伝道の書

第一章

1ダビデの()、エルサレムの(おう)である伝道者(でんどうしゃ)言葉(ことば)
2伝道者(でんどうしゃ)()う、
(くう)(くう)(くう)(くう)、いっさいは(くう)である。
3()(した)(ひと)(ろう)するすべての労苦(ろうく)は、
その()になんの(えき)があるか。
4()()り、()はきたる。
しかし()永遠(えいえん)(かわ)らない。
5()はいで、()(ぼっ)し、
その()(ところ)(いそ)()く。
6(かぜ)(みなみ)()き、また(てん)じて、(きた)()かい、
めぐりにめぐって、またそのめぐる(ところ)(かえ)る。
7(かわ)はみな、(うみ)(なが)()る、
しかし(うみ)()ちることがない。
(かわ)はその()てきた(ところ)にまた(かえ)って()く。
8すべての(こと)(ひと)をうみ(つか)れさせる、
(ひと)はこれを()いつくすことができない。
()()ることに()きることがなく、
(みみ)()くことに満足(まんぞく)することがない。
9(さき)にあったことは、また(のち)にもある、
(さき)になされた(こと)は、また(のち)にもなされる。
()(した)には(あたら)しいものはない。
10()よ、これは(あたら)しいものだ」と
()われるものがあるか、
それはわれわれの(まえ)にあった世々(よよ)に、
すでにあったものである。
11(まえ)(もの)のことは(おぼ)えられることがない、
また、きたるべき(のち)(もの)のことも、
(のち)(おこ)(もの)はこれを(おぼ)えることがない。
12伝道者(でんどうしゃ)であるわたしはエルサレムで、イスラエルの(おう)であった。 13わたしは(こころ)をつくし、知恵(ちえ)(もち)いて、(あめ)(した)(おこな)われるすべてのことを(たず)ね、また調(しら)べた。これは(かみ)が、(ひと)()らに(あた)えて、ほねおらせられる(くる)しい仕事(しごと)である。 14わたしは()(した)(ひと)(おこな)うすべてのわざを()たが、みな(くう)であって(かぜ)(とら)えるようである。
15(まが)ったものは、まっすぐにすることができない、
()けたものは(かぞ)えることができない。
16わたしは(こころ)(なか)(かた)って()った、「わたしは、わたしより(さき)にエルサレムを(おさ)めたすべての(もの)にまさって、(おお)くの知恵(ちえ)()た。わたしの(こころ)知恵(ちえ)知識(ちしき)(おお)()た」。 17わたしは(こころ)をつくして知恵(ちえ)()り、また狂気(きょうき)愚痴(ぐち)とを()ろうとしたが、これもまた(かぜ)(とら)えるようなものであると(さと)った。
18それは知恵(ちえ)(おお)ければ(なや)みが(おお)く、
知識(ちしき)()(もの)(うれ)いを()すからである。

第二章

1わたしは自分(じぶん)(こころ)()った、「さあ、快楽(かいらく)をもって、おまえを(こころ)みよう。おまえは愉快(ゆかい)()ごすがよい」と。しかし、これもまた(くう)であった。 2わたしは(わら)いについて()った、「これは狂気(きょうき)である」と。また快楽(かいらく)について()った、「これは(なに)をするのか」と。 3わたしの(こころ)知恵(ちえ)をもってわたしを(みちび)いているが、わたしは(さけ)をもって自分(じぶん)肉体(にくたい)元気(げんき)づけようと(こころ)みた。また、(ひと)()(あめ)(した)でその(みじか)一生(いっしょう)(あいだ)、どんな(こと)をしたら()いかを、()きわめるまでは、(おろ)かな(こと)をしようと(こころ)みた。 4わたしは(おお)きな事業(じぎょう)をした。わたしは自分(じぶん)のために(いえ)()て、ぶどう(ばたけ)(もう)け、 5(その)(にわ)をつくり、またすべて()のなる()をそこに()え、 6(いけ)をつくって、()のおい(しげ)(はやし)に、そこから(みず)(そそ)がせた。 7わたしは男女(だんじょ)奴隷(どれい)()った。またわたしの(いえ)(うま)れた奴隷(どれい)()っていた。わたしはまた、わたしより(さき)にエルサレムにいただれよりも(おお)くの(うし)(ひつじ)財産(ざいさん)()っていた。 8わたしはまた(ぎん)(きん)(あつ)め、(おう)たちと国々(くにぐに)財宝(ざいほう)(あつ)めた。またわたしは(うた)うたう(おとこ)(うた)うたう(おんな)()た。また(ひと)()(たの)しみとするそばめを(おお)()た。
9こうして、わたしは(おお)いなる(もの)となり、わたしより(さき)にエルサレムにいたすべての(もの)よりも、(おお)いなる(もの)となった。わたしの知恵(ちえ)もまた、わたしを(はな)れなかった。 10なんでもわたしの()(この)むものは遠慮(えんりょ)せず、わたしの(こころ)(よろこ)ぶものは(こば)まなかった。わたしの(こころ)がわたしのすべての労苦(ろうく)によって、快楽(かいらく)()たからである。そしてこれはわたしのすべての労苦(ろうく)によって()(むく)いであった。 11そこで、わたしはわが()のなしたすべての(こと)、およびそれをなすに(よう)した労苦(ろうく)(かえり)みたとき、()よ、(みな)(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようなものであった。()(した)には(えき)となるものはないのである。
12わたしはまた、()をめぐらして、知恵(ちえ)と、狂気(きょうき)と、愚痴(ぐち)とを()た。そもそも、(おう)(のち)()(ひと)(なに)をなし()ようか。すでに(かれ)がなした(こと)にすぎないのだ。 13(ひかり)(くら)きにまさるように、知恵(ちえ)愚痴(ぐち)にまさるのを、わたしは()た。 14知者(ちしゃ)()は、その(あたま)にある。しかし愚者(ぐしゃ)(くら)やみを(あゆ)む。けれどもわたしはなお同一(どういつ)運命(うんめい)(かれ)らのすべてに(のぞ)むことを()っている。 15わたしは(こころ)()った、「愚者(ぐしゃ)(のぞ)(こと)はわたしにも(のぞ)むのだ。それでどうしてわたしは(かしこ)いことがあろう」。わたしはまた(こころ)()った、「これもまた(くう)である」と。 16そもそも、知者(ちしゃ)愚者(ぐしゃ)同様(どうよう)(なが)(おぼ)えられるものではない。きたるべき()には(みな)(わす)れられてしまうのである。知者(ちしゃ)愚者(ぐしゃ)(おな)じように()ぬのは、どうしたことであろう。 17そこで、わたしは()きることをいとった。()(した)(おこな)われるわざは、わたしに()しく()えたからである。(みな)(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようである。
18わたしは()(した)(ろう)したすべての労苦(ろうく)(にく)んだ。わたしの(のち)()(ひと)にこれを(のこ)さなければならないからである。 19そして、その(ひと)知者(ちしゃ)であるか、または愚者(ぐしゃ)であるかは、だれが()()よう。そうであるのに、その(ひと)が、()(した)でわたしが(ろう)し、かつ知恵(ちえ)(はたら)かしてなしたすべての労苦(ろうく)をつかさどることになるのだ。これもまた(くう)である。 20それでわたしはふり(かえ)ってみて、()(した)でわたしが(ろう)したすべての労苦(ろうく)について、(のぞ)みを(うしな)った。 21(いま)ここに(ひと)があって、知恵(ちえ)知識(ちしき)才能(さいのう)をもって(ろう)しても、これがために(ろう)しない(ひと)に、すべてを(のこ)して、その所有(しょゆう)とさせなければならないのだ。これもまた(くう)であって、(おお)いに(わる)い。 22そもそも、(ひと)()(した)(ろう)するすべての労苦(ろうく)と、その(こころ)づかいによってなんの()るところがあるか。 23そのすべての()はただ(うれ)いのみであって、そのわざは(くる)しく、その(こころ)()()(やす)まることがない。これもまた(くう)である。
24(ひと)()()みし、その労苦(ろうく)によって()たもので(こころ)(たの)しませるより()(こと)はない。これもまた(かみ)()から()ることを、わたしは()た。 25だれが(かみ)(はな)れて、()い、かつ(たの)しむことのできる(もの)があろう。 26(かみ)は、その(こころ)にかなう(ひと)に、知恵(ちえ)知識(ちしき)(よろこ)びとをくださる。しかし(つみ)びとには仕事(しごと)(あた)えて(あつ)めることと、()むことをさせられる。これは(かみ)(こころ)にかなう(もの)にそれを(たま)わるためである。これもまた(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようである。

第三章

1(あめ)(した)のすべての(こと)には季節(きせつ)があり、
すべてのわざには(とき)がある。
2(うま)るるに(とき)があり、()ぬるに(とき)があり、
()えるに(とき)があり、()えたものを()くに(とき)があり、
3(ころ)すに(とき)があり、いやすに(とき)があり、
こわすに(とき)があり、()てるに(とき)があり、
4()くに(とき)があり、(わら)うに(とき)があり、
(かな)しむに(とき)があり、(おど)るに(とき)があり、
5(いし)()げるに(とき)があり、(いし)(あつ)めるに(とき)があり、
()くに(とき)があり、()くことをやめるに(とき)があり、
6(さが)すに(とき)があり、(うしな)うに(とき)があり、
(たも)つに(とき)があり、()てるに(とき)があり、
7()くに(とき)があり、()うに(とき)があり、
(だま)るに(とき)があり、(かた)るに(とき)があり、
8(あい)するに(とき)があり、(にく)むに(とき)があり、
(たたか)うに(とき)があり、(やわ)らぐに(とき)がある。
9(はたら)(もの)はその(ろう)することにより、なんの(えき)()るか。
10わたしは(かみ)(ひと)()らに(あた)えて、ほねおらせられる仕事(しごと)()た。 11(かみ)のなされることは(みな)その(とき)にかなって(うつく)しい。(かみ)はまた(ひと)(こころ)永遠(えいえん)(おも)(おも)いを(さづ)けられた。それでもなお、(ひと)(かみ)のなされるわざを(はじ)めから(おわ)りまで()きわめることはできない。 12わたしは()っている。(ひと)にはその()きながらえている(あいだ)(たの)しく愉快(ゆかい)()ごすよりほかに()(こと)はない。 13またすべての(ひと)()()みし、そのすべての労苦(ろうく)によって(たの)しみを()ることは(かみ)賜物(たまもの)である。 14わたしは()っている。すべて(かみ)がなさる(こと)永遠(えいえん)(かわ)ることがなく、これに(くわ)えることも、これから()ることもできない。(かみ)がこのようにされるのは、人々(ひとびと)(かみ)(まえ)(おそ)れをもつようになるためである。 15(いま)あるものは、すでにあったものである。(のち)にあるものも、すでにあったものである。(かみ)()いやられたものを(たず)(もと)められる。
16わたしはまた、()(した)()たが、さばきを(おこな)(ところ)にも不正(ふせい)があり、公義(こうぎ)(おこな)(ところ)にも不正(ふせい)がある。 17わたしは(こころ)()った、「(かみ)(ただ)しい(もの)(わる)(もの)とをさばかれる。(かみ)はすべての(こと)と、すべてのわざに、(とき)(さだ)められたからである」と。 18わたしはまた、(ひと)()らについて(こころ)()った、「(かみ)(かれ)らをためして、(かれ)らに自分(じぶん)たちが(けもの)にすぎないことを(さと)らせられるのである」と。 19(ひと)()らに(のぞ)むところは(けもの)にも(のぞ)むからである。すなわち一様(いちよう)(かれ)らに(のぞ)み、これの()ぬように、(かれ)()ぬのである。(かれ)らはみな同様(どうよう)(いき)をもっている。(ひと)(けもの)にまさるところがない。すべてのものは(くう)だからである。 20みな(ひと)(ところ)()く。(みな)ちりから()て、(みな)ちりに(かえ)る。 21だれが()るか、(ひと)()らの(れい)(うえ)にのぼり、(けもの)(れい)()にくだるかを。 22それで、わたしは()た、(ひと)はその(はたら)きによって(たの)しむにこした(こと)はない。これが(かれ)(ぶん)だからである。だれが(かれ)をつれていって、その(のち)の、どうなるかを()させることができようか。

第四章

1わたしはまた、()(した)(おこな)われるすべてのしえたげを()た。()よ、しえたげられる(もの)(なみだ)を。(かれ)らを(なぐさ)める(もの)はない。しえたげる(もの)()には権力(けんりょく)がある。しかし(かれ)らを(なぐさ)める(もの)はいない。 2それで、わたしはなお()きている生存者(せいぞんしゃ)よりも、すでに()んだ死者(ししゃ)を、さいわいな(もの)(おも)った。 3しかし、この両者(りょうしゃ)よりもさいわいなのは、まだ(うま)れない(もの)で、()(した)(おこな)われる()しきわざを()ない(もの)である。
4また、わたしはすべての労苦(ろうく)と、すべての(たく)みなわざを()たが、これは(ひと)(たがい)にねたみあってなすものである。これもまた(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようである。
5(おろ)かなる(もの)()をつかねて、自分(じぶん)(にく)()う。
6片手(かたて)(もの)()たして平穏(へいおん)であるのは、両手(りょうて)(もの)()たして労苦(ろうく)し、(かぜ)(とら)えるのにまさる。
7わたしはまた、()(した)(くう)なる(こと)のあるのを()た。 8ここに(ひと)がある。ひとりであって、(なか)()もなく、()もなく、兄弟(きょうだい)もない。それでも(かれ)労苦(ろうく)(きわ)まりなく、その()(とみ)()くことがない。また(かれ)()わない、「わたしはだれのために(ろう)するのか、どうして自分(じぶん)(たの)しませないのか」と。これもまた(くう)であって、(くる)しいわざである。
9ふたりはひとりにまさる。(かれ)らはその労苦(ろうく)によって()(むく)いを()るからである。 10すなわち(かれ)らが(たお)れる(とき)には、そのひとりがその(とも)(たす)(おこ)す。しかしひとりであって、その(たお)れる(とき)、これを(たす)(おこ)(もの)のない(もの)はわざわいである。 11またふたりが一緒(いっしょ)()れば(あたた)かである。ひとりだけで、どうして(あたた)かになり()ようか。 12(ひと)がもし、そのひとりを()()ったなら、ふたりで、それに(あた)るであろう。三つよりの(つな)はたやすくは()れない。
13(まず)しくて(かしこ)いわらべは、()いて(おろ)かで、もはや、いさめをいれることを()らない(おう)にまさる。 14たとい、その(おう)獄屋(ごくや)から()て、王位(おうい)についた(もの)であっても、また自分(じぶん)(くに)(まず)しく(うま)れて王位(おうい)についた(もの)であっても、そうである。 15わたしは()(した)(あゆ)むすべての(たみ)が、かのわらべのように(おう)(かわ)って()つのを()た。 16すべての(たみ)()てしがない。(かれ)はそのすべての(たみ)(みちび)いた。しかし(のち)()(もの)(かれ)(よろこ)ばない。たしかに、これもまた(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようである。

第五章

1(かみ)(みや)()(とき)には、その(あし)(つつし)むがよい。(ちか)よって()くのは(おろ)かな(もの)犠牲(ぎせい)をささげるのにまさる。(かれ)らは(あく)(おこな)っていることを()らないからである。 2(かみ)(まえ)軽々(かるがる)しく(くち)をひらき、また言葉(ことば)()そうと、(こころ)にあせってはならない。(かみ)(てん)にいまし、あなたは()におるからである。それゆえ、あなたは言葉(ことば)(すく)なくせよ。
3(ゆめ)仕事(しごと)(おお)いことによってきたり、(おろ)かなる(もの)(こえ)言葉(ことば)(おお)いことによって()られる。
4あなたは(かみ)(ちか)いをなすとき、それを(はた)すことを()ばしてはならない。(かみ)(おろ)かな(もの)(よろこ)ばれないからである。あなたの(ちか)ったことを(かなら)(はた)せ。 5あなたが(ちか)いをして、それを(はた)さないよりは、むしろ(ちか)いをしないほうがよい。 6あなたの(くち)が、あなたに(つみ)(おか)させないようにせよ。また使者(ししゃ)(まえ)にそれは(あやま)りであったと()ってはならない。どうして、(かみ)があなたの言葉(ことば)(いか)り、あなたの()のわざを(ほろ)ぼしてよかろうか。
7(ゆめ)(おお)ければ(くう)なる言葉(ことば)(おお)い。しかし、あなたは(かみ)(おそ)れよ。
8あなたは(くに)のうちに(まず)しい(もの)をしえたげ、公道(こうどう)正義(せいぎ)()げることのあるのを()ても、その(こと)(あや)しんではならない。それは(くらい)(たか)(ひと)よりも、さらに(たか)(もの)があって、その(ひと)をうかがうからである。そしてそれらよりもなお(たか)(もの)がある。 9しかし、(よう)するに耕作(こうさく)した田畑(たはた)をもつ(くに)には(おう)利益(りえき)である。
10金銭(きんせん)(この)(もの)金銭(きんせん)をもって満足(まんぞく)しない。(とみ)(この)(もの)(とみ)()満足(まんぞく)しない。これもまた(くう)である。
11財産(ざいさん)()せば、これを()(もの)()す。その()(ぬし)()にそれを()るだけで、なんの(えき)があるか。
12(はたら)(もの)()べることが(すく)なくても(おお)くても、(こころよ)(ねむ)る。しかし()()りるほどの(とみ)は、(かれ)(ねむ)ることをゆるさない。
13わたしは()(した)(かな)しむべき(あく)のあるのを()た。すなわち、(とみ)はこれをたくわえるその()(ぬし)(がい)(およ)ぼすことである。 14またその(とみ)不幸(ふこう)出来事(できごと)によってうせ()くことである。それで、その(ひと)()をもうけても、(かれ)()には(なに)(のこ)らない。 15(かれ)(はは)(たい)から()てきたように、すなわち(はだか)()てきたように(かえ)って()く。(かれ)はその労苦(ろうく)によって()(なに)(もの)をもその()(たずさ)()くことができない。 16(ひと)(まった)くその()たように、また()って()かなければならない。これもまた(かな)しむべき(あく)である。(かぜ)のために(ろう)する(もの)になんの(えき)があるか。 17(ひと)一生(いっしょう)(くら)やみと、(かな)しみと、(おお)くの(なや)みと、(やまい)と、(いきどお)りの(なか)にある。
18()よ、わたしが()たところの(ぜん)かつ()なる(こと)は、(かみ)から(たま)わった(みじか)一生(いっしょう)(あいだ)()い、()み、かつ()(した)(ろう)するすべての労苦(ろうく)によって、(たの)しみを()(こと)である。これがその(ぶん)だからである。 19また(かみ)はすべての(ひと)(とみ)(たから)と、それを(たの)しむ(ちから)(あた)え、またその(ぶん)()らせ、その労苦(ろうく)によって(たの)しみを()させられる。これが(かみ)賜物(たまもの)である。 20このような(ひと)自分(じぶん)()きる()のことを(おお)(おも)わない。(かみ)(よろこ)びをもって(かれ)(こころ)()たされるからである。

第六章

1わたしは()(した)に一つの(あく)のあるのを()た。これは人々(ひとびと)(うえ)(おも)い。 2すなわち(かみ)(とみ)と、財産(ざいさん)と、(ほまれ)とを(ひと)(あた)えて、その(こころ)(した)うものを、一つも()けることのないようにされる。しかし(かみ)は、その(ひと)にこれを()つことを(ゆる)されないで、他人(たにん)がこれを()つようになる。これは(くう)である。()しき(やまい)である。 3たとい(ひと)は百(にん)()をもうけ、また(いのち)(なが)く、そのよわいの()(おお)くても、その(こころ)幸福(こうふく)満足(まんぞく)せず、また(ほうむ)られることがなければ、わたしは()う、流産(りゅうざん)()はその(ひと)にまさると。 4これはむなしく()て、(くら)やみの(なか)()って()き、その()(くら)やみにおおわれる。 5またこれは()()ず、(もの)()らない。けれどもこれは(かれ)よりも(やす)らかである。 6たとい(かれ)は千(ねん)(ばい)するほど()きても幸福(こうふく)()ない。みな(ひと)(ところ)()くのではないか。
7(ひと)労苦(ろうく)(みな)、その(くち)のためである。しかしその食欲(しょくよく)()たされない。 8(かしこ)(もの)(おろ)かな(もの)になんのまさるところがあるか。また()ける(もの)(まえ)(あゆ)むことを()(まず)しい(もの)もなんのまさるところがあるか。 9()()(こと)欲望(よくぼう)のさまよい(ある)くにまさる。これもまた(くう)であって、(かぜ)(とら)えるようなものである。
10(いま)あるものは、すでにその()がつけられた。そして(ひと)はいかなる(もの)であるかは()られた。それで(ひと)自分(じぶん)よりも力強(ちからづよ)(もの)(あらそ)うことはできない。 11言葉(ことば)(おお)ければむなしい(こと)(おお)い。(ひと)になんの(えき)があるか。 12(ひと)はその(みじか)く、むなしい(いのち)()(かげ)のように(おく)るのに、(なに)(ひと)のために(ぜん)であるかを()ることができよう。だれがその()(のち)に、()(した)(なに)があるであろうかを(ひと)()げることができるか。

第七章

1()()()(あぶら)にまさり、
()ぬる()(うま)るる()にまさる。
2(かな)しみの(いえ)にはいるのは、
宴会(えんかい)(いえ)にはいるのにまさる。
()はすべての(ひと)(おわ)りだからである。
()きている(もの)は、これを(こころ)にとめる。
3(かな)しみは(わら)いにまさる。
(かお)(うれ)いをもつことによって、
(こころ)()くなるからである。
4(かしこ)(もの)(こころ)(かな)しみの(いえ)にあり、
(おろ)かな(もの)(こころ)(たの)しみの(いえ)にある。
5(かしこ)(もの)(いまし)めを()くのは、
(おろ)かな(もの)(うた)()くのにまさる。
6(おろ)かな(もの)(わら)いは
かまの(した)()えるいばらの(おと)のようである。
これもまた(くう)である。
7たしかに、しえたげは(かしこ)(ひと)(おろ)かにし、
まいないは(ひと)(こころ)をそこなう。
8(こと)(おわ)りはその(はじ)めよりも()い。
()(しの)(こころ)は、おごり(たか)ぶる(こころ)にまさる。
9()をせきたてて(いか)るな。
(いか)りは(おろ)かな(もの)(むね)宿(やど)るからである。
10(むかし)(いま)よりもよかったのはなぜか」と()うな。
あなたがこれを()うのは知恵(ちえ)から()るのではない。
11知恵(ちえ)財産(ざいさん)(ともな)うのは()い。
それは()()(もの)どもに(えき)がある。
12知恵(ちえ)()(まも)るのは、金銭(きんせん)()(まも)るようである。
しかし、知恵(ちえ)はこれを()(もの)生命(せいめい)(たも)たせる。
これが知識(ちしき)のすぐれた(ところ)である。
13(かみ)のみわざを(かんが)えみよ。
(かみ)()げられたものを、
だれがまっすぐにすることができるか。
14順境(じゅんきょう)()には(たの)しめ、逆境(ぎゃっきょう)()には(かんが)えよ。(かみ)(ひと)将来(しょうらい)どういう(こと)があるかを、()らせないために、(かれ)とこれとを(ひと)しく(つく)られたのである。
15わたしはこのむなしい人生(じんせい)において、もろもろの(こと)()た。そこには義人(ぎじん)がその()によって(ほろ)びることがあり、悪人(あくにん)がその(あく)によって長生(ながい)きすることがある。 16あなたは()()ぎてはならない。また(かしこ)きに()ぎてはならない。あなたはどうして自分(じぶん)(ほろ)ぼしてよかろうか。 17(あく)()ぎてはならない。また(おろ)かであってはならない。あなたはどうして、自分(じぶん)(とき)のこないのに、()んでよかろうか。 18あなたがこれを()るのはよい、また(かれ)から()()いてはならない。(かみ)をかしこむ(もの)は、このすべてからのがれ()るのである。
19知恵(ちえ)知者(ちしゃ)(つよ)くするのは、十(にん)のつかさが(まち)におるのにまさる。
20(ぜん)(おこな)い、(つみ)(おか)さない(ただ)しい(ひと)()にいない。
21(ひと)(かた)るすべての(こと)(こころ)をとめてはならない。これはあなたが、自分(じぶん)のしもべのあなたをのろう言葉(ことば)()かないためである。 22あなたもまた、しばしば他人(たにん)をのろったのを自分(じぶん)(こころ)()っているからである。
23わたしは知恵(ちえ)をもってこのすべての(こと)(こころ)みて、「わたしは知者(ちしゃ)となろう」と()ったが、(とお)(およ)ばなかった。 24物事(ものごと)()(とお)く、また、はなはだ(ふか)い。だれがこれを()いだすことができよう。 25わたしは、(こころ)(てん)じて、(もの)()り、(こと)(さぐ)り、知恵(ちえ)道理(どうり)(もと)めようとし、また(あく)(おろ)かなこと、愚痴(ぐち)狂気(きょうき)であることを()ろうとした。 26わたしは、その(こころ)が、わなと(あみ)のような(おんな)、その()が、かせのような(おんな)は、()よりも(にが)(もの)であることを()いだした。(かみ)(よろこ)ばす(もの)彼女(かのじょ)からのがれる。しかし(つみ)びとは彼女(かのじょ)(とら)えられる。 27伝道者(でんどうしゃ)()う、()よ、その(かず)()ろうとして、いちいち(かぞ)えて、わたしが()たものはこれである。 28わたしはなおこれを(もと)めたけれども、()なかった。わたしは千(にん)のうちにひとりの男子(だんし)()たけれども、そのすべてのうちに、ひとりの女子(じょし)をも()なかった。 29()よ、わたしが()(こと)は、ただこれだけである。すなわち、(かみ)(ひと)(ただ)しい(もの)(つく)られたけれども、(ひと)(おお)くの計略(けいりゃく)(かんが)()した(こと)である。

第八章

1だれが知者(ちしゃ)のようになり()よう。
だれが(こと)意義(いぎ)()()よう。
(ひと)知恵(ちえ)はその(ひと)(かお)(かがや)かせ、
またその粗暴(そぼう)(かお)()える。
2(おう)(めい)(まも)れ。すでに(かみ)をさして(ちか)ったことゆえ、(おどろ)くな。 3(こと)(わる)(とき)は、(おう)(まえ)()れ、ためらうな。(かれ)はすべてその(この)むところをなすからである。 4(おう)言葉(ことば)決定的(けっていてき)である。だれが(かれ)に「あなたは(なに)をするのか」と()うことができようか。 5命令(めいれい)(まも)(もの)(わざわい)にあわない。知者(ちしゃ)(こころ)(とき)方法(ほうほう)をわきまえている。 6(ひと)(あく)(かれ)(うえ)(おも)くても、すべてのわざには(とき)方法(ほうほう)がある。 7(のち)(おこ)(こと)()(もの)はない。どんな(こと)(おこ)るかをだれが(かれ)()()よう。 8(かぜ)をとどめる(ちから)をもつ(ひと)はない。また()()をつかさどるものはない。(たたか)いには免除(めんじょ)はない。また(あく)はこれを(おこな)(もの)(すく)うことができない。 9わたしはこのすべての(こと)()た。また()(した)(おこな)われるもろもろのわざに(こころ)(もち)いた。(とき)としてはこの(ひと)が、かの(ひと)(おさ)めて、これに(がい)をこうむらせることがある。
10またわたしは悪人(あくにん)(ほうむ)られるのを()た。(かれ)らはいつも聖所(せいじょ)出入(でい)りし、それを(おこな)ったその(まち)でほめられた。これもまた(くう)である。 11()しきわざに(たい)する判決(はんけつ)がすみやかに(おこな)われないために、(ひと)()らの(こころ)はもっぱら(あく)(おこな)うことに(かたむ)いている。 12(つみ)びとで百()(あく)をなして、なお長生(ながい)きするものがあるけれども、(かみ)をかしこみ、み(まえ)(おそ)れをいだく(もの)には幸福(こうふく)があることを、わたしは()っている。 13しかし悪人(あくにん)には幸福(こうふく)がない。またその(いのち)(かげ)のようであって(なが)くは(つづ)かない。(かれ)(かみ)(まえ)(おそ)れをいだかないからである。
14()(うえ)(くう)(こと)(おこな)われている。すなわち、義人(ぎじん)であって、悪人(あくにん)(のぞ)むべき(こと)が、その()(のぞ)(もの)がある。また、悪人(あくにん)であって、義人(ぎじん)(のぞ)むべき(こと)が、その()(のぞ)(もの)がある。わたしは()った、これもまた(くう)であると。 15そこで、わたしは歓楽(かんらく)をたたえる。それは()(した)では、(ひと)にとって、()い、()み、(たの)しむよりほかに()(こと)はないからである。これこそは()(した)で、(かみ)(たま)わった(いのち)()(あいだ)、その勤労(きんろう)によってその()(ともな)うものである。
16わたしは(こころ)をつくして知恵(ちえ)()ろうとし、また地上(ちじょう)(おこな)われるわざを(ひる)(よる)(ねむ)らずに(きわ)めようとしたとき、 17わたしは(かみ)のもろもろのわざを()たが、(ひと)()(した)(おこな)われるわざを(きわ)めることはできない。(ひと)はこれを(たず)ねようと(ろう)しても、これを(きわ)めることはできない。また、たとい知者(ちしゃ)があって、これを()ろうと(おも)っても、これを(きわ)めることはできないのである。

第九章

1わたしはこのすべての(こと)(こころ)(もち)いて、このすべての(こと)(あき)らかにしようとした。すなわち(ただ)しい(もの)(かしこ)(もの)、および(かれ)らのわざが、(かみ)()にあることを(あき)らかにしようとした。(あい)するか(にく)むかは(ひと)にはわからない。(かれ)らの(まえ)にあるすべてのことは(くう)である。 2すべての(ひと)(のぞ)むところは、みな同様(どうよう)である。(ただ)しい(もの)にも(ただ)しくない(もの)にも、善良(ぜんりょう)(もの)にも(わる)(もの)にも、(きよ)(もの)にも(けが)れた(もの)にも、犠牲(ぎせい)をささげる(もの)にも、犠牲(ぎせい)をささげない(もの)にも、その(のぞ)むところは同様(どうよう)である。善良(ぜんりょう)(ひと)(つみ)びとも(こと)なることはない。(ちか)いをなす(もの)も、(ちか)いをなすことを(おそ)れる(もの)(こと)なることはない。 3すべての(ひと)同一(どういつ)(のぞ)むのは、()(した)(おこな)われるすべての(こと)のうちの悪事(あくじ)である。また(ひと)(こころ)(あく)()ち、その()きている(あいだ)は、狂気(きょうき)がその(こころ)のうちにあり、その(のち)死者(ししゃ)のもとに()くのである。 4すべて()ける(もの)(つら)なる(もの)には(のぞ)みがある。()ける(いぬ)は、()せるししにまさるからである。 5()きている(もの)()ぬべき(こと)()っている。しかし死者(ししゃ)何事(なにごと)をも()らない、また、もはや(むく)いを()けることもない。その記憶(きおく)(のこ)(こと)がらさえも、ついに(わす)れられる。 6その(あい)も、(にく)しみも、ねたみも、すでに()えうせて、(かれ)らはもはや()(した)(おこな)われるすべての(こと)に、永久(えいきゅう)にかかわることがない。
7あなたは()って、(よろこ)びをもってあなたのパンを()べ、(たの)しい(こころ)をもってあなたの(さけ)()むがよい。(かみ)はすでに、あなたのわざをよみせられたからである。
8あなたの(ころも)(つね)(しろ)くせよ。あなたの(あたま)(あぶら)()やすな。
9()(した)(かみ)から(たま)わったあなたの(くう)なる(いのち)()(あいだ)、あなたはその(あい)する(つま)(とも)(たの)しく(くら)すがよい。これはあなたが()にあってうける(ぶん)、あなたが()(した)(ろう)する労苦(ろうく)によって()るものだからである。 10すべてあなたの()のなしうる(こと)は、(ちから)をつくしてなせ。あなたの()陰府(よみ)には、わざも、計略(けいりゃく)も、知識(ちしき)も、知恵(ちえ)もないからである。
11わたしはまた()(した)()たが、(かなら)ずしも(はや)(もの)競走(きょうそう)()つのではなく、(つよ)(もの)(たたか)いに()つのでもない。また(かしこ)(もの)がパンを()るのでもなく、さとき(もの)(とみ)()るのでもない。また知識(ちしき)ある(もの)(めぐ)みを()るのでもない。しかし(とき)災難(さいなん)はすべての(ひと)(のぞ)む。 12(ひと)はその(とき)()らない。(うお)がわざわいの(あみ)にかかり、(とり)がわなにかかるように、(ひと)()らもわざわいの(とき)突然(とつぜん)(かれ)らに(のぞ)(とき)、それにかかるのである。
13またわたしは()(した)にこのような知恵(ちえ)(れい)()た。これはわたしにとって(おお)きな(こと)である。 14ここに一つの(ちい)さい(まち)があって、そこに()(ひと)(すく)なかったが、(おお)いなる(おう)()めて()て、これを(かこ)み、これに()かって(おお)きな雲梯(うんてい)()てた。 15しかし、(まち)のうちにひとりの(まず)しい知恵(ちえ)のある(ひと)がいて、その知恵(ちえ)をもって(まち)(すく)った。ところがだれひとり、その(まず)しい(ひと)記憶(きおく)する(もの)がなかった。 16そこでわたしは()う、「知恵(ちえ)(ちから)にまさる。しかしかの(まず)しい(ひと)知恵(ちえ)(かろ)んぜられ、その言葉(ことば)()かれなかった」。
17(しず)かに()かれる知者(ちしゃ)言葉(ことば)は、(おろ)かな(もの)(なか)のつかさたる(もの)(さけ)びにまさる。 18知恵(ちえ)(たたか)いの武器(ぶき)にまさる。しかし、ひとりの(つみ)びとは(おお)くの()きわざを(ほろ)ぼす。

第十章

1()んだはえは、香料(こうりょう)(つく)(もの)
あぶらを(くさ)くし、
(すこ)しの愚痴(ぐち)知恵(ちえ)(ほまれ)よりも(おも)い。
2知者(ちしゃ)(こころ)(かれ)(みぎ)()けさせ、
愚者(ぐしゃ)(こころ)(ひだり)()けさせる。
3愚者(ぐしゃ)(みち)()(とき)思慮(しりょ)()りない、
自分(じぶん)(おろ)かなことをすべての(ひと)()げる。
4つかさたる(もの)があなたに()かって立腹(りっぷく)しても、
あなたの(ところ)(はな)れてはならない。
温順(おんじゅん)(おお)いなるとがを(やわ)らげるからである。
5わたしは()(した)に一つの(あく)のあるのを()た。それはつかさたる(もの)から()るあやまちに()ている。 6すなわち(おろ)かなる(もの)(たか)地位(ちい)()かれ、()める(もの)(いや)しい(ところ)()している。 7わたしはしもべたる(もの)(うま)()り、(くん)たる(もの)奴隷(どれい)のように徒歩(とほ)であるくのを()た。
8(あな)()(もの)はみずからこれに(おちい)り、
(いし)がきをこわす(もの)は、へびにかまれる。
9(いし)()()(もの)はそれがために(きず)をうけ、
()()(もの)はそれがために危険(きけん)にさらされる。
10(てつ)(にぶ)くなったとき、(ひと)がその()をみがかなければ、
(ちから)(おお)くこれに(もち)いねばならない。
しかし、知恵(ちえ)(ひと)(たす)けてなし()げさせる。
11へびがもし呪文(じゅもん)をかけられる(まえ)に、かみつけば、
へび使(つかい)(えき)がない。
12知者(ちしゃ)(くち)言葉(ことば)(めぐ)みがある、
しかし愚者(ぐしゃ)のくちびるはその()(ほろ)ぼす。
13愚者(ぐしゃ)(くち)言葉(ことば)(はじ)めは愚痴(ぐち)である、
またその言葉(ことば)(おわ)りは(わる)狂気(きょうき)である。
14愚者(ぐしゃ)言葉(ことば)(おお)くする、
しかし(ひと)はだれも(のち)(おこ)ることを()らない。
だれがその()(のち)(おこ)(こと)
()げることができようか。
15愚者(ぐしゃ)労苦(ろうく)はその()(つか)れさせる、
(かれ)(まち)にはいる(みち)をさえ()らない。
16あなたの(おう)はわらべであって、
その(きみ)たちが(あさ)から、ごちそうを()べる(くに)よ、
あなたはわざわいだ。
17あなたの(おう)自主(じしゅ)()であって、
その(きみ)たちが()うためでなく、(ちから)()るために、
適当(てきとう)(とき)にごちそうを()べる(くに)よ、
あなたはさいわいだ。
18怠惰(たいだ)によって屋根(やね)()ち、
無精(ぶしょう)によって(いえ)()る。
19食事(しょくじ)(わら)いのためになされ、
(さけ)(いのち)(たの)しませる。
金銭(きんせん)はすべての(こと)(おう)じる。
20あなたは(こころ)のうちでも(おう)をのろってはならない、
また寝室(しんしつ)でも()める(もの)をのろってはならない。
(そら)(とり)はあなたの(こえ)(つた)え、
(つばさ)のあるものは(こと)()げるからである。

第十一章

1あなたのパンを(みず)(うえ)()げよ、
(おお)くの()(のち)、あなたはそれを()るからである。
2あなたは一つの(ぶん)を七つまた八つに()けよ、
あなたは、どんな(わざわい)()(おこ)るかを()らないからだ。
3(くも)がもし(あめ)()ちるならば、()にそれを(そそ)ぐ、
また()がもし(みなみ)(きた)(たお)れるならば、
その()(たお)れた(ところ)(よこ)たわる。
4(かぜ)警戒(けいかい)する(もの)(たね)をまかない、
(くも)観測(かんそく)する(もの)()ることをしない。
5あなたは、()ごもった(おんな)(たい)(なか)で、どうして(れい)(ほね)にはいるかを()らない。そのようにあなたは、すべての(こと)をなされる(かみ)のわざを()らない。
6(あさ)のうちに(たね)をまけ、(ゆう)まで()(やす)めてはならない。(みの)るのは、これであるか、あれであるか、あるいは二つともに()いのであるか、あなたは()らないからである。
7(ひかり)(こころよ)いものである。()太陽(たいよう)()るのは(たの)しいことである。
8(ひと)(おお)くの(ねん)()きながらえ、そのすべてにおいて自分(じぶん)(たの)しませても、(くら)()(おお)くあるべきことを(わす)れてはならない。すべて、きたらんとする(こと)(みな)(くう)である。
9(わか)(もの)よ、あなたの(わか)(とき)(たの)しめ。あなたの(わか)()にあなたの(こころ)(よろこ)ばせよ。あなたの(こころ)(みち)(あゆ)み、あなたの()()るところに(あゆ)め。ただし、そのすべての(こと)のために、(かみ)はあなたをさばかれることを()れ。
10あなたの(こころ)から(なや)みを()り、あなたのからだから(いた)みを(のぞ)け。(わか)(とき)(さか)んな(とき)はともに(くう)だからである。

第十二章

1あなたの(わか)()に、あなたの(つく)(ぬし)(おぼ)えよ。()しき()がきたり、(とし)()って、「わたしにはなんの(たの)しみもない」と()うようにならない(まえ)に、 2また()(ひかり)や、(つき)(ほし)(くら)くならない(まえ)に、(あめ)(のち)にまた(くも)(かえ)らないうちに、そのようにせよ。 3その()になると、(いえ)(まも)(もの)(ふる)え、(ちから)ある(ひと)はかがみ、ひきこなす(おんな)(すく)ないために(やす)み、(まど)からのぞく(もの)()はかすみ、 4(まち)(もん)()ざされる。その(とき)ひきこなす(おと)(ひく)くなり、(ひと)(とり)(こえ)によって()きあがり、(うた)(むすめ)たちは(みな)(ひく)くされる。 5(かれ)らはまた(たか)いものを(おそ)れる。(おそ)ろしいものが(みち)にあり、あめんどうは(はな)()き、いなごはその()をひきずり(ある)き、その欲望(よくぼう)(おとろ)え、(ひと)永遠(えいえん)(いえ)()こうとするので、()(ひと)が、ちまたを(ある)きまわる。 6その(のち)(ぎん)のひもは()れ、(きん)(さら)(くだ)け、(みず)がめは(いずみ)のかたわらで(やぶ)れ、(くるま)井戸(いど)のかたわらで(くだ)ける。 7ちりは、もとのように(つち)(かえ)り、(れい)はこれを(さづ)けた(かみ)(かえ)る。 8伝道者(でんどうしゃ)()う、「(くう)(くう)、いっさいは(くう)である」と。
9さらに伝道者(でんどうしゃ)知恵(ちえ)があるゆえに、知識(ちしき)(たみ)(おし)えた。(かれ)はよく(かんが)え、(たず)ねきわめ、あまたの箴言(しんげん)をまとめた。 10伝道者(でんどうしゃ)(うるわ)しい言葉(ことば)()ようとつとめた。また(かれ)真実(しんじつ)言葉(ことば)(ただ)しく()きしるした。
11知者(ちしゃ)言葉(ことば)()(ぼう)のようであり、またよく()った(くぎ)のようなものであって、ひとりの牧者(ぼくしゃ)から()言葉(ことば)(あつ)められたものである。 12わが()よ、これら以外(いがい)(こと)にも(こころ)(もち)いよ。(おお)くの(しょ)(つく)れば際限(さいげん)がない。(おお)(まな)べばからだが(つか)れる。
13(こと)()する(ところ)は、すべて()われた。すなわち、(かみ)(おそ)れ、その命令(めいれい)(まも)れ。これはすべての(ひと)本分(ほんぶん)である。 14(かみ)はすべてのわざ、ならびにすべての(かく)れた(こと)善悪(ぜんあく)ともにさばかれるからである。