序文

ジェシー・ペン-ルイス

私は一八九八年に「十字架のメッセージ」に関する小著を発行しましたが、それはその年の聖金曜日にマイルドメイのC.I.M.ホールで与えた、いくつかのメッセージの概要にすぎませんでした。

主は恵み深く、その小著を格別に喜んで認めてくださいました。しかし私には、その本が荒削りで、一般読者には内容が濃すぎるように思えてなりませんでした。事実、聖霊は当時私の心の中に、「カルバリの十字架の刷新された宣べ伝えが必要である」という燃えるような思いを与えておられましたが、私はその思いを表現する言葉を持っていませんでした。私は、神の光の中ではっきりと見ていたものを、いわば「種子」の形で述べることしかできませんでした。

今年、その小著の第一版が尽きました。私はその再刷をこれまで三回検討しましたが、その都度禁じられました。そして今、主は同じ重要な主題に関して、新鮮でさらに豊かなメッセージを与えてくださいました。

私は最初のメッセージが主からのものであることを知っていました。そこで、私はページを増したこの新著の中にそれを取り込むよう努めました。しかし、丸ごと転載した段落は一つもありません。それゆえ、一八九八年に発行した小著と区別するため、本書に新たな題名をつけるのが良いと感じました。

私はこの十字架のメッセージを再び送り出します。私には、以前よりも強い、深い確信があります。この終末の時代、教会が特別にまた切実に必要としているのは、主イエス・キリストがカルバリの十字架で成就された御業の刷新された宣べ伝えです。使徒パウロはこれを宣べ伝え、経験的に知っていました。

おお、神の僕たちよ。私たちは、戦いが門に迫りつつある時代に生きています。私たちの信仰の土台そのものに、戦いが迫っています。

地獄の穴が開かれています。そして、すでに敵は洪水のように私たちに押し寄せています。主の霊は敵に対して旗を掲げなければなりません。その旗とは、十字架の刷新された宣べ伝えです。十字架は、神との平和の手段であるだけでなく、罪の束縛からの解放の手段であり、この世の霊から分離する力です。このような十字架が宣べ伝えられなければなりません。

暗闇の君は、「十字架不要」の旗の下に、自分の大軍を配置しています。ですから、私たち神の子供は、ささやかな違いをすべて捨て去り、主の戦いに馳せ参じて協力しなければなりません。そして、文明的ではあったけれども罪深かったコリントに行く時パウロが決意したように、私たちも「イエス・キリスト、すなわち十字架につけられた方」のほかは何も知るまいと決意しなければなりません。

しかし、力強い十字架の宣べ伝えへの回帰を示す、喜ばしい兆候がたくさんあります。ご自身の民を見捨てなかった神がほめたたえられますように!私たちの神は来臨して、強大な敵と戦われるでしょう。もはや遅れることはないでしょう。これ以上、契約の血が足の下に踏みにじられ、俗なものと見なされることはないでしょう。

どうか、神がこの小著を通して恵み深く語ってくださいますように。そして、本書を主の多くの道具の一つとして用いて、主が贖った者たちを死の中で主との真の結合に召してくださいますように。主が現れる前のこの終末の厳粛な時代に際して、贖われた者たちが主のいのちにあずかり、十字架につけられた主の、真に十字架につけられた使者となりますように。

私は、自分が上辺に触れたにすぎないこと、深みは計り知れないことを、深く実感しています。このテーマはとても広大ですから、示唆的なメッセージを与えることしかできません。しかし、すべての読者が豊かないのちと豊穣さへの鍵である十字架の経験的知識を自分のために神に求めるよう導かれるなら、本書の目的は達せられるでしょう。

さらに、次のことも述べておいた方がいいでしょう。信者は主の死の中で主と交わりを持ちますが、この面を強調する時、それは決して、その贖われた信者が罪人のための主の贖いの働きにあずかるということではありません。

十字架に関して多少宣べ伝えることは容易です。しかし、聖霊によってカルバリの中心に連れて行かれることは、詩篇二二篇に予表されているように、主イエスの死との交わりを意味します。私たちはこの交わりによって、地上ではほふられたけれども天では御座についておられる小羊だけを永遠に見るようになります。自分の知っていることを語り、自分の経験したことを証しするには、彼の杯を飲み、彼のバプテスマでバプテスマされなければなりません。

私は、神の尊い僕の本の中からこのテーマに関する箇所を抜粋して、付録に追加しました。神の聖霊は、神の使者たちにカルバリに戻るよう命じておられます。やがて、主に贖われた者たちを召し出すために、世界的なリバイバルが起きるでしょう。主がご自身の民のもとに戻られる前のこのリバイバルを、私たちは求めているのです。付録の抜粋は、これらのことをますます強く、多くの人の心に確信させてくれるでしょう。

Jessie Penn-Lewis

一九〇三年十月

第五版への序文のノート

私は神に深く感謝します。なぜなら、神はこの単純なメッセージに著しい祝福を注いでくださったからです。今日、サタンと人の暗闇の全軍勢は、全力をあげて、カルバリにおける神・人の身代わりの御業の真理に反対しています。このような時、私は再び本書を送り出します。

どうか神が、この邪悪な日に際して、神の民を強めて戦いの中に立たせるために、本書を用いてくださいますように。

一九二〇年六月
J.P-L.

第二版 一九〇六年十月
第三版 一九〇九年十月
第四版(インド 一九一九年三月)
第五版 一九二〇年六月
第六版 一九二九年八月