前書き

エーリッヒ・ザウアー

キリスト教の真理について新鮮な光を得るために新しい書物を読むとき、もしもその著者が読者と全く異なる学派の中で育てられている場合には、ある特別な価値がある。もちろん、それが真にキリスト教の真理であるならばだが。このすべてが本書の中に顕著に見いだされる。著者はドイツの有名な聖書註解者であり、強力な福音的伝統を持つ独立的な教会のグループの一つに属している。著者はラインランドの聖書学校の校長であり、長年中央ヨーロッパにあまねく教師として多くの依頼を受けている。また数回イギリスを訪れており、われわれも著者の説教者としての才能を証しすることができる。

ドイツ人は、非凡な勤勉さと徹底さで有名だが、この書もそのような特徴を帯びている。キリスト教の教理の巨体が歴史的順序に沿って、この書に収められている。この書は受肉をもって始まり、われわれの主のパースン、その死と復活、聖パウロの働き、教会の特徴へと進む。著者はそれから再臨の諸々のしるしに移り、地上におけるキリストの統治についての旧新約聖書の教えを、実に完全に描写する。結びの数章は最後の審判と永遠の状態を扱っている。

本書の題材はおよそ九十の説教概要にまとめられており、三千七百を下らない聖書引用が与えられている。その教えは全く聖書的であると言える。新約聖書のどこか一つの箇所を解説しようとする話し手で、その主題についてのザウアーの所言を調べてみて、益を受けない人はいないであろう。それがこの書のおもな価値である。これはたんなる概要を遙かに上回るものである。著者は常に思慮深く、健全で、正当である。かつ偏った学説を弁護するようなことがない。本を借りるのが好きで、ざっと読んで要点をつかみ、それを返すというような人は、今の場合、その時間を無駄に費やすことになるだろう。この本は買って保持しておき、必要に応じて何度も参照すべき本である。九十の説教のほとんどすべてが、再度説教しうるものであり、大いに有益である。

英訳は非常に滑らかである。実に、原著がドイツ語であることをほのめかすしるしは、大陸の著者たちが多く引用されている点くらいしかないほどである。

ブリストル大学外科教授

A・レンドル・ショート