第三章 終わりの時代における魂の力の発見

ジェシー・ペン-ルイス

マーレーは、「各人が恐れなければならない最大の危険は、魂が精神や意志の力によって過度に活動することである」と言いました。今日この危険は、「研究者」を自認する人々が心霊学の領域でなした発見によって、千倍にも増幅されています。彼らは、人の中にある潜在的な力――これまで人が考えもしなかったような力――を知るよう、大衆を導いています。霊にしたがって歩み、神の霊の流出の経路になることを願うクリスチャンが直面している危険は、きわめて現実的です。なぜなら、再生されて、霊の中に神のいのちを持っていたとしても、もし無知なら、「魂の力」を使ってしまうかもしれないからです。神のための宣教の働きにおいてさえ、「魂の力」を使ってしまうかもしれません。おそらくこれが、宣教の効果が長続きしない隠れた原因でしょう。

しかし今は、「魂の力」の危険性について、鳥瞰図を示すことにしましょう。おそらく、この主題の経綸上の面に関して、マクハーディー夫人ほど豊かに情報を提供している著者はいないでしょう。しかし、彼女の貴重な著書は絶版になっています。彼女の著書はまさに今日のために書かれたのに、現在は入手困難です。*

* 数年前に、故ルジシル博士がこれらの書物を読んで、著者に会うことにしました。彼はそのためにアバディーンまで長旅をしました。そして、著者が家のてっぺんの一室で働きながら、一人で暮らしているのを見つけました。なぜなら、彼女は自分のメッセージを出版するために全財産を使い果たしてしまったからです。ルジシル博士が語るところによると、彼女は聖書知識の生き字引であり、ヘブル語とギリシャ語の専門家でした。その後、彼女は脳出血で倒れ、診療所で亡くなりました。彼女は、自分の仕事を引き継げる後継者を残しませんでした。彼女の死後、これらの本の金属版画が私に贈られました。しかしその時、私は贈られたものを利用できませんでした。この論文で私が示す事実は、マクハーディー夫人の著書から収集したものです。

注目すべきことに、この時代の終わりの時、悪魔は創世記を攻撃して、その権威を地に落とそうとしています。その理由は、創世記が基本的真理――堕落と贖いの福音――を含むだけでなく、今日の諸問題に対する鍵をも含んでいるからであることは、疑う余地がありません。すでに指摘したように、エバを誘惑する誘い文句は、「あなたは神のようになるでしょう」でした。神が人を創造されたのは、まさにこの目的のためでした。私たちは次の要点を理解する必要があります。

1.今日、「心霊学研究」によって明らかにされた魂のもろもろの属性は、堕落以前のアダムの中に置かれたものであり、神との交わりを通して発達させられ、神の御旨を遂行するために用いられるべきものでした。

2.誘惑する者は、これらの潜在的な力が罪のないアダムの中にあることを知って、神の支配下ではなく、自分の支配下でそれを用いることを欲しました。そこでエバを誘惑しました。

3.アダムが堕落して、その霊の中で神から分離された時(なんと恐ろしいことでしょう)、これらの潜在的な力もアダムと共に堕落して、誘惑者の手に渡りました。

前の論文で、大いなる策略家であるサタンが、(1)科学者、(2)ビジネスマン、(3)宗教家を捕らえるために考え出した一大計画について触れました。この計画は、悪霊に支配されている一人の霊媒を通して知らされました。悪霊は霊媒を通して、「これまで我々は、『人類のさして重要でない部分』にしか手をのばせなかった。一部の例外を除いて、科学者たちは我々から遠く離れていた」と語りました。今日私たちは、悪魔の策略の結果を見ています。多くの科学者たちは、「自然科学研究」というまことしやかな口実の下で、大いなる欺きに捕らわれています。

心霊主義の歴史を見ると、悪霊が人と交信できるようになった第一段階は、一七七八年頃にアントン・メスマーによってなされた発見だったことがわかります。この発見により、今日「催眠術」と呼ばれているものに関する知見がもたらされました。メスマーに続いて、多くの追従者たちがさらに「発見」を続け、ほとんど信じられないような現象を生じさせました。メスマーは自らを科学者と称し、これらの「自然現象」を検証するよう、科学界に訴えました。彼は、「私は自分の発見を、最も科学的な人々に認めていただきたいのです」と言いました。この時、悪魔は科学者を捕らえることに成功しました。なぜなら、心霊学の研究者たちは、「催眠術はあらゆる精神学(クリスチャン・サイエンスも含む)の源である」と認めているからです。

メスマーは、人間の内に潜在的に存在する神秘的な力に関して、基本的な知識を得ました。それに続いてなされた「発見」のリストを見ると、その後この運動が驚くほどの速さで進展したことがわかります。一七八四年に、メスマーのある学徒が、催眠術の結果、「透視力」を発見しました。そして偶然、「読心力」に遭遇しました。それから、さらなる知識を求めて、古代の書物が研究されました。この研究により、古代にはこれらの「自然の神秘」はごく少数の人々にしか知らされていなかったことがわかりました。しかし今、メスマーとその学徒たちを通して、この運動がさらに前進する時が来たのです。この運動はやがて、世界を再び暗闇の中に導くでしょう。

催眠術、神経学、精神測定学――精神が肉体を離れて活動できることや、過去を読むことができる「精神感知力」――などが年々「発見」されました。それから、「幽体離脱」と呼ばれるものが発見されました。これは意志によって生じるある特定の状態を意味し、この状態にある人は自分の「精神」を遠くの場所に「投影」して、そこで起きていることを見聞きしたり、感じたり、においをかいだり、味わったりできます。それから一八四七年頃、ある信仰復興の説教者が「トランス状態」を発見しました。この発見により、その説教者は宣教の働きをやめて、研究に没頭しました。多くの人が彼の講義を聞いて影響を受けました。「トランス状態は、人間のいのちの中にもともと備わっている、自己暗示の力による」と発見者は言いました。この力を用いることにより、精神は痛みを感じなくなるだけでなく、病気をいやすこともできました。

最初は、自然科学の分野として、科学者だけがこれらの「発見」に従いました。そして、これらの現象を霊の働きと関連づけようという試みは一切なされませんでした。悪霊たちはすべての教えと教義を注意深く隠していたのです

それから、「ビジネスマン」を捕らえるために、計画がさらに進められました。その結果は、今日広く行き渡っています。その計画とは、仕事で成功をおさめ、利益を得るために、これらの「発見」を実際に利用する方法を示すことでした。そしてこの目的のために、「内なる力」を発達させる方法を記した本が出版され、大々的に宣伝されました。ビジネスマンたちは、友情や成功を引き寄せ、「たくましい魅力的な性格」を発達させるために、「心の力」を用いるよう至る所で勧められました。

「宗教家」に手をのばすために、計画がさらに遂行されました。これがどれほど成功したかは、今日見ることができます。クリスチャンの教師たちは大挙して、悪魔の教え――聖書に関する合理的見解や、特にキリストの贖いに反対する教え(これが悪魔のあらゆる教義の主要目的です)――を吸収しています。

今日、サタンの欺く霊の巧妙な働きは、その頂点に達しつつあります。私たちは、指導者たちが続々と敵に捕らえられていく様子を見ることができます。サタンの戦略は実に巧妙でした。「科学者」が道をしき、「宗教家」が科学(間違ってそう呼ばれているもの)に降伏し、人の住む全地が欺く者によって迷わされました。

間違いなく、聖書に予告されている「背教」は、満潮に達しつつあります。潮流は急速に勢いを増しています。神と人の敵が舵を握っており、世界は暗闇の時――サタンが短い間、一人の超人(反キリスト)を通して、実際に「この時代の神」として君臨するであろう時――に向かって突き進んでいます。この超人の「出現」は、もはやのばされることはないでしょう。

今日、「発見」に次ぐ「発見」がなされています。そのため、日刊紙ですら、それを知らせるのが困難なほどです。たとえば、「精神分析」は今日「科学」として認知されています。しかし、教会会議の会規は、精神分析を「汚れた不要な道楽!」として規定しています。心霊学は狂気であり、惑わしの風です。しかし、この新しい「教え」をいっぱいにつめこんだ「教師たち」が現れつつあります。彼らは不注意な者たちを、キリストの真の福音から遠ざけています。

「ノアの時代」の意義を少しでも知っている人なら、今日魂の力が台頭してきた目的をはっきりと認識できるでしょう。ノアの時代、堕落が広く行き渡っていました。そこで、堕落に汚されずにいた一家族を通して人類を保存するため、すべての肉を滅ぼす洪水が必要だったのです。心霊科学のどの領域も、キリストの福音のある面に取って代わろうとするものであることが、最終的に明らかになるでしょう。心霊科学は、クリスチャンのキリストとの合一の偽物として、目に見えない者たちとの合一を生み出すようにすらなるでしょう。

神の子供たちは、身の安全を守るため、今、「魂と霊の違い」を知る必要があります。人々の個人的問題を取り扱う時、聖霊の内住する力に信頼して、人々を十字架の解放に導きなさい。「精神分析」を用いてはいけません。悪魔との戦いには、古いアダムのいのちを絶えず死に渡す十字架の深い働きと、聖霊による復活の主とのいのちにおける実際的結合が必要です。さもないと、悪魔との戦いで、私たちは魂の力を発達させてしまうかもしれません。

「魂の力」対「霊の力」。これが今日の戦場です。キリストのからだは、自らの内にある聖霊の力によって、天に向かって前進しつつあります。この世の雰囲気は、魂的な潮流――その背後には悪霊どもが集結しています――に覆われつつあります。神の子供にとって、危険を逃れる唯一の道は、キリストと結合しているいのちを経験的に知ることです。キリストと結合しているいのちにより、神の子供はキリストと共に神の中に住み、有害な空気――その中で、空中の軍勢の君が働きを進めています――を超越します。清めるキリストの血、キリストの死と一体化させるキリストの十字架、復活・昇天された主の力―――これらを聖霊によって絶えず宣言し、握りしめ、行使することによってのみ、キリストのからだの肢体は勝利して、昇天されたかしらに結びつくでしょう。