ペリシテびとと(たたか)い、(かれ)らの家畜(かちく)(うば)いとり、(かれ)らを(おお)()(ころ)した。こうしてダビデはケイラの住民(じゅうみん)(すく)った。
6アヒメレクの()アビヤタルは、ケイラにいるダビデのもとにのがれてきた(とき)()にエポデをもって(くだ)ってきた。 7さてダビデのケイラにきたことがサウルに(きこ)えたので、サウルは()った、「(かみ)はわたしの()(かれ)をわたされた。(かれ)(もん)(かん)()のある(まち)にはいって、自分(じぶん)()()じこめたからである」。 8そこでサウルはすべての(たみ)(たたか)いに()(あつ)めて、ケイラに(くだ)り、ダビデとその従者(じゅうしゃ)()(かこ)もうとした。 9ダビデはサウルが自分(じぶん)(がい)(くわ)えようとしているのを()って、祭司(さいし)アビヤタルに()った、「エポデを()ってきてください」。 10そしてダビデは()った、「イスラエルの(かみ)(しゅ)よ、しもべはサウルがケイラにきて、わたしのために、この(まち)(ほろ)ぼそうとしていることを(たし)かに()きました。 11ケイラの人々(ひとびと)はわたしを(かれ)()(わた)すでしょうか。しもべの()いたように、サウルは(くだ)ってくるでしょうか。イスラエルの(かみ)(しゅ)よ、どうぞ、しもべに()げてください」。(しゅ)()われた、「(かれ)(くだ)って()る」。 12ダビデは()った、「ケイラの人々(ひとびと)はわたしと従者(じゅうしゃ)たちをサウルの()にわたすでしょうか」。(しゅ)()われた、「(かれ)らはあなたがたを(わた)すであろう」。 13そこでダビデとその六百(にん)ほどの従者(じゅうしゃ)たちは()って、ケイラを()り、いずこともなくさまよった。ダビデのケイラから()()ったことがサウルに(きこ)えたので、サウルは(たたか)いに()ることをやめた。 14ダビデは荒野(あらの)にある要害(ようがい)におり、またジフの荒野(あらの)山地(さんち)におった。サウルは日々(ひび)(かれ)(たず)(もと)めたが、(かみ)(かれ)をその()(わた)されなかった。
15さてダビデはサウルが自分(じぶん)(いのち)(もと)めて()てきたので(おそ)れた。その(とき)ダビデはジフの荒野(あらの)のホレシにいたが、 16サウルの()ヨナタンは()って、ホレシにいるダビデのもとに()き、(かみ)によって(かれ)(ちから)づけた。 17そしてヨナタンは(かれ)()った、「(おそ)れるにはおよびません。(ちち)サウルの()はあなたに(とど)かないでしょう。あなたはイスラエルの(おう)となり、わたしはあなたの(つぎ)となるでしょう。このことは(ちち)サウルも()っています」。 18こうして(かれ)らふたりは(しゅ)(まえ)契約(けいやく)(むす)び、ダビデはホレシにとどまり、ヨナタンは(いえ)(かえ)った。
19その(とき)ジフびとはギベアにいるサウルのもとに(のぼ)って()き、そして()った、「ダビデは、荒野(あらの)(みなみ)にあるハキラの(おか)(うえ)のホレシの要害(ようがい)(かく)れて、われわれと(とも)にいるではありませんか。 20それゆえ(おう)よ、あなたが(くだ)って()こうという(のぞ)みのとおり、いま(くだ)ってきてください。われわれは(かれ)(おう)()(わた)します」。 21サウルは()った、「あなたがたはわたしに同情(どうじょう)()せてくれたのです。どうぞ(しゅ)があなたがたを祝福(しゅくふく)されるように。 22あなたがたは()って、なお(たし)かめてください。(かれ)のよく()(ところ)とだれがそこで(かれ)()たかを()きわめてください。(ひと)(かた)るところによると、(かれ)はひじょうに悪賢(わるがしこ)いそうだ。 23それで、あなたがたは(かれ)(かく)れる(かく)場所(ばしょ)をみな()きわめ、(たし)かな()らせをもってわたしの(ところ)(かえ)ってきなさい。その(とき)わたしはあなたがたと(とも)()きます。もし(かれ)がこの()にいるならば、わたしはユダの氏族(しぞく)をあまねく(たず)ねて(かれ)(さが)しだします」。 24(かれ)らは()って、サウルに先立(さきだ)ってジフへ()った。
さてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは荒野(あらの)(みなみ)のアラバにあるマオンの荒野(あらの)にいた。 25そしてサウルとその従者(じゅうしゃ)たちはきて(かれ)(さが)した。人々(ひとびと)がこれをダビデに()げたので、ダビデはマオンの荒野(あらの)にある(いわ)(ところ)(くだ)って()った。サウルはこれを()いて、マオンの荒野(あらの)にきてダビデを()った。 26サウルは(やま)のこちら(がわ)()き、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとは(やま)のむこう(がわ)(おこな)った。そしてダビデは(いそ)いでサウルからのがれようとした。サウルとその従者(じゅうしゃ)たちが、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちを(かこ)んで(とら)えようとしたからである。 27その(とき)、サウルの(ところ)に、ひとりの使者(ししゃ)がきて()った、「ペリシテびとが(くに)(おか)しています。(いそ)いできてください」。 28そこでサウルはダビデを()うことをやめて(かえ)り、()ってペリシテびとに(あた)った。それで人々(ひとびと)は、その(ところ)を「のがれの(いわ)」と()づけた。 29ダビデはそこから(のぼ)ってエンゲデの要害(ようがい)にいた。

第二十四章

1サウルがペリシテびとを()うことをやめて(かえ)ってきたとき、人々(ひとびと)(かれ)()げて()った、「ダビデはエンゲデの()にいます」。 2そこでサウルは、(ぜん)イスラエルから(えら)んだ三千の(ひと)(ひき)い、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとを(さが)すため、「やぎの(いわ)」の(まえ)()かけた。 3途中(とちゅう)(ひつじ)のおりの(ところ)にきたが、そこに、ほら(あな)があり、サウルは(あし)をおおうために、その(なか)にはいった。その(とき)、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは、ほら(あな)(おく)にいた。 4ダビデの従者(じゅうしゃ)たちは(かれ)()った、「(しゅ)があなたに()げて、『わたしはあなたの(てき)をあなたの()(わた)す。あなたは自分(じぶん)()いと(おも)うことを(かれ)にすることができる』と()われた()がきたのです」。そこでダビデは()って、ひそかに、サウルの上着(うわぎ)のすそを()った。 5しかし(のち)になって、ダビデはサウルの上着(うわぎ)のすそを()ったことに、(こころ)()めを(かん)じた。 6ダビデは従者(じゅうしゃ)たちに()った、「(しゅ)(あぶら)(そそ)がれたわが(きみ)に、わたしがこの(こと)をするのを(しゅ)(きん)じられる。(かれ)(しゅ)(あぶら)(そそ)がれた(もの)であるから、(かれ)(てき)して、わたしの()をのべるのは()くない」。 7ダビデはこれらの言葉(ことば)をもって従者(じゅうしゃ)たちを()()め、サウルを()つことを(ゆる)さなかった。サウルは()って、ほら(あな)()り、(みち)(すす)んだ。
8ダビデもまた、そのあとから()ち、ほら(あな)()て、サウルのうしろから()ばわって、「わが(きみ)(おう)よ」と()った。サウルがうしろをふり()いた(とき)、ダビデは()にひれ()して(はい)した。 9そしてダビデはサウルに()った、「どうして、あなたは『ダビデがあなたを(がい)しようとしている』という人々(ひとびと)言葉(ことば)()かれるのですか。 10あなたは、この()自分(じぶん)()で、(しゅ)があなたをきょう、ほら(あな)(なか)でわたしの()(わた)されたのをごらんになりました。人々(ひとびと)はわたしにあなたを(ころ)すことを(すす)めたのですが、わたしは(ころ)しませんでした。『わが(きみ)(しゅ)(あぶら)(そそ)がれた(かた)であるから、これに(てき)して()をのべることはしない』とわたしは()いました。 11わが(ちち)よ、ごらんなさい。あなたの上着(うわぎ)のすそは、わたしの()にあります。わたしがあなたの上着(うわぎ)のすそを()り、しかも、あなたを(ころ)さなかったことによって、あなたは、わたしの()(あく)も、とがもないことを()()られるでしょう。あなたはわたしの(いのち)()ろうと、ねらっておられますが、わたしはあなたに(たい)して(つみ)をおかしたことはないのです。 12どうぞ(しゅ)がわたしとあなたの(あいだ)をさばかれますように。また(しゅ)がわたしのために、あなたに(むく)いられますように。しかし、わたしはあなたに()をくだすことをしないでしょう。 13(むかし)から、ことわざに()っているように、『(あく)悪人(あくにん)から()る』。しかし、わたしはあなたに()をくだすことをしないでしょう。 14イスラエルの(おう)は、だれを()って()てこられたのですか。あなたは、だれを()っておられるのですか。()んだ(いぬ)()っておられるのです。一(ぴき)(のみ)()っておられるのです。 15どうぞ(しゅ)がさばきびととなって、わたしとあなたの(あいだ)をさばき、かつ()て、わたしの(うった)えを()き、わたしをあなたの()から(すく)()してくださるように」。
16ダビデがこれらの言葉(ことば)をサウルに(かた)(おわ)ったとき、サウルは()った、「わが()ダビデよ、これは、あなたの(こえ)であるか」。そしてサウルは(こえ)をあげて()いた。 17サウルはまたダビデに()った、「あなたはわたしよりも(ただ)しい。わたしがあなたに(あく)(むく)いたのに、あなたはわたしに(ぜん)(むく)いる。 18きょう、あなたはいかに()くわたしをあつかったかを(あき)らかにしました。すなわち(しゅ)がわたしをあなたの()にわたされたのに、あなたはわたしを(ころ)さなかったのです。 19(ひと)(てき)()ったとき、(てき)無事(ぶじ)()らせるでしょうか。あなたが、きょう、わたしにした(こと)のゆえに、どうぞ(しゅ)があなたに()(むく)いを(あた)えられるように。 20(いま)わたしは、あなたがかならず(おう)となることを()りました。またイスラエルの王国(おうこく)が、あなたの()によって(かた)()つことを()りました。 21それゆえ、あなたはわたしのあとに、わたしの子孫(しそん)()たず、またわたしの(ちち)(いえ)から、わたしの()(ほろ)ぼし()らないと、いま(しゅ)をさして、わたしに(ちか)ってください」。 22そこでダビデはサウルに、そのように(ちか)った。そしてサウルは(いえ)(かえ)り、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちは要害(ようがい)にのぼって()った。

第二十五章

1さてサムエルが()んだので、イスラエルの人々(ひとびと)はみな(あつ)まって、(かれ)のためにひじょうに(かな)しみ、ラマにあるその(いえ)(かれ)(ほうむ)った。
そしてダビデは()ってパランの荒野(あらの)(くだ)って()った。 2マオンに、ひとりの(ひと)があって、カルメルにその所有(しょゆう)があり、ひじょうに裕福(ゆうふく)で、(ひつじ)三千(とう)、やぎ一千(とう)()っていた。(かれ)はカルメルで(ひつじ)()()っていた。 3その(ひと)()はナバルといい、(つま)()はアビガイルといった。アビガイルは(かしこ)くて(うつく)しかったが、その(おっと)剛情(ごうじょう)で、粗暴(そぼう)であった。(かれ)はカレブびとであった。 4ダビデは荒野(あらの)にいて、ナバルがその(ひつじ)()()っていることを()いたので、 5(にん)若者(わかもの)をつかわし、その若者(わかもの)たちに()った、「カルメルに(のぼ)って()ってナバルの(ところ)()き、わたしの()をもって(かれ)にあいさつし、 6(かれ)にこう()いなさい、『どうぞあなたに平安(へいあん)があるように。あなたの(いえ)平安(へいあん)があるように。またあなたのすべての()(もの)平安(へいあん)があるように。 7わたしはあなたが(ひつじ)()()っておられることを()きました。あなたの羊飼(ひつじかい)たちはわれわれと一緒(いっしょ)にいたのですが、われわれは(かれ)らを(すこ)しも(がい)しませんでした。また(かれ)らはカルメルにいる(あいだ)に、(なに)ひとつ(うしな)ったことはありません。 8あなたの若者(わかもの)たちに()いてみられるならば、わかります。それゆえ、わたしの若者(わかもの)たちに、あなたの好意(こうい)(しめ)してください。われわれは(しゅく)()にきたのです。どうぞ、あなたの()もとにあるものを、(おく)(もの)として、しもべどもとあなたの()ダビデにください』」。
9ダビデの若者(わかもの)たちは()って、ダビデの()をもって、これらの言葉(ことば)をナバルに(かた)り、そして()っていた。 10ナバルはダビデの若者(わかもの)たちに(こた)えて()った、「ダビデとはだれか。エッサイの()とはだれか。このごろは、主人(しゅじん)()てて()げるしもべが(おお)い。 11どうしてわたしのパンと(みず)、またわたしの(ひつじ)()()人々(ひとびと)のためにほふった(にく)をとって、どこからきたのかわからない人々(ひとびと)(あた)えることができようか」。 12ダビデの若者(わかもの)たちは、そこを()り、(かえ)ってきて、(かれ)にこのすべての(こと)()げた。 13そこでダビデは従者(じゅうしゃ)たちに()った、「おのおの、つるぎを()びなさい」。(かれ)らはおのおのつるぎを()び、ダビデもまたつるぎを()びた。そしておおよそ四百(にん)がダビデに(したが)って(のぼ)っていき、二百(にん)荷物(にもつ)のところにとどまった。
14ところで、ひとりの若者(わかもの)がナバルの(つま)アビガイルに()った、「ダビデが荒野(あらの)から使者(ししゃ)をつかわして、主人(しゅじん)にあいさつをしたのに、主人(しゅじん)はその使者(ししゃ)たちをののしられました。 15しかし、あの人々(ひとびと)はわれわれに(だい)へんよくしてくれて、われわれは(すこ)しも(がい)()けず、またわれわれが()にいた(とき)(かれ)らと(とも)にいた(あいだ)は、(なに)ひとつ(うしな)ったことはありませんでした。 16われわれが(ひつじ)()って(かれ)らと(とも)にいる(あいだ)(かれ)らは(よる)(ひる)もわれわれのかきとなってくれました。 17それで、あなたは(いま)それを()って、自分(じぶん)のすることを(かんが)えてください。主人(しゅじん)とその一家(いっか)(わざわい)()きるからです。しかも主人(しゅじん)はよこしまな(ひと)で、(はな)しかけることもできません」。
18その(とき)、アビガイルは(いそ)いでパン二百、ぶどう(しゅ)(かわ)(ぶくろ)二つ、調理(ちょうり)した(ひつじ)(とう)、いり(むぎ)五セア、ほしぶどう百ふさ、ほしいちじくのかたまり二百を()って、ろばにのせ、 19若者(わかもの)たちに()った、「わたしのさきに(すす)みなさい。わたしはあなたがたのうしろに、ついて()きます」。しかし彼女(かのじょ)(おっと)ナバルには()げなかった。 20アビガイルが、ろばに()って山陰(やまかげ)(くだ)ってきた(とき)、ダビデと従者(じゅうしゃ)たちは彼女(かのじょ)(ほう)()かって()りてきたので、彼女(かのじょ)はその人々(ひとびと)出会(であ)った。 21さて、ダビデはさきにこう()った、「わたしはこの(ひと)荒野(あらの)()っている(もの)をみな(まも)って、その(ひと)(ぞく)する(もの)(なに)ひとつなくならないようにしたが、それは(まった)くむだであった。(かれ)はわたしのした親切(しんせつ)(あく)をもって(むく)いた。 22もしわたしがあすの(あさ)まで、ナバルに(ぞく)するすべての(もの)のうち、ひとりの(おとこ)でも(のこ)しておくならば、(かみ)幾重(いくえ)にもダビデを(ばっ)してくださるように」。
23アビガイルはダビデを()て、(いそ)いで、ろばを()り、ダビデの(まえ)()にひれ()し、 24その(あし)もとに()して()った、「わが(きみ)よ、このとがをわたしだけに()わせてください。しかしどうぞ、はしために、あなたの(みみ)(かた)ることを(ゆる)し、はしための言葉(ことば)をお()きください。 25わが(きみ)よ、どうぞ、このよこしまな(ひと)ナバルのことを()にかけないでください。あの(ひと)はその()のとおりです。()はナバルで、(おろ)かな(もの)です。あなたのはしためであるわたしは、わが(きみ)なるあなたがつかわされた若者(わかもの)たちを()なかったのです。 26それゆえ(いま)、わが(きみ)よ、(しゅ)()きておられます。またあなたは()きておられます。(しゅ)は、あなたがきて()(なが)し、また()ずから、あだを(むく)いるのをとどめられました。どうぞ(いま)、あなたの(てき)、およびわが(きみ)(がい)(くわ)えようとする(もの)は、ナバルのごとくになりますように。 27(いま)、あなたのつかえめが、わが(きみ)(たずさ)えてきた(おく)(もの)を、わが(きみ)(したが)若者(わかもの)たちに(あた)えてください。 28どうぞ、はしためのとがを(ゆる)してください。(しゅ)(かなら)ずわが(きみ)のために(たし)かな(いえ)(つく)られるでしょう。わが(きみ)(しゅ)のいくさを(たたか)い、またこの()()きながらえられる(あいだ)、あなたのうちに(わる)いことが()いだされないからです。 29たとい(ひと)()ってあなたを()い、あなたの(いのち)(もと)めても、わが(きみ)(いのち)は、()きている(もの)(たば)にたばねられて、あなたの(かみ)(しゅ)のもとに(まも)られるでしょう。しかし(しゅ)はあなたの(てき)(いのち)を、(いし)()げの(なか)から()げるように、()()てられるでしょう。 30そして(しゅ)があなたについて(かた)られたすべての()いことをわが(きみ)(おこな)い、あなたをイスラエルのつかさに(にん)じられる(とき)31あなたが、ゆえなく()(なが)し、またわが(きみ)がみずからあだを(むく)いたと()うことで、それがあなたのつまずきとなり、またわが(きみ)(こころ)()めとなることのないようにしてください。(しゅ)がわが(きみ)()くせられる(とき)、このはしためを(おも)いだしてください」。
32ダビデはアビガイルに()った、「きょう、あなたをつかわして、わたしを(むか)えさせられたイスラエルの(かみ)(しゅ)はほむべきかな。 33あなたの知恵(ちえ)はほむべきかな。またあなたはほむべきかな。あなたは、きょう、わたしがきて()(なが)し、()ずからあだを(むく)いることをとどめられたのです。 34わたしがあなたを(がい)することをとどめられたイスラエルの(かみ)(しゅ)はまことに()きておられる。もしあなたが(いそ)いでわたしに()いにこなかったならば、あすの(あさ)までには、ナバルのところに、ひとりの(おとこ)(のこ)らなかったでしょう」。 35ダビデはアビガイルが(たずさ)えてきた(もの)をその()から()けて、彼女(かのじょ)()った、「あなたは無事(ぶじ)にのぼって、(いえ)(かえ)りなさい。わたしはあなたの(こえ)()きいれ、あなたの(ねが)いを(ゆる)します」。
36こうしてアビガイルはナバルのもとにきたが、()よ、(かれ)はその(いえ)で、(おう)酒宴(しゅえん)のような酒宴(しゅえん)(ひら)いていた。ナバルは(こころ)(たの)しみ、ひじょうに()っていたので、アビガイルは()くる(あさ)まで(こと)大小(だいしょう)()わず(なに)をも(かれ)()げなかった。 37(あさ)になってナバルの()いがさめたとき、その(つま)(かれ)にこれらの(こと)()げると、(かれ)(こころ)はそのうちに()んで、(かれ)(いし)のようになった。 38()ばかりして(しゅ)がナバルを()たれたので(かれ)()んだ。
39ダビデはナバルが()んだと()いて()った、「(しゅ)はほむべきかな。(しゅ)はわたしがナバルの()から()けた侮辱(ぶじょく)(むく)いて、しもべが(あく)をおこなわないようにされた。(しゅ)はナバルの悪行(あくぎょう)をそのこうべに(むく)いられたのだ」。ダビデはアビガイルを(つま)にめとろうと、(ひと)をつかわして彼女(かのじょ)(もう)()んだ。 40ダビデのしもべたちはカルメルにいるアビガイルの(ところ)にきて、彼女(かのじょ)()った、「ダビデはあなたを(つま)にめとろうと、われわれをあなたの(ところ)へつかわしたのです」。 41アビガイルは()ち、()にひれ()(はい)して()った、「はしためは、わが(きみ)のしもべたちの(あし)(あら)うつかえめです」。 42アビガイルは(いそ)いで()ち、ろばに()って、五(にん)侍女(じじょ)たちを()れ、ダビデの使者(ししゃ)たちに(したが)って()き、ダビデの(つま)となった。
43ダビデはまたエズレルのアヒノアムをめとった。彼女(かのじょ)たちはふたりともダビデの(つま)となった。 44ところでサウルはその(むすめ)、ダビデの(つま)ミカルを、ガリムの(ひと)であるライシの()パルテに(あた)えた。

第二十六章

1そのころジフびとがギベアにおるサウルのもとにきて()った、「ダビデは荒野(あらの)(まえ)にあるハキラの(やま)(かく)れているではありませんか」。 2サウルは()って、ジフの荒野(あらの)でダビデを(さが)すために、イスラエルのうちから(えら)んだ三千(にん)をひき()れて、ジフの荒野(あらの)(くだ)った。 3サウルは荒野(あらの)(まえ)(みち)のかたわらにあるハキラの(やま)(じん)()った。ダビデは荒野(あらの)にとどまっていたが、サウルが自分(じぶん)のあとを()って荒野(あらの)にきたのを()て、 4斥候(せっこう)()し、サウルが(たし)かにきたのを()った。 5そしてダビデは()って、サウルが(じん)()っている(ところ)()って、サウルとその(ぐん)(ちょう)、ネルの()アブネルの()ている場所(ばしょ)()た。サウルは陣所(じんしょ)のうちに()ていて、(たみ)はその周囲(しゅうい)宿営(しゅくえい)していた。
6ダビデは、ヘテびとアヒメレク、およびゼルヤの()で、ヨアブの兄弟(きょうだい)であるアビシャイに()った、「だれがわたしと(とも)にサウルの(じん)(くだ)って()くか」。アビシャイは()った、「わたしが一緒(いっしょ)(くだ)って()きます」。 7こうしてダビデとアビシャイとが(よる)(たみ)のところへ()ってみると、サウルは陣所(じんしょ)のうちに()(よこ)たえて()ており、そのやりは(まくら)もとに()()きさしてあった。そしてアブネルと(たみ)らとはその周囲(しゅうい)()ていた。 8アビシャイはダビデに()った、「(かみ)はきょう(てき)をあなたの()(わた)されました。どうぞわたしに、(かれ)のやりをもってひと()きで(かれ)()()しとおさせてください。ふたたび()くには(およ)びません」。 9しかしダビデはアビシャイに()った、「(かれ)(ころ)してはならない。(しゅ)(あぶら)(そそ)がれた(もの)()かって、()をのべ、(つみ)()ない(もの)があろうか」。 10ダビデはまた()った、「(しゅ)()きておられる。(しゅ)(かれ)()たれるであろう。あるいは(かれ)()()()るであろう。あるいは(たたか)いに(くだ)って()って(ほろ)びるであろう。 11(しゅ)(あぶら)(そそ)がれた(もの)()かって、わたしが()をのべることを(しゅ)(きん)じられる。しかし(いま)、そのまくらもとにあるやりと(みず)のびんを()りなさい。そしてわれわれは()ろう」。 12こうしてダビデはサウルの(まくら)もとから、やりと(みず)のびんを()って(かれ)らは()ったが、だれもそれを()ず、だれも()らず、また、だれも()をさまさず、みな(ねむ)っていた。(しゅ)(かれ)らを(ふか)(ねむ)らされたからである。
13ダビデは()こう(がわ)(わた)って()って、(とお)(はな)れて(やま)(いただき)()った。(かれ)らの(あいだ)(へだ)たりは(おお)きかった。 14ダビデは(たみ)とネルの()アブネルに()ばわって()った、「アブネルよ、あなたは(こた)えないのか」。アブネルは(こた)えて()った、「(おう)()んでいるあなたはだれか」。 15ダビデはアブネルに()った、「あなたは(おとこ)ではないか。イスラエルのうちに、あなたに(およ)(ひと)があろうか。それであるのに、どうしてあなたは主君(しゅくん)である(おう)(まも)らなかったのか。(たみ)のひとりが、あなたの主君(しゅくん)である(おう)(ころ)そうとして、はいりこんだではないか。 16あなたがしたこの(こと)()くない。(しゅ)()きておられる。あなたがたは、まさに()(あたい)する。(しゅ)(あぶら)をそそがれた、あなたの主君(しゅくん)(まも)らなかったからだ。いま(おう)のやりがどこにあるか。その(まくら)もとにあった(みず)のびんがどこにあるかを()なさい」。
17サウルはダビデの(こえ)()きわけて()った、「わが()ダビデよ、これはあなたの(こえ)か」。ダビデは()った、「(おう)、わが(きみ)よ、わたしの(こえ)です」。 18ダビデはまた()った、「わが(きみ)はどうしてしもべのあとを()われるのですか。わたしが(なに)をしたのですか。わたしの()になんのわるいことがあるのですか。 19(おう)、わが(きみ)よ、どうぞ、(いま)しもべの言葉(ことば)()いてください。もし(しゅ)があなたを(うご)かして、わたしの(てき)とされたのであれば、どうぞ(しゅ)(そな)(もの)()けて(やわ)らいでくださるように。もし、それが(ひと)であるならば、どうぞその人々(ひとびと)(しゅ)(まえ)にのろいを()けるように。(かれ)らが『おまえは()って()神々(かみがみ)(つか)えなさい』と()って、きょう、わたしを()()し、(しゅ)()(ぎょう)にあずかることができないようにしたからです。 20それゆえ(いま)(しゅ)(まえ)(はな)れて、わたしの()()()ちることのないようにしてください。イスラエルの(おう)は、(ひと)(やま)で、しゃこを()うように、わたしの(いのち)()ろうとして()てこられたのです」。
21その(とき)、サウルは()った、「わたしは(つみ)(おか)した。わが()ダビデよ、(かえ)ってきてください。きょう、わたしの(いのち)があなたの()(たっと)()られたゆえ、わたしは、もはやあなたに(がい)(くわ)えないであろう。わたしは(おろ)かなことをして、非常(ひじょう)なまちがいをした」。 22ダビデは(こた)えた、「(おう)のやりは、ここにあります。ひとりの若者(わかもの)(わた)ってこさせ、これを()ちかえらせてください。 23(しゅ)(ひと)おのおのにその()真実(しんじつ)とに(したが)って(むく)いられます。(しゅ)がきょう、あなたをわたしの()(わた)されたのに、わたしは(しゅ)(あぶら)(そそ)がれた(もの)()かって、()をのべることをしなかったのです。 24きょう、わたしがあなたの(いのち)(おも)んじたように、どうぞ(しゅ)がわたしの(いのち)(おも)んじて、もろもろの苦難(くなん)から(すく)()してくださるように」。 25サウルはダビデに()った、「わが()ダビデよ、あなたはほむべきかな。あなたは(おお)くの(こと)をおこなって、それをなし()げるであろう」。こうしてダビデはその(みち)()き、サウルは自分(じぶん)(ところ)(かえ)った。

第二十七章

1ダビデは(こころ)のうちに()った、「わたしは、いつかはサウルの()にかかって(ほろ)ぼされるであろう。(はや)くペリシテびとの()へのがれるほかはない。そうすればサウルはこの(うえ)イスラエルの()にわたしをくまなく(さが)すことはやめ、わたしは(かれ)()からのがれることができるであろう」。 2こうしてダビデは、(とも)にいた六百(にん)一緒(いっしょ)に、()ってガテの(おう)マオクの()アキシの(ところ)()った。 3ダビデと従者(じゅうしゃ)たちは、おのおのその家族(かぞく)とともに、ガテでアキシと(とも)()んだ。ダビデはそのふたりの(つま)、すなわちエズレルの(おんな)アヒノアムと、カルメルの(おんな)でナバルの(つま)であったアビガイルと(とも)におった。 4ダビデがガテにのがれたことがサウルに(きこ)えたので、サウルはもはや(かれ)(さが)さなかった。
5さてダビデはアキシに()った、「もしわたしがあなたの(まえ)(めぐ)みを()るならば、どうぞ、いなかにある(まち)のうちで一つの場所(ばしょ)をわたしに(あた)えてそこに()まわせてください。どうしてしもべがあなたと(とも)(おう)(まち)()むことができましょうか」。 6アキシはその()チクラグを(かれ)(あた)えた。こうしてチクラグは今日(こんにち)にいたるまでユダの(おう)(ぞく)している。 7ダビデがペリシテびとの(くに)()んだ()(かず)は一(ねん)と四か(げつ)であった。
8さてダビデは従者(じゅうしゃ)(とも)にのぼって、ゲシュルびと、ゲゼルびとおよびアマレクびとを(おそ)った。これらは(むかし)からシュルに(いた)るまでの()住民(じゅうみん)であって、エジプトに(いた)るまでの()()んでいた。 9ダビデはその()()って、(おとこ)(おんな)()かしおかず、(ひつじ)(うし)とろばとらくだと衣服(いふく)とを()って、アキシのもとに(かえ)ってきた。 10アキシが「あなたはきょうどこを(おそ)いましたか」と(たず)ねると、ダビデは、その時々(ときどき)、「ユダのネゲブです」、「エラメルびとのネゲブです」「ケニびとのネゲブです」と()った。 11ダビデは(おとこ)(おんな)()かしおかず、ひとりをもガテに()いて()かなかった。それはダビデが、「(おそ)らくは、(かれ)らが、『ダビデはこうした』と()って、われわれのことを()げるであろう」と(おも)ったからである。ダビデはペリシテびとのいなかに()んでいる(あいだ)はこうするのが(つね)であった。 12アキシはダビデを(しん)じて()った、「(かれ)自分(じぶん)(まった)くその(たみ)イスラエルに(にく)まれるようにした。それゆえ(かれ)永久(えいきゅう)にわたしのしもべとなるであろう」。

第二十八章

1そのころ、ペリシテびとがイスラエルと(たたか)おうとして、いくさのために軍勢(ぐんぜい)(あつ)めたので、アキシはダビデに()った、「あなたは、しかと承知(しょうち)してください。あなたとあなたの従者(じゅうしゃ)たちとは、わたしと(とも)()て、軍勢(ぐんぜい)(くわ)わらなければなりません」。 2ダビデはアキシに()った、「よろしい、あなたはしもべが(なに)をするかを()られるでしょう」。アキシはダビデに()った、「よろしい、あなたを終身(しゅうしん)わたしの護衛(ごえい)(ちょう)としよう」。
3さてサムエルはすでに()んで、イスラエルのすべての(ひと)(かれ)のために(かな)しみ、その(まち)ラマに(ほうむ)った。また(さき)にサウルは口寄(くちよ)せや(うらな)()をその()から追放(ついほう)した。 4ペリシテびとが(あつ)まってきてシュネムに(じん)()ったので、サウルはイスラエルのすべての(ひと)(あつ)めて、ギルボアに(じん)()った。 5サウルはペリシテびとの軍勢(ぐんぜい)()(おそ)れ、その(こころ)はいたくおののいた。 6そこでサウルは(しゅ)(うかが)いをたてたが、(しゅ)(ゆめ)によっても、ウリムによっても、預言者(よげんしゃ)によっても(かれ)(こた)えられなかった。 7サウルはしもべたちに()った、「わたしのために、口寄(くちよ)せの(おんな)(さが)()しなさい。わたしは()ってその(おんな)(たず)ねよう」。しもべたちは(かれ)()った、「()よ、エンドルにひとりの口寄(くちよ)せがいます」。
8サウルは姿(すがた)()えてほかの着物(きもの)をまとい、ふたりの従者(じゅうしゃ)(ともな)って()き、(よる)(あいだ)に、その(おんな)(ところ)にきた。そしてサウルは()った、「わたしのために口寄(くちよ)せの(じゅつ)()って、わたしがあなたに()げる(ひと)()(おこ)してください」。 9(おんな)(かれ)()った、「あなたはサウルがしたことをごぞんじでしょう。(かれ)口寄(くちよ)せや(うらな)()をその(くに)から()(ほろ)ぼしました。どうしてあなたは、わたしの(いのち)にわなをかけて、わたしを()なせようとするのですか」。 10サウルは(しゅ)をさして彼女(かのじょ)(ちか)って()った、「(しゅ)()きておられる。この(こと)のためにあなたが(ばつ)()けることはないでしょう」。 11(おんな)()った、「あなたのためにだれを()(おこ)しましょうか」。サウルは()った、「サムエルを()(おこ)してください」。 12(おんな)はサムエルを()(とき)大声(おおごえ)(さけ)んだ。そしてその(おんな)はサウルに()った、「どうしてあなたはわたしを(あざむ)かれたのですか。あなたはサウルです」。 13(おう)彼女(かのじょ)()った、「(おそ)れることはない。あなたには(なに)()えるのですか」。(おんな)はサウルに()った、「(かみ)のようなかたが()からのぼられるのが()えます」。 14サウルは彼女(かのじょ)()った、「その(ひと)はどんな様子(ようす)をしていますか」。彼女(かのじょ)()った、「ひとりの老人(ろうじん)がのぼってこられます。その(ひと)上着(うわぎ)をまとっておられます」。サウルはその(ひと)がサムエルであるのを()り、()にひれ()して(はい)した。
15サムエルはサウルに()った、「なぜ、わたしを()(おこ)して、わたしを(わずら)わすのか」。サウルは()った、「わたしは、ひじょうに(なや)んでいます。ペリシテびとがわたしに()かっていくさを(おこ)し、(かみ)はわたしを(はな)れて、預言者(よげんしゃ)によっても、(ゆめ)によっても、もはやわたしに(こた)えられないのです。それで、わたしのすべきことを()るために、あなたを()びました」。 16サムエルは()った、「(しゅ)があなたを(はな)れて、あなたの(てき)となられたのに、どうしてあなたはわたしに()うのですか。 17(しゅ)は、わたしによって(かた)られたとおりにあなたに(おこな)われた。(しゅ)王国(おうこく)を、あなたの()から()きはなして、あなたの隣人(りんじん)であるダビデに(あた)えられた。 18あなたは(しゅ)(こえ)()(したが)わず、(しゅ)(はげ)しい(いか)りに(したが)って、アマレクびとを()(ほろ)ぼさなかったゆえに、(しゅ)はこの(こと)を、この()、あなたに(おこな)われたのである。 19(しゅ)はまたイスラエルをも、あなたと(とも)に、ペリシテびとの()(わた)されるであろう。あすは、あなたもあなたの()らもわたしと一緒(いっしょ)になるであろう。また(しゅ)はイスラエルの軍勢(ぐんぜい)をもペリシテびとの()(わた)される」。
20そのときサウルは、ただちに、()()び、(たお)れ、サムエルの言葉(ことば)のために、ひじょうに(おそ)れ、またその(ちから)はうせてしまった。その一(にち)()食物(しょくもつ)をとっていなかったからである。 21(おんな)はサウルのもとにきて、(かれ)のおののいているのを()()った、「あなたのつかえめは、あなたの(こえ)()(したが)い、わたしの(いのち)をかけて、あなたの()われた言葉(ことば)(したが)いました。 22それゆえ(いま)あなたも、つかえめの(こえ)()(したが)い、一口(ひとくち)のパンをあなたの(まえ)にそなえさせてください。あなたはそれをめしあがって(ちから)をつけ、(みち)()ってください」。 23ところがサウルは(ことわ)って()った、「わたしは()べません」。しかし(かれ)のしもべたちも、その(おんな)もしいてすすめたので、サウルはその言葉(ことば)()きいれ、()から()きあがり、(とこ)(うえ)にすわった。 24その(おんな)(いえ)()えた()(うし)があったので、(いそ)いでそれをほふり、また麦粉(むぎこ)をとり、こねて、(たね)()れぬパンを()き、 25サウルとそのしもべたちの(まえ)()ってきたので、(かれ)らは()べた。そして(かれ)らは()()がって、その(よる)のうちに()った。

第二十九章

1さてペリシテびとは、その軍勢(ぐんぜい)をことごとくアペクに(あつ)めた。イスラエルびとはエズレルにある(いずみ)のかたわらに(じん)()った。 2ペリシテびとの(きみ)たちは、あるいは百(にん)、あるいは千(にん)(ひき)いて(すす)み、ダビデとその従者(じゅうしゃ)たちはアキシと(とも)に、しんがりになって(すす)んだ。 3その(とき)、ペリシテびとの(きみ)たちは()った、「これらのヘブルびとはここで(なに)をしているのか」。アキシはペリシテびとたちに()った、「これはイスラエルの(おう)サウルのしもべダビデではないか。(かれ)はこの()ごろ、この(とし)ごろ、わたしと(とも)にいたが、()()ちてきた()からきょうまで、わたしは(かれ)にあやまちがあったのを()たことがない」。 4しかしペリシテびとの(きみ)たちは(かれ)()かって(いか)った。そしてペリシテびとの(きみ)たちは(かれ)()った、「この(ひと)(かえ)らせて、あなたが(かれ)()いたもとの(ところ)()かせなさい。われわれと一緒(いっしょ)(かれ)(たたか)いに(くだ)らせてはならない。(たたか)いの(とき)(かれ)がわれわれの(てき)となるかも()れないからである。この(もの)(なに)をもってその主君(しゅくん)とやわらぐことができようか。ここにいる人々(ひとびと)(くび)をもってするほかはあるまい。 5これは、かつて人々(ひとびと)(おど)りのうちに(うた)いかわして、
『サウルは千を()(ころ)し、
ダビデは(まん)()(ころ)した』
()った、あのダビデではないか」。
6そこでアキシはダビデを()んで()った、「(しゅ)()きておられる。あなたは(ただ)しい(ひと)である。あなたがわたしと一緒(いっしょ)(たたか)いに出入(でい)りすることをわたしは()いと(おも)っている。それはあなたがわたしの(ところ)にきた()からこの()まで、わたしは、あなたに(わる)(こと)があったのを()たことがないからである。しかしペリシテびとの(きみ)たちはあなたを()()わない。 7それゆえ(いま)(やす)らかに(かえ)って()きなさい。(かれ)らが(わる)いと(おも)うことはしないがよかろう」。 8ダビデはアキシに()った、「しかしわたしが(なに)をしたというのですか。わたしがあなたに(つか)えはじめた()からこの()までに、あなたはしもべの()(なに)()られたので、わたしは()って、わたしの主君(しゅくん)である(おう)(てき)(たたか)うことができないのですか」。 9アキシはダビデに(こた)えた、「わたしは()て、あなたが(かみ)使(つかい)のようにりっぱな(ひと)であることを()っている。しかし、ペリシテびとの(きみ)たちは、『われわれと一緒(いっしょ)(かれ)(たたか)いに(のぼ)らせてはならない』と()っている。 10それで、あなたは、一緒(いっしょ)にきたあなたの主君(しゅくん)のしもべたちと(とも)(あさ)(はや)()きなさい。そして(あさ)(はや)()き、(よる)()けてから()りなさい」。 11こうしてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちとは(とも)にペリシテびとの()(かえ)ろうと、(あさ)(はや)()きて出立(しゅったつ)したが、ペリシテびとはエズレルへ(のぼ)って()った。

第三十章

1さてダビデとその従者(じゅうしゃ)たちが三()()にチクラグにきた(とき)、アマレクびとはすでにネゲブとチクラグを(おそ)っていた。(かれ)らはチクラグを()ち、()をはなってこれを()き、 2その(なか)にいた(おんな)たちおよびすべての(もの)捕虜(ほりょ)にし、(ちい)さい(もの)をも(おお)きい(もの)をも、ひとりも(ころ)さずに、()いて、その(みち)()った。 3ダビデと従者(じゅうしゃ)たちはその(まち)にきて、(まち)()()かれ、その(つま)とむすこ(むすめ)らは捕虜(ほりょ)となったのを()た。 4ダビデおよび(かれ)(とも)にいた(たみ)(こえ)をあげて()き、ついに()(ちから)もなくなった。 5ダビデのふたりの(つま)すなわちエズレルの(おんな)アヒノアムと、カルメルびとナバルの(つま)であったアビガイルも捕虜(ほりょ)になった。 6その(とき)、ダビデはひじょうに(なや)んだ。それは(たみ)がみなおのおのそのむすこ(むすめ)のために(こころ)(いた)めたため、ダビデを(いし)()とうと()ったからである。しかしダビデはその(かみ)(しゅ)によって自分(じぶん)(ちから)づけた。
7ダビデはアヒメレクの()祭司(さいし)アビヤタルに、「エポデをわたしのところに()ってきなさい」と()ったので、アビヤタルは、エポデをダビデのところに()ってきた。 8ダビデは(しゅ)(うかが)いをたてて()った、「わたしはこの軍隊(ぐんたい)のあとを()うべきですか。わたしはそれに()いつくことができましょうか」。(しゅ)(かれ)()われた、「()いなさい。あなたは(かなら)()いついて、(たし)かに(すく)()すことができるであろう」。 9そこでダビデは、一緒(いっしょ)にいた六百(にん)(もの)(とも)出立(しゅったつ)してベソル(かわ)()ったが、あとに(のこ)(もの)はそこにとどまった。 10すなわちダビデは四百(にん)(とも)追撃(ついげき)をつづけたが、(つか)れてベソル(かわ)(わた)れない(もの)二百(にん)はとどまった。
11(かれ)らは()で、ひとりのエジプトびとを()て、それをダビデのもとに()いてきて、パンを()べさせ、(みず)()ませた。 12また(かれ)らはほしいちじくのかたまり一つと、ほしぶどう二ふさを(かれ)(あた)えた。(かれ)()べて元気(げんき)回復(かいふく)した。(かれ)は三()()、パンを()べず、(みず)()んでいなかったからである。 13ダビデは(かれ)()った、「あなたはだれのものか。どこからきたのか」。(かれ)()った、「わたしはエジプトの若者(わかもの)で、アマレクびとの奴隷(どれい)です。三()(まえ)にわたしが病気(びょうき)になったので、主人(しゅじん)はわたしを()てて()きました。 14わたしどもは、ケレテびとのネゲブと、ユダに(ぞく)する()と、カレブのネゲブを(おそ)い、また()でチクラグを()きはらいました」。 15ダビデは(かれ)()った、「あなたはその軍隊(ぐんたい)のところへわたしを(みちび)(くだ)ってくれるか」。(かれ)()った、「あなたはわたしを(ころ)さないこと、またわたしを主人(しゅじん)()(わた)さないことを、(かみ)をさしてわたしに(ちか)ってください。そうすればあなたをその軍隊(ぐんたい)のところへ(みちび)(くだ)りましょう」。
16(かれ)はダビデを(みちび)(くだ)ったが、()よ、(かれ)らはペリシテびとの()とユダの()から(うば)()ったさまざまの(おお)くのぶんどり(もの)のゆえに、()()み、かつ(おど)りながら、()のおもてにあまねく()りひろがっていた。 17ダビデは(ゆう)ぐれから翌日(よくじつ)夕方(ゆうがた)まで、(かれ)らを()ったので、らくだに()って()げた四百(にん)若者(わかもの)たちのほかには、ひとりものがれた(もの)はなかった。 18こうしてダビデはアマレクびとが(うば)()ったものをみな()りもどした。またダビデはそのふたりの(つま)(すく)()した。 19そして(かれ)らに(ぞく)するものは、(ちい)さいものも(おお)きいものも、むすこも(むすめ)もぶんどり(もの)も、アマレクびとが(うば)()った(もの)(なに)をも(うしな)わないで、ダビデがみな()りもどした。 20ダビデはまたすべての(ひつじ)(うし)()った。人々(ひとびと)はこれらの家畜(かちく)(かれ)(まえ)()って()きながら、「これはダビデのぶんどり(もの)だ」と()った。
21そしてダビデが、あの(つか)れてダビデについて()くことができずに、ベソル(かわ)のほとりにとどまっていた二百(にん)(もの)のところへきた(とき)(かれ)らは()てきてダビデを(むか)え、またダビデと(とも)にいる(たみ)(むか)えた。ダビデは(たみ)(ちか)づいてその安否(あんぴ)()うた。 22そのときダビデと(とも)()った人々(ひとびと)のうちで、(わる)く、かつよこしまな(もの)どもはみな()った、「(かれ)らはわれわれと(とも)()かなかったのだから、われわれはその人々(ひとびと)にわれわれの()りもどしたぶんどり(もの)()(あた)えることはできない。ただおのおのにその妻子(さいし)(あた)えて、()れて()かせましょう」。 23しかしダビデは()った、「兄弟(きょうだい)たちよ、(しゅ)はわれわれを(まも)って、()めてきた軍隊(ぐんたい)をわれわれの()(わた)された。その(しゅ)(たま)わったものを、あなたがたはそのようにしてはならない。 24だれがこの(こと)について、あなたがたに()(したが)いますか。(たたか)いに(くだ)って()った(もの)()(まえ)と、荷物(にもつ)のかたわらにとどまっていた(もの)()(まえ)同様(どうよう)にしなければならない。(かれ)らはひとしく()(まえ)()けるべきである」。 25この()以来(いらい)、ダビデはこれをイスラエルの(さだ)めとし、おきてとして今日(こんにち)(およ)んでいる。
26ダビデはチクラグにきて、そのぶんどり(もの)一部(いちぶ)をユダの長老(ちょうろう)である友人(ゆうじん)たちにおくって()った、「これは(しゅ)(てき)から()ったぶんどり(もの)のうちからあなたがたにおくる(おく)(もの)である」。 27そのおくり(さき)は、ベテルにいる人々(ひとびと)、ネゲブのラモテにいる人々(ひとびと)、ヤッテルにいる人々(ひとびと)28アロエルにいる人々(ひとびと)、シフモテにいる人々(ひとびと)、エシテモアにいる人々(ひとびと)、ラカルにいる人々(ひとびと)29エラメルびとの町々(まちまち)にいる人々(ひとびと)、ケニびとの町々(まちまち)にいる人々(ひとびと)30ホルマにいる人々(ひとびと)、ボラシャンにいる人々(ひとびと)、アタクにいる人々(ひとびと)31ヘブロンにいる人々(ひとびと)、およびダビデとその従者(じゅうしゃ)たちが、さまよい(ある)いたすべての(ところ)にいる人々(ひとびと)であった。

第三十一章

1さてペリシテびとはイスラエルと(たたか)った。イスラエルの人々(ひとびと)はペリシテびとの(まえ)から()げ、(おお)くの(もの)(きず)ついてギルボア(やま)にたおれた。 2ペリシテびとはサウルとその()らに()()り、そしてペリシテびとはサウルの()ヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアを(ころ)した。 3(たたか)いは(はげ)しくサウルに(せま)り、(ゆみ)()(もの)どもがサウルを()つけて、(かれ)()たので、サウルは()(もの)たちにひどい(きず)()わされた。 4そこでサウルはその武器(ぶき)()(もの)()った、「つるぎを()き、それをもってわたしを()せ。さもないと、これらの()割礼(かつれい)(もの)どもがきて、わたしを()し、わたしをなぶり(ごろ)しにするであろう」。しかしその武器(ぶき)()(もの)は、ひじょうに(おそ)れて、それに(おう)じなかったので、サウルは、つるぎを()って、その(うえ)()した。 5武器(ぶき)()(もの)はサウルが()んだのを()て、自分(じぶん)もまたつるぎの(うえ)()して、(かれ)(とも)()んだ。 6こうしてサウルとその三(にん)()たち、およびサウルの武器(ぶき)()(もの)、ならびにその従者(じゅうしゃ)たちは(みな)、この()(とも)()んだ。 7イスラエルの人々(ひとびと)で、(たに)()こう(がわ)、およびヨルダンの()こう(がわ)にいる(もの)が、イスラエルの人々(ひとびと)()げるのを()、またサウルとその()たちの()んだのを()町々(まちまち)()てて()げたので、ペリシテびとはきてその(なか)()んだ。
8あくる()、ペリシテびとは(ころ)された(もの)から、はぎ()るためにきたが、サウルとその三(にん)()たちがギルボア(やま)にたおれているのを()つけた。 9(かれ)らはサウルの(くび)()り、そのよろいをはぎ()り、ペリシテびとの(ぜん)()(ひと)をつかわして、この()()らせを、その偶像(ぐうぞう)(たみ)とに(つた)えさせた。 10また(かれ)らは、そのよろいをアシタロテの神殿(しんでん)()き、(かれ)のからだをベテシャンの城壁(じょうへき)にくぎづけにした。 11ヤベシ・ギレアデの住民(じゅうみん)たちは、ペリシテびとがサウルにした(こと)()いて、 12勇士(ゆうし)たちはみな()ち、()もすがら()って、サウルのからだと、その()たちのからだをベテシャンの城壁(じょうへき)から()りおろし、ヤベシにきて、これをそこで()き、 13その(ほね)()って、ヤベシのぎょりゅうの()(した)(ほうむ)り、七日(なぬか)(あいだ)断食(だんじき)した。