四十マイル離れた寂しい山小屋

チャールズ・プライス

この物語は、コンリーという名の年老いた農夫と共にアイオワから始まる。これから話す人が生まれた時、コンリー夫妻はその赤ん坊を主にささげた。

月日が流れた。ジョーは良い子で家族の自慢だった。高校時代が終わったある日のこと、彼の父親が彼のところに来て言った、「ジョー、なりたいものは決まったかい?」。ジョーは、そのことについて祈ることにする、と答えた。二週間後、彼は父親のところに来て言った、「牧師になることにします」。

文学士号を受けた後、彼は三年間神学校に行って奉仕のために備えた。ある日、教授の一人が彼に言った、「知っていますか。われわれが神や聖書について元々信じていたことには、多くの迷信が混じっているんですよ。君は聡明な学生です。あらゆることを慎重に考慮すべきです。私は君にダーウィン、ルナン、ハックスレーといった哲学者たちの本をすべて読んでほしいのです」。

卒業後、彼はアイオワにある小さな教会の牧師職を受けた。そしてそこにいる間に、素晴らしいクリスチャン女性と結婚した。三年後、彼はカリフォルニアにある教会に異動になった。その場所で彼の魂の中に大きな戦いが始まった。

彼は名誉学位を受け、牧師職に邁進した。しかしその間ずっと、彼は信仰ではなく理性や理知主義の観点から聖書を見て、解釈していた。

大学で彼の心の中に蒔かれた種が実を結び始めたのは、カリフォルニアのその地においてだった。ジョーは妻に「自分は偽善者だと感じるようになりかけている」と打ち明けた。そしてとうとう、「辞めることにする。もう耐えられない」と言った。彼はキリストの処女降誕や奇跡を否定した。そして、ある日のこと、ジョー・コンリー博士は講壇に行って言った、「友人の諸君、私は聖書を信じることができません。何年ものあいだ、私の心には葛藤がありました。ですから、私が説教するのはこれが最後です」。

彼は才能ある文筆家だったので、すぐに新聞の編集者としての職を得た。しかし、彼は喫煙、飲酒、少々の賭博をやり始めた。状況は悪化の一途を辿り、最悪になった。飲酒のせいで出勤できない日が多くあった。そのため、すぐに仕事を失ってしまった。彼はよその町の他の多くの新聞社で編集者として働いたが、どの職も失ってしまった。彼は今やほとんど常に酔っぱらっていたからである。尊敬された学識ある牧師だった人が哀れな酔っぱらいになり、ボロ切れをまとってうろつくようになったのである。彼は痩せこけた。そして、目のくぼんだ、冒涜と呪いと罵りをわめき散らす人になった。

ある日、路上にいると、彼はだれかに出くわした。コンリー博士はいつものように酔っぱらっていた。その人は彼に気づいた。「昔、私の牧師だった方ではありませんか!こんなところで何をしているのです?自分の目が信じられません!」。この優しい医者のクリスチャンは彼を自分の家に連れて行って風呂に入れ、新しい服を与えた。コンリー博士はその服を質に入れて酒に費やした。彼の手に入ったペニー硬貨はみな酒代になった。そしてとうとう、彼は人がなりうる最低の者に成り果てた。

当時はアラスカの一大ゴールドラッシュの時代だった。彼の友人たちは、もし彼を新しい環境の中にもたらせれば彼の人生は変わるかもしれない、と考えた。年老いた酔っぱらいはアラスカ行きに同意した。そこで友人たちは彼の小さな鞄に荷物を詰め、別の衣服を買ってやり、スカグウェー行きの船に彼を乗せた。彼の妻と娘が見送りにやって来た。彼の小さな娘のフローレンスは彼の首を両腕で抱いて、「お父さん、向こうでケガするようなことがあった時のために、小さな薬箱を鞄の中に入れておいたわ。それから、お父さん、私の聖書も中に入れておいたわ。世界のだれにもあげられないものだけど、お父さんは別よ」と言った。その小さな聖書はフローレンスにとってかけがえのないものであり、その見返しのページに彼女は「愛するお父さんへ、フローレンスから愛を込めて」という言葉を書いた。その時、汽笛が鳴り、その古びた蒸気船はアラスカに向けて出港した。

数週間後、彼はごった返す人々――ユコンへの途上にある金鉱探索者たち――の大波の中にいた。彼が最初に見つけた職場は、その町で一番大きな酒場だった。彼の給料のほとんどは酒代に消え、残りの金で彼は食いつないだ。

ある日、酒場の主人が彼の所にやって来て、「おい、四十マイル先に行ってくれないか。そこで金を掘り当てて、古い丸太小屋を買ったんだ。行って、私のためにその場所を確保してもらいたい」と言った。「いやだ」とジョーは言った。「ここを離れるつもりはないよ。私のささやかな欠点は知っているでしょう」。しかし、その人は「ジョー、飲み放題だぞ。犬ぞりで補給を送ってやろう」と言った。

そこで、気がついてみるとジョーは四十マイル離れた寂しい山小屋の中にいた。飲む以外に何もすることはなかった。ウィスキーの樽が四分の一空になった、十月のある日のこと、山小屋の扉を叩く音がした。そこにはジミー・ミラーが立っていて、「寒くて飢えているんだ」と言った。コンリーは「中に入れ、食べ物とウィスキーの樽があるから」と言った。彼らがそこに二週間いて、飲んだくれては毎晩寝ていた時のこと、扉を叩く別の音がした。サンフランシスコからやって来た詐欺師のウォリー・フレットが中に入って来た。そして酒を見たとたん、彼の口はよだれを垂らした。「私も一緒にいていいかい」と彼は尋ねた。二人は同意した。そこで今や、その小さな山小屋に彼ら三人が暮らすことになった。彼らの野卑な笑い、汚らわしい冗談、みだらな物語は言葉にするのもはばかられた。

十一月がやって来て過ぎ去った。絶え間ない飲酒が彼らの神経に支障をきたし始めた。彼らはひたすら飲み続け、とうとう苦しんで叫びもがくようになった。ある晩、ジミーが死にそうになった。発熱して、意識は朦朧とし、震えていた。苦しみの中彼は叫んだ、「医者をよこしてくれ。ここで寝たまま死なせないでくれ」。しかし、彼らはドーソン市から四十マイル離れていた。外はマイナス四十度で雪は深かった。その時、古い鞄の中に薬箱があることをコンリーは思い出した。そこで彼は鞄を取り出して開いた。すると、小さな黒い本が落ちた。

ウォリーが、「それは何だい、コンリー?」と言った。「聖書だよ、いまいましい!」。コンリーはストーブにズカズカと歩み寄った。しかし、聖書を中に放り込むために彼がストーブの蓋を開けた時、ウォリーが叫んだ、「おい、中に放り込むな!この神に見捨てられた土地には読み物が何もないのを知らないのか」。そして、彼の手から聖書を奪い取った。その時、表紙に記されている「愛するお父さんへ、フローレンスから愛を込めて」という言葉をジョーは見た。今や彼の酔いは少し醒めた。「私の小さな娘よ!私の小さなフローリーがくれた本を燃やさなくて良かった」。

薬が効き始めて、ジミーは回復し始めた。回復しつつある時、彼は聖書を読み始めた。しかし、彼には大声で読む習慣があった。ジョーは黙れとよく彼に言っていたが、ウォリーは興味津々だった。「こんなことが聖書に書かれているとは思いもしなかった。暇つぶしにみんなで読んだらどうだろう。もちろん信じたりしないが」と彼は言った。

そこで彼らは順番に読むことにした。知らず知らずのうちに、四十マイル離れたその小さな山小屋にある変化が生じ始めた。ウィスキー樽の減り方は緩やかになった。五章、六章、七章読む日もあった。新約聖書に来ると、呪いはますます少なくなり、ウィスキー樽はほったらかしになった。

クリスマスになった。彼らはキリスト誕生の物語を読んだ。一月になり、彼らは聖ヨハネの福音書を読み始めた。それから二月、決定的な日が訪れた――ウォリーが読む番だった。「心を騒がせてはなりません。神を信じ、わたしを信じなさい。わたしの父の家には多くの住まいがあります。そうでなかったら、あなたたちに言っておいたでしょう。わたしはあなたたちのために場所を備えに行きます」。ジョーの手が目を拭った。「どうしたんだい、ジョー?」「何でもない!」「泣いているのかい、ジョー?」「そうだよ、先に進んでくれ。小さな娘のことを考えているんだ。その聖書のせいで泣いているんじゃない」。

それからウォリーが言った、「僕はこの本が本当かどうか知りたい。この五日間、祈りたいと思っていたんだけど、君たちが僕のことを笑うんじゃないかと恐れていたんだ。でももう恐れない。僕は神にお願いするよ、もし本当におられるなら、僕に語りかけてください、とね」。ジョーが言った、「君が打ち明けてくれたから僕も言うけど、この一週間、僕の心は打ちひしがれていたんだ。僕にはアイオワで祈っていた母の祈りが聞こえる。といっても、母は今は栄光の中にいるんだけれど。君はどうだい、ジミー?」「もし君たちが祈りたいなら、僕も君たちと祈ることにするよ」。

四十マイル離れた寂しい山小屋にいる三人の年老いた酔っぱらいはひざまずいて祈った。彼らの祈りは高く、高く昇っていった。突然、ウォリーが飛び跳ねて、「ハレルヤ!イエスが祈りを聞いてくださった!」と言った。それからジミーが飛び跳ね、続いてジョー・コンリーが飛び跳ねた――二人とも、栄光あれ、と叫んでいた。四十マイル離れた寂しい山小屋に、しみも縫い目もない衣を着た人なる御方が来てくださったのである。私にはこの御方が御霊の中で古びたユコンのストーブの傍らに立っておられるのが見える。この御方は三人のおじぎしている頭に御手を置き、ジョーとジミーとウォリーはその晩、神の霊によって再生されたのである。

数年後、私はオレゴン州のユージーンで集会を開いていた。そこで私は聖書学校の学生部長であるジョセフ・コンリー博士に紹介された。彼の奥さんと娘のフローレンスも一緒だった。去り際に、コンリー博士は「私の部屋に来てください。それから、紙と鉛筆も持って来てください」と私に求めた。

彼は言った、「私はもう長くありません。故郷に帰ってイエスと一緒になるでしょう。しかし、私はずっと祈ってきましたが、私の物語を記録することを神は望んでおられると私は信じています」。彼はこう続けた、「私が少し泣いてもお許しください。私は最初から書き始めたいのです」。そして彼は、私があなたに伝えたとおりの物語を私に話したのである。

私は一連の集会のために続いてヤキマに行った。その初めの週のとき、突然、聖書学校から送られてきた一人の学生を通して「ジョー博士は亡くなって栄光の中に入りました」という話を聞いた。自分が去ることを知った時、彼は彼女を遣わして、「四十マイル離れた寂しい山小屋で私を見つけてくださったイエスが私と共におられます」と私に告げるよう彼女に言ったのだった。そして、頭を枕の上に横たえて亡くなったのである。